私は絶賛風邪でダウン中です。
短くてごめんね
外から御者の話し声が聞こえてくる。馬車に揺られる事数日。どうやら刑務所に着いたらしい。窓の無い狭い空間にずっといたせいで非常に疲れた。
門が開く音が聞こえる。今は塀の中を進んでいるのだろう。
ここに来る前にあの女が言っていた事を思い出す。
『カーンビー刑務所は巨大な植木鉢です。地下に元々有る分厚い岩盤に直接突き刺す形で建てられた塀は高さが10メートル、厚さが2メートルにもなります。四方に造られた監視塔には常に警備員が在中し目を光らせています。壁を昇るのも、トンネルを掘って逃げるのも岩盤が邪魔をして不可能でしょう』
「おい、降りろ」
塀の内側に出ると、ここまで私を運んで来た馬車から下ろされる。私の他に全部で10人の人が入れられている。明らかに犯罪者だと思わせる風貌の人もいれば、絶望に打ち震えている普通の人もいる。
馬車から順番に下ろされていくと
「頼む!俺は無実なんだ、何もしていない!助けてくれ‼︎」
馬車から出た瞬間、目の前の看守らしき人に男性が泣きついている。
「五月蝿え‼︎知るか、そんな事。さっさと降りやがれ!」
そう言って看守に男性が殴り飛ばされている。多分あの人は本当に無実なのかも知れない。けど、ここの人達にはそんな事どうでも良いのだろうなぁ。
「次はお前だ、早くしろ」
そうして私も馬車から下ろされる。
外に出ると先ず、見上げる程高い塀が目に入ってくる。
成る程、灰色の壁は何の装飾もなく面白味は無いが一目で逃げるのは無理だと思わせる威容を誇っている。
敷地を四角く、ぐるりと囲む様は確かに植木鉢に見えなくもない。
となると私達は種か?肥料か?
そうして反対側にはこれまた面白味の無いコの字形の石造りの建物がある。あれが監獄だろう。
「ついて来い」
刑務所の看守らしき人達が私達の手にかけられた縄を引っ張って連行していく。
今、私達を拘束している物はこの縄だけではなく、もう一つ、ここに来る前にはめられた首輪がある。曰く
『先ず最初に貴女には“魔封じの首輪”が着けられます。その効果は魔力を使用した技の封印です。魔術は勿論、戦士が使う戦技なども封じ込めます。24時間365日外すことは許されません』
そのままついていくと途中から男女で分けられて建物の中に入って行く。
中は、そのままイメージ通りのthe監獄と言った感じで通路を挟んで両サイドに鉄格子の牢屋が並んでいる。
その中を歩いて行く。
ただ、前世で見た映画のワンシーンの様に、汚い歓迎の言葉を先輩囚人からとばされると思っていたのだが想像以上に皆生気が無い。
皆、死んだ目をして此方を見ている。特に私は小さいからジロジロ見られている。
「お前はここだ。入れ」
そう言って入れられた部屋には先客がいた。どうやら相部屋みたいだ。
「よう、新入り。私はこの牢屋の先輩だ。あんた、そんな年でこんな所に入れられるなんて何したんだい?」
先輩は短い黒髪に黒い目のおそらく20代の女性だ。見るからに悪党と言った雰囲気では無い。確証は無いが比較的安全な人ではないだろうか?
そして何より彼女は当たりだ。目が死んでいない。
『いいですかリリさん。刑務所で仲間を集めるのなら生きる事を諦めていない人を誘いなさい。カーンビー刑務所に入れられる人間は全員死刑囚です。今まであそこに入って、生きて出てこられた囚人はいません。全員刑期を終える前に死んでいます。故に、大半の囚人は恐怖に震え諦めるか、自暴自棄になります。しかし、そんな環境の中でも必ずいるはずです。生きる事を諦めていない人間が。まぁ、善悪は分かりませんが』
彼女の目は生きている。
「何もしていない、無実よ。私の名前はリリ。先輩、貴女は?」
そう言って手を差し出せば、少し驚いて
「ははっ、私はアルファだ。よろしく、リリちゃん」
笑いながら手を握り返してくれた。
私はこんな所で死ぬ気は更々無い。あの女に言われたからでは無く、私は自分の意思でこの刑務所から逃げ出してやる!