自分をエルフだと思い込んでいる一般ポンコツ魔族   作:エルフの耳バーガー

18 / 26
間髪入れずに最後の試験となります。

アニメのオープニングでちょこっとだけ映った、敵のラスボスにしか見えないあの人が登場となります。

なお、このお話で出番は終わりです。仕方ないね。


三次試験:最後の戦い?

 

 

 

───北側諸国、魔法都市オイサースト。大陸魔法協会北部支部。

 

 

無事に二次試験に合格した我々は、最終試験である第三次試験を受けるべく大陸魔法協会の北部支部へと集まっていた。

 

 

二次試験終了後は、今度はフリーレンがフェルンをブチ切れさせたりして大変だった。

 

複製体との戦いでフェルンが杖をバラバラに破壊されてしまったのだが、杖に思い入れのあるフェルンは杖を直したかったらしい。が、そんなフェルンの気持ちも考えず、フリーレンは「この杖はもう直せないから、捨てて新しい杖を買った方がいいよ」と無慈悲に告げたのだ。

 

…聞いたところによると、杖は僧侶ハイターからの贈り物らしい。

戦災孤児だったフェルンを拾い、育て上げた大恩人。そんな人から貰った物を簡単に捨てる事は出来ないだろう。

 

自分だって、じーちゃ…爺様から最初に貰った小さな短剣と、訓練用の弓は今も大切に保管しているから気持ちはわかる。

 

だと言うのにあのポンコツは…悪気がないからってさぁ。いや、それにしたって空気が読めなさすぎる。勇者ヒンメルもさぞ苦労しただろうなぁ。

 

 

まぁ、その件は何とか解決したのでよしとしよう。

杖はリヒターが完璧に直してくれたし、同時にフェルンの機嫌も直ったのだから。

 

そんなことを考えていると、広間に集まった受験者達に一級魔法使いのファルシュという男性が説明を始めた。

 

「第三次試験の内容は、大魔法使いゼーリエによる面接です」

 

ゼーリエか。

確か、大陸魔法協会の創始者にしてトップに君臨する大魔法使い。そして、自分やフリーレンと同じエルフの女性だと聞いた。

 

「そう来たか。ゼーリエは私達三人を受からせる気はないね」

 

「お知り合いなんですか?」

 

「昔のね」

 

フリーレンの知り合いなのか…気になる。

 

ファルシュから面接の順番を伝えられたが、どうやら自分が最後になるようだ。

せっかくだし、順番が来るまでの間にゼーリエとの関係について色々と話を聞く事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フリーレンとフェルンが面接を終えてからしばらくした頃、とうとう自分の名が呼ばれた。他の受験者達と同じように、面接会場となる部屋の扉を開いて中に向かって歩みを進める。

 

面接会場は広かった。

通路の脇には、よく手入れされた多種多様な花々が咲き誇っている。部屋の中央にはお茶会用か、シンプルながらも高級そうな椅子やテーブルが用意されていた。

 

そして、そこには一人の女性が座って茶を飲んでいた。

 

フリーレンとは対照的な黄金色の髪。

服もまた、しっかり着込んでいるフリーレンに比べてゆったりとした薄い服を着ているようだ。身長は自分と同じくらいで、見た目は少女だが感じる雰囲気は大人の女性か、あるいは高齢な老婆のようにも感じる。

 

あと、どことは言わないが結構大きい。フリーレンとは天と地ほどの差があるようだ。

 

とりあえず近づこうと思い、そのエルフの女性…ゼーリエの下へ歩いていく。

…距離が縮まるとよくわかるが、感じ取れる魔力量は圧倒的だ。慣れていない者ではこの魔力を感じた時点で及び腰になってしまうに違いない。

 

自分の数倍、全力のフリーレンと同等くらいか。制限特有の揺らぎもないし、魔力の隠匿をしているわけでもなさそうだ。

 

フリーレンの師の師でかなりの高齢と聞いていたからどんなものかと思っていたが、想像よりも大した事はなさそうだ。いや、フリーレンと同等の魔力は凄いと言えば凄いのだが、フリーレンの数倍はあるのかなぁとか思っていたから、ちょっぴり期待外れと言うか。

 

「よくもまぁ私の前まで来た、と言うべきか…まぁいい、そこに座れ」

 

近くに来ると座るように促されたので、とりあえず椅子に座る。

こうしてると本当に面接みたいだな。しかし、他の受験者達からは立ったまま雑に合否を言い渡されたと聞いたのだが………やはり、自分のような才有る者には特別な対応をするのだろうか。

 

「まさか魔族が試験を受けに来るとはな。本当にいい度胸をしている」

 

…もしや角がある事を見抜いたのか、あるいはフリーレンから聞いたのか…?

しかし、自分の角は呪いで生やされたものであって、魔族ではない。種族はあなたと同じ、れっきとしたエルフなのだ。

 

「フンッ、この私の前でエルフと言い張るか。まぁ、どうでもいいがな。お前がエルフだろうが魔族だろうが人間だろうが」

 

そう言うと、ゼーリエは何だかぺらぺらと語り始めた。

「フリーレンはまだまだ未熟者だから」とか「お前を育てた人間の間抜け面が見てみたい」とか「私の興味を惹く魔法を持っているかどうか以外はどうでもよい」とか。

 

 

………。

 

 

な、なんだこいつ…!

すっごい偉そう!てか失礼!ムカつくんですけど!

 

こっちが黙ってれば偉そうに…なーに上から目線で語ってんだお前ぇ!

 

大体な!お前よりもフリーレンの方が凄い魔法使いなんだぞ!

フリーレンは勇者ヒンメルと共に魔王を倒して、今も魔族を倒しまくってる凄い魔法使いなのに、なんでお前の方が凄い魔法使いみたいに言われるのか、私にはさっぱり理解できない!

 

「なんだと?」

 

私がそう考える理由はもちろんある。

ゼーリエが表舞台に出て来たのは半世紀以上前なのだ。フリーレンより年上の凄い魔法使いの癖に、こいつは魔王軍とも戦わずに半世紀前まではのんびり気ままに暮らしていたわけだ。

 

フランメは千年以上前の人間にも拘わらず、今も人類史の魔法の開祖として語り継がれる功績を残した、伝説の大魔法使い。

フリーレンはヒンメル達と共に魔王を倒し、一般攻撃魔法の普及にも貢献し、今もなお魔族をしばき倒して回っている伝説の魔法使い。

 

「だが二人とも私の求めるレベルには───」

 

それに対してこのゼーリエが何をしたのか。

まず、半世紀前までは人類の対魔族との戦いにおいて何もしていない。大陸魔法協会を立ち上げたのは凄いし、弟子とされる一級魔法使い達が活躍しているのも知っている。

 

しかし、致命的なまでに動き出すのが遅いのである。

千年生きてるフリーレンより遥かに年上の癖に、つい数十年前までいったいどこで何をしていたのか。

 

「それは…!」

 

フリーレンをこき下ろしているわりに魔力はそのフリーレンと同等だし、こうして対峙してみても、カリスマ?とかそういうのを感じない。自分の夢に偶に出て来る勇者ヒンメルの方が千兆倍はカリスマがあった。

 

「貴様…」

 

しかも、自分の事を魔族だと決めつけて、呪いの事も何だか信じてないみたいな反応だし。

…あーあ!フリーレンは事情を話したら一発で和解できたのになぁ!器の大きさが違うのかなぁ!それとも歳をとり過ぎてボケちゃったかなぁ!

 

「………」

 

そこまで考えている時にふと寒気がして体が震えた。

…ち、違う!これは殺気だ!おぞましい殺気を感じて体が震えてしまっているのだ!

 

 

───その殺気がどこから放たれているのか、それは気配察知などしなくともすぐにわかった。

 

 

そう、自分の目の前にいるゼーリエである!

…どうしてだろう、表情はさっきと大して変わってないのに凄まじい怒気を感じる。よくよく見たら額に青筋が浮かんでいるようにも見えるし、なぜかは知らないが怒っているようだ。

 

「ここまで私をコケにしたのはお前が初めてだ」

 

………もしかして、全部声に出てた?

 

「私の話を碌に聞かないばかりか、話を遮ったあげく、よくもまぁべらべらと好き勝手言えたものだな」

 

…し、しまった。自分はどうやら虎の尾を踏んでしまったらしい。

 

でもでも!あれは紛れもない本心だから!それに先にフリーレンやじーちゃんを馬鹿にしたのはゼーリエだから!私は悪くねぇ!

 

「ふぅ………………私は公平だ。誰が相手であろうと、三次試験に進んだ者には公平に合格の機会を与える。それがたとえ、礼儀も弁えない未熟で愚かな魔族(虫けら)が相手であろうとな」

 

 

───いいか、最期に一度だけチャンスをやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───好きな魔法を言ってみろ」

 

「す、好きな魔法?」

 

「そうだ。どんな魔法でも構わん。言ってみろ」

 

ゼーリエの質問に対し、シャオは普段は役に立たない頭をフルに回転させて考えた。

 

「(好きな魔法って言われてもいっぱいあるし、敢えて言うなら魔法自体が好きって感じなんだけど。お菓子を作る魔法は思い入れはあるけど、一番好きかって言うと…うーん。戦闘用の魔法もカッコいいから好きな奴たくさんあるしなぁ。ここはゼーリエが気に入りそうな奴がいいか?フリーレンと違って如何にも好戦的な雰囲気だし、民間魔法が好きなフリーレンの反対の気質と考えれば、ここはやはり戦闘用の魔法がいいか?よし、そうと決まれば───)」(ここまで思考時間10秒)

 

「早く言え」

 

「は、はい!えぇと…」

 

シャオは考えすぎて目をぐるぐる回しながらも、ゼーリエが気に入りそうでシャオ自身が好きな魔法の名を告げた

 

一般攻撃魔法(ゾルトラーク)です!一般攻撃魔法(ゾルトラーク)が好きです!」

 

「…なんだと?」

 

ゼーリエは表情の変化に乏しい顔を、珍しくも驚いたような顔に変えた。

 

「理由はなんだ」

 

「理由は…ろ、浪漫があるからです!この魔法を作り上げた先人は素晴らしいと思います!」

 

シャオがどうして一般攻撃魔法(ゾルトラーク)を好きと答えたのか。

それは、魔法発動時の見た目や術式が好みだったからである。

 

 

かつてクヴァールが使っていた人を殺す魔法(ゾルトラーク)を、人類の魔法体系に落とし込んだ魔法。それが一般攻撃魔法(ゾルトラーク)である。ここ80年程の間に生まれた魔法使いにとっては、文字通り生まれた時から存在する常識のような魔法だ。

 

どんな魔法使いでも防御魔法と一般攻撃魔法(ゾルトラーク)は100%必ず習得するし、どれだけセンスがなくてもとりあえずぶっ放すだけなら誰でも使える利便性と、それに見合った性能を誇る。

 

シャオとしては、理論的な魔法が苦手な自分でも、ある程度改造出来るくらいには術式がわかりやすいという点と、発動した際の見た目が好きだった。

 

かめは〇波とかはかいこ〇せんとかメガ粒〇砲みたいな、所謂「光線技」の再現がし易いのである。

 

習得した当初は、まるで新しいおもちゃを手に入れた小学生男子のようにはしゃぎながら、一般攻撃魔法(ゾルトラーク)の実験(遊び)に没頭したものだ。実験の余波でじーちゃんの家が度々壊れたのは良い思い出となっている。

 

 

…そんな経緯があって、シャオは一般攻撃魔法(ゾルトラーク)と、この魔法を作り上げたフリーレンを含む偉大なる先人の魔法使い達をとっても尊敬しているのである。

 

が、ゼーリエはこれを違う意味で受け取ってしまった。

 

人を殺す魔法(ゾルトラーク)が好き、か。それにクヴァール(先人)を素晴らしいとは……ク、クククッ」

 

「?」

 

「…魔族は所詮魔族にすぎんか。だが悪くない。私もその魔法は評価しているからな。これのおかげで人間同士の戦争はかつてよりも凄惨なものとなり、より洗練された戦いのための魔法が多数生まれた」

 

「はぇー、そうなんだぁ」

 

ゼーリエは先ほどとは逆に、機嫌良さそうに口の端を吊り上げながら目を細めた。

物騒な事も言っているし、表情もまるで悪だくみをする魔王みたいだったが、知恵熱で意識がぼんやりとしているシャオにはよくわかっていなかった。

 

「悪くない、悪くないが…お前は不合格だ」

 

「ほぇ…?」

 

「自分自身を過大評価しすぎだ。自分を一級魔法使いどころか、フリーレンを超える才能を持った天才みたいに思っているだろう。少しは身の程を弁えろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、他にはなんて言われたの?」

 

「今の旅がひと段落したらもう一度来いってさ。その時までに新しい強力な魔法を作っておけとか言ってた。わけわかんないよね」

 

「…そうなったか」

 

三次試験である面接も終わり、フリーレン達三人は協会から宿への帰路についていた。

フリーレンはフェルンについてはまったく心配していなかったが、ゼーリエがシャオをどう扱うかについては予想が出来ない所もあった。不安がなかったと言えば嘘になるだろう。

 

フリーレンは、自身がゼーリエと面接した際の会話を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待てフリーレン」

 

面接を兼ねた問答を終え、部屋を去ろうとした所でゼーリエから呼び止められた。

 

「人間の弟子の方はわかったが、もう一人…いや、もう一匹の方はどうするつもりだ?」

 

「…なんのこと?」

 

「惚けるな。エルフを自称する魔族がいるだろう。ゼンゼからもそいつに角が生えていたと報告を受けているし、他の弟子の中にも察した者が何人かいる」

 

フリーレンは溜息を吐きつつ、扉にかけた手を降ろした。

もとよりゼーリエの目を誤魔化せるとは思っていなかったから驚きはない。そもそもあのゼーリエの事だ。オイサーストに来る前にシャオの事を知っていた可能性もある。

 

…ぶっちゃけ、聖都シュトラールで五級魔法使いの試験を受けた時点でゼーリエに知られていたのではないかとフリーレンは思っていた。もう何もかも手遅れである。

 

「アレを連れて魂の眠る地(オレオール)を目指すなど…お前は何を考えているんだ。まさかあの魔族に絆されたのではないだろうな?」

 

「…そんなことないよ」

 

「魔法で管理しているようだが、それも完璧ではあるまい。道中で人間を喰うような事があったらどうするつもりだ?どうやって責任をとる?」

 

ゼーリエの言う事は至極当たり前の事だ。

もしもの事があった場合、人が死ぬような事が起こってからではフリーレンはどうやっても責任をとれない。死者蘇生なんて出来ないのだから。

 

それに、フェルンやシュタルクにも危害が及ぶ可能性もあるし、万が一、管理しているフリーレン自身が最初にやられてしまったら止められる者がほとんどいない。

 

…それでも、それらの危険を受け入れた上で、フリーレンはゼーリエの問いに答えた。

 

「あの子は私が管理する。人間も喰わせないし、そういう素振りを見せた時点で始末する。それに、私は魔族に例外を作る気はないよ」

 

「…」

 

「どれだけ人間らしく振舞おうと、魔族はどこまでいっても獣だ。私はあの子を認めない」

 

フリーレンは冷たく言い放つと、ゼーリエの反応も見ずに扉の外へと出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私達の中で受かったのはフェルンだけかぁ…あのお婆ちゃん絶対性格悪いよね!」

 

「失礼ですよ。あまりお外でそういう事を言ってはいけません」

 

「だ、だってさぁ!私はともかくフリーレンが落とされるのはおかしいよ!あの人ぜーんぜん公平じゃないよ!意地悪だよ!意地悪お婆ちゃんだよ!」

 

「ちょっ、シャオ様。まだ周りに協会の人がいるのですから、そういう事は…」

 

フリーレンは意識を現在に戻し、前方でわちゃわちゃしている弟子二人を見つめた。

フェルンに口を塞がれながらも、まだ言いたいことがあるのかバタバタと暴れている自称エルフの少女。

 

「(魔族は人の言葉を鳴き声とする猛獣にすぎない。どんなに上手く擬態しても違和感は消えない。魔族の鳴き声は人間を騙して捕食するためのものであって、人間と共に生きていくための手段ではないから)」

 

フリーレンの認識は昔から変わっていない。それこそ、フランメに会う前から。

千年前に暮らしていた村を魔族に滅ぼされる前から、魔族とはそういうものだと認識している。フランメは対魔族の戦い方を教えたが、心構えそのものはもっと前から出来ていたのだ。

 

そしてその考えは、この異常な魔族と旅を始めてからも一切変わっていない。

 

 

「………」

 

 

少女を見つめるフリーレンが何を考えているのか。

その胸の内を知る者は、今この場には誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで主人公は落ちました。
個人的に、ゼーリエは魔族だからどうこうという人ではないと思ってます。自分の利となる魔法を生み出す可能性があるなら、たとえ魔王だろうが見逃してしまう感じ。

なお、原作とは違って生き残った面子(リヒターやラヴィーネなど)も落ちてます。
原作で受かった面子は、受かるべくして受かったんだろうと思います。

あと、自然物を利用する魔法使いは受かるの厳しそうだなって。
登場してる一級魔法使いが全員自然物に頼らない魔法使いしかいないので、周りの環境に戦力を左右される時点で駄目っぽいのかなぁと。


次回から旅が再開となります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。