TS外道転生者のガゴウ   作:般若バール

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日常編4

 

「それでは最後にこの国一番の人気スポットにご案内しましょう」

 

 美術館を出た後に、暗くなる前にマリーさんを親御さんの元に帰さなければいけないと思いそう切り出しました。

 若い娘さんをいつまでも連れ回すほど非常識ではありません。

 

「この国一番って言えばあそこっすか。マリッペさんあそこ苦手なんすけどね〜」

 

 マリーさんは何処に行くか分かった様で、難色を示しています。

 まぁ、好き嫌い分かれますからね、あそこ。仕方ない事です。

 

「あそこ?」

 

 シンくんは何処か分からずに首を傾げています。

 

「はい、我が国だけでは無く他国からも人が訪れる人気スポットです。有名なのですが田舎者のシンくんは知りませんか」

 

 私がそう言えばシンくんは小さな声で『一々煽るな』と呟きます。

 申し訳ありません。弱い者いじめは私の生態の一種なのです。改善する様に努力してまいります。

 

 ……出来るかどうかは別として。

 

 

 そんな風に和気藹々としながら3人でとある区画にやって来ました。

 この区画は所謂歓楽街、夜の街とでも言えばいいのでしょうか?そんな場所です。

 周囲には飲み屋や風俗店が立ち並び、通りの奥には大きな賭博場があります。裏道には怪しいお店や事務所がいくつもある。そんな地域です。

 まだ日が高い時間帯な事もあり、そこまで危険な雰囲気はありませんが良い子は近寄っては駄目な場所です。良い子ではなくても自制出来ない大人も近寄っては駄目です。

 

 さて、そんな街の中央通りを進んで行くと少し奇妙な物が見えて来ます。

 表通りのお店とお店の間、凡そ一坪程度のスペースに屋根だけが有る場所に一台の機械と何枚かの立て看板があります。

 私と同じ前世もちの人ならこれが何か直ぐに分かるでしょう。

 

 四角い透明な箱の中に沢山のカプセルが入っている機械、所謂ガチャガチャの機械です。

 

「これがこの国で一番有名な賭博場『一坪の生命線』です」

 

「これが?」

 

 シンくんはコレが何か知らないので不思議そうです。

 

「はい、この機械はですね……おや?もしかして、シンくん、貴方とても運が良いですよ。丁度挑戦者が来たらしいですよ」

 

「うわ……」

 

 私がこの機械の説明をしようとしたところ、ガタイの良い中年位の男性がガチャに向かって歩いて来ます。

 マリーさんはマジか〜といった表情で見ています。

 

 私達は機械から離れて彼の様子を見る事にします。

 彼がガチャのハンドルに手を添えると

 

「welcome challenger‼︎ ようこそおいでくださいました。私このゲームを取り仕切らせていただいている『funky bunny』と申します。短い間ですがどうぞよろしく」

 

 ガチャの排出口から煙が立ち上がり1人の男性になります。まるでランプの魔神の様です。

 しかし、その出立はバニーガールの格好をした細マッチョのイケメンという何とも反応に困る姿をしています。

 

「それでは此方の契約書をよく読んで頂き、挑戦を希望する場合は此方にサインをお願いします」

 

 そう言ってfunky bunnyは取り出した書類を男性に渡します。

 

 周囲には挑戦を聞き付けた人達がどんどん集まって来ています。直ぐにここら辺に人だかりが出来るでしょう。

 

「な、なぁあれって一体何なんだ?」

 

 突如として集まって来る人々とその仄暗い期待からくる異様な熱気におされてシンくんが引きながら私に尋ねてきます。すると

 

「おや、貴方様は初めてのご観戦ですか?」

 

 いつのまにか目の前にやって来たバニーガール漢がシンくんに尋ねます。

 

「は、はい」

 

 シンくんは後ろにのけぞりながら答えます。

 

「分かりました!それでは軽く説明させてもらいましょう。此方『一坪の生命線』では己の命をかけてちょっとしたギャンブルに挑戦していただきます!」

 

「い、命?」

 

「はい、その通りでございます。ギャンブルとは言っても難しいことは何もありません。唯チップを入れてレバーを回すだけでございます。彼方をご覧ください」

 

 そう言ってガチャの筐体の上にある数字を指差します。

 

「43とありますね。あれが今までにこの機械が回された回数でございます。機械の中には最初100個のカプセルが用意されており、現在は残り57個のカプセルが入っています。当たりは1つ、それを引けば勝利でございます。そして……おや、挑戦者様の準備が出来た様なのでこれにて失礼します。残りのルールは彼方の看板に書いてありますので良く読んでお楽しみください」

 

 そう言ってバニー男は挑戦者の元に帰って行きます。

 看板にはこう書かれています。

 

・当筐体は人間以外の挑戦はお断りしております。獣人、エルフ、ドワーフ等の亜人種の挑戦もお断りしております。

・一度挑戦が開始したら如何なる理由があろうとも途中棄権は認めておりません。

・挑戦者はご自身の残りの『寿命』を10年につき1枚のチップと交換していただきます。

・ご自身以外の他者の寿命を担保にする等の行為は一切認められておりません。

・残りのカプセル数以上のチップをお待ちの場合も挑戦はお断りしております。

・当たりを引いた場合、それまでに貯まったチップを全て差し上げます。

・その際肉体年齢はご自身が望む年齢で固定させていただきます。

・当たりが出た場合カプセルの数はリセットいたします。

・当サービスは13名の当選者が出た段階で終了させていただきます。

 

「……は?」

 

 看板に書かれている文章を読んだシンくんは驚き、口を開けています。

 

 そう、このガチャは己の寿命をチップに勝負をし、勝ったら若さと長寿が、今回の場合430年の寿命が得られ、負ければ死ぬ。all-or-nothing、生か死かのガチャガチャです。

 

 

 ……あ、因みにこのガチャの製作者は私です。

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