前世で私が一番好きだったゲームのジャンルはRPGでした。勿論他のジャンルもプレイしていましたがやはり一番好きだったのはRPGでした。
しかし、一時期とあるジャンルのゲームに熱中していた時期がありました。そのジャンルとは箱庭系のゲームです。家を作ったり、動物を飼ってみたり、探索をしたり、まぁマ◯クラですね。それに熱中していた時期がありました。
その箱庭の中で、私が一番好きだったことは何か?
それは……
はい、クロム君達との飲み会から2ヶ月が経ちました。
ゴルビア王国での下準備を終えて最後の仕上げの為に私は現在実家の領地にいます。
この場所は領地の端っこで開拓がまだ行われていない場所にあります。深い森があり魔物が多くいるうえに、領地にはまだ豊かで安全な場所に開発の余地がある事から後回しにされていた場所です。
とは言え、近くに川もあり、立地的には悪くないので将来的には森を切り開き木材の採取地とする計画ではあったみたいですが、この状況ではまだまだこのままでしょう。
因みに、この森の中に以前私が運営していた武器工場があります。川はそこまで広くなく、大型船は通れませんが、小型船なら通れ、海までつながっています。出来た武器をこっそりと小型船で運んで海まで持っていき、そこで大型船にまとめ輸出していました。
さて、今回は森の方には用はありません。今回用事があるのは川の方です。正確には川の近くにある岩場です。
その岩場に人が1人ギリギリ通れる狭い隙間があり、私はそこに入っていきます。
実はここ、未発見のダンジョンです。
とは言え規模は小さく、ダンジョンとしては最下級の小ダンジョンです。
出てくる魔物もゴブリンやスライム、コボルトといった弱い魔物ばかりで、階層も浅く、攻略する旨味は少ないダンジョンです。
しかし、このダンジョン、とある目的の為には最高の条件を揃えています。
ダンジョンの奥に進むにつれ強烈なプレッシャーがかかってきます。本来この規模のダンジョンではあり得ない程の圧力です。
そうしてダンジョンの最奥のとある部屋に入ります。中は六畳くらいの大きさで岩場が剥き出しの何も無い部屋です。
しかし、その部屋には一体の住人がいます。
「やぁ、久しぶりですね。一年ぶりくらいかな?色々忙しくてですね、あまり構ってあげられませんね。ごめんね」
私はそう言って彼に手を振ります。
「フシュー、ゴルルル」
唸り声をあげている彼は、体長はゆうに2メートルを大きく超える巨体で、全身に赤黒い体毛が生え、頭は凶悪なオオカミの顔をした、狼男です。
その瞳は強い憎悪と殺意に彩られています。
そんな彼は今、全身を鎖で拘束され、手足は壁に埋め込まれて更にコンクリートで固められています。
「おや、来ましたね。汚れると嫌だから隅によっておきましょう」
私が部屋の隅によった丁度そのタイミングで部屋の天井から何かが落ちてきます。
「ギャッ‼︎」
グシャリッ
と音をたて天井から落ちてきたゴブリンが人狼の目の前で地面と激突し、潰れて死にました。
狼男は返り血を浴びて静かに目を閉じています。
しばらくするとゴブリンの死体は地面に吸い込まれていきます。
これはダンジョンの特徴でダンジョン内では命なき者は時間経過と共にダンジョンに吸収されていきます。
そう、私はこのダンジョンを改造してトラップタワー、地下だからトラップベイスメントか?まぁトラップタワーでいいか。そう、トラップタワーを作ったのです。
近くの川からダンジョン内に水が流れる様に工事を行いました。内装も出来る限りいじり水が流れやすい様にしました。
小規模ダンジョン故に何とか水が流れる様に出来ました。
出てくる魔物もゴブリン等の小型に限定されていたのも良かったです。軽いので水の勢いに負けて流されてくれます。
そうしてダンジョン内でポップした魔物は流されてこの部屋の天井に運ばれてきます。
そうして天井から落下してこの狼男さんの目の前に落ちる様にしました。
この狼男さん、元はこのダンジョンで生まれた単なるコボルトでした。その彼を拘束し、この部屋に監禁し、彼の目の前で同胞を処理し続けました。
生物が死んだ際に周囲の者に謂わゆる経験値とでも言う魂のカケラが吸収されます。これは直接戦ったり殺害した者以外にも適応されます。
当然、実際に戦った事による、本当の意味での経験は得られませんが、それでも確実にレベルアップしていきます。
ダンジョン産の魔物という条件も良かった。ダンジョン内の魔物はダンジョンによってエネルギーが供給されるので、飲まず食わずでも生きていけます。排泄物なども出しません。
お陰でずっと放置していても死なずにいられます。
「貴方と出会ってからもう4年ですか?いやはや、月日が経つのは早いですね」
この実験を始めてもうそんなに経ちます。
最初は単なるコボルトだった彼も進化を繰り返し、今や見た事もない種に変わっています。
そうしてその瞳からは強い敵意が感じられます。
コボルトは元々群を作る習性がある魔物です。つまり仲間意識があります。
そんな彼の前で永遠と同胞を処理し続けたのです。そうなりますよね。
しかし、それもそろそろ限界です。もうこれ以上彼を拘束するのは難しくなってきました。
「これ、何か分かりますか?」
そう言って彼の目の前で手に持った水晶玉を見せます。
「これは帰還結晶と言いまして、ダンジョン内で使用すると最後に立ち寄った町や村に転移してくれるアイテムです。結構貴重でお高いんですよ?」
彼、魔物ですが、かなり知性が高いと思うんですよね。時折、此方の言葉を理解している節があります。
「いや、苦労したんですよ。態々ゴルビア王国のアルバ王国ともボーア公国とも離れた位置にある町まで行って、そこから一切他の町にも村にも立ち寄らないで帰ってくるの。事前準備が大変で大変で」
行きの道で事前に補給物資を用意して道中に隠しておいたり、盗賊を返り討ちにして逆に物資を奪ったり、ここに来るまで大変でした。
「それでは、名残惜しいですが一旦お別れです。貴方のご活躍を期待していきます」
そう言って彼の足元に帰還結晶を投げつけます。
結晶が割れ、彼の足元に転移の魔法陣が現れ、次の瞬間、彼は消えていました。
残されたのは彼を縛っていた鎖だけです。
これでゴルビア王国には突如として人間に強い敵意を持った強力な魔物が出現した事になります。
しかも、国内の戦力の多くはボーア公国との戦争に徴兵され、手薄な状態です。
これで狼男さんはゴルビア王国でやりたい放題です。
ボーア公国に2面作戦を仕掛けていたゴルビア王国。今度はボーア公国と魔物によって2面作戦を仕掛けられる事になりました。
さて、後は狼男さんがどの程度強いのか?トラップタワーで作れる魔物の強さはどの程度か?
その結果が楽しみです。