ストレスに耐えかねて気を失ってしまったお二人を簀巻きにして明け方に馬車、と言うか馬にリヤカーを引かせているだけの代物に乗せて出発します。このリヤカーは村長に売ってもらいました。色々兼ねて多目に握らせておきました。
「うん……」
しばらくするとリヤカーの振動に起こされて2人が目を覚しました。
「おはようございます。爽やかな良い天気ですね。思わず気持ちも晴れやかになりますね」
お二人に向かって挨拶をします。
「何処がよ、人生最悪の朝だわ」
リリさんが返事をしてきます。やさぐれてますね〜。心に余裕が感じられません。
「まぁまぁ、シンさんもおはようございます」
「……ああ」
うーん、元気がありませんね。この後の事を思えば少し心配になります。
「て、おや?丁度良い所に。お二人共見てください」
私は前方からくる集団を指で指します。前からは10数名の兵士が向かって来ます。隊長さんだけが馬に乗って他の人は歩きですね。
「やった‼︎おおい、助けてください‼︎」
それを見て助かったと思ったシンさんが兵隊さん達に呼びかけますが
「お疲れ様です。時間通りですね」
馬を止めて兵隊さんに挨拶をします。
「はっ!予定通り問題ありません。そちらが例の?」
「ええ、それでは後はお任せしますね」
「了解しました!……ところで何か幼くなってませんか?」
「はっはっはっ、気のせいですよ。それでは」
そう言って兵隊さん達は私達を素通りしていきます。勿論拘束されているシンさんとリリさんにも気がついています。
「ちょっと、ちょ、待ってよ⁈」
必死に呼び止めようとするシンさんですが無情にも振り返る事も無く歩いて行ってしまいます。
「……どういうこと?」
黙っていたリリさんが聞いてきます。
「簡単な事ですよ。彼等を呼んだのが私だというだけです」
2人の顔を見れば、シンさんは驚きの表情を、リリさんはやっぱりといった表情をしています。
やはりリリさんは年齢以上に頭が回ると言うか、胆力があると言うか、何でしょう?強さを感じますね。この年でも女性と言うものはこうなのでしょうか?分かりませんね〜。
「元々貴方達の村は野盗に襲われて滅ぶ予定だったので彼等はその確認をするのが仕事です。あと工程が詰まっていますからね。迅速に処理する為の部隊ですね」
「そんな……」
シンさんが力無く項垂れています。
「腐っていますよね〜。国のお偉いさんも、末端の兵士も、みんな自分が甘い汁を吸う事に一生懸命です。民の事とか使い捨ての道具としか考えていません。そりゃあレジスタンスも生まれてきますよ。……いや、そうでもないのか?普通革命軍ってどうやって生まれてくる物なんだ?分かりませんね〜、民衆運動って普通どうやって起きるのでしょう?カリスマ指導者とか必須なんでしょうか?うーん、お二人さん、国家転覆のやり方とか知ってます?」
「知る訳無いでしょう」
ですよねー。
「まぁ、いいでしょう。それより今後の貴方達のお話です」
「今後?」
「はい、今後です。先ず貴方達にはこの国の王様と王子達の前で茶番劇を演じてもらいます」
本当に茶番です。面倒くさいですが仕方ありません。
「内容はこうです。シンさんには王様達と貴族の皆さんの前に出てもらいます。そこにリリさんとそこら辺から連れて来た子供達とを拘束して連れて来て私が『どちらか片方を殺せ、出来なければ両方殺す』というので、子供達を殺してください」
まぁ、シンさんがリリさんより見知らぬ子供を優先する事はないでしょう。
「貴族の皆さんも王族の方々も悪趣味な方を優先して集めておきますのできっとうけると思いますよ?私も盛り上げる為に一生懸命煽りますから頑張って殺してください。良いですか?」
……お二人とも何を馬鹿みたいに口を開けているのですか?
「……はっ!いやいやいや、何で僕がそんな事しなくちゃいけないんだ‼︎
人殺しなんて嫌に決まってるだろ!」
……あ〜、なんていうか、うん、これは
「懐かしいですね〜、このやり取り。50年前にもしましたね〜、もうちょっと違う返事をして下さいよ、面白味の無い。良いですか?貴方達には拒否権はありません。返事はハイ一択です。それが嫌なら死ぬしかありません。その時はシンさんの前でリリさんから殺してあげましょう」
懐かしいですね
「良いですか?ハイだけなのです。力の無い人間には選択肢も無いのです。いや、違いますね。死か服従かの選択肢がありましたね。良かったですね、普通は死、一択ですよ。それを思えば貴方は幸運だ、下げる頭があるのだから」
せっかくなので頭を踏みつけて床にキスさせます。
「うぐっ、……何で、何で僕なんだ、何で、どうして?」
シンさんが涙声で聞いてきます。
あれ?うん?おや?もしかして
「あれ?もしかしてお母さんから自分の生い立ちを聞かされていませんか?あちゃー、てっきりもう聞いているものだとばかり。いや、これは失礼、私の気が早かったですね、ごめんなさいね」
謝罪の意味を込めて頭を下げましょう。
シンさんの。
足に力を入れて、より床に押し付けます。額を擦り付ける、誠意のこもった土下座です。
「実はですね、貴方には王家の血が流れているのですよ」
衝撃(笑)の真実
「昔王様が城下に出向いた時に偶々、当時出稼ぎで王都の商店で働いていた貴方のお母様が目に止まりましてね。気に入ってそのまま連れ帰ってやっちゃいましてね。気が済むまで遊んで後はポイッと放り出されました。その後は周囲の人達は厄介ごとを嫌って貴方のお母様からから距離をとりまして、仕方なく田舎の実家に帰ったのですが妊娠が発覚しました。貴方の出生の経緯が周囲に知れたら再び居場所が無くなると思って黙っていたんでしょうね。ああ、リリさんとお父さんは再婚相手とその連れ子です。お二人に血の繋がりはありませんよ」
シンさんが震えています。
「てっきりシンさんにはそこら辺教えているんじゃないかと思っていたのですが、しっかり墓まで秘密を持っていっていたとは、失敬失敬」
おや、シンさんの目つきが険しくなっていますね?
「巫山戯るな!その話が本当だとして、尚更何でそんな奴等の前でそんな茶番劇に付き合わなきゃならないんだ!」
良いですね、良い表情です。私好みです。
「簡単です。貴方を貴族の、いや、王族の末席として迎え入れてもらう為の儀式です。貴族として民を支配する力があると示すと同時に、リリさんと言う弱点があると他の王族に教える事で、逆らいませんよ、逆らえませんよ、と言うアピールです」
益々眼光が鋭くなっていきます。
「リリさんは監獄に収監される事になるでしょう。もし貴方が反旗を翻したら即座に人質に出来るように」
リリさんの首筋に手を当て、喉をかき切るジェスチャーをします。
「さあ、選択の時です。服従か死か。好きな方を選んでください。どちらを選んでも私は貴方の意思を尊重しましょう」
悔しくて怒りながら泣きそうな顔をしています。しかし、きっと貴方は諦めずに立ち上がるのでしょう。
私はそれを尊重しましょう。