自分をエルフだと思い込んでいる一般ポンコツ魔族   作:エルフの耳バーガー

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インフルでダウン中です。

今回は色んな意味で難産でした。
最初に書いてた内容だと、半分くらいメトーデ対複製体フェルンの話になってたんですよね。熱で頭がおかしくなってたんでしょうか。

以下、感想欄にあった疑問に対する回答となります。

複製体に関しては、人格、精神に関して特異な才能が必要な魔法も普通に使えるので、角を隠す魔法も問題なく使えます。
ゼンゼやユーベルの複製体も本体と同等の魔法を使ってたし、割とマジで完コピしてるんでしょうね。

ラントは、複製体は喋れないだけだって言ってたので、思考も人格も癖もコピーしてるし、一応は自我があると解釈してます。
ただ、あくまでも水鏡の悪魔が作り出した人形にすぎないので、「侵入者の迎撃!」と「最深部に集まれー!」という命令を中心に動きます。
その命令が優先度高いせいで、一時撤退とか複数人で連携とか出来なくなっちゃってる感じ。

あと、精神系の魔法は効かないし、逆に複製体が使って来ても生身の人間には効きません。この辺は原作のエーデルちゃんの説明通りな感じです。


二次試験③:栄光を手にする者達

 

 

 

───零落の王墓、最深部。

 

 

部屋に残った受験者達が全員で集まり、出撃前の最後の作戦確認を行っていた。

 

 

フリーレンとフェルンが宝物庫の扉がある広間へ入ったことを確認すると、デンケン主導で改めて作戦の説明がされる。

 

と言っても、言葉にすれば単純な話だが。

 

「混戦になると勝ち目はない。複製体がここに集結する前に、分散して足止めを図るぞ」

 

そう、自分達は複製体を待ち伏せるのではなく、こちらから打って出る事に決めた。

ただでさえ戦力で劣る状況なのに分散して良いのか、と思うかもしれないが…これにはきちんと理由がある。

 

複製体は所詮は作り物。

他の複製体を巻き込むような攻撃をしてもなんら問題がない。どうせ後で復活するのだから。

 

しかしこちらはそうはいかない。

死んだら終わりだし、負傷すれば次の戦闘にも影響が出る。受験者の中ではメトーデが回復魔法を使えるが、魔力には限界があるし彼女にも貴重な戦力として複製体と戦ってもらわねばならない。

 

敵味方で入り乱れる状況になると、その時点でまともな戦闘続行が不可能となる。

 

故にデンケンは「混戦になると勝ち目はない」と言ったのだ。

混戦になった時点でこちらの敗北が決まってしまう。そうならないように、こちらから打って出る必要があるというわけだ。

 

 

 

 

 

その後、メトーデによる探知結果をもとに、各々が優位に戦える複製体を迎撃するために全員が出撃した。

 

自分はひとまずデンケンと共に遊撃に当たる。

メトーデが探知出来なかった相手…自分、フェルン、デンケン、そして一級魔法使いゼンゼの複製体。これらの一際厄介な奴らが魔力で探知出来なかったのだ。

 

そのため、危険な複製体に一対一で対応可能な自分とデンケンはひとまず他の受験者達の援護をしつつ、危険な複製体を見つけたら最優先で対応する事となった。

 

メトーデは現在も迷宮(ダンジョン)内に散らばっている他の受験者達の所へ向かい、協力を要請して戦力を増やすための交渉に向かっている。

 

「よいか、シャオ。お前は他の受験者を援護する際も、出来るだけ体力的にも魔力的にも消費の少ない手段をとれ。本命であるお前自身の複製体と戦う前の消耗は出来る限り抑えるんだ」

 

出撃前にデンケンに言われたことを思い出す。

 

自分は自他共に認める大天才。成長速度は光よりも早い…一分一秒前の自分より強くなっている以上、多少消耗した程度では自身の複製体に手古摺るような事はない。

 

とはいえ、複製体のフリーレンが討伐されるまでどれほど時間がかかるかわからない。最悪の場合を想定し、最低でも二回以上は自身の複製体と戦えるだけの余力を残しておかねばならないのだ。

 

よって、皆の援護中は身体強化以外の魔法を使わない。

今回のメインウェポンは弓矢だ。我が弓は百発百中…弓の名手と言われる*1エルフ族の歴代でも、恐らくは最上位に位置する腕を持っていると自負している。

 

故郷の村でも一番だったんだから!

 

 

 

 

 

───複製体との戦闘は熾烈を極めた。

 

 

事前に戦いやすい相手を選ぶとはいえ、それでも勝負に絶対はない。ひやりとする場面が何度かあった。

特に、リヒターとラヴィーネがゼンゼの複製体に奇襲されそうになっていた時は焦ったものだ。何とか間一髪援護が間に合ったが。

 

そして幸運なことに、ちょうど通りがかったやれやれ系眼鏡と、底知れぬヤバさを感じる女…ラントとユーベルが来たのは幸いだった。特に、ユーベルの大体なんでも切る魔法(レイルザイデン)がゼンゼの戦闘スタイルに対して優位な魔法であったらしく、ゼンゼの複製体を秒殺してしまったのだ。

 

戦力も増えたし、複製体と戦闘している受験者達の中にも脱落者はまだ出ていない。これならこの辺は一安心…とはならなかった。

 

「こちらに来たのはゼンゼの複製体だけか。もしかすると、他の危険な複製体は離れた場所にいるか…シャオ、お主はメトーデの援護に行け。あちらの方が危ういかもしれん」

 

それもその通りだ。

こちらに来ていない複製体は、まだ合流出来ていない受験者達と戦っている可能性が高い。それは同時に、交渉に向かっているメトーデが危険にさらされている事を意味している。

 

自分はデンケンの言葉に頷くと、ちょうど復活したらしきカンネとラヴィーネ、そしてラオフェンの複製体の首をすれ違いざまにスパパパッと斬り飛ばして駆けていく。

 

「おいおい、アタシらの複製体を瞬殺だよ…」

「いい腕してるね。私の魔法とどっちが上かな?」

「フリーレンといい、大陸魔法協会(ここ)のトップといい…エルフってのは化物しかいないのか」

 

 

待っていてくれメトーデ!

私が行くまで、どうかご無事で!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迷宮内を移動していると、半泣きでゴーレムに担がれていく受験者とすれ違った。金髪の男性…彼は確か、デンケンの忠告を無視して一番最初に迷宮に入った人の筈だ。

 

名前は……ト、トート*2?みたいな感じだ。

しかし、彼には一次試験で自分と共に戦った同士二人がついていた筈だが…。

 

考え事をしながら走っていると、かなり広い部屋に辿り着いた。

宝物庫前の、複製体のフリーレンがいる広間よりも広いだろうか。光源が少なく、柱や瓦礫の残骸などの障害物が多数ある。自分の息遣い以外の音が聞こえない…とても静かだ。

 

 

うぅむ、なんだか危険な空気が───っ!そこか!?

 

 

胴体に飛んできた飛来物を咄嗟に剣で弾く。

かなり重い衝撃だが、これは……自分の矢!?ここには自分の複製体がいるのか!

 

追加で飛んできた魔法と矢を直感を頼りにして回避しながら、人の気配がする柱の裏へと隠れて気配を遮断する。

自分の魔力隠匿の精度はフリーレン程ではないが、一時的になら完全に魔力を消す事が可能だ*3。そのうえで気配まで絶ってしまえば、もはや誰にも自分を見つけることは出来ない。

 

故郷の村ではかくれんぼで常勝無敗だったのだ!

 

そう思っていると、柱の裏から僅かに感じた気配の持ち主…メトーデに抱き着かれた。

気配が漏れた、と言うよりは自分に知らせるためにわざと居場所を知らせたのだろう。

 

「私に撫でて貰いに来たのですね。ありがとうございます」

 

そう言って豊満な胸に自分の後頭部を抱き込むと、わしゃわしゃと頭や顎を撫でまくって来た。

 

や、やめろぉ!…いや、やめないで…やっぱりやめて!

とける!気配の遮断がとけちゃう!あわわわわ……

 

「…さて、休憩はこのくらいにしておきましょう」

 

しかしすぐに手は止まった。

ムニムニとこねくり回していた自分のほっぺたから手を離すと、キリっとした顔で状況を語り始めた。

 

「簡潔に説明します。まず、ここにいる受験者は私一人です。お二人にはデンケンさんの複製体と戦うヴィアベルさん達の援護をお願いしました。ここの複製体は私とトーンさんの二人でお相手していたのですが、彼は先ほど深手を負ってしまったので離脱して貰いました」

 

トーン……トーンて誰だ*4

まぁいい、そんなことよりもここの複製体をどうするか考えないといけないな。さっき飛んできた矢と、狙いすました鋭い魔法の一撃…辛うじて避けられたが、当たったら間違いなく死んでいた。

 

「そうですね…まさかフェルンさんとシャオちゃんの複製体が連携するとは。少しでも物陰から出れば物理と魔法の両方で狙撃…そのせいで部屋から出る事も救援を呼ぶ事も出来ませんでしたから」

 

 

───その後、物陰でこっそりと二人で作戦会議をした。

 

 

メトーデはフェルンの複製体が相手なら勝算があるようだ。

本来は受験者側が連携して複製体と戦うが、今の状況はその逆。複製体の連携を乱して各個撃破が最適解となった。

 

 

…自分自身の複製体と一対一。

仲間と共に、過去の自分自身を乗り越え、迷宮の最奥を目指す、か。

 

 

なんか…すごく主人公っぽいぞ!

勝つと特殊能力を獲得したり、覚醒して潜在能力が目覚めるみたいなシチュエーションじゃないか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(困りました…)」

 

フェルンは柱の陰に隠れながら悩んでいた。

 

 

複製体のフリーレンとの戦いは、最初こそいい流れだと思った。

 

魔力探知が途切れた一瞬の隙に潜伏し、魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)で不意打ち。

うまく行きすぎて、これならミミックを使う必要はなかったのではないかと思ったほどだ。

 

が、残念ながら不意打ちは防御魔法で防がれてしまい、戦いは消耗戦へと移った。

 

ミミックを使って隙を作る作戦は、結果的には失敗に終わった。

正確に言えば、先に本体のフリーレンがミミックに釣られて隙を作ってしまい、そこを複製体に攻撃されて危うくやられそうになったのだ。その際にフェルンが複製体を狙っていれば仕留められた可能性はあったが、その代わりにフリーレンが死んでいただろう。

 

「(なんでフリーレン様までひっかかるんですか!)」

 

「(ごめんて…)」

 

一瞬のアイコンタクトで互いの内心を察したのは流石師弟である。

その後も2匹目のミミックを使ったものの、今度は視線すら寄越さず瞬時に消し飛ばされてしまった。

 

どうやら、複製体はミミック対策として目で見ないで魔法で撃ち落とすという方法をとったようだ。

 

それはつまり、ミミックが視界に入ると隙が出来るのは確実という証明。

残ったミミックは1匹。これで失敗した場合は、フリーレンがわざと攻撃を受ける事で複製体の隙を作り、そこをフェルンが仕留める事になっている。

 

確実性は高いが、フリーレンの身に万が一が起こりうる危険な作戦でもある。

フェルンとしては師の身を危険にさらすこの作戦はやりたくなかったし、フェルンが複製体を仕留めきれなかった場合はその時点で攻略失敗になりかねない…すなわちフェルン自身へのプレッシャーも大きいのでやりたくないのだ。

 

 

フェルンは瓶の中にいるミミックを見つめた。

封印中にも拘わらず、ミミックは体を震わせているように見える。野生の本能で自分が置かれた状況を自覚し、恐怖に怯えて震えているのかもしれない。

 

「(一か八か…やるしかありませんね)」

 

そんなミミックの内心?に気付かないフェルンは、気合を入れるように杖を握る手に力を込めると、複製体の隙を探り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「疲れましたね」

 

「そうだね。帰ったら次の試験までゆっくり休もうか」

 

宝物庫の奥に眠っている財宝を前にして、フェルンは達成感を味わっていた。

 

複製体のフリーレンは本当に強敵だった。

なにせ、今まで戦った魔族や魔物との戦いが遊びに思えてしまう程の相手だ。クヴァールは除くが。

 

「お前もよくやりましたね」

 

「…」

 

フェルンは、隣で大人しくしている魔物…ミミックの頭をよしよしと撫でる。

ミミックはぴくぴくと何やら反応しているが、何を思っているのかはさすがにわからない。

 

このミミックは3匹の内の最後の1匹だ。

フェルンの手によって囮として使われ、複製体撃破のMVPとも言える活躍をした。その代償としてその身を儚く散らす…筈だったのだが、こうして生き残って勝利の栄光を分かち合っている。

 

他の2匹の扱いと末路を見て、色々と察したらしいこのミミックは生き残るために必死だった。

上蓋…上顎?を完全に開ききる事で複製体の魔法を紙一重で回避、着地した後は一生懸命跳ねて柱の裏に回って普通の宝箱に擬態してやり過ごそうとした、中々に骨のあるミミックである。

 

「結構おとなしいですね、このミミック」

 

「野生の魔物は獣と大差ないからね。本能で私達との力の差を理解してるんだよ。敵対しても勝ち目がないから、従順にしてどうにか生き残ろうとしてるんだ」

 

フリーレンの言葉を受け、「魔物も大変なのですね」などと言いながら、フェルンはごく自然に杖を構えた。

 

魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)

 

「───」

 

回避も反撃も許さない、迅速かつ丁寧な魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)でミミックは塵となった。

 

「皆さんが揃うまで、少し時間がありますね」

 

「…ね、先に一個くらい宝箱開けといてもいいんじゃないかな?私達が一番の功労者なわけだしさ」

 

むふー、と嬉しそうに宝箱に近づくフリーレンと、それに呆れたようにしながらもついていくフェルン。

 

それはそれ、これはこれ。

先のミミックには助けられたが、それでも魔物は魔物。情けをかけて見逃すとかそういう選択肢は一切ない。フリーレンはもちろん、フリーレンから英才教育を受けているフェルンも人類以外には情け容赦ないのである。

 

 

宝箱を判別する魔法(ミークハイト)…フリーレン様、その宝箱はミミックと結果が出ましたよ」

 

「………いや、私の長年培った魔法使いとしての直感は、これの中身を貴重な魔導書と告げている。開けてみよう」

 

「(あ、いつものパターンだこれ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フリーレンとフェルンの戦いが終わる少し前の事。

 

 

2体の複製体弟子コンビと対峙していたメトーデとシャオは、協力して複製体のシャオを部屋の外へ誘導する事に成功。

 

部屋の中にはメトーデが残り、シャオは自分自身の複製体と外の通路で対峙していた。

 

「私が…お前を討つ!今日!ここで!」

 

妙に気迫のあるシャオの言葉に、複製体はパクパクと口を動かして反応した。

 

「…っ!」

 

「いくぞ!はぁぁぁああ!」

 

ここから二人の戦い…のような何かが始まったのである。

 

 

シャオは自分自身の複製体と激しく矛を交えながら、迷宮(ダンジョン)の中をあっちへこっちへと移動していた。

 

「思い出すんだ私!お前が欲しかったのは、本当にそんな力なのか!?」

 

そんな力、とはどんな力の事なのか。

恐らく言っている本人も言われている複製体もわかっていないだろう。

 

「っ!」

 

戦闘手段はなぜか剣のみ。

お互いに示し合わせたかのように刃を何度もぶつけ合った。そのたびに火花が散り、浅い切り傷が増え、ちょっぴりと血を流した。

 

…アイゼンあたりが見たら『なんだ、変わった遊びだな。え、真剣勝負?そんな馬鹿な…』とでも言うかもしれない。それくらい雰囲気が緩かった。

 

 

ちなみに複製体は一切喋らないので、傍からはシャオが一人でなんか叫びながら戦っているように見える。叫んでいる内容も意味不明だ…なぜか複製体はいちいち反応を返しているが。

 

時折すれ違う受験者達からの反応は様々だった。

 

『速すぎる…手を出したら無事では済まないか』

『なんで一人で叫んでるんだろう。作戦かな?』

『…なんか角生えてなかったか?気のせいか?』

『ちくわ大明神』

『誰だ今の』

 

そんな受験者達からの視線や注目を集めながら二人は戦っている。

魔族故に優れた飛行魔法と、壁や天井も足場にして加速する事で残像が見えるような超スピードを発揮している。まさに目にも留まらぬとはこの事だろう。

 

 

なお、お互いに角を隠す魔法を解いている。

角を隠す魔法に使用する分のリソースも全て戦闘に割り振っている、まさに本気で全力戦闘の状態なのだ。

 

他の受験者に見られたらとか、そんなことは一切考慮していないぞ!

フード被ってればだいじょうぶでしょ!…という浅い考えしかないのだ!

 

 

 

 

 

偶にお菓子を食べて休憩したり、角をぶつけ合ったり、カッコいいポーズ対決したり…二人のポンコツは激闘を繰り広げながら、とうとう最深部の近くへとやって来た。

 

「この…馬鹿野郎!」

 

「っ!?」

 

シャオが複製体を蹴り飛ばす。

二人の実力は互角の筈だが、ダメージ量的には複製体の方が不利。これはまさか、シャオ本人が言っていたように迷宮(ダンジョン)に入った頃より成長しているとでもいうのだろうか?

 

「もうやめるんだ!こんな戦い!」

 

「…」

 

複製体は、無言で部屋の入り口を見た。

そこから出て少し進めば、宝物庫前の広場へ続く扉は目の前だ。

 

シャオが成長しているから勝っている?

 

否!

 

複製体の方は戦闘しながら最深部付近へ接近し、隙あらばフリーレンとフェルンを背後から奇襲しようとしていたのだ。それで少し無茶な動きをした結果、隙を晒して傷が増えていたのである。

 

本体はそんな思惑は微塵も想像しておらず、『セリフがなくなりそうだし、そろそろ倒れてくれないかなぁ…なんかいい感じで』とか思っていた。

 

…基本的に、複製体が本体の性能を上回ることはない。

もちろん、戦いが長引けば魔力量で複製体は優勢になるが、根本的には迷宮(ダンジョン)に入った時点で性能は固定されてしまう。

 

 

水鏡の悪魔(シュピーゲル)に出来るのは、あくまで本体を複製する事だけ。

 

 

複製体は思考や性格、人格も本体と同じなのだ。

喋れないし、侵入者の迎撃と言う命令には逆らえないが複製体にだって個性がある。死んでも蘇るとはいえ、複製体も望んで死のうとは思っていない。

 

だから、本体を超える力を与える事も発揮する事も出来ないし、複製体であることを活かして自爆特攻とかフレンドリーファイアも一部のイカれた受験者を除けば基本的には出来ないのだ。

 

 

…にもかかわらず、なぜシャオの複製体にこれほどクレバーな戦いが出来るのか。

その理由はさっきとは逆の理論が通る。つまりは迷宮(ダンジョン)に入った頃より、本体の知能が下がっているからに他ならない。

 

迷宮(ダンジョン)探索は楽しいし、なんか『もう一人の自分と戦う』というシチュエーションがシャオにとって琴線に触れたのだ。それで無駄にテンションが上がって視野が狭くなったのだろう。たぶん。

 

 

複製体はシャオがよそ見をした一瞬の隙を突き、複数の分身を作り出して突撃させる。

ラントが見たら鼻で笑って嘲笑しそうなくらい稚拙な分身だが、単純な命令をこなすだけなら問題はない。

 

シャオが分身攻撃に戸惑っている間に全力で宝物庫の方へダッシュ!

 

「はぇ!?ちょっ、まってー!」

 

複製体の意図に気付いたシャオが追いかけてくる。だが複製体は問題ないと判断した。

ダメージ量には差があるが、スピードに影響が出る程ではない以上、この差は決して縮まらない。

 

二対一とはいえ、フリーレンとフェルンが複製体のフリーレン相手に余裕の戦いが出来ているとは思えない。僅かでも背後からちょっかいを出せれば、それが必ず致命的な隙となり、その隙を複製体のフリーレンは見逃さないだろう。

 

勝ったなガハハ!

 

複製体のシャオはとうとう宝物庫前の広場に通じる広間に到達した。

受験者達が一度集まり、作戦会議などをしていた場所だ。ここの扉を通ってしまえば後は…と。

 

 

そこまで考えた瞬間、複製体のシャオは意識を失った。

より正確に言えば、肉体をバラバラに切り裂かれて消滅したのだ。

 

 

シャオ本人が到着した時、複製体の撃滅を成した者が天井からゆっくりと音もなく降りて来た。

 

「…」

 

二次試験の試験官、一級魔法使いのゼンゼその人である。

迷宮(ダンジョン)内の人間で唯一この部屋に待機していたのがゼンゼだった。ゼンゼは複製体のシャオが接近した事を察知し、気配を消して天井に張り付いて待ち構えていたのだ。

 

そして、本体を出し抜いた事で勝利を確信し、油断丸だしな複製体を不意打ちで瞬殺したわけである。

 

「な、なんで…試験には協力しないって言ってたのに…」

 

困惑するシャオに、ゼンゼは常と変わらぬ平坦な声で答えた。

 

「私は自衛の範囲内であれば戦う。この複製体が私を襲撃しに来たと思ったから返り討ちにしたまでだよ…別に協力したわけでは「うぉおおおおおおお!」むっ」

 

ゼンゼとしては複製体を警戒していたのは本当の理由でもあるし、お菓子を奢って貰った恩も含めてどさくさ紛れにちょっとだけ手助けするくらいは許されるだろう、みたいな考えである。

 

とはいえ、そんなゼンゼの話はシャオに抱き着かれた事によって中断されてしまった。

ゼンゼに抱き着いたシャオは、うおーんうおーんと泣き始めた。

 

「ゼンゼちゃんありがとぉおおおおお!」

 

「ちゃんはやめてくれないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
原作でも今作でも誰も言ってない

*2
人違い?である

*3
魔族の基本技能だぞ!

*4
さっきすれ違った金髪の人




残念ながら複製体フリーレン戦はほぼカットとなりました。
フリーレンが負傷していない事以外は大体原作と変わりません。

ガンダムseedネタはさすがに古いか…でも劇場版の影響で最近の人でも知っている可能性あるしなぁ…まぁいいか!って感じで入れました。嫌いな人はごめんなさい。


色んな人に角を見られた気がするけど、大体はスルーしてくれるから大丈夫大丈夫。


大体はね。
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