自分をエルフだと思い込んでいる一般ポンコツ魔族   作:エルフの耳バーガー

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友(親戚のおじさんみたいな人)


友との別れと新たな試練

 

 

 

───勇者ヒンメルの死から29年後。北側諸国、ローア街道。

 

 

ザインの提案で近くの集落に寄る事になった。

 

 

ザインはここまでの道中で度々独自に情報収集をしていたようで、順調に親友の足取りを追えているようだ。

そう、彼の目的は我々と同じ魂の眠る地に行く事ではなく、10年前に旅に出た親友と再会する事だ。 決して忘れていたわけではない。

 

ザインが見せてくれたロケットペンダントには、ザインとよく似た少年ともう一人、活発そうな少年が写っている。

 

彼の名前は戦士ゴリラと言うらしい。

 

ゴリラと言えば『森の賢者』の異名で知られている(?)。

人間と同等以上の知力と知性、そして腕力を筆頭とした圧倒的に高い身体能力を持つ。

性格は穏やかで思慮深く、自然を守るために森に木を植えたり、無闇に自然を傷つける者と戦うのだ。

 

すなわち、人間に見えるが彼の親友はゴリラで「名前だけな。種族は人間だから。あとゴリラの説明多分間違ってるぞ」…ゴリラではなかったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集落の人に話を聞いた所、高台に住んでいる頑固なお婆さんがゴリラと仲が良かったと聞いたので訪ねてみた。

 

「儂は頑固者でのう。 そう簡単には教えられん」

 

「どうすればいい?」

 

「儂の依頼をいくつか熟してもらおう」

 

そういう流れで、ゴリラの情報を教えて貰う代わりに、お婆さんの依頼をいくつか熟す事になった。

 

手紙の配達、果物の収穫、珍しい薬草の捜索、ダンジョン探索、魔物の卵運搬、魔物退治等々…あっちこっちへ行ったり来たり。

 

一つの依頼を熟すと、なぜか芋づる式に仕事が増えて行って色んな所へ行くはめになる。

 

しかし、自分はこういう仕事は、ザ・冒険者という感じがして結構好きだ。

一人旅をしていた頃も、路銀を貯めるため、そして経験を積むためにこういった仕事は積極的にやったものだ。

 

…やり過ぎて夢中になった結果、中央諸国に来るまで数十年かかったわけだが。

まぁ、遅れたおかげで皆に会えたわけだし、これは結果オーライという事でいいだろう。

 

 

頑固お婆さんの最後の依頼として、峡谷にある英雄の像を磨く事になった。

 

名前も忘れ去られる程の大昔の英雄で、遥か昔に世界を救ったという言い伝えがあるらしい。

勇者ヒンメル達と同等の偉業を成したのか、それとも、世界を救ったという事は魔王以上の脅威から世界全体を救ったのか…とても興味深い。

 

頑固お婆さんの案内で辿り着いた先には、古めかしい二人分の石像が建てられていた。

片方は顎髭のある僧侶の男性でザインによく似ている。 もう片方は戦士ゴリラに似ていなくもないが、耳が尖っているような…?

 

「……クラフトだ」

 

フリーレンの言葉でハッとした。

確かに、シュヴェア山脈の麓で出会ったエルフの武道僧(モンク)、クラフトとそっくりだった。

 

 

───石像の掃除を終え、頑固お婆さんから情報を得る事が出来た。

 

 

戦士ゴリラは北側諸国中部の交易都市、テューアへと向かったらしい。

 

 

魔法都市オイサーストへの道のりとは正反対。

ザインが戦士ゴリラを追うのなら…我々はここでお別れとなるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誠実そうな村長は諭すように語った。

 

「この地方の寒波は一月は続く、遠出はせん方がいいぞ」

 

集落で用意して貰った小屋の外は大雪だった。

大雪と言うか猛吹雪だ。 この中を歩いて旅に出るのは自殺行為だろう。

 

「どうするザイン、出発する?」

 

「それ聞く必要あるの?」

 

 

…と、言うわけで、ザインとの別れまで一か月の猶予が出来た。

 

幸いにも今回は小さな山小屋一軒だけでなく、集落の中なので生活に必要なものは一通り揃えることが出来る。

 

路銀も十分すぎる程にあるし、ザインと共に過ごす最後の時間をゆっくりと味わうとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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いつものように酒場に入り浸っていると、毎日会いすぎて友人のように気やすい関係となった村長が話しかけて来た。

 

「そろそろ寒波の時期も終わる。 冒険者さんもようやく旅立てるな」

 

「ああ…本当にな」

 

ザインは疲れたような、寂しそうな、何とも複雑そうな顔で溜息を吐く。

思い出すのは、この集落で過ごすようになってからの慌ただしい毎日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪合戦しよう!」

 

「死ぬ気か?」

 

ザインは思った。

この猛吹雪の中で雪合戦だと…? どう考えても自殺行為だ。 確かに魔族として頑健な体を持っている少女は問題ないだろうが、ザインは普通の人間のオッサンである。

 

いや、僧侶なので回復魔法も使えるし、ザイン程のレベルなら風邪をひくような事もないだろうが。

 

「(付き合ってられねぇな…)」

 

───なんて考えていたが、少女の必死の泣き落としに負けて雪合戦をする事になってしまった。

 

極寒の中、視界はほとんど見えず、音も碌に聞こえない。 なのに、少女が投げてくる雪の弾丸は正確にザインの体を打ちのめした。

 

とても痛かったが…ゴリラと共に過ごした子供の頃を思い出して、少しだけ楽しかったのは秘密だ。

 

 

 

 

 

「かまくらを作ろう!」

 

「死ぬ気か?」

 

ザインは思った。

この猛吹雪の中でかまくら作りだと…? どう考えても自殺行為だ。 確かに魔族として無駄に頑丈な少女は問題ないだろうが、ザインは草臥れた人間のおじさんである。

 

いや、実際に雪合戦した程度では体調を崩す事はなかったのだが。

 

「(もうあんなのはこりごりだぜ)」

 

───なんて考えていたが、ギャン泣きする少女と周囲からの冷たい視線には耐えられなかった。

 

極寒の中、指先の感覚を失い、積もる雪で身動きが取れなくなりつつも、ザインは少女と共にパーティ全員が入れるほどの大きなかまくらを作る事に成功した。

 

かまくらの中、皆で食べた鍋はとても美味しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も少女は何かしらイベントを提案し、気付けば集落全体でお祭り騒ぎのようになっていた。

当然、体調を崩す者も多かったので、僧侶であるザインは毎日休む暇がないくらい忙しかった。が…

 

「疲れたよ、本当に疲れた…でも、楽しかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一月後。

無事に寒波を乗り越え、一行は再び旅を再開するべく集落の出口へと集まっていた。

 

「やっぱり俺はゴリラを追いかけるよ。 もう後悔するつもりはないんだ」

 

「わかっているよ」

 

ザインが戦士ゴリラを追いかけると決めたため、フリーレン一行と短い別れの言葉を交わしていた。

 

「じゃあ、元気で」

 

「…ザイン!」

 

「ん?」

 

パーティから一人の少女…シャオが飛び出して来てザインに何かを差し出した。

それなりのサイズの袋だが、持ってみると意外と重量感がある。

 

「これは…?」

 

「クッキーとか、チョコとか、飴とか…日持ちしそうなやつ詰め込んだから!」

 

袋の口を開いてみると、確かに各種お菓子の入った小袋がぎっしりと無数に詰め込んである。

これだけあれば、嗜好品としてだけでなく非常食としても使えるだろう。 これからの一人旅にはありがたいプレゼントだった。

 

「ありがとよ」

 

「それじゃ…ほら、いくよ」

 

「………またねーーーー!」

 

少しずつ遠く離れていくフリーレン一行。

少女はフリーレンに首根っこを引きずられながらも、大きな声で何度も叫んでいた。

 

「まーーたーーねーー!」

 

「…ったく」

 

ザインは大きく一度手を振ると、今度こそ振り返らずに自分の旅へ戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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───勇者ヒンメルの死から29年後。北側諸国、オッフェン群峰。

 

 

ザインと別れてしばらくした頃、フェルンが体調を崩してしまった。

 

 

と言っても、少々熱っぽいが旅に支障がある程ではない。

意識ははっきりしているし、フリーレンの見立てでは少し休めば回復するだろうとの事。

 

「でも今はザインがいないし、少しでも体調が悪いなら治すのを優先しよう。 オイサーストには万全の状態で行きたいしね」

 

それはその通りだ。 悪化する前に治してしまうのが一番だろう。

 

フリーレンは女神様の魔法が少しだけ使えるらしく、魔法で病気の判別をした所ただの風邪である事が判明。 ザインが残した手記を元に薬草を採取する事になった。

 

ちょうど良い事に、近くに人が住む家が一軒だけあったので、そこを一時的な拠点とさせてもらった。

 

薬草の採取には全員で向かう。どうやらフリーレンが皆に見せたいものがあるらしい。

念のためフェルンは自分が背負って行く。 他の二人だと風邪が移る可能性があるし、その点、自分は病気にも強いので適任である。

 

背中がフェルンの体温でぬくぬくしている。

 

この辺は魔物や凶暴な獣もいないようで、道中はのんびり観光気分だった。

薬の材料はフリーレンとシュタルクが順調に採取していき、最後の材料であるキノコを採るべく氷柱桜(つららざくら)という木が生えている場所へ向かった。

 

 

───氷柱桜(つららざくら)は美しかった。 フリーレンが皆に見せたいと思った気持ちがよくわかる。

 

 

フェルンとシュタルクが並んで眺めていたので、自分はフリーレンを連れてそっと離れる。

 

「綺麗ですね」

 

「あぁ…綺麗だ」

 

並ぶ二人はどこからどう見ても恋人同士にしか見えない。

雰囲気的にはこのままどっちかが告白して付き合いそうな気がするが、この二人だとそうはならないのだろうな。

 

『もう付き合っちゃえよ!!』

 

今、ザインの声が聞こえた気がする。

そう思って隣を見ると、ちょうどフリーレンもこちらを振り向いていた。

 

「今ザインの声しなかった?」

 

…我々のザインに対するイメージは共通しているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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フリーレンが作った薬でフェルンの体調が回復し、念のため家主に頼んで一泊だけさせてもらった後の事。

 

再びオイサーストを目指して出発した一行だが、シャオは病み上がりのフェルンが心配だったので強引に背負わせてもらっていた。

 

「あの、私はもう大丈夫ですから」

 

「いいっていいって! こういう時は年上に任せなさい!」

 

「としうえ…?(あ、そういえば年上でした)」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!」

 

───数時間ほどフェルンを背負ったまま進んだ時、シャオは何かを思いついたように声を上げた。

 

「どうした?魔物か?」

 

「そうじゃないよ…いやぁ、私もさすがに疲れちゃってさ~。 誰かに背負ってもらおうかな~…なんて」

 

「誰かにって…は? おい、ちょ…」

 

シャオはフェルンを背負ったまま飛行魔法で僅かに浮かびあがり、そのままシュタルクの背中にしがみついた。

 

「これで楽ちんだね」

 

「そうですね」

 

突然二人分の体重を背負う事になったシュタルクは困惑している。

 

「ちょ、フリーレン助けて…」

 

「…」

 

シュタルクの助けを求める声を聞いたフリーレンは、同じく飛行魔法を使ってフェルンの背中にしがみついた。

 

上からフリーレン、フェルン、シャオ、そして三人をシュタルクが背負う形となっている。

傍から見たらとても奇妙な光景だったが、それをツッコんでくれる第三者はこの場にいなかった。

 

「シュタルク、これも修行だよ」

 

「バランス感覚を鍛える修行でございますね」

 

「魔物が来てもこのまま戦ってね」

 

「ひでぇよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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───勇者ヒンメルの死から29年後。北側諸国、キュール地方。

 

 

「あれが北側諸国最大の魔法都市オイサーストか」

 

シュタルクが感心したように呟いた。

 

フリーレン一行はオッフェン群峰を無事に通過し、とうとう魔法都市オイサーストまでたどり着いたのだ。

 

魂の眠る地(オレオール)まではまだまだ遠いが、それでも中央諸国からはかなりの距離を旅して来ている。

ここまでの長い旅路はシュタルクもフェルンも初めてだったが、フェルンの方はあまり大きなリアクションはなかった。

 

フェルンにとっては今まで通過して来た街や村と同じ、魂の眠る地(オレオール)に行くまでの通過点と言う扱いなのかもしれない。同じ理由でフリーレンも反応は薄かった

 

「(あ…あの雲フリーレンのおっ〇いに似てる。 凄くまな板だよ)」

 

…オイサーストがどう凄いのかわからないシャオは、いつもの頭空っぽな顔で景色を眺めていた。

 

一級魔法使いの試験? 自分達なら楽勝楽勝。

なにせ偉大なる魔法使いのフリーレンがいるし、フリーレンと並ぶ天才の自分、そして優秀な姉弟子がいるのだ。

 

この面子で苦戦するような試験だったら他の誰も受かるまい。

 

勝ったなガハハ。

 

 

───少女は知らない。一級魔法使いの試験とは、この世の地獄を体験する事と同義なのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呪われたエルフは立ち向かう───

 

「これから皆さんには殺し合ってもらいます(意訳)」

 

第一次試験、試験官ゲナウによる無慈悲な宣告。

閉じられた結界の中、才気ある魔法使い達に容赦なく危険が襲い掛かる!

 

「この試験には…隠された合格条件が存在する!」

 

「「な、なんだってー!?」」

 

恐ろしい試験に隠された、合格に至るもう一つの条件とは…!

 

 

「我は汝、汝は我…自分自身を乗り越えるのだ(意訳)」

 

第二次試験、試験官ゼンゼからの挑戦状。

魔が支配する未踏破の迷宮…そして待ち受ける、もう一人の自分自身!

 

「この試験には…必勝法が存在する!」

 

「「な、なんだってー!?」」

 

宝物庫を守る最後の番人、攻略のカギは…ミミック!?

 

 

そして待ち受ける最後の敵!

 

 

「ここまで私をコケにしたのはお前が初めてだ」

 

 

───抗え。 最後まで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




小屋にいるより外で吹雪の中にいた時間の方が長い主人公。


フェルンは常日頃ビタミン栄養満点のお菓子を食べているので原作程は体調悪化しませんでした。


次回、一級魔法使い試験。
主人公の天才っぷりが遺憾なく発揮される…そんな気がしたが気のせいかもしれない。
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