自分をエルフだと思い込んでいる一般ポンコツ魔族 作:エルフの耳バーガー
ので、今回みたいな事が起きます。
───北側諸国、零落の王墓。
ついに迎えた二次試験当日。 我々受験者達は揃って、試験会場となる
中には一次試験で組んだ二人もいて、目が合うと自分に小さく手を振ってくれた。
「それでは第二次試験の詳細を説明する」
自分も手を振り返していると、試験官である一級魔法使いのゼンゼから試験の説明がされる。
「
───試験の内容はこうだ。
今回の試験会場である
そして、辿り着いた者は全員合格…なるほど、一次試験と比べればシンプルな条件だな。
ただ、この零落の王墓は未踏破の
「不可能を可能にするのが一級魔法使い。 未踏破だろうが前人未到だろうがねじ伏せて突き進むんだ」
というゼンゼの言葉で押し黙ってしまった。
厳しい言葉だが、しかしその通りだ。
一級魔法使いのモデルになったであろうフリーレンも、数多の勇者パーティーが達成出来なかった魔王討伐という偉業を成し遂げている。 ゼンゼの言う通り、この程度の
その後、一級魔法使いのレルネンが作ったと言う脱出用ゴーレムが入った瓶を渡された。
このゴーレムを使うと不合格になるが、その代わり負傷していても安全に
そして、仮に受験者が自ら割らなかったとしても、この瓶は明日の夜明けには自動で割れる…それが二次試験の終了期限を知らせる合図らしい。
「…それと、最後に言っておくことがある」
ゼンゼはそう言うと、視線を一瞬だけチラリと自分の方へと向け、再び受験者全員へと視線を戻した。
「この二次試験の合格条件は、零落の王墓の最深部まで辿り着く事…その一点のみだ。 ポイント制ではないし、何か裏の思惑があるとか、他の合格条件があるとか、そう言ったものは一切ない。 深読みしないように」
深読みしないように、の所でなぜか再び自分の方へ視線を向けて来た。
自分の何が気になるのだろうか…少し考えてみるが、まったくわからない。 モフモフしてそうな異様に長い髪の毛といい、ゼンゼは少し変わった人なのかもしれないな。
「それでは試験開始だ」
ゼンゼが第二次試験の開始を告げた後、各々の受験者達は数人で固まって話し合いを続けていた。
大体は一次試験でパーティーを組んでいた者同士だが、自分やフリーレン、フェルンのようにそれ以外の関係で固まっている者もいる。
「今回の試験には争う要素がない。 全員で協力した方がいい」
デンケンは受験者同士で協力する事を提案していたが、聞く耳を持つ受験者は少なかった。
早速、金髪の男性…一次試験でメトーデと組んでいた人だろうか。 彼はデンケンの提案を断ると、一人でさっさと
「おい待てよ!単独行動は危険だぜ」
「もう、仕方ないわね…」
心配に思ったのか、一次試験で自分と組んでいた二人が後を追いかけて行った。
チラっと目配せをされたので軽く頷いておいた。最低でも三人で組んでいればそう簡単にはやられないだろう。
その後もしばらくは様子見をしていたが、結局ほとんどの受験者達は二人から三人程度のパーティーを組んで好き勝手に
「行くよ二人とも」
じっと様子を見守っていたフリーレンが立ち上がった。
デンケン達と組むのも悪くないと思うが…それについてフェルンと共に問いかけたが、フリーレンは既に全員で組むことを諦めたようだ。
まぁ確かに、自分達にとって他の受験者はオイサーストに来てから出会った者ばかりだ。
一次試験で組んだ者もいるとはいえ、危険な
フェルンと共に頷いて三人で入ろうとすると、いつの間にか近くに来ていた試験官のゼンゼが声をかけてきた。
「では私は君達に付いて行こう。 一番安全に最深部に辿り着けそうだ」
「邪魔しないでよね」
「しないよ。 邪魔も手助けも」
…こんな事を言っているが、その言葉が嘘である事を自分は見抜いていた。
なぜなら、ゼンゼは一級魔法使い…彼女はきっと、いざとなったら受験者達を自分の手で守ろうと思っているのだろう。 同じ一級のゲナウ殿も心優しい御仁のようだしな。
とはいえ、あまり試験官の手を煩わせるべきではないな。
可能な限りは受験者である自分達だけの力で攻略したいところだ。
───
罠のほとんどはフリーレンの知識と経験で事前に回避し、ガーゴイルなどの避けようのない相手は先手をとって動き出す前に破壊した。
時折フリーレンがミミックに喰われたり、隠された宝箱を見つけて小躍りしたり、ゼンゼも交えて皆でおやつタイム休憩をしたり。
順調だった。 順調だったはずなのだ。
しかし現在、自分は一人孤独に
どうやら、いつの間にかフリーレン達三人が迷子になってしまったらしい。
フェルンはともかく、フリーレンは
ふぅ…仕方ないな。
自分は一人旅をしていた時に
───ここは自分が頑張って、三人を見つけて最深部まで連れて行ってあげようではないか。
そう思ってから、周囲の状況を確認するために見渡した。
………先がまったく見えない真っ暗な通路、自分の息遣いしか聞こえない程の静寂。
…まるで世界に、自分一人しかいないかのような…
………………
…魔力で肉体を強化し、全速力で駆けだした!
…み、みんなー! どこー!?
暗いよー! 怖いよー! 誰かいないのー!?
★☆★☆★
「あの、本当に探しに行かなくていいんですか?」
フェルンは自分が冷静さを欠いている事を自覚しつつ、師であるフリーレンに問いかけた。
数時間程前にシャオがいなくなってしまい、フェルンは可愛い妹弟子が心配でたまらなかったのだ。
おやつの供給源がいなくなって心配なのではない。決して。
「フェルンは心配性だなぁ。 あの子はまだ
フリーレンは僅かに呆れを滲ませながら答える。
実際、フェルンは先ほどからちょくちょく似たような内容の質問を繰り返していた。
「さっきまでは物凄い速さで移動してたけど、今は歩く程度の速さで移動している。 きちんと最深部に向かってるし、多分他の受験者と合流出来たんだね」
フェルンはその言葉に安心しかけたが、もう一つの不安が消えなかった。
フリーレンは、シャオがはぐれてから一切心配する様子を見せていない。 魔法で位置を把握しているとはいえ、ここは未踏破の
普段のシャオを見ていればわかるが、あの子は頭がポンコツだし、精神年齢は幼女並みだし、思い込みも激しいし、頭がポンコツだし(二回目)…単独行動させて安心出来る要素が微塵もないのである。
「…気になるなら、そこにいる一級魔法使いさんに聞いてみたらいいんじゃない?」
「む」
その言葉に、フェルンは後ろからついて来ているゼンゼに顔を向けた。
フェルンよりわずかに背の低い女性。 ちょうどシャオと同じくらいだろうか。
長い髪は足元にまで伸びており、毛量も非常に多い。 ゴーレムによる安全策など、一次試験の試験官であったゲナウよりは受験者に対して優しいように見える。
他にわかっているのは、今のフェルンよりも間違いなく格上の魔法使いである、という事くらいか。
「あの、ゼンゼ様はどう思われますか?」
「…問題ないだろう。 初めにも言ったが、レルネンの作ったゴーレムを使えば確実に脱出する事が出来る。 それに、一次試験でも見ていたがあの子は単純な戦闘能力なら一級魔法使いにも劣らない」
そう心配する事はないだろう…ゼンゼは少しだけ柔らかい口調でそう言った。
さすがに、師匠と格上の魔法使いの二人に言われてはフェルンも頷くしかない。 心の中の不安に蓋をして再びフリーレンの隣に並ぶ。
「そうそう。心配する事はないよ…でも、このペースだとシャオの方が先に最深部に辿り着きそうだ。 それはさすがに私のプライドが許さないので、私達もちょっとペースを上げようか」
そう言って、先ほどよりも明らかに速く歩き始めたフリーレンを見て、フェルンは口元に僅かに笑みを浮かべた。
「(フリーレン様は本当に不器用ですね)」
出会ったばかりの頃はともかく、今はフリーレンもシャオをきちんと仲間として認識している。
おっちょこちょいで危なっかしい、あの自称エルフの少女の事を心配していない筈がないのだ。
…フェルンが抱えた不安を軽くしようと、気遣ってくれてもいるのだろうが。
「そうですね。 私にも姉弟子としてのプライドがありますから、先に行って待っていてあげましょうか」
★☆★☆★
零落の王墓の最深部である、宝物庫の二つ手前にある広場。
そこには、フリーレンを筆頭とした受験者の約三分の一が集まって会議を行っていた。
議題はもちろん、今も宝物庫の扉の前に陣取っている、最後にして最大の障害を攻略する方法。
迷宮に入った際の、ベストコンディションのフリーレンを完璧に模倣した複製体…それの倒し方だった。
デンケン率いる混合パーティーは最初にここへ来たが、複製体のフリーレンを前にして即撤退。 その後、半日程して到着したフリーレン達も交え、全員で攻略方法について意見を出し合っているというわけだ。
今はつい先ほど到着したエーデルのパーティーメンバー、デンケンに次ぐ老魔法使いであるブライの情報提供を受けていた。
「なるほど。 複製体に心はないんだね」
「はい。 エーデルさんの見立てでは、心の働きを精密に模倣しているだけで、心そのものはないそうです」
二級魔法使いのエーデルは戦闘能力はほぼ皆無だが、精神魔法の専門家として優れた能力と知見を持っている。 複製体にも心があるならエーデルは強力な戦力になり得たが、道中でゼンゼの複製体と接触し、精神魔法が通用しない存在である事を突き止めた。 が、その後に負傷してあえなくリタイヤしている。
それを踏まえた上で作戦を練ろうとフリーレンは言うが、あまりにも少ない情報にデンケンとリヒターが声をあげた。
「一番の問題はあの複製体とその術者の正体だ。 その性質がわからんまま手は出せん」
「特に複製体特有の弱点は本当に無いのかだ。 仮にあの複製体がフリーレンと同じ実力なら死傷者が出かねない」
「…」
言い終えたデンケンとリヒターは、壁際で事態を静観しているゼンゼに視線を送る。
ゼンゼなら有益な情報を持っている可能性が非常に高いため、情報提供をしてくれないかと思ったのだ。
とはいえ、ゼンゼが受験者に助力する事はないだろう。
そう確信しているからこそ、二人の視線にはあまり期待は込められていなかった。
「私は答えんぞ」
案の定、ゼンゼから情報を得られない事がわかった。
複製体や術者に関する情報は少ないが、それでもどうにか作戦を練るしかない。
「来た」
「え?」
…そうして再び会議が再開しようとした瞬間、フリーレンが声を上げると同時に立ち上がった。
他の受験者達が何事かと様子を見守っている中、何かに気付いたメトーデがぽつりと呟く。
「三人ですね。 この魔力は確か…」
すると、足音と共に新たに三人の受験者達が入って来た。
「お、結構来てるな」
「フリーレン! フェルン! 二人とも来てたんだ」
「あ…!」
並んで入って来た二人の少女…ラヴィーネとカンネが声を上げると、二人の後ろについて来ていたもう一人の少女が前に出て来た。
少女はスタスタとフリーレンとフェルンの前に行くと、額に汗を浮かべながら引き攣った笑みを浮かべて言った。
「い、いやぁ、
「「「罠…?」」」
「そ、そうだよ!罠!」
フリーレン、フェルン、ゼンゼの三人は一斉に疑問符を浮かべた。
すると、ラヴィーネが強い意志を込めた目で三人を見つめている事に気付く。
「(…迷子だと恥ずかしいから、そういう事にしておいてほしいんだってよ)」
「「(あぁ…)」」
意図を読み取ったフェルンとゼンゼは、とりあえず話を合わせてあげようと思った。
…が、一人だけ。
昔から他人の意図を読み取るのが苦手で、空気を読まない発言をする者がいた。
「いや、ただの迷子でしょ。 罠は全部回避してたし」
そう、フリーレンである。
ヒンメルといた頃よりはマシになったものの、このエルフのおばあ…少女?女性?は、今でも空気を読まない発言をして場を微妙な雰囲気にする事が多々あった。
「なっ!?ち、ちがうもん!迷子じゃないもん!」
少女…シャオは顔を真っ赤にして涙目でぷんすかと怒り始めた。
見かねたカンネとラヴィーネが宥めているのを横目に、フェルンは通算何度目かの呆れた目を
「フリーレン様…」
「え、なに…だって本当の事じゃん」
そう言いつつも他の受験者達からも微妙な目で見られている事に気付いたフリーレンは、両手をわたわたと動かしながら拙い弁明を始めたのだった。
無事にカンネとラヴィーネが拾ってくれました。
でも二人と合流した後は、余計な寄り道したりミミックに喰われたりして迷惑をかけまくってます。
エルフの70歳は赤ちゃんみたいなものだから仕方ないね。
知らんけど。
なお、迷子になる前にフリーレン、フェルン、シャオ、ゼンゼの四人でおやつタイム休憩をしている時のゼンゼの内心。
「(まるでピクニックだな…)」