自分をエルフだと思い込んでいる一般ポンコツ魔族   作:エルフの耳バーガー

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オリ主がアウラ如きに負けるわけが…


大決戦!断頭台のアウラ

 

 

 

───勇者ヒンメルの死から28年後。北側諸国グラナト伯爵領近郊。

 

 

関所を無事に通過し、エング街道の先にある町を出て少し進んだ地点。

 

グラナト伯爵領に入る前の最後の野営。 夕食を終え、わが師アイゼンから頂いた葡萄を堪能している時に事は起こった。

 

遠方から突如として発生した魔力。 立ち昇る魔力は圧倒的で、人類では決して到達しえない領域に立つ存在…魔族のものだと理解した。

 

魔族の居場所は、現在の野営地とグラナト伯爵領のちょうど中間あたりだろうか。

 

よくよく調べると、膨大な魔力に遮られてわかりにくいが傍にもう一つの魔力を感じた。 こちらは先の者程ではないが、それでも人間の魔法使いではあり得ない量の魔力を放っている。

 

 

…強大な魔力を放つ二体の魔族。

グラナト伯爵領の近くと言う事は、特別大きな魔力は恐らく魔王直属の幹部『七崩賢』、断頭台のアウラである可能性が高いか。 もう一つの魔力は配下の魔族だろう。

 

この距離で野営は危険だと判断し、ひとまず気配と魔力を隠して偵察する事に決めた。

 

グラナト伯爵領にいるフリーレン一行も気づいているだろうが、万が一と言う事もある。 速やかに偵察し、衛兵やフリーレンにアウラ出現の情報を伝えた方が良いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現場の近くまで来た。と言っても、普通の人間では米粒程の大きさも見えないような距離だが。

狩人としての優れた視力、それをさらに魔法で強化すれば現場の状況を目視する事は容易い。 目を凝らしてよく確認する。

 

───視界に映ったのは、辺り一面に広がった死体の海だった。

死体はそれぞれ立派な鎧や剣などの武器を握っており、国家に所属する人類の守護者であると見受けられる。 それらの死体は無惨にも首から上が何処かへ消え失せ、力なく地面に横たわるばかり。

 

そして…戦士達の屍に囲まれながら、眉一つ動かさず超然と佇む人型。

 

白、あるいは銀の髪をツインテールにし、杖を携えたエルフの少女。

整った顔立ちは感情の見えない無表情で、その様はまさに氷のように美しい。

 

自分が追いかけていた目標の人物。 勇者ヒンメルと共に戦った、偉大なるエルフの魔法使いフリーレンと特徴が合致している…少なくとも外見上は。

 

 

 

薄っすらと頭に思い浮かんでいた、最悪の可能性。

頭の中で、いくつものキーワードが繋がっていく。

 

 

ここに来る間に、二つ目に感知した方の魔力反応が消えてしまった。 そう、消えたのだ。 徐々に減ったのではなく突然消えた…経験上、魔力の持ち主が何らかの理由で死んだ可能性が高い。

 

そしてフリーレンと思しき人物の魔力。最初に感知した絶大な魔力の持ち主の筈だが、今は熟練の老魔法使いレベルにまで魔力が減っている。

 

 

……………そうか、そういう…事だったのか。

 

 

真実に辿り着いた結果。 後悔、悲しみ、怒り…様々な負の感情が胸の内で暴れまわる。

衝動に任せるままに魔力の隠匿を解き、屍の海に佇むフリーレン…いや、断頭台のアウラの前に立つ。

 

 

 

答えはこうだ。

 

フリーレンはわが兄弟子シュタルクと、自身の弟子であるフェルンという魔法使い。 そしてグラナト伯爵の配下の兵士を連れてアウラの迎撃に出たのだ。

 

断頭台のアウラは、かつての勇者ヒンメル一行と戦って生き残る程の強者。 そして、今回は勇者パーティからはフリーレン一人しか参戦していない。 一対一では勝てないと悟ったフリーレンはグラナト伯爵と協力してどうにかアウラを倒そうとしたのだろう。

 

しかし、力及ばず敗れてしまった…これが答えだ。

悪く言うつもりはないが、普通の兵士では数を揃えても魔王を倒した勇者や戦士の代わりにはなるまい。

 

それでも勇敢に戦ってアウラの魔力を大幅に削ったが、兵士達は全員アウラによって首を落とされてしまった。 フリーレンの死体は見当たらないので、塵一つ残さず消し飛ばされたか、あるいは喰われたかのどちらかだろう。

 

アウラは減った魔力と戦力を補うため、フリーレンの外見を何らかの手段でコピーして擬態。 フリーレンの姿でグラナト伯爵領に戻れば領内の人間は油断するだろう。 弱体化しているとはいえ、街中で暴れられた場合の被害は…想像したくもない。

 

 

 

 

こちらに気付いたアウラが杖を向けて来た。

これでフリーレンである可能性はなくなった。 同じエルフに理由もなく杖を向ける筈がないからだ。

 

1000年を生きる大魔法使いを返り討ちにした怪物。

 

…今まで戦って来た中でも一番の大物だ。

アウラの構えには隙が見当たらず、向けられた冷たい殺気だけで心が折れそうになる。

 

だが臆するわけにはいかない。

人々の平和な暮らしを守るため、これ以上の犠牲を出さないため。

…そして、アウラに殺されたフリーレン達、亡き戦士達の為にも。

 

 

───魔力ではこちらが上だが、数百年分の戦闘経験を覆すのは難しいだろう。

 

 

アウラについては詳しくは知らないが、断頭台の二つ名からして接近戦を得意としている可能性もある。

不用意に近寄るのは危険。 ここは近接戦を避け、中距離からの魔法で確実に削り殺すべきと判断した。

 

まずは分身魔法を使って数を揃える。 作る分身の数は…3体。

分身魔法は得意ではない。 安定して分身を作れるのは2体が限界だが、無理をすれば3体でもいける筈。

 

 

本体と分身の合わせて4人で取り囲み、絶え間ない攻撃で防御魔法を使わせて魔力を限界まで削る。

そして最後は一斉攻撃で仕留める…これだ。

 

 

アウラはここで必ず仕留める…!!

 

 

後世に語り継がれるであろう、伝説の戦いの火蓋が切られた───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───勝敗は決した。

 

「こ、こんな筈じゃ…そ、それ以上こっちに近寄るなぁ!」

 

「…」

 

「ヒィ」

 

半泣きで喚き散らす巻き角の魔族の言葉に一切の反応を返さず、確実に屠れる場所までじりじりと距離を詰める。

彼我の距離が縮まるにつれて巻き角の魔族は段々と言葉数が少なくなり、ついには地面に座り込んでしまった。

 

距離を詰めていたアウラ…ではなく、魔法使いフリーレンはじっと巻き角の魔族を観察した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その魔族と邂逅したのは、アウラを始末した後の事だった。

 

グラナト伯爵領にもアウラの配下である魔族達がいたが、それらは自身の弟子であるフェルンと、アイゼンの弟子であるシュタルクが倒しただろう。 自分の加勢は必要ない、そう思ったフリーレンは街には戻らずその場を動かなかった。

 

なぜなら、アウラの支配から解かれた兵士達の遺体が残っているからだ。

彼らはアウラの軍勢と戦って命を落とした勇敢な戦士達。 このまま放置すれば野生の獣や魔物に喰われてしまうかもしれない。

 

伯爵の配下の者が回収しに来るまで、彼らの遺体を守ろうとしていた時…フリーレンの前にその魔族が現れた。

 

フリーレンよりも僅かに背は高く、側頭部に二本の巻き角を生やした少女の魔族。

 

「(今更増援…?こっちは疲れてるのに…はぁ、面倒だけどやるしかないか)」

 

アウラとの戦いで体力と魔力を消耗している。

全力は出せないが、しかし目の前の魔族と戦えない程ではないと分析した。

 

感じ取れる魔力はアウラの半分程度。

一般的な魔法使いには脅威と言える魔力量だが、消耗した今のフリーレンよりは圧倒的に少ない。

 

「(ま、油断はしないけど。私とアウラの戦いを見ていた可能性もあるし、その場合は私の本来の魔力量も把握されている…それを知った上で戦いを挑んでくるなら)」

 

魔族は魔力量で格付けを行う。

自身より圧倒的に魔力の多い相手に挑むと言う事は、何らかの勝算がある事に他ならない。

 

両者が身構え、静寂がその場を満たした。

言葉で人を惑わす魔族には珍しく、巻き角の魔族は言葉(鳴き声)を発する気はないらしい。

 

「───っ!」

 

先手を取ったのは魔族だ。

何らかの魔法を使ったのか、本体と同じ体格をした人型が現れた。

 

「(幻影…いや、実体のある分身か)」

 

分身の数は3体。 これが巻き角の魔族の固有の魔法なのか…と、観察していたフリーレンはとある違和感に気が付き、内心で困惑した。

 

「(分身の髪の色が全員違う。 どうして色を分ける必要が…特に3体目は明らかにおかしい。 本体も魔力切れ寸前になってるし…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いは長くは続かなかった。

 

1体目の青髪と2体目のピンク髪の分身は、攻撃と防御をそれぞれ役割分担して連携。

 

だが3体目の黒髪。 こいつは一定間隔で一般攻撃魔法(ゾルトラーク)を明後日の方向に撃つだけだった。

魔力は前者の分身2体より多いのに、使用する魔法は最低出力の一般攻撃魔法(ゾルトラーク)のみ。

 

フリーレンの牽制の一撃を棒立ちのまま受けて消滅。 ここまで戦闘開始1分足らず。

 

残った分身にも手古摺ることはなかった。

青髪も一般攻撃魔法(ゾルトラーク)しか使わず、しかも直線的な攻撃しかしないので回避も防御も容易。

ピンク髪は本体も青髪も守るためか、防御魔法を頻繁に、しかも全方位に使用していた。

 

なお、本体はピンク髪の背中に隠れていた。

 

ピンク髪は魔力が尽きると消滅したため、その瞬間に攻めて残った青髪の分身を瞬殺。

本体はさすがに簡単にはいかず、フリーレンの放つ無数の攻撃魔法を俊敏に回避していた。

 

 

とはいえ、それも限界だろう。

取り出した剣はすぐさま弾き飛ばし、次いで取り出した弓矢も吹っ飛ばした。

 

そうして残ったのは、魔力を失い、武器も失い、迫る死の恐怖(フリーレン)に怯えて震える無力な魔族のみ。

 

 

 

 

 

………胸中で渦巻く複雑な感情を押し殺し、フリーレンは止めを刺すべく距離を詰めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぇぇ…ヒック」

 

「…」

 

旅人は先ほどまで子供のように泣いていたが、今はある程度落ち着いたのか小さく嗚咽を漏らすだけとなっていた。

 

抵抗する気はないのか、距離を詰めて来たフリーレンに対しても全く反応しない。

 

「何か、言い残す事はある?」

 

フリーレンが静かに問いかけた。

感情が見えない無表情の仮面の奥で、フリーレンがどういった思いで旅人に問いかけたのか。それは本人にしかわからないだろう。

 

問いかけられた旅人は、ぐしぐしと涙を拭うと勢いよく顔を上げる。

綺麗な顔は土埃と涙でぐしゃぐしゃになっていたが、この絶望的な状況下で目はまだ死んでいなかった。

 

「ま、まだ私は負けてない!」

 

「…」

 

「あ、いや…私は負けたけど、私の代わりにきっとししょーがお前を倒す! だから…」

 

最後の気力を振り絞って立ち上がる。

足は小鹿のように震え…否、体全体が震えていたが、それでも真っすぐフリーレンと目を合わせ、勢いよく指差して叫んだ。

 

「こ、これで勝ったと「フリーレン様」思う、な…よ…?」

 

「遅かったね」

 

無情にも、一人の少女によって旅人の言葉は遮られた。

紫がかった紺色の長い髪と、魔法使いらしい黒いローブ…は、今は着ていない。

 

フリーレンの弟子である魔法使いの少女、フェルンだ。 傍にはシュタルクもいる。

離れた場所には数人の兵士が護衛している馬車が停めてある。 グラナト伯爵が乗っているのだろう。

 

「この魔族はアウラではありませんよね?」

 

「うん。アウラはもう始末した。これは増援だと思う…今止めを刺すから」

 

「お待ちください」

 

「フェルン?……え、なにこれ」

 

フェルンは懐から手紙を取り出すと、広げてそのままフリーレンに差し出した。

フリーレン達の戦闘の余波を受けたのか、少々ボロボロになっているが内容は問題なく読めそうだ。

 

「ここに来る途中で拾いました。 この手紙にはアイゼン様の血判が押してあります」

 

「…うん。 間違いなくアイゼンが書いたものだね。 で、今これを読めって?」

 

「この魔族に止めを刺すかどうか、その手紙を読んでから判断してほしいのです」

 

「伯爵は全部不問にするってよ。 そいつを読むくらいの時間はあると思うぜ」

 

ここは代わりますから、と。 フリーレンの代わりに杖を旅人に向けるフェルン。

フェルンは魔法の速射に関して非常に優れた技量の持ち主だ。 旅人が僅かでも怪しい動きをすれば一瞬で殺せるだろう。

 

シュタルクも斧を構えていつでも動けるように待機している。

 

「………」

 

フリーレンは旅人への警戒を解かないまま、無言で手紙を読み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間にしてほんの数分だろうか。

手紙を読み終えたフリーレンは深いため息を吐くと、顔を蒼くしている旅人に近づいた。

 

「これからいくつか質問するから答えてね。 嘘はダメだよ」

 

「…はい」

 

「その様子だと状況は理解出来ているみたいだね。 あ、言っておくけど私は謝るつもりはないから。 先に仕掛けて来たのはそっちだし」

 

「あっはい。 ごめんなさい」

 

「よし…じゃあとりあえず、君の名前を教えてくれるかな?」

 

フリーレン一行が見守る中、旅人は震える声で名を告げた。

 

「わ、私の名前は───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




分身魔法はナ〇トの影分身に近い感じ。でも分身ごとに個性がある。
分身体を作る際に本体が魔力を分け与えます。魔力が切れたら消滅。

1体目は青髪。性格は一番本体に近い。頭脳派。
考える時間が長いせいで戦闘スピードに追い付けず、終始翻弄されて消滅。
使える魔法はゾルトラークのみ。

2体目はピンク髪。機械の様に感情無い系。
状況を的確に判断し、終始防御に徹した。
防御魔法しか使えない。

3体目は黒髪。失敗作。
一定間隔でゾルトラークを撃つだけの固定砲台。秒殺された。

練度が低いせいで実戦で使えるレベルではありません。
緊張とやる気が空回りしたせいで大失敗しました。

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