上を向き空を見上げる。良い天気だ。雲1つ無い澄み渡る青い空。飛んでいるあの鳥は何と言う種類の鳥だろうか。
昨日までなら気持ちの良い天気だと評しただろう。
ジャオ家と言う地方貴族の三男に生まれ平和で豊かな毎日と少しの将来への不安を胸に、心安らかな気持ちで空を見上げただろう。
「それでは皆さん、お手元の『楽しい襲落旅行のシオリ』の1ページ目を開いて下さい」
聞こえてきた声に前を、というか現実を向くと、手元の小冊子を開きながらこちらに話しかけてくる女性が1人。俺の叔母、アンリ ジャオがイキイキと話している。
この叔母、父の妹だと言う話だがどう見ても俺と大差ない年齢にしか見えない。10代後半から20代前半に見える。40間近の人間には見えない。
その容姿もあるが、若くして家を飛び出し、婚約もせず、何をしているのか偶にフラッと実家に帰って来ては大金を置いてまたフラッと出て行くという、よく分からない行動から、親戚の中でもよく分からない浮いた存在として知られている。
俺も数回しか会ったことが無い。
「本日はここアスカラ村で仕事をします」
周囲に目をやる。
叔母さんの後ろの方に小さく村が見える。あれがアスカラ村とやらだろう。
俺と叔母さん以外には皮製の胸当など簡単な鎧類を身につけた40代くらいの男性が3人と、15、16くらいの年齢の男女が全部で12人いる。
「あそこのアスカラ村では先日の詐欺事件により被害者多数。遂には借金で首が回らなくなり盗賊に身をやつしています。近隣の被害者も合わさり約200名程の盗賊集落を築いております」
そう言って手に持った小冊子を丸めて村に突きつける。
「気の毒ではありますが盗賊行為は見過ごせません。早急な対応が求められます」
神妙な顔で話しているが声が弾んでいる。まったく同情していないのが声から伝わってくる。
「そんな訳で傭兵の皆々様には元村人、現盗賊の間引き作業のお手伝いをしてもらいます。数は多いですが所詮素人の寄せ集め、練度は低いですし覚悟もありません。1割2割切り捨てれば自然に崩壊するでしょう」
周りの人達は叔母がお金で雇った傭兵らしい。それにしては若いというか俺と大して歳が違わないのが大半だ。
「はい、ここまでで質問がある人は挙手してください」
事前にしっかりと説明はしてあるので誰も手をあげない。あくまで確認のためにしている説明だ。
「はい、それでは最後に注意事項の確認です。今回の仕事はあくまで内乱の鎮圧が目的です。彼等は我が国の国民であり、大切な資産です。殺害は最小限に、降伏後の殺傷は禁止します。また、掠奪、強姦の類も同様です。その分、お給金は多く支給させてもらっています。万が一見かけた場合相応のペナルティを課しますのでご注意を」
これも事前に周知しているだけに疑問や反論は起こらない。
「はい、それではリーダーさん、後はよろしくお願いします」
「了解した。よーし、それじゃあお前達、行くぞー」
「「「「ウィーっす」」」」
そう言って40代のベテランっぽいおっさんが皆を引き連れて村に向かって行く。
空を見上げる。良い天気だ。
「なぁ、叔母さん」
叔母と2人だけ残されて、つい話し掛ける。
「何かね?リトルヤングスモールミニマムファッ◯ンネフュー?」
「すみません、アンリさん。質問よろしいでしょうか」
物凄い切り返しがきた。
「何だい、クロム君」
色々聞きたい事はある。あるがまずは…
「俺は何でここにいるんですか?」
コレだ‼︎
「ていうか、何で俺が内乱の鎮圧に駆り出されてるの!何で家族の中で俺1人だけなの⁈何で領地の治安維持を傭兵がしてるの‼︎」
他の家族はどうした!領地の私兵はどうしたの‼︎
配られた『襲落旅行のシオリ』とやらを地面に叩きつけ、思わず叫んだ。