自分をエルフだと思い込んでいる一般ポンコツ魔族   作:エルフの耳バーガー

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多分、前世はヒーローが活躍する系の漫画が好きだったんじゃないかな。


一次試験②:勇者ヒンメルの遺志

 

 

 

───北側諸国、グローブ盆地。第一次試験区域。

 

 

試験は二日目に突入し、受験者同士の争いが本格的になってきている。

 

 

まぁ、自分達第七パーティーのやる事は変わらない。

他のパーティーを救助し、この試験における死傷者を可能な限り抑えるのだ。

 

 

…なぜ、我々第七パーティーが隕鉄鳥(シュティレ)そっちのけで他パーティーの救助をしているのか。

それには、自分が導き出したとある真実が深く関係している。

 

 

 

この試験には…隠された合格条件が存在するのだ!

 

 

 

隠された合格条件とはいったい何なのか?

 

この試験が一級魔法使い試験である、という点と、一級魔法使いがどういった存在なのか…この二点を把握していれば(おの)ずと真実は見えてくる。

 

一級魔法使いとは、人類最高峰の魔法使いである事を証明する称号のようなもの。

 

人類最高峰の魔法使い。

それすなわちフリーレンである事に他ならない。

 

 

恐らく一級魔法使いとはフリーレンを基準にして作ったものなのだろう。

そしてフリーレンは『勇者ヒンメルならそうした』という理由で積極的に人助けを行う。 ちょっとしたおつかいレベルのものから、果ては危険な魔物や魔族の討伐まで。

 

…後で聞いた事だが、フリーレンは誰に頼まれるでもなく断頭台のアウラを倒し、グラナト伯爵が引き留めなければそのまま領を去っていたそうだ。 つまりは無報酬で大魔族と戦ったわけである。

 

なにが葬送だよ。お前は聖女か?

 

 

…話を戻そう。

この試験は一級魔法使い試験…つまりはフリーレンに近づくのが目標だ。

そして、フリーレンはいつも勇者ヒンメルが残した意思、行動をお手本としている。

 

 

そう!この試験の真の目的は、隕鉄鳥(シュティレ)を捕まえる事ではない!

人間同士で争うように誘導されたこの極限の環境下で、如何にして正義と友愛を保っていられるか…如何にして勇者ヒンメルのように動けるか、それを評価する試験なのだ!

 

 

恐らくはポイント制だろう。

勇者ヒンメルを目安としたポイント…略して勇者ポイントと呼ぶ。

 

他の受験者への襲撃、殺害は勇者ヒンメルに背く行為として減点。

他の受験者の救助、魔物の討伐などは勇者らしい行為として加点…と言ったところか。

 

最初に提示された条件をクリアしても合格は出来るかもしれない。

しかし、あまりに減点行為が多すぎれば隕鉄鳥(シュティレ)を捕えても不合格になる恐れがある。

 

逆に、隕鉄鳥(シュティレ)を捕まえなくても、勇者ポイントが合格ラインを越えていれば合格の可能性が高い。

 

 

目先の欲に囚われ、安易に他の受験者を害そうとする者程落ちていく…恐ろしい試験だ。

試験官のゲナウ殿は真に正義の心を持った魔法使いを欲しているのだろう。 厳しい試験も愛ゆえに…か。 あの鉄仮面の下ではいつも悲しみの涙を流しているのかもしれない。

 

 

そういうわけで、我ら第七パーティーは厳正なる話し合いの末にポイント稼ぎを狙う事となった。

 

 

初日は三人全員で試験区域内を移動しつつ、各地で他の受験者達の救助を行った。

 

救助作業をしていくうちに、いつの間にか試験区域中央から少し離れた場所にシェルターが作られていた。作ったのは自分達が救助した者等で、パーティーメンバーが負傷して動けなかったり、厳しい試験に心を折られた者達だ。

 

治療や魔物からの防衛に人手が足りないようだったので、第七パーティーから二人を護衛として残して自分は単独で救助を続けた。

 

 

二日目になると戦闘の音がそこかしこから聞こえてくる。

残ったパーティー同士が激しくぶつかり合っているのだろう。

 

 

───少しでも受験者達を救わなければ!

 

…フリーレンとフェルンにはまだ会えていない。

 

あの二人がやられるとは微塵も考えていない。

むしろ、襲って来た他の受験者を返り討ちにして、その際にうっかり加減を誤って殺してしまう可能性の方が高い。

 

あの二人が殺害による減点を受ける前に、そしてあの二人に他の受験者が殺される前に見つけなくては。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───これがこの試験の真実だったんだよ!(バーン)」

 

フリーレンが所属する第二パーティー。

第二パーティーは三人がそれぞれ得意としている魔法と、隕鉄鳥(シュティレ)の特性である魔力に対して敏感という点を主軸とした作戦を考えた。

 

試験区域中央の湖をラヴィーネが凍らせ、他の水場の多くにカンネが魔力を僅かに込め、残った魔力の込められていない水場でフリーレンが魔力を完全に消して待機…無警戒に水を飲みに来た隕鉄鳥(シュティレ)を、フリーレンの鳥を捕獲する魔法で捕まえると言う作戦だ。

 

すでに作戦は始まっており、あとはフリーレンが魔力を消して隕鉄鳥(シュティレ)が来るのを待つ…というタイミングでその少女、シャオはやって来た。

 

訝し気な視線を送る三人に対し、シャオは自信たっぷりな態度で試験の真実()を語ったのである。

 

「ヒンメルだったら他の受験者達を見捨てたりなんかしない、か…そうだね、その通りだ。 ポイントはともかく、私達も他の受験者の救助や魔物退治をするべきかもしれない」

 

「おいおい、ちょっと待てよ。 そいつの言う事が正しいって証拠はあるのか? もし間違ってたら全員まとめて落第だぜ」

 

あっさり話を信じたフリーレンとは対照的に、ラヴィーネは懐疑的な視線を向けていた。

相方のカンネは、シャオがお近づきの印として作ったドーナツをもきゅもきゅと頬張っている。 お腹が減っていたのか、三人分として持ってきたドーナツの山は半分程になっていた。

 

「うーん…わひゃひはどっひへほ(私はどっちでも)…」

 

「あー! お前なに独り占めしてんだ! 食いすぎだろうがこのっ…!」

 

「ふぐぁー!」

 

キレたラヴィーネと威嚇するカンネ。

二人がドーナツの取り合いでいつものように取っ組み合いをする中、フリーレンは他二人の意見も聞いて一つの方針を打ち出した。

 

「ならこうしよう。 シャオ達は救助によるポイント稼ぎ、そして私達は隕鉄鳥(シュティレ)の捕獲…これならシャオの話が間違っていたとしても私達は確実に合格だ。 隕鉄鳥を捕獲すれば合格出来ることに変わりはないんだからね。 ラヴィーネもそれでいい?」

 

「まぁ、それならいいけど」

 

「んぐっ…隕鉄鳥(シュティレ)を捕まえたら、私達も救助に回った方がいいんじゃないかな」

 

「…そうだな。 一応念のためにポイントとやらを稼ぐのも悪くねぇ。 余裕があればの話だけどな」

 

話がまとまったと見ると、用事は終わったとばかりにシャオは腰をあげた。

 

「早くフェルンにも伝えないといけないからね。 試験が終わったらまた会おう!」

 

サラバダー!…そう言って、木々の上をぴょんぴょんと俊敏に飛び移りながら去って行った。

 

 

…実の所、フリーレンはシャオの話を信じていない。

今のシャオからは、かつてフリーレンをアウラと勘違いした時のような思考の飛躍(ポンコツ)が感じられたからだ。

 

しかし、この試験はフリーレン一行のうち誰か一人でも合格すれば旅に支障はないし、死傷者が減るならその方が良いに決まってる…そう考えたフリーレンはシャオの好きにさせる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「論外だな」

 

フェルンが所属する第四パーティー。

パーティー内で唯一の二級魔法使いであり、実質的にリーダーのような立場である眼鏡の青年、ラントは冷たい目でエルフの少女を見つめた。

 

「僕達はすでに隕鉄鳥(シュティレ)を捕獲している…このまま試験終了まで潜伏していれば合格は確実なんだ。 仮にポイント制だったとしても、何もしなければ加点も減点もされないだろう。 現状維持で……どうした?」

 

淡々と語るラントをスルーし、フェルンは少女の前に歩み寄ると小さい子にするように優しく頭を撫でた。

 

「ほぇ?」

 

「シャオ様はそういう道を選ぶと思っておりました。 他の受験者も助けて、試験にも合格して」

 

「…まさかとは思うが、これから他のパーティーを助けに行こうとか言うんじゃないだろうな」

 

引き攣った顔でフェルンを見るラントと、愉快なものを見るような顔で事態を見守るユーベル。

フェルンは振り返ると、いつもは無表情な顔を珍しくやる気に満ちたものに変えて力強く宣言した。

 

「その通りです。 勇者様一行なら他の受験者達を放ってはおかない筈です」

 

「まったく意味が分からない…ダメに決まってるだろう。 さっきも言ったが───」

 

「私はいいと思うよ」

 

「…君もか」

 

フェルンに助け舟を出したのはユーベルだった。

シャオはユーベルの視線に怯えてフェルンの背中に隠れた。 狩人として培った直感がユーベルをやべぇ奴だと警告していたからである。

 

「このまま日没までダラダラしてるなんてつまんないでしょ。 それに、ぶらぶらしていれば、襲撃して来た他のパーティーと戦えるかもしれないしね」

 

ユーベルはフェルンの味方をした。 これで二対一。

三人パーティーなのでラントの味方は誰もいない。 勝手にしろ、と二人を放置したとして、二人のどちらかが死んで欠けてしまえば合格条件を満たせず不合格になってしまう。

 

強引に二人を殺さない程度に戦闘不能にする…これも無理だ。

ユーベルは雰囲気も不気味で危険な香りがプンプンする奴だし、フェルンの方はあのフリーレンの弟子という事で底が知れない。 三級だからと舐めたら死ぬ予感があった。

 

…そもそも、二人を戦闘不能にした場合、動けない二人を守りながら隕鉄鳥(シュティレ)も奪われないようにしなければいけないのだ。 骨が折れるなんてものじゃない。

 

「やれやれ…わかったよ。好きにしてくれ…だが、あくまで優先するのは僕達が合格する事だ。 これだけは譲れない」

 

「メガネ君ありがとう! じゃあまたね!」

 

「僕の名前はラントだ………はぁ、どうしてこうなったんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後もシャオは各地で受験者達を助け続けた。

雨で視界の悪い森の中を東奔西走である。

 

 

「カロライナスマッシュ*1!!(剣)」

 

「…あぁ?いきなり来てどういうつもりだ」

 

「もう大丈夫!なぜって!?私が来た!!」

 

チンピラ(チンピラではない)*2の前でヒーローごっこをしたり。

 

 

 

「(いい人そうだけど何か怖いんだよなぁ)」

 

「可愛い…撫でてもいいですか?」

 

「お、思う存分撫でるといいよ!」

 

ザインが好きそうな大人のお姉さん*3に撫で撫でしてもらったり。

 

 

 

「さぁ、私の作ったお菓子をお食べ」

 

「…おぉ、美味いのぉ!儂はこのアンパンが好きじゃ!」

 

「のじゃロリ!?」

 

のじゃ口調の少女*4にお菓子をプレゼントしたり。

 

 

 

高速で移動する魔法&一般攻撃魔法(瞬間移動かめはめ波)*5!」

 

高速で移動する魔法(ジルヴェーア)にそんな使い方があったなんて…!」

 

「そんじゃ、またね!」

 

自分と同じ高速で移動する魔法(ジルヴェーア)の使い手*6に新たな道を示したり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし!それじゃあ皆で帰ろうか」

 

日没を迎える少し前、第七パーティーとシェルターに避難していた受験者達は一斉に試験開始地点へと戻り始めた。

 

フリーレンやフェルンのパーティーが協力してくれた甲斐もあり、シェルターには救助された30人以上の受験者達が集まっている。

 

「ふわぁ~…疲れたぁ」

 

「おう、ご苦労さん」

 

「何だか凄く達成感があるわね」

 

第七パーティーは終始救助に専念しており隕鉄鳥(シュティレ)は捕まえられなかったが、ポイントを十分稼いだので間違いなく合格しているはず…少なくともシャオは欠片も不安には感じていなかった。

 

「ちょっと待ってくれ!」

 

「ん?」

 

そんな時、とあるパーティーが話しかけてくる。

そのパーティーは魔物との戦いに敗走して喰い殺されそうになっていた所を、第七パーティーに救われた者達だった。

 

 

「…実は、あんた達に渡したいものがあるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時間だな」

 

第一次試験、試験官の一級魔法使い…ゲナウは集まった受験者達を見渡した。

 

受験者達は隕鉄鳥(シュティレ)の入った鳥籠を持ったいくつかのパーティーと、それ以外のパーティーに分かれて各々が和気あいあいとしながら待機している。

 

 

受験者57名のうち、生き残ったのは53名。

 

 

死亡した者は僅か4名のみ。

しかも魔物との戦闘で死んだ者だけだ。 受験者同士の争いで死んだ者は一人もいない。

 

「(想定していた結果と違いすぎる)」

 

ゲナウは困惑していたが、それを顔に出すような真似はしなかった。

生き残りが多い事には困惑したが、合格者の人数はきちんと絞れている。 一級魔法使いの質を求めている大陸魔法協会の意向には背いていない。 問題はないはずだ…多分。

 

「…第一次試験合格者は()()()()()()()()()()。 現時刻を以って第一次試験を終了とする」

 

一部を除けば大方の予想通りの面子が合格していた。

 

宮廷魔法使いにして熟練の老魔法使いのデンケンがいる第十三パーティー。

勇者パーティーにいたエルフの魔法使いフリーレンのいる第二パーティー。

そして、魔族との戦闘経験が豊富な北部魔法隊隊長のヴィアベルが率いる第八パーティー。

 

この辺までは確実に合格すると予想はされていた。

他のパーティーも意外な実力者がいたり、幸運に恵まれた者など様々な理由で合格しているが…特に変わっていたのが第七パーティーだった。

 

「(もう一人のエルフの魔法使い、名は…シャオと言ったか。 いったい何を考えている…?)」

 

第七パーティーがやっていた事については当然、試験官であるゲナウもゼンゼも把握している。

 

 

 

常識的に考えればわかる事だが、この試験の合格条件は最初にゲナウが説明した二つの条件だけだ。

 

───勇者ポイントが一定以上なら合格? んなわけねぇだろ!!

 

ポイント制ではないし、減点も加点もない。 二つの条件さえ満たせばそれで合格である。

 

 

 

他のパーティーに嘘の情報を流し、自分達は隕鉄鳥(シュティレ)を捕獲してしれっと合格…という狙いならわからなくもない。しかし、この第七パーティーは日没寸前まで隕鉄鳥を捕獲するどころか、探そうとする素振りさえ見せなかった。

 

第七パーティーが受かったのは、シェルターにいたとあるパーティーから隠し持っていた隕鉄鳥(シュティレ)の入った籠を譲渡されたためだ。

 

そのまま隠し持っていればいいものを…どうやら、一次試験で死にかけた自分達では、とてもではないが二次試験なんて無理だと心が折れたらしい。 あとは助けてくれた礼なんかも含んでいるようだが。

 

「(…まぁいい、あんなお人好しではゼンゼの試験に受かる事は出来ん)」

 

問題のエルフの少女は動き回って疲れたのか、第四パーティーにいた少女…フェルンの背中でのんきにスヤスヤと寝ている。

 

「第二次試験は3日後だ。 詳細については追って通達する。 以上だ。 解散」

 

ゲナウは何とも言えない複雑な感情を押し殺しつつ、試験内容の報告のために北部支部へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
オールマイトさんごめんなさい

*2
ヴィアベル

*3
メトーデ

*4
エーデル

*5
カカロットォ!

*6
ラオフェン




ここのフェルンさんはママ味が強いし、主人公に感化されてちょっと熱血入ってるかもしれない。


なんだかんだで合格した主人公。
ゲナウさんは困惑してるし、ゼンゼは内心で爆笑してる。



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