自分をエルフだと思い込んでいる一般ポンコツ魔族   作:エルフの耳バーガー

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お年寄りに対して特攻タイプ


年寄りと相性良い系魔族

 

 

 

───勇者ヒンメルの死から29年後。北側諸国、要塞都市フォーリヒ。

 

 

魔法都市オイサーストまであと半分の距離となった。

 

 

とりあえず、立ち寄る大きな街はこのフォーリヒで最後になるだろう。

物資の補充をしていきたい所だったのだが、残念ながら路銀が非常に心もとない。 何か依頼を受けて稼いでおきたいが…

 

 

 

 

 

シュタルクが社交界デビューする事になった。

 

…一月前、北側諸国の三大騎士、オルデン家の跡継ぎ息子の長男ヴィルトが戦死したそうだ。

しかし、父親であるオルデン卿は兵士の士気を下げないためにも、ヴィルトにそっくりな容姿をしているシュタルクを利用し、兵力を立て直すまではヴィルトが健在である事をアピールしたいとの事。

 

「報酬は?」

 

「シュトラール金貨10枚」

 

「魔導書もつけて」

 

「書庫から一冊、好きなのを持っていけ」

 

金貨10枚という大金に加えて魔導書を一冊とは…なんと太っ腹な。

 

金貨10枚あったら、贅沢しなければこの人数でも1年間は暮らせる。

社交界が三か月後なので必然的にその期間中は滞在する事になるが、その間はオルデン家の屋敷で宿泊、食事などの面倒も無料で見て貰えるらしい。

 

とても美味しい仕事だ。なにせ実質的に働くのはシュタルクのみなのだから。

兄弟子には悪いが、ここは是非頑張ってもらいたい。 命の危険はないんだし、魔物退治や魔族との戦いに比べたら楽なものだろう。

 

 

 

 

 

シュタルクが作法の勉強をしている間、使用人の人に頼んでお菓子のレシピを教えてもらっていた。

 

お菓子を作る魔法(エールトザーネ)で重要なのはイメージだ。 というか、イメージ以外はあんまり関係ない。

お菓子の名前、味、食感、香り、素材や材料等、イメージするための下地が具体的であればあるほど再現性は高くなる。

 

前世の記憶にあるお菓子は思い出せないものも多く、こうしてこの世界でのお菓子の作り方を習得し、それらを流用する事で前世のお菓子を再現するのに活かすのだ。

 

…ふむふむ。あまり派手な見た目のお菓子はないようだ。

その代わり、砂糖をふんだんに使用した甘いお菓子が多く、どれもカロリーが非常に高い。 恐らくは寒さに耐えられるように高カロリー高脂肪のものが好まれているのだろう。

 

自分も今まで得たレシピと交換する形で、使用人達と交流を深めていった。

 

 

 

 

 

「え? 私も作法の練習をするんですか?」

 

「社交界だぞ。 年頃の男子が一人で行くことなどあり得ると思うのか?」

 

社交界まで一か月少々となった頃、オルデン卿からの要請でフェルンが社交界に出る事になった。

フェルンも毎日魔法の練習かお菓子を食べているかで暇そうだったし、ちょうどいいだろう。

 

我らがパーティで二人目の社交界デビューである。 めでたいな…めでたいのか?

 

 

───一月後、無事にシュタルクとフェルンは社交界デビューを終え、依頼も完了となった。

 

 

路銀もたっぷりと手に入り、物資の補充も完璧だ。

自分も追加の報酬としてオルデン家秘伝のレシピ本を貰う事が出来た。 これでお菓子のレパートリーも増え、お菓子を作る魔法(エールトザーネ)もより高みへと近づいたというものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オルデン家から貸し出された服を着たフリーレンとザインは、踊るシュタルク達二人を眺めながらのんびりと駄弁っていた。

 

「俺達も踊るか?」

 

「ケーキ食べる」

 

「いつも嬢ちゃんのお菓子を食べてるじゃないか…って、その嬢ちゃんはどこ行った?」

 

ザインが不思議に思って会場を見渡すが、どこにもシャオの姿が見当たらない。

 

「あれ」

 

「ん?」

 

フリーレンが目だけでとある席を指し示す。

その席は所謂VIP席と言うべきもので、公的に位の高い者や上級の貴族がいる席だった。

 

「…何か見た事あるな」

 

さすがはVIP席。 そのテーブルには豪華なデザートが山のように置かれており、周りの貴族達から注目を浴びている。

 

…問題は、それらのデザートがザインにとって既視感に溢れたものばかりだった事だ。

 

「今は厨房でデザート作ってるよ」

 

「働いてんのかよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フォーリヒを出発してから数日後の野営。

夕食を終えた各メンバーの前に、こんもりとお菓子が盛られた皿が差し出された。

 

「なんだよこれ」

 

「見た事のないお菓子です…いえ、ケーキでしょうか?」

 

サイズは手のひらに余裕で収まる程度。 長方形の箱のような形をしているが、恐らくはチョコレートでコーティングしてあるのだろう。

 

「これはねー、執事の人に貰ったオルデン家の秘伝レシピを参考に作った、私オリジナルのお菓子だよ!」

 

「ふぅん…あ、おいしい。 これなんて名前なの?」

 

「名前? えぇと、名前は…名前…と、鳥の……お乳?」

 

「なんで疑問形なの」

 

「えっちで…えっちじゃない…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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───勇者ヒンメルの死から29年後。北側諸国、クラー地方。

 

 

フリーレンの長寿友達…フォル爺がいるという村にやって来た。

 

 

フォル爺はアイゼンと同じドワーフだが、ドワーフの寿命である300年を超えて400年近く生きているらしい。 人間で言うなら100歳をとっくに超えてるくらいだろうか。

 

「どう? 歴戦の老戦士って感じで格好良いでしょ」

 

「老戦士ってレベルか…?」

 

フォル爺は一目見て老人とわかるくらいには皺くちゃだった。 記憶にあるアイゼンと比べれば年寄りなのは一目瞭然。

古ぼけた兜に、年季の入ってそうなマント。 傍には体躯に合うサイズの半端な長さの剣が鞘に納まって立てかけてある。 目は開いているのか閉じているのかわからず、髭はサンタクロースのように真っ白だ。

 

フリーレンを見ても反応が鈍いし、これは完全にボケて……否。

 

「まだボケた振り続けているの?」

 

「え?」

 

フリーレンの言葉と共に、油断していたシュタルクを容易く転ばせてしまった。

意識していなかったせいか、受け身も取れなかったシュタルクは立てないようだ。

 

「熟達した戦士でも防御を意識出来なければ簡単に致命傷を負う。 儂が剣を抜いていたら脚を失っていたぞ」

 

そう語るフォル爺はどう見てもボケている風には見えない。

ボケた振りをして相手の油断を誘い、一瞬の隙に致命的な一撃を与える…魔力を隠匿して魔族を油断させるフリーレンと似た戦い方をするようだ。

 

さすがに身体能力ではアイゼンやシュタルクには及ばないだろうが、戦士として戦って来た年月で言えば自分の知る誰よりも上かもしれない。

 

 

フリーレン達が仕事をしている間、自分とシュタルクは稽古をつけて貰うことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僅か一週間、されど一週間。

達人との稽古は、自分一人の稽古では決して得る事の出来ない経験を積ませてくれる。

 

思えば、対人で魔法使いではなく戦士相手となると自分は意外に経験が浅い。

爺様、アイゼン、シュタルクは腕力で攻めるタイプだ。 もちろん、故郷の村には自分と同じようにスピードで攻めるタイプはいたし、技巧派も少なくなかった。

 

だがフォル爺レベルの者はいなかったのだ。

魔族の中には将軍と呼ばれる戦士タイプの者がいると聞いたし、ここでの経験は今後の対魔族、対魔物との戦いに活かそうと思う。

 

 

 

 

 

───一週間の滞在が終わり、フォル爺や村の人に別れを告げて次の目的地へ向かう。

 

 

短い間だったが、フォル爺との交流は爺様を思い出して懐かしい気分になった。

 

そういえば、故郷の村の皆は元気だろうか…。

 

自分は一度は魂の眠る地(オレオール)まで一行について行く予定だが、その後は一旦故郷に帰ろうか。

まぁ、シュタルクもアイゼンに土産話をしに戻るだろうし、もしかしたら帰りも同じ面子になるかもしれないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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シュタルクが休んでいると、稽古の様子が気になったらしいフリーレンがやって来た。

 

「あ、サボってる」

 

「サボってねぇよ。 俺は休憩中」

 

二人の視線の先では、自称エルフの少女とフォル爺が軽く剣を交えている。

 

少女は魔法を使わず、素の身体能力と剣技だけで戦っている。

今回は杖を持たず、剣を持たない空いた手を活用して、地を這うような低姿勢でヒットアンドアウェイを繰り返している。

 

魔力による強化なしでも、並みの戦士では目で追えない程のスピードだが、フォル爺は攻撃の全てを紙一重で回避し続けていた。

 

「我流か。 戦士というよりは獣のような戦い方だな。 悪くはないが───」

 

「とったぁっ!………あれ?」

 

「───まだまだ若いな」

 

フォル爺の剣を弾き飛ばした…筈だったが、少女の手にも剣がない。

というか、少女の剣をいつの間にかフォル爺が持っており、そのまま切っ先を喉元に突きつけていた。

 

「(すげぇな…師匠より化物なんじゃねぇかこの爺さん)」

 

シュタルクには辛うじて、フォル爺がすれ違う刹那に少女の手から剣をかすめ取った瞬間が見えていた。

 

「まけちゃった……おぶ」

 

しょんぼりとしている少女の頭を、フォル爺はわしゃわしゃと撫でた。

こうして見ると完全にお爺ちゃんと孫だ。 育ての親ともこんな感じだったのだろうか。

 

「人相手には読まれやすいが、悪いものではない。 対人の剣技に頼り過ぎると魔族や魔物に後れをとる」

 

「なんでだよ?」

 

「魔族は必ずしも手足が4本ってわけじゃないからね。 対人相手の技は、そういうの想定してないでしょ」

 

「なるほど…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「人生の最期にお前に会えて良かった」

 

「それ80年前にも同じこと言っていたよ………ねぇフォル爺」

 

村を出発する前日の夜。

フォル爺との語り合いを終えたフリーレンは、村に来てから気になっていたことを尋ねた。

 

「シャオの事はどう思った?」

 

「…あぁ、あの若いエルフの子か」

 

アイゼンが戦士の勘で違和感を感じ取ったように、フォル爺も何らかのアクションを起こすかと思ったがそうはならなかった。

 

甘え上手と言うべきか、あるいはシャオが年寄りと相性が良いと言うべきか。

この村に来てから、稽古、釣り、山菜集め、食事時と、シャオは四六時中フォル爺に引っ付いていた。

 

「お前からしたら赤ちゃんのようなものだろう。 可愛がってやれ」

 

「私がおばあちゃんって意味?…いや、そうじゃなくてさ」

 

シャオの事情についてはフォル爺には話していない。

フリーレンはフォル爺に事情を話すべきか迷ったが、それを知ってか知らずかフォル爺は穏やかに語った。

 

「見守ってやれ。 お前なら出来るだろう」

 

「フォル爺…」

 

「あの子は良い子だ。 菓子もうまかった」

 

「…そっか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちょっぴりホームシックになった主人公。


もしもフォル爺が死んじゃったらあの村はどうなるんでしょうね。
さすがに頼りっきりって事はないでしょうけど。
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