病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて旅に出ましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです。私が育ったのが魔界!? またまたご冗談を~ 作:魔界育ちの一般人
エリシュアン学園は、その権威を示すように王都レガリアの中央部に位置していました。
その場所は方向音痴の私にも、すぐに分かりました。
学園のシンボルにもなっている魔法塔が、その存在感を王都の人々に示していたからです。
(これが異世界の最先端! 王都、すごいっ!)
ついに辿り着いた憧れの学園。
その第一印象は、学び舎というより豪華な宮殿のように感じられました。
門から敷地を覗き込むと、視界に飛び込んできたのは広大な敷地いっぱいに広がる庭園。
丁寧に整備されており、その中心にはオシャレな噴水まで設置されていました。
そして何より感動したのが、威圧感すら感じる大きな校舎です。
色とりどりのガラスで彩られた建物は、まるで物語に出てくるお城のような代物でした。
(ここに……、私が通うの?)
エリシュアン学園は、国の未来を担う優秀な若者を集めていると聞きます。
別世界のような建物を前に、私は自分が酷く場違いな場所に立っているような気がしてきました。
「あの……、失礼だが君は?」
門の前で佇む私に、門番の1人が話しかけてきました。
「ひゃいっ!? わ、私はフィアナです。編入試験を受けるために、エリシュアンに参りました!」
「編入試験を? 推薦状を見せてもらえるかい?」
「え、推薦状が必要なんですか!? えっと……、特に持ってないですね」
「なら残念だが――」
けんもほろろといった様子で追い返されそうになったところで、
「なんの騒ぎだ?」
もう1人の門番が現れました。
「いや、なんか推薦状を持たない世間知らずの子どもが、編入試験を受けたいと駄々こねててな。フィアナって言ったか。ほら、今日はもう帰りな」
「む……、推薦状とは厄介ですね――」
さっき王都に来たばかりの私に、当然、心当たりなんてありません。
「んん? 今、フィアナって言ったか?(ヒソヒソ)」
「たしか、そんな名前だったはず――(ヒソヒソ)」
「馬鹿っ! それなら、例の枠の子だよ。ほら、特別推薦枠の――(ヒソヒソ)」
「んなっ!?」
途方に暮れている私を余所に、2人の門番は何やら話し合っていましたが、
「「た、大変失礼いたしました!!」
突然、そう平謝りしてきました。
2人の門番は、恐る恐るといった様子でこちらを伺っており、
(どういうこと!?)
頭の中がハテナマークでいっぱいになる私に、
「まさか、炎舞の大賢者様のお弟子さまが、こんなに若い方だとは思いもよらず。すぐに試験場に案内しますので、どうかご容赦を!」
「どうが後生なので、燃やさないで……!」
「!?!?」
そこからの門番の振る舞いは、まるで要人でも案内するかのようで。
(炎舞の大賢者って、エルシャおばさんのことだよね? そんなに有名だったの!?)
誰かと勘違いされてるのでは? という不安すら頭をよぎりました。
とはいえ今更そんなことを言える空気でもなく──私はヒヤヒヤしながら、門番の後を付いていきます。
やがて私は、体育館と呼ばれる小さな建物に通されました。
(ほえー、ファンタジー世界の体育館には結界が張ってあるんだね)
(魔法陣を使って、定期的に魔力を補充するタイプだね!)
私が物珍しさにキョロキョロしていると、
「ほう、こいつが例の――」
馬鹿にしたような声が、耳に飛び込んできました。
そこにいたのは、いかにも体育会系といった風貌の男でした。
タンクトップに短パン姿というワイルドな風体。全身の筋肉が盛り上がったその体は、見るからに強そうです。
男は、私を見るなりハッと馬鹿にしたように口を歪めると、
「ふん、貴様が神聖なる学び舎に、コネで入ろうとしている命知らずか。尊きものの血も引かぬ平民の分際で――身の程を知れ!」
そう怒鳴りつけてきました。
(むむ、なんか嫌な感じです!)
「いえ……。私は、編入試験というのを受けに来ただけでして――」
「ふん、そうか。なら早速、試験を始めるとしようか」
「ほえ? えーっと……、何をすれば?」
男は、馬鹿にしたように鼻を鳴らすと、
「この学園に、弱き者は不要。私――マティが、試験官を務めよう」
「は、はあ……。よろしくお願いします?」
「さっそく実技試験を始めよう。そうだな……、今から私と模擬戦をして、勝てなければ不合格だ!」
そんなことを言い出しました。
「なっ!? 正気ですか! いきなり教師相手に模擬戦というのは、あまりにも……!」
「ま~た始まったよ、いびりのマティの得意技。はるばる遠方から来たっていうのに、あの子も気の毒に……」
「ってか、どうすんだよ!? 炎舞の大賢者のお弟子さん相手に、万が一にも怪我でもさせたら――」
マティさんの言葉に、どよめきが広がりますが、
「模擬戦ですね、分かりました!」
私はむしろ、その言葉を聞いてパッと表情を明るくします。
(模擬戦ならルナミリアで、嫌というほど繰り返してきました。チャンスです!)
(それにしても……、あの威圧は模擬戦での"盤外戦術"だったんですね。危うくただの嫌な人かと、思い込むところでした!)
私は目を輝かせ、ウキウキと体に魔力を巡らせていきます。
娯楽の少ないルナミリアで、村人との模擬戦は大きな楽しみの1つでした。
模擬戦とは、ルール無用の真剣勝負。相手の冷静さを奪うための盤外戦術も、当然のように活用しあったものです。
性格の悪いアンさんの煽りに比べれば、マティさんの言葉なんて可愛らしいものです。
(最初は、私もあっさり引っかかってアル爺に笑われたなあ。冷静さを失った相手の行動を読むことほど、簡単なことはない。金言です!)
挨拶代わりに盤外戦術。
王都――実に恐ろしい場所!
そうと分かれば、私がやるべきはマティさんを冷静に観察することです。
試験官であるマティさんが、どんな魔法を見せてくれるのか。
楽しみで楽しみで、ワクワクが止まりません。
「言っておくが、これは脅しではないぞ。実技試験の点数は、私に一任されている――私が0点を付ければ、それでおまえの編入試験は終わりだ」
「御託は要りません。さっさと始めましょう!」
私の言葉に、マティさんは鼻白んだように黙り込み、
「3・2・1――ファイッ!」
そんな審判の言葉で、戦いの火蓋が切られるのでした。