自分をエルフだと思い込んでいる一般ポンコツ魔族 作:エルフの耳バーガー
この作品のように行き当たりばったりではいけません。
ちゃんと先の展開を考えて書きましょう。
───北部高原、ルーフェン地方のとある村。
ゲナウ達の仕事を手伝ってから少しして、ようやく到着したフリーレンとフェルンと合流する事が出来た。
辛うじて残っていた村長の家を借り、二人を交えて改めて今後の対応について話し合う。
さて、魔力の痕跡等から判明した情報だが…。
まず、村を襲った魔族の主力は四体。
その内の一体は四本の剣を操る魔族の将軍との事。
心当たりのあるゲナウによると、その魔族の将軍は恐らく『神技のレヴォルテ』である可能性が高いそうだ。かつてゲナウの相棒を殺し、今もなお北部高原の村々を潰して回っている強大で凶悪な魔族との事。
『神技のレヴォルテ』!?
神技………か、かっこいい!魔族にはもったいない二つ名だ!
やっぱり二つ名に『神』ってつくとかっこいいね!
『武神』! 『神風』! 『神業』!
『エルフの勇者』も悪くないけど、二文字の称号も語呂が良くて捨てがたい。
我こそは〇〇の〇〇!というのは名乗る際も言いやすくて使いやすいのだ。どうしようかなー…自分は多分、世界で一番の俊足だから…『神速』とかどうだろう。
我こそは『神速のシャオ』!
エルフの勇者*1にして、大魔法使いフリーレンの一番弟子!*2
…いい!実にいいぞ!とっても強そうだ!
次に魔族と戦う時からはこの名乗りで行こう、そうしよう!
「───シャオ?」
ハッ!?
ふと気づいて周囲に目を向けると、いつの間にか話し合いをしていた全員から呆れたような目で見られていた。
「ちゃんと聞いてた?まさかこんな状況でぼやーっとしてて何も聞いてませんでした、なんて言わないよね?」
フリーレンから氷のような視線を送られている。
ち、違うのだ!話し合いの内容はきちんと聞いていた……この分身がな!
そう思って隣へ目を向ける。
そこには、頭の上にひよこを乗せたまま熟睡する動物使いの分身の姿があった。
「ぐー……もうたべられないよぉ……」
………い、いっぱい働いたから疲れてたんだね。仕方ないね。
「…ふんっ」
フリーレンさん!?
待って!…待ってくださいお願いします!私の腕はそっちには曲がらないから!
「見事な関節技だ。フリーレンは武術も修めているのか、元勇者パーティーの魔法使いはレベルが違うな」
「…この方は本気で言ってるんですか?」
「どうでしょう。ゲナウさんはいつも真顔だから、本気なのか冗談なのかわかりづらいんですよね」
「むにゃむにゃ……おっきぃ…はんばーぐぅ……」
関節がー!腕の関節そのものがー!
───話し合いが終わった後、自分はフリーレン達と共に北の砦へ向かっていた。
ひとまず、話し合いの内容に関しておさらいしておこう。
理由はわからないが、魔力の痕跡からは相手の主戦力であるレヴォルテが相当な深手を負っている事がわかった。
このチャンスを逃す手はない。
満場一致で魔族達を追撃する事が決まった。北には放棄された砦があるらしく、フリーレンの見立てではそこを魔族達が根城にしている可能性が高いと言う。
入れ違いになる可能性も考慮し、村の護衛としてゲナウとシュタルクが残る事になった。
ゲナウは、一級魔法使いの任務だからと、護衛よりも討伐に行こうとしていたが…シュタルクの強い勧めによって村に残ってもらうことになった。
村人達も顔見知りが残ってくれた方が安心できるだろうし、ゲナウも…本心では村を守りたいと思っている筈だ。今の状態で村を離れても、村人達が心配で戦いに支障をきたすかもしれないし。
…故郷を守れなかったシュタルクは、ゲナウに自分と同じような思いをしてほしくないんだろう。
普段はヘタレでフェルンの尻に敷かれているが…しかしその優しさは誉れ高い。自慢の兄弟子である。
そんな経緯があって、今は四人で砦へ向けて移動中なのだ。
自分はメトーデの腕の中にすっぽりと収まり、なでなでされたり抱きしめられたり匂いを嗅がれたりしていた。
メトーデはちっちゃくて可愛い子を愛でるのが好きなんだそうだ。
あのゼーリエすら対象となるそうで、なでなでしすぎて今は一日十分までしかなでさせてくれなくなったと嘆いている。
…このお姉さん。もしかして結構ヤバい人か?
方向性は違うけど、なんだかユーベルに近い狂気的なヤバさを感じるのだが。
そのメトーデは現在、フェルンと共にフリーレンの取り合いをしている。
にょいーんと引っ張られているフリーレンはまるで伸びた猫のようだ。
「シャオさんとフリーレンさんを同時になでなでしたいだけなんです。わかってください、フェルンさん」
メトーデはなんと強欲なのだろう。自分一人では満足出来なかったらしい。
報酬として魔導書まで差し出してフリーレンを愛でようとしている…街中でやったら事案として衛兵にしょっぴかれるのではないか?
「だめですっ。まだ子供のシャオ様ならともかく、フリーレン様は大人だし、私の師匠で、その…とにかくフリーレン様はだめなんですっ」
「ちょっと…やめてよぉ…体がちぎれちゃう…」
うーむ、フェルンがフリーレンに向ける感情はとっても複雑なようだ。
フリーレンとは幼い頃から一緒だというし、フェルンにとっては師匠でもあり、姉でもあり…母親代わりはさすがにないだろうが、とにかくフェルンはフリーレンが大好きなようだ。
わちゃわちゃしている三人を眺めてほっこりしていたのだが…
っ!今なんかぞわっとしたぞ!?
「魔力探知ですね。敵にこちらの位置がバレました」
瞬きする間に、森の中は突如発生した真っ白い霧で覆われていく。
同時に、離れた場所で魔物のものと思われる遠吠えが森中に響き渡った。
「魔力の霧だね。視界と魔力探知を塞がれた。それに今の遠吠えは…」
そう言いながら、フリーレンは霧の中から飛び出して来た四足の魔物を魔法で撃ち抜いた。
中型程度の大きさで、見た目はまるでハイエナのような姿をしている。北部高原に生息している魔物で、死肉だろうが腐肉だろうがお構いなく食べてしまう悪食なやつだ。
「…妙ですね。この魔物は群れならそれなりに脅威となりますが、基本的には臆病で、強い相手にはよっぽどなことがなければ挑まない気質です。フリーレンさんやシャオさんの魔力を感じた上で襲って来るのは少し変かと」
確かに、フリーレンも自分も魔力制限をしているとはいえ、それでも100年鍛錬した程度の魔力を発している。こいつらならそれを理解している筈なのに。
「多分、群れを統率しているやつがいるんだ。この霧が広がったタイミングを考えれば、そいつは間違いなく魔族だろうね」
「先ほどこちらからも逆探知を仕掛けましたが、周辺にいる魔族は二体だけでした。四体の主力の内、レヴォルテと残りの一体が向かった先は恐らく…」
…村か!
ならば、ここにいるこいつらは囮か、あるいは時間稼ぎと言った所か。
魔族はこんな作戦行動をとれるのか!?
「戦い慣れてるね。まるで魔王軍の連中みたいなやり方だ」
「シュタルク様とゲナウ様だけで大丈夫でしょうか」
レヴォルテだけならともかく、手練れの魔族がもう一体いる。
村を守りながらになるから、二人だけだと厳しいのではないだろうか。
話しながら四人で魔物達を迎撃しているが、相手の魔族は直接攻めてこない。
やはり完全に時間稼ぎに徹しているようだ。無視して村に戻りたいが、こいつらを放置する事も出来ない。
「…駄目ですね。敵は霧の維持と操作に集中しているようです。解析は出来ましたが、霧を晴らす魔法で打ち消せるのは極短時間、それも狭い範囲だけです」
メトーデでも無理か。この霧は厄介だから何とかしたい所だが。
魔力探知が出来ないと、魔法使いは敵の不意打ちを喰らう可能性が高まってしまう。霧で視界も悪いし、この状況が続くとフリーレンですら傷を負いかねない。
「…仕方ない。こっちも戦力を分けよう。メトーデとフェルンは霧を操っている魔族を探し出して倒すんだ。私は魔物を殲滅しながら統率してる魔族を探す。シャオは全速力で村に戻ってシュタルク達を援護」
シャオなら間に合うでしょ?…そう言われたので力強く頷く。
魔族達をみーんなやっつけて、それが終わったら村で祝杯をあげようではないか!
三人に短く別れを告げ、自分は村に向かって一直線に駆けだすのであった。
───先日は結局、村人達は救えたが駐留していた騎士団は守る事が出来なかった。
今度はシュタルクもゲナウも、教会にいる村人達も皆助けるのだ!
★☆★☆★
シャオが村へ向けて移動を始めてから少しした頃。
ゲナウは敵の魔族と交戦しながらも、現状を打破する手段に頭を悩ませていた。
「
ゲナウの背に生えた漆黒の翼から無数の羽根が飛び出す。
岩をも容易く貫く鋭さと、鋼を越える頑強さに恐ろしいまでの破壊力を秘めた魔法の羽根。しかし、弾丸の如く放たれたそれらは魔族が手に持つ刀を一振りするだけで吹き飛ばされてしまった。
「いくら攻撃しても無駄だ。お前は私に近づけないし、私から逃れることも出来ん。レヴォルテ様の戦いの邪魔はさせんぞ」
旋風と言うが、その威力と効果範囲は自由自在。人間を容易く吹き飛ばす広範囲の暴風を放つ事もあれば、固い地面を引き裂き、砕いてしまう威力の飛ぶ斬撃のようなものも使用出来る。
「(このまま続けても勝つことは出来るが、その頃にはシュタルクが死んでいる。堅実な戦い方も、この魔法も…今はとにかく厄介だな)」
それに…と、チラリとシュタルクの方を見る。
レヴォルテの猛攻はすさまじく、シュタルクは防戦一方の状況に追い込まれている。今は致命的なダメージは受けていないが、それも時間の問題だろう。
───レヴォルテと眼帯の魔族が来襲したのは、シュタルクとゲナウが世間話などをしながら交流を深めていた時のことだった。
レヴォルテの初撃を二人が回避した後。
身構える二人に対し、レヴォルテが強い殺意を込めた声で語り掛けて来た。
「お前は…お前だけはこの私が殺さねばならん。私の戦士としての誇りにかけて」
…ゲナウとレヴォルテには因縁がある。
かつて、ゲナウは相棒の一級魔法使いをレヴォルテに殺害され、そのままレヴォルテをまんまと取り逃がしたことがあった。
互いに遠目でチラリと見た程度だが、どうやらレヴォルテの方もしっかりとゲナウを覚えていたようだ。
このままレヴォルテ対ゲナウの因縁の対決。
シュタルクと眼帯の魔族による戦士同士の戦いが始まる流れ…だったはずなのだが。
「殺してやる…殺してやるぞ…!」
「来るぞ、シュタルク」
「わかってる。ゲナウ、あんたの相棒の仇を───」
「赤毛の戦士…!」
「───とって…え、俺!?」
レヴォルテは一直線にシュタルクに襲い掛かかって来た。
ゲナウも応戦しようとしたが、眼帯の魔族に吹き飛ばされて分断されてしまい現状に至る。
「(奴はシュタルクに執着しているようだが…いや、そんなことはどうでもいい。今はとにかく、こいつをとっとと始末して援護に行くべきだな)」
ゲナウは疑問を振り払うと、翼と飛行魔法を併用して眼帯の魔族に猛スピードで接近する。
「無駄だと言っているのが理解出来ないのか?」
魔族が鋭い突きを放つと、まるで竜巻のような突風が放たれた。
咄嗟に翼を地面に突き刺して体を固定するが、その間に眼帯の魔族に距離をとられてしまった。
「先ほどからこればかりだな。戦士ともあろうものがチマチマと時間稼ぎなど、お前にプライドはないのか?戦士らしく真っ当に戦ったらどうだ?」
「………」
「(挑発も駄目か。本当に面倒なやつだな)」
上位の魔族の指揮下にある魔族は、自分自身の欲求や感情よりも命令を優先的に行動する。無論、命令を聞かずに半ば好き勝手動くような魔族も多いしピンキリだが、この眼帯の魔族は結構真面目な方らしい。
レヴォルテから、魔法使いの方を寄せ付けるなとでも命令されているのだろう。
挑発してからは怒気も感じられるし殺意も増したが、それでも戦い方は丁寧で堅実なままだ。
「(…今はとにかく時間が惜しい。多少の被弾は覚悟してここは特攻を…だが、負傷した状態でレヴォルテに勝てるのか?)っ!」
「戦闘中に考え事か?」
距離を取るように戦っていた眼帯の魔族が、突如として高速で肉薄してくる。
レヴォルテが四刀流の達人ならば、眼帯の魔族は一刀流の達人だ。魔力や身体能力はまだ将軍レベルではないとはいえ、数百年研鑽し、鍛え上げた技術は人間の戦士を凌駕する。
そしてもう一つ。
命令通りに時間稼ぎに徹しつつも、隙あらば仕留めようとする優れた判断力も持ち合わせていた。
眼帯の魔族の刀が、ゲナウが咄嗟に作り出した防御魔法を切り裂こうとし───
「もらっ───なにっ!?」
───横合いから飛んできた何者かに刀を弾かれ、眼帯の魔族は吹き飛ばされた。
「シャオか」
「こいつは私に任せて、ゲナウさんは♰神技のレヴォルテ♰を!」
「わかった。そいつの魔法は攻撃を旋風に変えるものだ…気をつけろよ」
「行かせると…くっ」
眼帯の魔族を吹き飛ばした者…シャオは剣を構えて突撃した。
魔族は魔法をキャンセルされ、そのまま接近戦で激しく切り結ぶ。
「(奴の魔法の弱点をこの一瞬で見抜いたのか。試験の時は自身を天才だと評価していたが…過大評価ではなかったのか)」
ゲナウは感心したように頷くと、翼を翻してシュタルクの援護に向かった。
★☆★☆★
眼帯の魔族は苦しんでいた。
バックステップ、フェイント、飛行魔法…使えるものはすべて使い、何とか距離をとろうとしていたのだが。
「(これならどうだ)」
眼帯の魔族は瞬時に脚力を強化し、複数回の側転で距離を取る…が、しかし!
「…」
「(またか…!)」
シャオは無言で同じく側転!魔族とのワン・インチ距離を維持!
ナムサン!眼帯の魔族はどう足掻いてもシャオを引きはがせない!
「(ち、近すぎる。この距離では魔法どころか刀を振るう事すら出来ん)」
そう。眼帯の魔族とシャオは非常に距離が近い。
眼帯の魔族は刀を振れないし、シャオだって剣を振れない。
結果、互いに至近距離で見つめ合ったまま戦場を移動し続けるという、中々にシュールな絵面になっていた。
「何がしたいんだ貴様は!」
「(そ、そんなこと言われても…)」
魔族と同じようにシャオも内心で困惑していた。
戦いにおいて、相手の嫌がることをするのはある意味定石である。
シャオは接近戦を挑んだ際、相手の魔族がなんとなく嫌がっているような雰囲気だったので、勢いで今のような超至近距離に踏み込んだのだ。
そうしたら眼帯の魔族はますます嫌がって距離を取ろうとする。
刀も振ってこないし、なぜか魔法も使ってこない。スピードはこちらの方が上。
じゃあ続けてみよう…そんな感じのノリと勢いでやっただけである。
とりあえず村から引き離そうとして、どうにか近くの森の中まで誘導するのには成功したのだが…これから先の事を何も考えていなかった。
「(剣の腕はよくわかんないけど、相手は眼帯で刀使いだ…強敵に決まってる。あと飛ぶ斬撃みたいなかっちょいいけどヤバい技も使ってくる。だから距離は取りたくないけど…体術で勝てるかなぁ。あんまり自信ないんだよ…)」
「(スピードはこのエルフの方が圧倒的に上だ。この距離を維持すると言う事は、この距離で有効な魔法を使えるか、高度な体術を会得している可能性が高い。移動を続けて攻撃する暇を与えない方がいいか…レヴォルテ様が勝ちさえすればこの状況も変わるはずだが…)」
この状況をフリーレンが見ていたら呆れてこう言うだろう。
『せっかくシャオが得意な森の中に来たんだから、障害物を活用しながらスピードで翻弄すれば簡単に倒せるよ。なんで魔族とお見合いしてるの?シャオはお馬鹿なの?』
お馬鹿である。
かつてフリーレンを断頭台のアウラと勘違いした時のように、やる気がありすぎて空回りするとポンコツになるのがシャオであった。
戦い(?)の終わりは突然だった。
村の近くで感じていた強大な魔力があっという間に弱っていく…それが意味するところはつまり…
「馬鹿な、レヴォルテ様が負け───あっ」
「あっ」
動揺で隙を晒した眼帯の魔族。
一瞬の隙を見逃さず、シャオは反射的に剣を振っていた。
眼帯の魔族は首を刎ねられ、口を丸く開いた間抜けな顔のまま魔力の粒子となって消えていった。
「………」
その場に残されたのは、なんとも微妙そうな顔で佇むシャオだけである。
「…あ、名乗りあげるの忘れてた」
人外+眼帯+刀+えっちな服装…要素だけ書き出すとまるで2Bみたい。
変身するロリ魔族ちゃんの騙し打ちがなかったのでゲナウは負傷してないし、シュタルクも重傷じゃありません。しかもレヴォルテさんは負傷して弱体化していたのであっさり死亡。
片角の魔族とロリ魔族ちゃんは、それぞれフリーレンとフェルンに消されました。
ロリ魔族ちゃんが魔物に変身して群れを統率していた、という設定です。
…ロリ魔族ちゃんでいいですよね?ショタじゃないですよね?