TS外道転生者のガゴウ   作:般若バール

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Side クロム2

 

 村の中を2人で歩いて行く。可愛い女の子と2人きりだが嬉しくも何とも無い。

 死体の転がる寂れた村で浮かれた気分になどなれない。

 

「えっと、とりあえずよろしく」

 

 2人でいるように言われたはいいがどうしたらいいか分からず、とりあえず無難に挨拶をする事にする。と言うか女の子と2人きりで会話するのは勿論、傭兵との会話の仕方など知らない。

 

「俺はクロムだ。君は?」

 

 とりあえず名前を聞いてみる。

 

「ヴァネッサ」

 

 とだけ簡潔に言われた。

 

「あー、ヴァニーって呼んでも?」

 

「構わない」

 

 それからヴァニーは黙々と仕事に戻っていく。き、気不味い。会話が続かない。いや、それでいいんだけど。ヴァニーにとっては仕事中だし喋っている方が間違いなんだけど。

 コミュニケーション能力の高いわけではない自分にしては愛称で呼んだだけすごい事だよ。頑張った方だよ。誰か褒めて。ついでに助けて。無言が辛い。

 

 無言でいると空気もそうだけど、聞こえてくる争いの声や道に転がる死体なんかで気が滅入って来るんだよなぁ。

 父さんに借金のかたに叔母に押し付けられた事実も合わさって気分がどんどん落ち込んでくる。

 出来れば無理にでも他の事を考えて気を紛らわしたいが、現実を見据えるしか無いのが辛い。

 

「2つ忠告」

 

「えっ⁈」

 

 俯いていてせいで気づかなかったが、いつのまにか目の前に立っていたヴァニーが真っ直ぐに此方の目を見て話しかけてくる。

 

「1つ、ここは一応戦地。上の空でいるのはやめて」

 

 うっ、と思わず声が出る。ごもっともすぎて言い返す言葉もない。はい、すみません。反省します。

 

「2つ、あの女には関わらない方がいい」

 

 うん?2つ目については思わず首を傾げる。あの女って叔母さんの事だよな。

 

「それはどうして?」

 

 俺も叔母さんの事は良く知らないがそんな風に言われる人でもなないと思うんだけど?

 いや、戦地に引き摺り込まれた時点で厄介者か。

 

「勘」

 

 いや勘って。

 

「あー、まぁ、身内だから関わらないのは無理だけど忠告は聞いておくよ」

 

 とりあえず無難に返事をしておく。

 

「そう」

 

 それだけ言ってまた仕事に戻っていく。

 

 それからはまた無言の空間が続いた。ただ決められた範囲を歩き、時折出てくる敵に降伏を促し断れば殺す。

 そんな時間がしばらく続いていたと思うと

 

「お、いたいた。おーい坊ちゃん」

 

 通りの向こうからベテランっぽい傭兵のおじさんが走ってくる。坊ちゃん呼びは気になるが、まぁこの人にとっては俺なんか世間知らずのお坊ちゃんに見えるのかな。

 

「坊ちゃんはやめて下さい、俺はクロムって言います」

 

「おっ、そりゃ悪かったな。それでクロム、アンリさん知らないか?とりあえず制圧終わって今は村の中央の広場に全員集めているんだけどよ」

 

 言われてみれば先程から争いの声が聞こえない。

 

「アンリさんなら村の入り口近くの民家でお茶飲んでるよ」

 

 そう言って民家の方を指差せば

 

「あー、そりゃ剛毅なこって。まぁお前等は先に広場に行ってろ。俺はアンリさん呼んでから行くからよ」

 

 そう言って手をひらひらしながら走って行ってしまった。

 

「あ、そういえば名前聞きそびれた。まぁいいか。それじゃあヴァニー先に行こうか、って早っ!」

 

 振り返れば遠くにスタスタと歩いているヴァニーがいて慌ててその背中を追いかける。

 

 

 

 

 村の中央の広場に着けば老若男女問わず100人以上の人が集まっていて、その周りを傭兵の人達がぐるりと取り囲んでいる。

 村人達の様子は、不安そうに此方を見る者。恨みのこもった目で此方を見る者。ヴァニーを欲情した目で見ている剛の者など様々だ。

 いや、最後の奴状況分かってんのか?捕虜が看守に色目を使うな。

 

 ともかくそんな様々な人達を見ていると

 

「いや、お待たせして申し訳ない」

 

 そう言って叔母がやって来る。待たせて申し訳ないとは言っているが湯呑みを持ってお茶を飲みながら歩いている辺、全く急いでいないのがわかる。

 手に持っている湯呑みを後ろに投げ捨てて歩いて来る。ガシャンと湯呑みが割れる音がする。

 ……それも人様の家の物だろうに悪びれた様子が一切無い。

 

「はい、皆さん静粛に。私は今回の件を領主から任されたアンリ ジャオと言います。今後の事について話があるので代表者の方は挙手して下さい」

 

 叔母さんの声に反応して1人の村人が手を挙げ、前に出てくる。真っ白な髭を生やし、杖をついたご老人だ。

 

「ご老人、貴方がこの村の代表で間違い無いですか?」

 

「ええ、この村の村長をさせてもらっておりますゴストークといいます」

 

 周囲の人達も皆黙って話に耳を傾けている。自分達のこれからの処遇が決まるのだから当然だろう。

 普通なら盗賊行為は重ければ処刑。軽くても鉱山などの危険な場所での強制労働だ。

 しかし今回はこの人数だし、事情が事情だ。現在の国の情勢的にもこの人数を処刑するのも難しい。となると

 

「先ず最初に今回の件で皆さん全員を処刑する事はありません。今回の戦闘で亡くなった方々もおりますし、罰則として一部の方は徴兵しますが、それ以外の方は罪には問いません。

 更に、領主としても皆さんに可能な限り復興支援をさせてもらいますし、国としても戦争で勝利すれば支援も期待出来るでしょう」

 

 それを聞いて皆、幾らか安堵している様だ。まぁ、妥当なところだと思う。戦争前で無闇矢鱈と人を減らさないだろう。

 

「ただし」

 

 再び叔母さんに皆の注意が向く。

 

「此方の事情もあります。全くのお咎め無しともいきません。そこで責任者であるゴストークさん、貴方には今回の責任をとっていただきます」

 

 それはつまり処刑するという事だ。

 

「この老い先短い身で皆が助かるなら否はありません。今回の件は皆を御しきれなかった私の不徳の致すところ。責任を取り、裁きを受け入れたいと思います」

 

 そう言って頭を下げて受け入れた。

 

 

 

 それからゴストークさんは最後の別れを家族に言い、家族は皆、泣いていた。

 そして今、ゴストークさんは広場に用意された台の上で動けぬよう縛られ、最後の時を待っている。

 

 そして叔母さんは現在、処刑の為に剣を持ち処刑台に立っている。

 

「よっと」

 

 と思ったら突然軽い声を出しながら、叔母さんは処刑台から降りてきて此方に歩いて来た。

 

「どうしたんですか?」

 

 と聞くと

 

「はい」

 

 と言って剣を差し出してくる。

 

「えっ?」

 

 訳がわからずに思わず見た叔母さんの顔はニコニコと場違いなくらいに輝いていた。

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