怖かった〜。
何ですか?ゴリ押しで立ち上がるとか。本気でビビりました。ポーカーフェイスを維持できていたか不安になります。
この半世紀、様々な事をしてきました。その結果、私はこと魔力量においては誰にも負けないと自負できる位には大量の魔力量をほこっています。
魂に関する様々な実験の成果ですね。
これがゲームだったらMPがシステムの限界を突破したバグキャラですね。
身体能力は普通です。これでもか弱い女子なので。
先程はその魔力量に物を言わせた力技で鎮圧しようとしたら、相手も根性論の力技で返してきた訳で、内心ビクビクしていました。
やはり、脳筋はいけませんね。
……私の人生、若干脳筋気味な気がしますが。
本当はレジスタンスの皆さんを始末して完全なる安心としておきたい所ですが、そうもいきません。これ以上彼等の力を削ぐのは良くないからです。
何故なら、若干やり過ぎました。レジスタンスの力を既に落としすぎました。
彼等はゲームと違いボーア公国と言う大パトロンが有りません。
更に、色々やり過ぎた結果、世の中混迷の時代に有り、人々は自分の事で必死です。他人に目を向ける事が出来る程余裕のある人はほんの一握りです。
結果、彼等は少ない支援と少人数で何とかやり繰りしている状態で、ぶっちゃけ国の上層部からは地方のちょと大きな山賊位にしか見られていない、零細組織でしかありません。危険視しているのは現場の人間だけです。
正直やり過ぎました。もし今、ここで彼等を殺してしまったら、それだけで組織崩壊もあり得ます。なので下手に手を出せないのです。
故に、ここは彼等を慈しみ、その矜持をへし折るだけにしておいてあげましょう。
きっと彼等なら折れた心を繋ぎ直し、より強くなって立ち上がってくれるでしょう。……多分。
因みに、彼等を支援している数少ない人物の中には、我らのクロム君がいます。
私に黙ってそんな事をするなんて、成長しましたね〜。
さて、それでは村を焼きますか。その前に主人公君を確保する為に子供達を拉致しなければ。
私が村につくと村の大人達が鎌やら斧やら農具を持って殺気だっています。襲って来た賊を返り討ちにして興奮冷めやらぬ状態です。私を見た若い男集等、女だ!犯してやろうと、血走った目をして走って来ています。『どうせ相手は悪党だ。何したってかまわないさ!』とか思っていそうです。
暴走状態の民衆は怖いですね。日頃の鬱屈した想いを正義に酔ってぶつけてきますから。
相手にするのも面倒くさいので先ずは軽く威嚇してみましょうか。
そんな訳で軽く魔力を放出します。
これはある程度戦いの経験がある人間なら誰しもが出来る技で、戦闘前のちょっとした格付けや威嚇なんかで行われます。
絶対ではないですが、強い人間程相手に与える印象が強くなりますし、魔力の質や量でも力量を測る目安にもなります。
ついでに、人によって与える印象の中身が変わってきます。その人の能力や性格が影響していると考えられていますが本当の所は分かりません。
レオン君ならば針で刺す様な研磨された感じですし、ヴァネッサさんなら冷たい印象を受けます。
因みにクロム君はドライヤーの温風を思い出しました。
さて、私はと言うと、クロム君曰く
「引っ張られる」
とのことです。
足を、背中を、腕を、髪を、全身の至る所を後ろから大量の腕に引っ張られている気がしたそうです。
そして、何より絶対に引きずり込まれたくないと思う何かを感じた、とのことです。
私は丁度村全体を覆う感じで魔力を放出します。普通は無理です。MPお化けの私だから出来る荒技です。
それだけで村全体から声が消えました。先程まで血走った目をしていた方も無言で固まっています。
皆、無言で地面に縫い付けられた様になっています。動いてしまったら、バランスを崩してしまったらと思うと、後ろに引っ張られる何かに前に進もうと言う気力を奪われている感じです。
私は目の前で動けなくなっている男性が持っている手斧を拝借します。
そのまま彼の頭にその斧を振り下ろし、頭をカチ割ります。これで先程強姦しようと不躾な視線を向けてきたことは許してあげましょう。
恐怖で固まっている村人の間を抜けて主人公を探します。先ずは彼を見つけなければ話になりません。
正直、主人公の家が何処らへんかなんてもう覚えていません。村の名前を覚えていただけでも褒めてもらいたいものです。
女、子供達は家の中に隠れているみたいですね。仕方ありません。手当たり次第に押し入って探していきましょう。
山猫部隊の皆さんがしっかりしていればこんな事しなくて済んだのに。
「はぁ〜」
思わずため息が出ます。
チラリと、私は手元の手斧を見ます。せっかくです。人生で一度はやってみたいリストに有るアレをやってみますか。前世に映画で見た超有名シーン「ヒアーズジョ◯ー」を!
遊び心は大切です。
余計な労働を強いられているのです。少しくらい遊んでも良いでしょう。
そう思った私は手近な民家のドアに手斧を振り下ろしました。