「─との事です」
ルーフは今、リグバース署の署長であるリヴィアに報告をしている。
「遠くまで、悪かったねルーフ」
「いえ。それだけ頼りにされているという事なので…」
「ハハッ!確かにそうだね。ルーフの事は頼りにしてるよ」
ルーフはリグバース署の中でも高い地位と実力がある。なのでこうして長い間、別の街や場所に出張する事が多い。
「でも、エルシェの事を忘れないであげてね」
「それは勿論です。大事な妻ですから」
「ふふっ、お熱いことだね」
リヴィアに釘を刺されたルーフだが、愛する妻の事を忘れたつもりはない。
出張先でも時間や機会があれば連絡用の魔法で通話している。
「後は此方でやっとくから、奥さんに顔を見せてあげて」
「それは有難いですが……良いんですか?」
「最近のエルシェは寂しそうだったからね。早く安心させてあげたいのさ」
「分かりました。お言葉に甘えさせて貰います」
かなり書類は溜まっている筈だが、リヴィアは気を利かせてくれたようだ。
その言葉に甘え、ルーフは頭を下げると署長室をあとにした。
(一週間だもんな〜)
ルーフの今回の出張期間は最大の一週間であった。何時もなら連絡も取れるのだが、今回は忙しく連絡を取れなかった。
あくまで業務用の連絡だけだ。なのでルーフとしても早くエルシェの声を聞きたかった。
「ただいま〜……て、まだ居ないかな?」
時刻はまだ昼過ぎだ。エルシェもレストランで働いている時間だろう。
なので口には出したが、返事は来ないだろうとそのまま靴を脱いでいると……
「ルーフ……?」
「あれ?エルシェ、もう─」
「ルーフ!」
「うわっ!とと……落ち着いてエルシェ…」
靴を脱ぎ、荷物を置こうとしていると、奥からエルシェが出て来る。
まだ営業時間のはずなのに珍しいと思ったルーフは、今日は早く終わらせたのかと聞こうとする。
だが、その言葉を言い終える前にエルシェがルーフ目掛けて走り、抱きついてくる。
余り、身体能力は高くないエルシェが、急にそんな事をすれば危ないと思い、ルーフは慌ててエルシェに近寄り、抱きとめた。
「寂しかった……」
「……ごめんね、エルシェ」
「今は離れないで……」
「分かったよ」
彼女の言葉を聞くと、ルーフは申し訳無さそうな表情を浮かべる。
今回は連絡を取れなかった。それがエルシェに与えた寂しさを実感したからだ。
ルーフはそのまま近くの壁に背中を預けると静かに腰を下ろす。
立ったまま抱き締め続けるのは、エルシェが辛いと思ったからだ。
「感じる……ルーフの音…」
エルシェは耳をルーフの胸に充てると、そのまま目を瞑る。
ルーフの心臓の音を聴くと、彼が確かに此処に居ると実感出来て嬉しいようだ。
「ちゃんと居るから…」
「うん……もっと撫でて…」
「了解」
エルシェの頭を上から下にゆっくりと撫でると、彼女は幸せそうに微笑んだ。
そして更に催促をしてくる。
ルーフとしても、エルシェの頭を撫でるのは好きなので素直に言うことを聞いた。
「そういえば、店はどうしたの?」
暫くの間、エルシェの頭を撫でていると先程から疑問に思っていた事を質問するルーフ。
「…今日、ルーフが帰って来るって聞いたから……」
「ああ…それでか」
何故、エルシェが家にいたのか納得したルーフ。恐らく署長あたりが教えてあげたのだろう。
「明日もお休み……これで一緒…」
「そうだね。今日と明日はずっと一緒にいよう」
「うん……」
余程寂しかったのだろう。エルシェが2日も連続で休むのは珍しい。
面倒臭がりな彼女だが、何だかんだでリグバースの皆に食事を何時も作ってあげている。
これはエルシェなりの料理人としてのプライドなのだろう。
それを少し曲げてまで、自分と一緒にいようとするエルシェに、嬉しさと愛おしさを感じたルーフ。
「お風呂も一緒……」
「いや!それは不味いよ!?」
「………一緒に居てくれないの…?」
「うっ……」
幾ら夫婦になったとはいえ、エルシェ一緒にお風呂に入るのは気恥ずかしさと少しの罪悪感がある。
エルシェは別にそういう事は気にせず、一緒に入ろうと何時も誘ってくるが上記の理由から断っていた。
しかし、今回はルーフに負い目がある。それに悲しそうな瞳を向けるエルシェを見ると…
「分かりました……」
「…やった……これで一緒…」
(〜♪)
今日、ルーフは試練の時を迎えるようだ。
「そろそろ良い?」
「…………うん……」
「大丈夫…離れないから」
そう言うとルーフはエルシェを横抱きにして持ち上げる。所謂お姫様抱っこだ。
「…流石……」
「鍛えてるからね」
「…このままでも良いかも……」
「ち、長時間は難しいかな…」
お姫様抱っこを気に入ったエルシェは、ずっとこのままでと言った。しかし流石のルーフも長時間彼女を持ち上げているのはキツイ。
なので申し訳無さそうにエルシェに顔を向けるのだが…
「んっ…………冗談…」
「…こりゃ一本取られたね」
隙をつきルーフの唇を奪うエルシェ。
妖艶に微笑むエルシェにドキリとし、ルーフは二重の意味で一本取られたと思うのだった。
「ハァハァ……危なかった…」
「?…どうしたのルーフ…」
「な、何でもないよエルシェ」
(見えそうだった…)
お風呂から上がるとルーフは肩を落とし、荒い息を吐く。入浴の最中は目を瞑り、4感だけで行動した。
そのせいで途中…
ムニュ…
「あっ…」
「……ルーフのエッチ…」
しばしばトラブルはあったが何とか乗り切った。本来ならば疲れを癒やす場のはずなのに、今日はとても疲れた様子のルーフであった。
「もう直ぐ寝ようか」
「うん…」
食事も済ませ、時刻も遅くなった。なので2人は手を繋いだまま寝室に向かった。
「えい…」
「おっとと…」
エルシェは寝室まで着くと、ルーフをベッドに向けて強く押す。
本来ならばそれで倒れはしないが、エルシェのやりたい事を優先し、そのままベッドに倒れるルーフ。
「…落ち着く…」
仰向けになったルーフの上に乗ると体を前に倒し、ルーフの胸に頬ずりをするエルシェ。
…エルシェはルーフの胸がお気に入りのようだ。
「…このまま寝る?」
「…でも、苦しくない?」
「ハハッ…!鍛えてるし、何よりエルシェは軽いからね!」
(嘘……でもそういう所大好き…)
見栄を張るルーフを見抜いたエルシェだが、そういう所も彼の魅力だと、改めて感じるとその言葉に甘えて、暫しルーフの上でゴロゴロする。
そして満足するとルーフの横に転がり、ルーフから見て右側に落ちる。
「良いの?」
「うん…満足した…もっと近くに…」
エルシェの言葉に従い、横になりながらも抱き寄せるルーフ。
「…おやすみルーフ…」
「おやすみエルシェ」
寝る前に一度口付けをすると2人は目を瞑り、夢の中に入るのだった。
PS.次の日もエルシェはずっとくっつき、幸せだけど大変だった事を記します。
補足。食事の時はあーんで食べさせ合ってました。
イチャイチャ物は別の力を使いますね。