気温が下がってきています。そういえば、秋の季節かもしれません。
もうすぐ夜です。夜には私はミセランさんの下で「手術」を受けなければなりません。あまり好きではないのですが、どうやら私はその手術を受ける代わりに此処に居させて貰っているらしいです。なので、最初の方こそ泣き叫びましたが、今では大人しく、されるがままにしています。それまで、少し眠っておくことにします。起きていたらお腹が空いてしまいますし。
「おい!いたぞ!」
ガチャガチャとした雑音の中、男の鋭い一声で私は目覚めました。
少し寒いです。
男の声に続いて、乱雑な足音が近づいてきて
「間違いない、こいつが
別の男の人の声が私を変な名前で読んできます。
「結構、若いし美人すね。18ぐらいですかね?」
「あぁ、そうだな。あいつに渡す前に楽しむのもありだ。」
「だが、まずここから抜け出てからだ」
「そっすね!じゃあ、魔法使いますね」
「じゃ、ちょっと失礼しますね〜。」
すり抜ける魔法なんてものがあるのかな?と考えているうちに急に足音が近づいてきた。
「キニシさん、こいつ喋れるんすよね?」
「あぁ。目が見えない以外は正常だったはずだ」
「わかりました!とりあえず眠らせますね!」
二人の男は私をどうしようとするのだろう?監視の人は?
男の足音が近づいてきます。ベットから少し起き上がっている状態の私は、急いで杖を探しました。
「探しているのはこれかなぁ?やっぱ目が見えないってほんとだったんすね〜」
そんな男の軽い口調を聞いて、私は意識を手放しました。
私は夢を見ているのでしょう。目が見えない私がそういうのはどこかおかしいとは思いますが、だって懐かしい声が漂ってくるのです。
「貴方は私の愛する子、私の心に適うもの」
懐かしい母の声です。母はどこにいったのでしょう。母は突然、私に声を掛けなくなってしまいました。私は母が死んだと知ったのです。
知っているのです。だから、この声はきっと夢の中でしか聞けないのでしょう。血が繋がっているかはわかりません。ですが彼女は私を可愛がってくれたのです。
「フォルトゥナ、貴方は目が見えないわ。でも、そのことに絶望しないでね。世界は、美しいのよ。私の言った言葉、忘れないでね」
母のまるでシルクのような優しく滑らかな声が私の耳にするすると、そよ風のように響きます。
「わかりました。おかあさん」
母が私にキスをしました。私の瞼が、涙もでてこない私の瞼が、母の涙に濡れました。
「おい!起きろ」
私は野太い男の人の声で目覚めました。お世辞にも良い目覚めではありませんでした。暖かさがないということは、まだ夜なのでしょう。私は体を少し震わせました。今は荷台かなにかに乗せられているのでしょうか。
「起きてるかわからねぇね。こいつ」
「目が見えないどころか、瞼が開かないっすかね?」
男が私の瞼を思いっきり上下に引っ張りました。痛いですが、我慢します。本当に何者なんでしょうか。冷たい風が肌を刺します。私は恐らく「外」に居るのでしょう。
「うわっ!凄いっすよ、全く開く気配がありませんよ笑」
「お前、暇なら代わりに馬扱えよ。」
「許してくださいよ〜キニシさ〜ん。だってこんなに企みが上手くいくと思わなかったんですし。しかも、こいつ、めっちゃ上玉じゃないっすか。」
「まぁ、確かに俺がお前と会っていなかったらこんな馬鹿げた計画、考えもしなかったからな。」
「いやぁ〜。運命って奴ですね。キニシさんの計画力も凄いっすけどね。」
「ふん、あまり
「ほんとすか!」
「手荒には扱うなよ。あいつに金と引きかえに渡すことが目的なんだからな。」
男二人がガヤガヤと喋りあっています。
私は目が見えません。荷台に乗せられて揺られている私はまるで1つの物体のように押し黙って、行先もわからないまま、これからどうなるのかわからないまま、ぼぅとすることしかないのでしょうか。
怖い。
外の世界に出れたね。フォルトゥナの初めての外出です。