「なぁ、別の国に逃げて一からやり直さないか?」
人々の叫び声がする村から離れた位置に有る林の中から様子を覗き見ながら仲間達に声をかける。結局生き残っていた仲間は全部で5人だけだった。
伯爵様から離れた後、生き残った仲間達を集め、離れた位置から事の推移を見ていた俺だったが、流石に今の状況に巻き込まれるのは勘弁願いたかった。
何処から連れて来たのか、グロテスクな見た目をした怪物が村を襲っている。
村人はレジスタンスの連中を中心に抵抗しているが苦戦して結構な被害を出している。
とは言え怪物は驚異的な身体能力や特殊な能力は持っているが、戦い自体は力任せの一辺倒で、徐々に対応してきたレジスタンスの連中に押し返されてきている。
レジスタンス側の勝利は時間の問題だろう。
肝心の伯爵様はと言えば、村からかっぱらった馬に乗り、街道を走って何処かに向かって行ったのが見えた。
何かは知らないが、彼女は最初から何かに固執している様だった。恐らくそれ関連だろう。
それよりも
「今なら逃げられる。この国はもう駄目だ。あんなのが上にいるんじゃ、ろくな未来にはならんだろう。見ろよアレ」
俺はそう言って暴れ回る化け物を指差す。
「どう見ても元は人間じゃねえか。このままこの国に居たら何時あんな目にあわされるか、分かったもんじゃねぇ。何せ今回、大ポカやらかしちまったしよ」
全員無言で村の惨状を見ている。俺の言う未来が容易に想像出来てしまったからだ。
「どうせ俺たちゃろくでなしのゴロツキだ。要らなくなったらあっさり処分されるだけだ。その前にさっさと逃げちまおうぜ」
「……そうだな、その通りだ」
「あーくそっ、せっかく美味しいおもいが出来てたのに」
「命あってさ。しゃーないしゃーない」
仲間達も次々に賛同してくれた。
「よし、それじゃあ……」
さっさとアジトに帰って逃げようぜ!そう言おうとした瞬間……
「いやいや、そうはいかんだろう。ここで逃げようなんて許されないだろ」
後ろから、ガシッと肩を組まれる。
「ジャ、ジャック‼︎」
気付かぬうちに近づいていたジャックに肩を組まれ首元で剣をちらつかされていた。
「これだけ好き放題やっておいて、ヤバくなったらトンズラなんて許せんよなぁー?最後まできっちり付き合ってもらうぜ?」
冗談じゃない、嫌に決まっている。
「それにお前達には聞かなきゃいけない事が沢山あるからよ。逃がさねぇよ。付き合ってもらうぜ」
仲間達に目で合図を送る。隙を見て一斉に襲いかかる様に合図を送る。しかし、そんな俺たちの事情はお構い無しに
「それとな、話は変わるんだが。今村で暴れている怪物なんだがよ、7体もいてさ、俺たちだけじゃ対処が難しくてさ。部下達には俺が1人で3体受け持つって言っちまっててよ」
おい、まさか……冗談だろう⁈
「選べ。俺と協力して化け物と戦うか、俺とお前達と化け物の三つ巴で戦うか?ああ、逃げるっと言う選択肢は無しだ。俺が絶対に逃がさないからよ」
ジャックが指を指す方向を見れば3体の化け物が此方に走って来ている。
最悪だ!
「クソ、くそっ!お前ら戦闘準備!ジャック!知っている事は何でも話すし協力もする。だから終わったら俺たちの身の安全を保障しろ‼︎」
くそ、こうなったらレジスタンスに少しでも協力して時間を稼ぎ、隙を見て逃げ出すしかない。
「良いぜ、取り引き成立だ。だから逃げようなんて考えるなよ?」
いやだね、これ以上こんな馬鹿げた国に関わってられるか、絶対逃げてやる!
「と、そう言やお前、名前は何て言うんだ?」
「ピッチ ジャオだ」
この名前好きじゃねぇんだよ。良い思い出が無いからな。
「ジャオ?クソッタレの方?まともな方?」
「クソッタレの方だ!」
コレで通じるのが嫌だ。
現当主キース ジャオ子爵の孫、ジャオ家の次男だ。
実家に嫌気がさして家を飛び出して、親戚のアンリさんを頼ったのが間違いだった。
気楽に稼げる良い職場を紹介してもらったと思ったのにこの様だ!くそ、何でこんな事に……
「まぁ、そこら辺も後で聞かせてくれや。……来たぞ!行くぞ!」
くそっ、こうなりゃヤケだ、やってやるよ!
「チクショー‼︎」