さて、感情的になって飛び出してきましたが、時間が経って少しばかり冷静になってきました。
あの2人にお灸を据えるのは決定事項ですが、何も私が力尽くでやる必要はありません。
万が一何かあってはいけません。冷静に冷静に。
さて、そんなこんなでやって来ました隣村。村では真夜中だと言うのに各所に篝火が立ち灯りがともっています。
おそらくですが2人が村が賊に襲われたと言われて、夜が明けるまでは村の警戒を強めて、日が昇ってから村の調査や大きな街に救援の依頼を出すことにしたのでしょう。
ですが私がそれに付き合う義理はありません。さっさと目的を果たさせてもらいましょう。
そんな訳で正面から堂々と村に近づいて行きます。
「止まれ!何者だ?」
村の門番をしていた若者が誰何してきます。警戒時ですからか人数が少し多いですね。4人もいます。
まあ、深夜なので眠そうにしていますが。お仕事お疲れ様です。
私は馬から降りてゆっくりと近寄って行きます。
すると、門番達は明らかに困惑しています。それはそうでしょう。深夜に10代前半の女の子がやって来たのです。それは困惑するでしょう。
「隣村から来たのか?」
その内の1人が先程逃げてきた2人の事を思い出し、私もそうではないかと尋ねてきます。
「いいえ、違います。私はこう言う者です」
そう言って王家の紋章の入ったバッチを取り出します。王宮で働く人に配られる身分証みたいな物です。
こんな田舎の村人につうじるかは疑問ですが、王家の紋章自体は徴税官が使用しているので見覚えくらいはあるでしょう。
「宮廷魔術師で伯爵位を頂いています、アンリ ジャオと言います。至急話したい事があります。急ぎ村長に繋いでもらえますか?」
門番達はどうしたら良いのか分からず、互いに見つめ合った後、自分達では判断出来ないとして上の人に丸投げする事にしたようです。村の中に1人走って行きました。
しばらくして村の中に通されました。村の各所では灯が灯され、幾人かの男性が此方を見ています。
女性は家からは出ないようにして子供は寝かされているのでしょう。
そのまま村の一番大きな家に通されました。
中には何人かの男性がいます。一番奥の40代くらいの人がおそらく村長でしょう。
「すみませんね、ろくなおもてなしも出来ませんで。私はこの村の村長をしているローグと言う者です」
そう言って握手をしてきます。
「いえいえ、急に押しかけたのは此方ですからお気になさらず。私はアンリ ジャオ伯爵と言います」
先程も見せたバッチを見せ握手に応えます。
流石に村長は王家の紋章に見覚えがある様で警戒心を一段階あげました。
王家の紋章の偽造は文句無く死罪です。つまり村長には私は本物の伯爵か死を怖れないヤバい奴かのどちらかに見えているでしょう。
それは緊張もします。
「ジャオと言えば交易都市の?たまに行商人から御名前はお伺いしています」
「ええ。まぁ私は宮仕の身でして実家とはあまり関わりは無いのですが」
さて、腹の探り合いをする気はありません。さっさと本題に入らせてもらいましょう。
「さて、世間話に花を咲かせるのも悪くはありませんが先に用事を済ませておきましょう。
この村に先程2人の子供がやって来たと思うのですが会わせていただけないでしょうか?」
部屋の緊張感が高まります。
実は先程から隣の部屋から人の気配を感じます。おそらく2人は隣の部屋で私の話を聞いていますね。
「子供ですか?確かに先程来ましたが彼等がどうかしたのですか?」
この村長、どうして良いのか決めあぐねていますね。隣村の子供です。顔見知りもいるでしょう。守ってあげたい気持ちもあるでしょう。
一方で、もし私が本物の貴族なら権力者に逆らう事になります。それは避けたいはずです。
「ええ、実は隣の村には反体制派の人間を匿っている容疑がかけられていまして一斉検挙をする事になったのですが、お恥ずかしながらこの村に逃げられてしまいまして」
はい、口からでまかせです。今考えました。まぁ実際にレジスタンスの皆さんがいたので嘘ばかりでもありませんが。
「子供達のことを心配する気持ちも分かりますが、彼等も重要な参考人です。身柄を引き渡してくれませんか?
私としても事を荒立てたくは無いのです。彼等に何を言われたかは分かりませんがお互いに穏便にすませましょう。
私としてもまさか近隣の村にも反体制派の人がいるとは思ってもいないのです」
さっさと渡せ、さもないとお前達も反逆者として捕えるぞ♡(特別意訳)
「どうか、彼等を引き渡してもらえませんか?」
さて、どうなるでしょうか?まぁ分かりきっていますが。