自分をエルフだと思い込んでいる一般ポンコツ魔族   作:エルフの耳バーガー

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覚醒(真面目モード)。


旅の再開と魔族の覚醒!

 

 

 

───北側諸国、魔法都市オイサースト。

 

 

一級魔法使い試験が終了し、今日は次の旅に備えて休息と補給を行う日だ。

 

 

午前中に物資の補給は終わり、午後は自由時間と言う事になった。

自分はフリーレンのお目付け役として、一緒に魔導書探しに付き合っている。今頃シュタルクとフェルンは二人っきりでデート中だ。少しでも進展してくれたら、草葉の陰からザインも喜んでくれるだろう。*1

 

…しかしフリーレンは魔導書を買い過ぎではないだろうか。

いつもなら一冊か二冊くらいなのに、今日は十冊近く買っている。自分も興味のある魔道具があったので色々と買ってしまったが、それにしたってこれはマズいんじゃないだろうか。

 

「どれも面白い魔法だったからね。フェルンも喜んでくれるよ…たぶん」

 

だといいけど……む?

 

二人で今日の戦利品について話し合っていると、すぐ目の前で一人のお婆ちゃんがリンゴを数個地面に落としてしまった。傍には他にも果物が乗った荷車があるし、これを引きながら売って回っているのだろう。落としたリンゴも商品だろうか。

 

「おいババア。この籠に入れればいいのか?」

 

自分が拾うのを手伝おうとすると、それより前に通りがかった一人の男性がお婆ちゃんに声をかけた。杖を一振りすると、リンゴを浮かせて籠に入れつつ、籠そのものも荷台へとふわりと浮かせて戻してしまった。

 

首元と袖にモコモコした毛がついているコートを着た男。

シュタルク以上の悪人面と、先ほどのお婆ちゃんに対するチンピラのような言葉遣い。

 

あ、あいつは確か……ヴィアベル!フェルンが「犬とか蹴っ飛ばしてそうな人」と言っていた男だ。

今のが幻覚でなければ、奴はお婆ちゃんを手助けしていたように見えるが…?これはどういう事なのだろうか。

 

そう考えていると、ヴィアベルはいつの間にかフリーレンを挟んで反対側に座ってた。何やら自分達に話があるようだ。いや、どちらかと言うとフリーレンに対してだろうか。

 

自分は魔法で作り出したお菓子を食べつつ、フリーレンとヴィアベルの会話を静かに聞くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───フリーレン。出会いは大切にしろよ。今生の別れってのは何も死別だけじゃない…いや、百も承知か」

 

ヴィアベルはそう言うと、今度は自分の方に顔を向けた。

 

「今更だが、お前には礼を言っておくぜ。一次試験の時は助かった…この借りはいつか返す」

 

そう言うと、ヴィアベルは今度こそ仲間たちの下へ戻って行った。

 

…うぅむ、どうやらヴィアベルは思っていたより良い奴だったようだ。

勇者ヒンメルを心から尊敬し、人々の平穏を守るべく魔族と戦い、多くの人助けをしている。なんだかシュタルクとちょっと似ているような気がするな。顔も口調もチンピラだけど。

 

 

───その後、宿に戻って今日買った物を整理していたら、案の定フェルンに怒られた。

 

 

「またこんなに魔導書を買って…フリーレン様、いくら路銀に余裕があるからと言って無駄遣いをしてはいけないと、いつも言ってるじゃないですか」

 

「い、いや、無駄遣いじゃないよ。どれも役に立つ魔法が載ってるからさ…ほんと、ほんとだって」

 

まったく、だから買いすぎだと言ったのだ。

シュタルクと二人で、怒られているフリーレンを呆れた顔で見ていると、今度はフェルンが自分の方を見て来た。

 

「シャオ様も。随分たくさん魔道具(ガラクタ)を買われたようですが、お小遣いはあとどれくらい残っているのですか?」

 

ガ、ガラクタじゃないよ。どれも旅の役に立つ便利なものばかりだからさ…ほんと、ほんとだって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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旅立つ前日の夜。

ゼーリエから特権の授与があるため、フリーレン一行は全員で北部支部へと集まっていた。

 

特権の授与には同伴者ありだったので、フェルンのお誘いで四人全員が来ていたのだが…

 

「申し訳ありません。ゼーリエ様からの通達で、フリーレン様は出禁です。今後千年は大陸魔法協会の施設には立ち入らないようにと」

 

まさかの出禁である。

納得のいかないフェルンとシャオは頬を膨らませてぷんすかと抗議した。

 

「フリーレン様が何をしたって言うんですか」

 

「やっぱりあのお婆ちゃん意地悪だよ!」

 

が、抗議は聞き入れてもらえなかった。

フリーレンはしょぼしょぼ顔のまま、北部支部の外へと足を向けた。

 

「まあ私も来たくて来たわけじゃないし。外で待っているね」

 

「…俺も外で待ってるよ」

 

残った三人は無言のアイコンタクトをすると、シュタルクがフリーレンと共に残り、シャオがフェルンに付き添うことになった。

 

「では、行きましょうか」

 

「うん」

 

 

 

 

 

「フェルンはどんな魔法を貰うつもりなの?」

 

「そうですねぇ…」

 

他の合格者たちが特権である魔法を貰っている時、順番待ち中のシャオとフェルンは周りの人に聞こえないようにコソコソとお喋りしていた。

 

「…特権の魔法というのは、ゼーリエ様自身が習得している魔法を切り崩して他人に譲渡するものだそうです。ゼーリエ様自身は譲渡した魔法を使えなくなり、再度習得するために修行しなければならないとか」

 

「え、そうなの?」

 

「はい。ですから、なるべく日常生活に役立つ便利な魔法をお願いしようと思っています。ゼーリエ様自身が手放したくないような魔法を」

 

「…なるほど」

 

これはフェルンのちょっとした報復である。

敬愛する師を出禁にするとか許せんし、可愛い妹弟子にも辛辣な態度だったそうだし。立場上、直接文句を言うのはちょっと厳しいので、特権の授与を利用して仕返ししてやろうという可愛らしい悪戯のようなものだった。

 

…他の大半の受験者や現役の一級魔法使いからすれば、特権の授与をそんなしょうもない事に利用するとか頭おかしいんじゃねえの?とツッコミを入れられること間違いなしの所業である。

 

「なので、お洗濯の魔法をお願いしようと思っています。北側諸国は寒いので、お洗濯がとっても大変ですから…指先が荒れる事もないし、冷たい川のお水で凍える事もなくなります」

 

「お、おかあさん…」

 

フェルンの言葉から切実な思いを感じ取り、シャオはこれからはもっとお手伝いしようと心に誓ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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───勇者ヒンメルの死から29年後。北側諸国ザオム湿原。

 

 

魔法都市オイサーストと、試験で友好関係を築けた者達に別れを告げ、我々は再び魂の眠る地(オレオール)へ向けた旅を再開していた。

 

 

…ぷっ、しかしあの時のゼーリエの顔は見ものだったな。

フェルンがお洗濯の魔法を要求したところ、何度も他の戦闘用の魔法を提案して来たが、それらを全てフェルンが突っぱねたのだ。

 

渋々ゼーリエはお洗濯の魔法…服の汚れをきれいさっぱり落とす魔法、という神話の時代にあったとされる伝説級の魔法をフェルンに譲渡した。その名の通り、衣服の汚れをきれいさっぱり落とし、追加でフローラルないい香りを付与してくれる超絶便利な魔法である。

 

あの時のゼーリエは面接の際の威圧感が嘘のように消え、フリーレンがよくやるようなしょぼしょぼ顔だった。よっぽど譲渡したくなかったのだろうな…まぁ、お世話してくれる弟子達がいるから問題ないだろう。

 

 

 

 

「魚釣って来たぜ」

 

「朝ごはんの足しにしますね」

 

シュタルクと共に朝食の食材集めをしていた頃。

自分も採って来たキノコや山菜などをフェルンに渡していると、尻だけ突き出したフリーレンが何かを探してゴソゴソしていた。

 

フリーレンが早起きなど珍しい…何かあったのだろうか。

不思議に思いながらピクピク動く尻を眺めていると、何かを見つけたフリーレンが上半身を起こした。

 

「あった。これは大物だね」

 

「なんだよそれ。綺麗な石だな」

 

体中を葉っぱだらけにしながらも、フリーレンはドヤ顔でその石を見せて来た。

石の大きさは握りこぶし二つ分くらいだろうか。青っぽい輝きを放っており、如何にも物語のキーアイテムな感じの雰囲気を漂わせている。こう…なんかクリスタルっぽいアレだ。

 

 

───何でも、この石は封魔鉱というものだそうだ。

 

 

魔法を無効化する力を持った希少な鉱石であり、小石程の大きさで最低でも金貨数枚はすると。フリーレンが今持っているものの純度なら豪邸を買える程の価値があるそうだ。さらに、魔力をめっちゃ込めるとめっちゃ光る特性もあるらしい。

 

…じ、自分が集めた綺麗な石コレクションの上位と比べても見劣りしない…ほ、欲しい!超欲しい!

 

「魔法が使えなくなるから駄目って言ったじゃないですか。これ持ってたらシャオ様の角も出しっぱなしになるんですよ?」

 

先っちょだけ!先っちょだけだから!

 

「それは無理だよ。封魔鉱は物質の中でも最大級の硬度があるし、魔法で切断したり加工も出来ないからね」

 

…この先の魔物や魔族を自分とシュタルクだけで対処していけば…あるいは!?

 

「いやいやいや、無理だって!二人を守りながら魔法の援護なしで戦うなんて出来るわけねぇよ!」

 

駄目かぁ…しょんぼりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「───むっ」

 

北部高原への道筋について解説するフリーレンの話を聞きながら歩いていると、前方を歩いていたシャオが突如として立ち止まった。素早くしゃがむと尖った耳を地面に当てて、目をつぶって何やら集中している。

 

「むむむむむ…この先の地面に異常あり!」

 

そう言うと、シャオは警戒するようにシュバッと身を低くする。

フェルンの魔力探知には何も異常がないため、不思議に思ってフリーレンに目を向けた。

 

「え?魔力探知には何も感じませんが…」

 

「…シュタルク、ちょっとこの石をあの辺の地面に投げてみて。思いっきりね」

 

「お?おう、わかった」

 

シュタルクは手渡されたこぶし大の大きさの石を振りかぶり、指示された地面に向かってぶん投げる。

怪力から放たれた剛速球が地面にぶつかると同時に、一行の前方数メートル先の地面が広範囲に渡って崩れ落ちた。

 

全員で恐る恐る覗き込んでみると、そこには数十メートルほどの深さの大きな穴となっていた。

 

「地面の下が空洞になってたんだ。湿地は地盤が悪くて嫌だね」

 

「あのまま進んでたら落ちてたかもなぁ。良く気づいたなシャオ。偉いぞ~」

 

むふー、とドヤ顔をしているシャオの頭をシュタルクがわしゃわしゃと撫でているのを横目に、フェルンは穴の底に何かを見つけて声をあげた。

 

「あれは…封魔鉱でしょうか?」

 

「そうだね。かなり大きい…鉱床でもあるのかな」

 

 

 

 

 

一行は話し合いの末、封魔鉱の鉱床と思われる場所を探索する事になった。

もしかしたら何か珍しい物があるかもしれないと、主にフリーレンとシャオが探検したい欲を抑えられなかったためである。

 

フェルンは駄々っ子のように我儘を言う二人に折れて、仕方なく探索を許可した。

もしもの時に備え、周辺の地盤を魔法とシュタルクの打撃で加工し、魔法無しでも登って来れる道を作ってから探索へと赴いた。

 

「ピカピカだー!」

 

「ほとんど洞窟全体が封魔鉱なんですね。魔法どころか魔力探知も出来ません…」

 

穴の底の周囲はほとんどが封魔鉱で覆われてたが、一か所だけ洞窟のようになっていた所から一行は中へと慎重に進んでいく。

 

封魔鉱に囲まれているせいで魔法が使えないため、戦力外となったフェルンとフリーレンを守るようにシャオとシュタルクが前方と殿にわかれた。

 

いつもは暢気なシャオも、今だけは珍しく集中して周囲の気配に気を配っている。

何かの物音が聞こえているのか、時折耳がピクピクと動いている。しかも、非常に珍しい事にキリッとした顔を維持していた。

 

「…この角っていい位置にあるよね。凄くつかみやすい」

 

「フリーレン様。邪魔してはいけませんよ」

 

フリーレンがここぞとばかりに角や耳を弄っていたが、シャオは終始無反応を貫いていた。

 

フェルンとしては、魔法も使えず、魔力探知すら出来ない今の状況はとても恐ろしいものだった。魔族との戦いや一級魔法使い試験の時とは違った命の危険を感じている。

 

そんな中で、いつもと違って頼りがいがありそうな妹弟子の様子を見て少し安心していた。

 

「(シュタルク様はともかく、シャオ様はちょっと不安でしたが…これなら何とかなりそうですね)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───むっ」

 

それは、一行が洞窟の探検を始めて半日が過ぎようとしている頃だった。

ぐっすりと眠っているフリーレンの横で、シュタルクとフェルンがぽつりぽつりと話をしていた時、目を瞑って周囲の警戒を続けていたシャオが突如として声をあげた。素早くしゃがむと尖った耳を地面に当てて、目をつぶって何やら集中している。

 

デジャブである。

シュタルクは素早く武器を構え、フェルンは熟睡しているフリーレンを起こし始めた。

 

「むむむむむ…あっちから何かが近づいて来てる!でかい!速い!」

 

「あとどれぐらいで来るんだ!?」

 

「…30秒くらい!」

 

起きて来たフリーレンを交えて簡単に話し合いを行う。

とはいえ、今現在の状況で大型の魔物と戦うという選択肢はまずなかったのだが。

 

「よし、出て来た瞬間に私とシャオで先制攻撃、そのあとは逃げよう」

 

 

 

 

 

その後、出て来たナマズっぽい顔をした無数の目を持つ大型の魔物…毒極竜に対してシャオが目の一つを矢で射抜き、フリーレンが封魔鉱を光らせて目くらましをした後は全力で逃げた。

 

シュタルクはフェルンをお姫様抱っこし、シャオはフリーレンを背中に背負っている。フリーレンは別れ道などを発見するたびに、掴んでいるシャオの角をぐいぐいと傾けた。

 

「ほら、こっちだよこっち。早くしないと追いつかれるよ」

 

「ちょっ、やめっ、わっ、私の、角は、ハンドルじゃ、ないからぁ!」

 

フェルンはいつも以上の無表情…と言うよりは、何やら思う所があって表情が石のように固まっていた。

よくよく見ると頬が薄っすら赤かったのだが、全力で走っているシュタルクは余裕がなかったので気づかなかった。

 

「………」

 

「(えっ、どういう顔!?怖いんだけど!!)」

 

なんか一部青春っぽい雰囲気を漂わせながらも、一行は命からがら洞窟の外へと逃れる事に成功したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
死んでない




真面目な時は凄く頼りになるんですよ。
問題は、皆と一緒の時は頭ふわふわ状態がデフォになる点ですね。
他の三人が頼りになるので、よっぽどのピンチじゃないと覚醒しません。


今作ではちょい役のヴィアベルさんですが、個人的には作中トップレベルの強者疑惑があります。
魔族との最前線で北部魔法隊隊長とかヤバくないですか?下手したら試験前の時点で一級魔法使いより強くても不思議じゃないですよね?相性次第では一級魔法使いを秒殺出来るユーベルが相手にならないレベルだし。

で、そのヴィアベルに純粋な実力を化物認定されたフェルンおかしくないですか?となります。


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