「これはレオン様、一体どうしましたか?」
あの後、僕はアンリの命令通りに動いた。先ずは直ぐに引き返し、後方の増援部隊に合流した。
増援部隊は物資の補給路等の問題で遅れた等の理由で後から追う形になった部隊で人数は5,000名ほどだ。
「いや何、実は部隊から追い出されてな」
「何と⁈」
後方の部隊の隊長は驚いている。当然だろう。
「実はな」
そう言ってから事情を話し始める。アンリに言われた事はこうだ。
『この先発隊の中にも貴方と折り合いが悪い貴族はいるでしょう?いきなり頭角を現した貴方を目障りに思っている人が。連敗ばかりの所にいきなり現れた貴方によって顔に泥を塗られた長年の軍人が。
いる?この転がっているの?一番偉い人?じゃあ、彼で。彼に後方に追いやられた事にしましょう。潰された面子を取り戻そうとしたとして』
そんな事を簡単に説明する。
「そんな無茶な。それに何故素直に受け入れたのです?」
まぁ、これも当然の疑問だ。
「何、後々の事を考えるとな。軍内部には私の事を良く思っていない者は多い。ここで突っぱねると益々私に対する不満が募り軍内部に亀裂が生じるだろう。
それならここは一度彼等に譲歩して恩を売っておくのも良いだろうと思ってな。
それに私達は今、勢いに乗っている。この勢いに乗れれば私無しでも十分に勝機は有る。それに万が一の場合でも私がいる。問題は無いさ。彼等も手柄をたてて面子を回復してやれば無駄に突っかかってくる事も無くなるだろう」
そう言って説明をしてやる。
「まったく、面倒な話ですね」
「そう言ってやるな。彼等も必死なのだ」
まぁ、下の人間には上のゴタゴタ等知った事では無いだろう。それで自分達が不利益を被るのだから文句の一つでも言いたくなるのは当然だ。
「そんな訳で、私も諸君達と一緒に先発隊を追う事にする」
「はっ!了解しました」
そう言って彼等と共に来た道を再び進んでいく。
それから数日経って、例の忌まわしい砦跡に着く。
しかし、そこには死体1つ無かった。どうやったのかは分からないがあの女の仕業だろう。あの惨劇が嘘の様に、そこでは何も起こらなかった様な静寂が広がっていた。
「あの、大丈夫ですか?随分顔色が悪そうですが」
「ああ、いや、何でも無い。気にしないでくれ」
どうやら表情に出ていたみたいだ。完全にトラウマだな。何とか誤魔化して進んで行く。前回はここまでしか来られなかった。ここから先は僕も知らない景色だ。
だが、この先の景色は見たくない。きっと今以上に……
それから更に数日が過ぎた。旅は順調に進んでいる。しかし……
「大変です!レオン様。先発隊が、都市が‼︎」
戻ってきた斥候隊の報告を聞いた指揮官が慌ててやってくる。遂に来たか……
都市に着いた私が見たものは酷いものだった。
辺り一面に広がる死体死体死体。都市の一部は焼け落ち敵か味方かも分からない死体が多数存在した。
都市の周辺にも内部にも、両軍合わせて6万の死体が散乱していた。
死体の損傷は酷く、ここで激しい戦闘が行われた様に錯覚させる。
「バカな!何だ、これは、あり得ない‼︎まさか両軍共、全滅するまで戦ったとでも言うのか!」
そう、目の前にはあり得ない光景が広がっていた。
一方的な蹂躙ではない。互いに全滅するまで引かずに戦う。あり得ない光景が広がっていた。
「分からない。分からないが、今はこの後どうするかが重要だ。どうする?直に敵の増援部隊も此処に来るだろう。この様子だと都市を直ぐに利用するのは無理だ。私としては一度引いて態勢を立て直す事を勧める」
「それは……」
しばらく考えて現場指揮官は私の案を採用してくれた。
当然だろう。何が起こったかも分かっていない上に、都市が使えない状態で敵軍と野戦なんかしたくはないだろう。
結局後方に戻り進軍は取り止めになった。
『其方も2面作戦の状態を何とかしたい。此方も戦争推進派閥の筆頭が死に残った非戦争派が力を持つでしょう。なら貴方から多少で良いので譲歩する様に言ってもらえませんか?それでこの戦争は終わります。
まぁ、あとの世代で問題になりそうですが、どうでもいいでしょう、そんなの?』
アンリはそう言っていた。
その後私は国に戻り、今回の件を報告。また、戦線縮小の為にほんの少しで良いから譲歩してほしいと訴えた。
事実、事の始まりは我が国の詐欺組織なのだ。その分だけで良いからと。
その後再び進軍は行われず、結局そのままアルバ王国との休戦協定が結ばれて対アルバ王国戦線は終了を迎えた。