病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて旅に出ましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです。私が育ったのが魔界!? またまたご冗談を~ 作:魔界育ちの一般人
「はて、フィアナや。ワシ、どうやら耳が遠くなってしまったようでな――もう一回、言ってくれるかい?」
「はい! 私、村から出て外の世界が見たいんです!」
「ならん!! 村の外は、あまりに危険じゃからな!!」
取り付く島もないとは、このことでしょうか。
「危険なのは分かってます。けど……」
「いったいどうして、いきなりそんな事を言い出したんじゃ? 何かこの村に不満でもあるのかい?」
真剣な表情で考え込んでいたアル爺は、
「もしフィアナのことを虐めたやつがいるなら、ワシがこの手で八つ裂きに――」
「わ〜、違いますよ!? 私、この村に住んでて本当に幸せですから!」
騒ぎを聞きつけ、村人たちが集まってきます。
そんな彼らをギロリと睨むアル爺を、私は慌てて否定します。
「村の外はロクでもないところだよ」
「ああ、外の世界は陰謀渦巻く恐ろしい場所だべさ」
「これからも村で楽しく過ごせば、それでいいじゃないか」
ルナミリアの面々も、次々と私を説得しようとしますが、
「でも……。この村、私以外に子供がいないじゃないですか」
――私、友達が欲しいんです。
ぽつりと呟く私を見て、理解の色を示します。……示してしまいました。
この村には、なぜか私しか子供がいません。
だから友達か欲しいという願いは、この村に居ては決して敵わないもので、
「なぁ、フィアナや」
「なんです、アル爺?」
アル爺は、年長者としての威厳と貫禄を纏わせ、
「そんなに友達が欲しいなら、ワシが――」
「え……? 嫌です」
「しょぼん……」
崩れ落ちるアル爺。
「ちょっ!? 本気で落ち込まないで下さいって!」
「ガッハッハ! アル爺、振られてやんの〜!」
「しつこい親は嫌われるぞ!」
「皆さんも面白がらないで下さいって……」
わたわた慌てる私と、面白がって囃し立てる村人たち。
「お友達を作るために、マーブルローズの学校に、ねえ。私は、いいと思うよ」
「がっはっは! 何事も経験。経験だからな!」
「ならん! ならん、ならんぞ〜!」
収集のつかない騒ぎになりそうなところで、
「この頑固爺は、私の方で説得しとくよ。今日のメインディッシュを狩ったんだ。フィアナはもう疲れたろう、先にお休み」
エルシャおばさんが、そう言い出しました。
「むぅ……、でも私の事ですし」
「アル爺は意固地になってるだけ。フィアナの気持ちは、ここにいる皆が分かってる。だから……、ね?」
有無を言わさぬ静かな口調。
(エルシャおばさんに任せておけば、間違いないと思うけど……。なんか、子供扱いされてる気がする!)
ちょっぴり納得いかないものを覚えつつ、私は部屋に戻ります。
悶々としたものを抱えながら、布団に潜りこみ――これは眠れない夜になりそうだと考え込み……、5秒後にはストンと眠りに落ちていたのでした。
***
【アル爺サイド】
フィアナが去って数分後。
さっきまで馬鹿騒ぎが嘘のように、あたりには静寂が広がっていた。
その中心は、ルナミリアの村長――アルフレッド、愛称はアル爺。
フィアナの前で駄々をこねていたのが嘘のような真面目な顔で、彼はルナミリアの面々の顔を見回すと、
「おまえたちは……、フィアナが王都に行くことに本気で賛成なんじゃな?」
そう口火を切った。
「そりゃあ……、本音を言えば、ずっとここに居て欲しいさ。だけど、ルナミリアは流れ者がたどり着く歪な場所さ。ましてフィアナちゃんは、外に希望を持ってる。なら……、私たちが止められるはずもない。分かってるんだろう?」
エルシャが、諭すようにそう口にする。
アル爺も、本当のところは納得してしまっているのだろう。
だからこそ必要なのは、納得するための時間と理由。
ルナミリアに流れ着いたばかりのアル爺は、それはもう荒んでいた。
誰も信じず、剣だけを信じ、他人に興味を持たない職人気質。それが小さな少女をこれほど溺愛するようになるとは、いったい誰が予測しただろうか。
「ぐぬぬぬぬぬ。こうなったらワシは、フィアナに着いて王都に行く!!」
「駄目です。まったく、王都を戦場に変えるつもりですか」
何を言い出すのかと、エルシャは呆れてため息をつく。
魔界の奥深くにある辺境村――それがルナミリアだ。
未開拓地帯にあり、存在すら知られていない秘境の地。世界で一番危険な村であるといっても過言ではなく、ルナミリアの面々は決して子供を作ってはならぬと固く禁止されていた。到底、小さな子供が生き残れるような環境ではないからだ。
だからこそ、アル爺・エルシャ・フィアナという3人家族はイレギュラーであった。
いずれこんな日が来る――エルシャは、そう覚悟していたのだが、どうやらアル爺は違った様子。
「それが、あの子にとっての幸せなんじゃな」
「ええ、そう思います。それに、もし王都で何かあったとしても、あの子にはルナミリアという帰る場所がある。それが、どれだけの支えになるか。あなたなら分かるでしょう」
「ああ。そうじゃな……」
それでも最後には、諦めたように静かに頷くのだった。
一方、ルナミリアの面々はそんな言い合いには頓着せず、
「あの年で第四冠の魔法まで使いこなせるのは、間違いなくフィアナだけだ!」
「おまけに内的魔法のセンスも、バケモンだ。ドラゴンの鱗を素手で貫くなんて、目を疑ったぞ」
「いやいや、あの子の一番の凄さは、あの吸収力だ。教えれば教えるだけ、なんでも吸収しちまうんだからな!」
「だからって、あの子が人間やめちまうまで全ての技法を教えるやつがあるか!?」
「「「つ、つい。なんでも覚えるもんだから楽しくて(さあ)(よう)」」」」
そんなことを好き勝手に言い合っていた!
ルナミリアという村。
そこには世界各地で居場所を失った精鋭が集っている。
そんな彼らが面白がって、最先端の技術を惜しみなく教えた少女――それがフィアナである。
フィアナは、それぞれの分野のスペシャリストから英才教育を受けたと言える。
結果、フィアナは自分でも気付かぬうちに、とんでもない実力を手にしていたのである!
「ほら、アル爺。そんな情けない顔しない! フィアナの王都行きに備えて、教えるべきことを教えてあげないと」
「ああ、分かっておる……」
しょんぼりしながらも、やると決めたことは決して曲げないのがアル爺という男だ。
そうしてルナミリアの村をあげて、フィアナを王都に送り込む計画が、推し進められることになった。