自分をエルフだと思い込んでいる一般ポンコツ魔族   作:エルフの耳バーガー

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類は友を呼ぶ。
三人寄れば文殊の知恵。

ただし全員ポンコツとする。


一次試験①:勇者ヒンメルの導き

 

 

 

───勇者ヒンメルの死から29年後。北側諸国、魔法都市オイサースト。

 

 

オイサーストにある大陸魔法協会の北部支部で一級魔法使い試験の受付を行った。

 

 

一級魔法使い試験は五級以上の資格がないと受けられない。

聖杖の証、という古い資格しか持っていないフリーレンは一度断られてしまったが、偶々近くにいた地位の高そうな老魔法使いが聖杖の証の価値を知っていたらしく、無事に試験を受ける事が可能となった。

 

試験は二か月後。

路銀はオルデン卿の依頼で稼いだ分がまだまだ残っているし、試験まではフリーレンの指導で魔法の修行に専念する。

 

一級魔法使い試験の難易度は高く、合格者が出ない年が多いくせに死傷者は当たり前のように出るという。

 

経験、知識、技術、魔力量…あらゆる点で大概の魔法使いを凌駕していると自負しているが、我らが師匠であるフリーレンからは油断大敵という言葉を頂戴している。

 

気を引き締めて行こう。

 

 

…ところで、あの老魔法使いは自分の何が気になったのだろうか。

去り際に自分を二度見したあげく杖を出そうとしていたが、最終的にはふらふらと受付を出て行ってしまった。

 

もしや自分の事を…?

熟練の老魔法使いすら魅了してしまうとは、我ながら罪深い美少女である。 照れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───二か月後。

一級魔法使い試験の試験会場に自分達三人の姿はあった。

 

試験会場を見渡すと、多種多様な年齢の魔法使い達がいるのがわかった。

チンピラみたいな奴*1、髭もじゃなお爺ちゃん*2、小動物を殺してそうな女*3…本当に色々な人が大陸各地から集まっているみたいだ。

 

「これより一級魔法使い選抜試験を行う」

 

試験官の一級魔法使い───名前は確かゲナウだったか───により試験の説明が行われる。

 

「パーティー戦だ。 総勢57名。 三人一組のパーティーに分かれ試験を受けてもらう」

 

自分は咄嗟にフリーレンとフェルンを見た。

三人一組なら自分達三人でそのまま組んでしまえばいい。

 

 

この二か月間はフリーレンにみっちりと指導され、ついでに各級の魔法使いについての情報収集もした。

 

自分がこれからなる(予定の)一級魔法使いがどういった存在なのか…それがよくわかった。

実質的に人類最高峰の魔法使いの称号であり、あらゆる魔法使いの規範となるべき存在。 それが一級魔法使いなのだ。

 

試験も恐ろしく難易度の高いものになるだろう。

そう思って緊張していたのだが…どうやら杞憂だったらしい。

 

 

自分達三人ならどんな試験でも合格間違いなし。

例え戦闘する事になっても、近接は自分、万能なフリーレン、遠距離が得意なフェルンと全ての距離に対応出来る。

 

 

───この戦い、我々の勝利だ!

 

 

「では組み分けを行う」

 

えっ………腕輪? あ、腕輪で組み分けするの? 試験官側で勝手に決める系?

 

 

そっかぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───北側諸国、グローブ盆地。第一次試験区域。

 

第一次試験が始まり、各々のパーティーが思い思いの行動をする中。

自分達第七パーティーは、試験開始地点で今後の方針についての相談をしていた。

 

 

…さて、とりあえず試験の内容についておさらいしよう。

 

試験区域には結界が張られており、外に出たら失格となる。

そして、この区域には隕鉄鳥(シュティレ)という小鳥が生息している。 各パーティーには隕鉄鳥(シュティレ)捕獲用の籠が一つ配布されている状況だ。

 

合格条件は二つ。

一つ目は、明日の日没までに隕鉄鳥(シュティレ)の入った籠を所持している事、

二つ目は、上記の時点でパーティーメンバーが全員揃っている…つまり生存している事。

 

 

…この説明を聞いて自分はすぐに気付いた。

 

この試験は、パーティー同士がぶつかり合う事…殺し合いすら前提となっている。

他のパーティーから鳥を奪ってもOKだし、パーティーメンバーを殺して強制的に失格にさせてもいい。

 

隕鉄鳥(シュティレ)がパーティ分いるか不明だし、そもそも捕まえられるかわからない。

だったら他のパーティーから奪った方が確実で効率的。 おまけに他の受験者を殺せば競争相手が減って一石二鳥…そう考える受験者は少なくないだろう。

 

まさにバトルロワイヤル。

こんな試験だったら毎回死傷者が出るのも納得だ。

 

 

しかし…なんだろう、この違和感は。

 

 

自分が考え込んでいると、パーティーメンバーの二人が急かすように話しかけて来た。

 

「なぁ、早いとこ俺らも行こうぜ。 他の連中に隕鉄鳥(シュティレ)を取られちまうよ」

 

「何言ってんのよ。 隕鉄鳥(シュティレ)の捕まえ方なんてわからないでしょ? しばらく待って、他のパーティーから奪うのが確実よ」

 

「…あんまり気は乗らねぇな。 人間同士で殺し合いなんてよぉ…」

 

「それは…仕方ないじゃない。 これも特権のためよ」

 

二人は既に他のパーティーと争う前提で考えているようだ。

自分も最初はそう考えたが…やはり違和感が消えない。もう少しでわかりそうなのだが…

 

「しっかし、あのゲナウって奴は頭おかしいぜ。 イかれてる」

 

「ちょっと…!」

 

「だってよ! 一級魔法使いって言ったら魔族との最前線で戦うような、人類の守護者って感じの立場だろ? それがなんで人間同士で殺し合いなんかさせるんだよ」

 

「…これくらいで死ぬようなら一級にはなれないってことなのかしら」

 

馬鹿な、そんなはずがない。

量より質を優先するにしても効率が悪すぎる…試験で死んだ魔法使いの中にいつか一級に至れるような才能の持ち主がいるかもしれないのに。

 

それをこんな試験のために、しかも人間同士の殺し合いで消費させるなんて…一級魔法使いはフリーレンのような偉大な魔法使いではなかったのか……?

 

フリーレンが試験官だったらこんな試験は…

 

 

フリーレン…だったら………

 

 

……………!?

 

 

 

 

 

……………そうか、そういう…事だったのか。

 

 

どうやら自分はこの試験に隠された秘密に気付いてしまったらしい。

だが、この秘密を他の受験者達に教えるのは難しいだろう。 なにせ今日初めて会ったばかりの競争相手の言葉だ、信じる方がおかしい。

 

まずは自分のパーティーメンバーに話し、今後の方針について改めて相談しなければ。

 

 

 

 

 

訝し気な二人にこの試験の真実について伝えた。

 

最初は二人とも「何をバカな」という風だったが、話が進む内にだんだんと自分の言う事が真実だと理解したのか、後半は驚きと感嘆の声が絶えなかった。

 

「そういうことかよ…! 俺達は最初から試験官の手の平の上だったって事か!」

 

「さすがは一級…裏の裏まで読むのも試験の内ってわけね」

 

 

 

 

 

二人が納得してからは話が早かった。

今後の方針はあっという間に決まり、我々第七パーティーは合格へ向けて進撃を開始したのである。

 

まずは他の好戦的なパーティーと遭遇するのを防ぐため、自分は狩人としての気配察知に専念する。

 

…取り急ぎ、フリーレンとフェルンを探そう。

フリーレンはもちろん、フェルンも試験の真実に気付いていそうだが、念のため情報共有をしておいた方が良い。

 

「本当に協力してくれるのか?」

 

「大丈夫よ。 なにせ、勇者ヒンメルと共に魔王を倒した大魔法使いフリーレンなんだから、きっと話を聞いてくれるわ」

 

「…あんたはフリーレンと旅をしてるんだよな? 実際はどうなんだ?」

 

大丈夫だ、問題ない。 フリーレンなら必ずや力を貸してくれる。

フリーレンの(同族限定なら)一番弟子である自分が保証する。そう言って力強く頷いた。

 

「フリーレンの一番弟子か…まぁ、あんた程の実力者がそう言うなら」

 

 

さあ行こう! 今この瞬間も助けを待つ者がいる!

 

彼らを助け、皆で力を合わせて次の試験に進むのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男は走る。 ただ、必死に走る。

 

走って、走って、走って、走る………逃げられないとわかっていても。

 

 

甘く見ていたわけではなかった。

事前の情報収集も怠らず、魔法使いとして今まで腕を磨いてきた。

 

一次試験のパーティーメンバーは全員顔見知りではなかったが、各々一級魔法使いになれば得られる特権を欲しており、ギラギラとした野望を持っているのは共通だった。

 

二次試験はともかく、一次試験はうまくやっていけるだろう。

男はそう思っていたし、実際に途中までは問題なかったのだ。

 

 

切っ掛けは、木の上にひっかかった死体だった。

他の受験者の死体だろう。 可哀そうに思ったメンバーの一人が、死体を降ろそうと飛行魔法で近づいたのが悪かった。

 

…死体には、魔物による探知魔法がかけられていた。

 

 

───屍誘鳥(ガイゼル)。 試験区域上空を飛び回っている鳥型の魔物だ。

 

 

そいつらの奇襲によって一人が負傷して意識を失った。

どうにか逃げ出したが、魔物はしつこく追いかけて来る。 当然ながら他のパーティーは素知らぬふりで助けてなんかくれない。

 

もう試験続行は不可能と判断したが、事前の説明では試験中に安全に離脱出来るような対策はされていない。

 

どうにかして試験区域の外に出て、試験官達の所へ逃げるしかない。 しかし、運悪く襲われた場所は試験区域の中心近くだった。 徒歩では外に出る前に魔物に喰われてしまう。

 

焦っていたせいで迎撃に魔法を使いすぎた。 すでに男には一般攻撃魔法(ゾルトラーク)一発分くらいの魔力しか残ってない。 残った一人はとっくに魔力切れで、気を失った奴を背負って必死に走っている。

 

 

───呆気なく終わりが訪れた。

 

「ぐぁっ」

 

「っおい!」

 

体力の限界。 足がもつれて転んでしまい、二人が地面に投げ出されてしまった。

 

咄嗟に杖を構えるが、魔物の数は一匹ではない…撃退するには魔力が足りなかった。

 

選択の時だった。

二人を見捨てて一人逃げるか、それともどうにか魔物を追い払って三人で逃げるか。

 

魔物が二人に迫る中、極度の緊張と集中で視界がゆっくりと流れていき───

 

 

「なっ!?」

 

 

───それは一瞬だった。

迫る無数の魔物達が、閃光が走ると同時に全身を切り裂かれたのだ。

 

その僅か数秒後、悶える魔物達をどこからか放たれた一般攻撃魔法(ゾルトラーク)の光が飲み込んでいく。

 

魔物達は普段己がやっている奇襲を人間にやり返され、抵抗も出来ずに死んでいった。

 

 

「なにが…起こったんだ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───異常事態が起こっていた。

 

試験官達にとっても、受験者達にとっても、それは想定外の事態だったのだ。

 

 

この一次試験の本題は隕鉄鳥(シュティレ)を如何にして捕まえるか…ではない。

隕鉄鳥(シュティレ)を餌に、受験者達の運と対人戦における実力を試す試験なのだ。

 

受験者同士の争いや魔物の襲撃で死傷者が出る事は前提の試験であり、ここで受験者達を一気に篩にかけて最低限の実力もない弱者を落とす。

 

 

…はずなのだが、試験開始二日目に突入してもなお死傷者が少ない。 少なすぎる。

 

 

原因はとあるパーティーにあった。

 

そのパーティー…第七パーティーは何を考えているのか、隕鉄鳥(シュティレ)探しもせず、他のパーティーとも戦わない。

ならば試験を放棄するのか…というわけでもなく、魔物とはどのパーティーよりも積極的に戦っているのだ。

 

この試験区域は強力な結界で出入りが封鎖されており、当然ながら魔物達も出入りは出来ない。

第七パーティーが積極的に魔物を減らしたため、結果として他のパーティーは魔物の襲撃を受ける機会が減っていた。

 

さらに、魔物に襲われて窮地に陥っているパーティーや、重傷で動けない者を抱えたパーティーを救助していく。

 

いつの間にか救護所兼シェルターのような場所が作られ、動けないメンバーを抱えたパーティーや、実力不足等で試験を諦めた者達はリタイヤ組としてそこで静かに試験の終わりを待っていた。

 

 

 

 

 

…一体なぜ他の受験者達を助けているのか?

 

そう聞かれた少女は、渾身のドヤ顔と共にこう答えた。

 

 

「なぜって…? 勇者ヒンメルならそうしたからだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
ヴィアベル

*2
デンケン

*3
ユーベル




勇者ヒンメルなら魔物に襲われる受験者達を見捨てたりはしないはず。


第七パーティーのメンバーは4級の男女二人と主人公ちゃんです。
二人は主人公ほどポンコツではありませんが、エルフ&フリーレンの弟子&相応の実力&自信満々な態度によって信じてしまいました。


次回、主人公が導き出した、隠されしもう一つの合格条件とは…!


ま、ないんですけどね。
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