最悪だ‼︎
簡単な仕事のはずだった。
俺達山猫部隊に与えられた仕事は村を襲って、子供を攫う。それだけのはずだった。なのに
「なんでレジスタンスの連中がいるんだよ‼︎」
村を襲い始めて直ぐに村の中から反撃があったのだ。
レジスタンスはここ最近活動が活発になってきた反政府組織で俺達みたいな国の兵隊にとっては邪魔な存在だ。
そのレジスタンスが何故かこんな田舎の村にいやがる。
クソッ、ここは奴等の隠れ家だったのか?
予想外の反撃に対処が遅れた。その遅れは致命的だった。村の包囲は破られ、逆に各個撃破されていく。
各地から部下の悲鳴が聞こえてくる。
「隊長!たすけ、ギャあ!」
直ぐ近くの部下が飛んで来た火球に当たり、火だるまになって燃え上がる。
「クソ!退却、退却だ!全員バラバラに逃げろ!」
とても立て直せる状況じゃない。こうなったら逃げるしかない。逃げてせめてこの情報を持ち帰らなければ。
「おい、伯爵様はどうした⁈」
近くの部下に今回の依頼主の居場所を聞くと
「さっき村外れの草むらで寝ていました!」
「はあぁー‼︎」
くそ、この非常時に何を呑気なっ。
見捨てるわけにはいかねぇ。急いで回収しなければ!
急いで村の外にむかえば、呑気にスヤスヤと寝ている依頼主様がいた。
「おい、起きろ!非常事態だ、さっさと逃げるぞ!」
そう言って力いっぱいゆすっていると
「動くな。ゆっくりと手をあげろ」
背中に剣を突きつけられる。くそ、いつのまにっ!気がつかなかったぞ!
両手をあげてゆっくりと振り返る。
最悪だ、ジャックの野郎だ。
2メートル近い長身に鎧みたいな筋肉、間違いない。レジスタンスの中でも要注意人物の1人。元は平民から騎士団の隊長にまで上り詰めた人物だ。
何があったのかは知らないがある日突然騎士を辞めて、それからはレジスタンスになった王国の裏切り者。
こんな大物まで出て来るなんて。
次々に他の敵も集まって来やがる。遂には取り囲まれちまった。10人以上いやがる。万事休すか。
「ふぁ〜、何ですか、五月蝿いですね。今何時だと思っているのですか?常識を知りなさい、常識を。……あれ?」
目を覚ました依頼主様は起き上がって周囲をキョロキョロ見回して、事態を把握したようだ。
「あー、なるほど、いきなりですか。いきなり予定外ですか」
はぁー、とため息をついている。
頼むから変なこと言ってただでさえ風前の灯の命を更に短くしないでくれよ。
そう思いながら今は黙っているしかない。
「アンリ ジャオだな。お前には色々聞きたい事がある。大人しくしていてもらおうか」
ジャックがそう言って剣を突きつければ
「おや?ジャック君じゃないですか。久しぶりですね。騎士の時代に何回かお会いしましたね。確か今はレジスタンスに所属しているとか。と言う事は周りの彼等はレジスタンスですか。面倒くさいですね〜」
そう言って再びゴロンと寝っ転がった。
……この状況でその態度。太々しさが天井を貫いているな。周り連中がもの凄い形相で睨み付けている。
お願いだからこれ以上奴等を刺激しないでくれー‼︎
「おい」
ジャックはそれだけ言って部下が此方を拘束しようと縄を持って近づいてくる。
が
バタン!と音を立てて周囲の人間が一斉に地面に倒れ込んだ。
「い、一体何が?」
倒れた連中を見ると全員意識はあるのか必死に起きあがろうとしているが立ち上がれずに芋虫みたいに地面をのたうち回っている。
彼等も自分に何が起きたのか分からない様で焦りながら周囲を見回している。
「闇属性の基礎。攻撃力低下の魔術ですよ。私と貴方以外の全員にかけました。効果としては自分自身の体重が支えられ無い位に筋力を落としました」
よっと、そう言ってアンリ ジャオが立ち上がって伸びをしている。
いや、嘘だろ⁈聞いた事無いぞ、そんな強力な効果!
確かに闇属性の魔術にそう言った魔術はあるが、そんなのは聞いた事が無い。
しかも、それをこの人数に対して、発動したのが分からないくらいに一瞬で‼︎
「さて、イレギュラーが起きましたが予定に変更はありません。子供を攫い村を焼きましょう。貴方は人を集めてください。子供を運ぶのに人手がいりますから。村の方は仕方ないので私が火を着けて来ましょう」
そう言って村に向かって歩いて行こうとするが
「うぉぉぉー‼︎」
ジャックが叫び声をあげて立ち上がる。
「強化系だ!強化系のスキルを発動するんだ‼︎」
それを聞いたレジスタンスがよろよろと必死になって立ち上がる。
「まぁ、正解ですね。身体強化のスキルで相殺する。正解なのですが貧弱すぎますね。立っているのがやっとではないですか。もっと鍛えないと」
そう言って再び村に向かって歩いて行こうとするので慌てて呼び止める。
「おい、良いのかよ。アイツらあのまま放っておいて⁈」
「構いませんよ。どうせ何も出来ませんから。村が燃えるのをあそこで馬鹿みたいに棒立ちで眺めていてもらいましょう」
最早一瞥もせず歩いて行く。
「いや、でもよ……」
絶対倒しておいた方が良いだろ
「はぁ、いいですか?今は仕事を優先です。納得いかないなら後日ご自身でやってください」
そう言って今度こそ完全に興味を無くしたように歩いて行ってしまった。