TS外道転生者のガゴウ   作:般若バール

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(私にしては)長めです


日常編5

 

 はっきり言って私はこんな欠陥品を作るつもりはありませんでした。正直私に何の得もありませんからね。

 では何故作ったのか?それは私を虚仮にしてくれやがった連中が原因でした。

 

 ある日知り合いのカジノのオーナーと闇金の社長さんが私の所に相談があると言ってやって来ました。

 何でもギャンブルで借金して破産した馬鹿が増えすぎたとの話でした。金を取り立てようにも無い袖は振れず、奴隷として売り飛ばしても二束三文にしかならないとの事で、私にしてみればだからどうしたと言う話でした。

 ところが連中は私に破産者を負債ごと買い取って欲しいと言ってきたのです。

 何でも2人は私が昔、奴隷を大量購入していた事を知り、きっと私が必要としていると思い話を持ってきたと言いました。

 要するに、私が何かしらで奴隷を大量に消費していたと知り、世間に悪評を流されたくなければ彼等を買い取れと脅してきた訳です。

 

 要は、私を舐め腐ってくれやがった訳です。

 

 

 

「契約書への署名、確かに確認しました。それでは早速貴方の査定をさせていただきます‼︎」

 

 目の前ではバニ男が男性の頭に触れ顔を覗き込んでいます。周囲には見学者がドンドン増えて人だかりが出来てきました。

 

「査定が出ました!貴方のチップは全部で4枚です!」

 

 そう言うと男性の前に『ポンッ』と軽い音を立てて4枚のコインが現れました。そのコインには男性の顔が刻印されています。

 

「それでは、ゲーム開始です!どうぞ最高の時間をお楽しみください!」

 

 そう言ってバニーマンは男性の前から退き道をあけました。

 男性は何か小声でブツブツ喋っています。聞き耳を立ててみると「大丈夫だ、俺はやり直すんだ」とか「あいつらを見返してやるんだ」とか「俺はこんな所で終わる器じゃ無い」とか、自身を奮い立たせる言葉を呟いています。

 

「あ〜、彼は失敗したタイプですか」

 

 私がそう言えば

 

「失敗?」

 

 とシンくんが聞き返してきます。

 

「そうです、失敗です。この機械に挑戦する人間で多いパターンは2つ。死を恐れる人間と、人生失敗してもう一度やり直そうとする人間です。因みに前者は意外と成功者に多かったりします。逆に1番少ない挑戦者は平凡で幸福な日々を生きている人ですね」

 

 シンくんも何となく理解出来るのかなるほどと頷いています。と言うか私が彼の村を奇襲したせいで、死の恐怖も過去をやり直したいと言う気持ちも体験済みですから共感すらしていますね。

 

「ただ、まぁ、私はこのタイプの人間が勝ったところを見た事がありませんが」

 

 そうして話しているうちに男性がコインを機械に投入しました。

 すると機械が動き、中身のカプセルが撹拌され始めました。イカサマが無い、公平感を演出する仕組みです。後はレバーを回せばカプセルが出てきます。

 男性の『頼む、頼む』と言う声とカプセルの音が周囲を包み込みます。

 

 皆、固唾を飲んで見ています。中には男性と同じ様に祈っている人もいます。

 まぁ、彼等の願いは男性が外す事でしょうが。彼等は潜在的な顧客です。ハズレが積み重なり、当たる確率と賞品が豪華になれば彼等の中から次の挑戦者が生まれるでしょう。

 

 覚悟を決めた男性が雄叫びと共にレバーを回します。

 するとカプセルが出てきてひとりでに宙に浮き上がります。そうして自動で蓋が開きます。

 『カパッ』と言う音と共にカプセルが開きます。中からは何も出てこず、そのまま空気に溶けて消えていきます。

 

 男性は『カハッ、ハッハッハッフッ』と息を荒げています。何も運動はしていないのに汗だくで死にそうな位苦しそうです。足など子鹿の様に震えています。

 

 観客の一部の人達の堪えきれないニヤニヤ顔を見てマリーさんが顔を顰めています。

 

「ああいったのは苦手ですか?」

 

 私が問えば

 

「うん、何というか、人の死に喜びを見い出せる気持ちが、なんか気持ち悪いっす」

 

 との事。おお、何と素晴らしい。ゲームの彼女を今の彼女に会わせてみたいですね。キャベツ畑を信じている乙女に無修正ポ◯ノを見せる様な下卑た気持ちです。

 

 シンくんは彼の必死さに押されて恐怖し、場の空気が理解出来ず困惑し、自分が今何を見て、何がどうなっているのか分からない。混乱の中にいます。

 まぁ、そうでしょうね。ある意味ここは今戦場です。平時に何の前触れも無く始まった命のやり取りです。下卑た人間の視線が集まる底辺です。場慣れしてない彼にはついていけないでしょう。

 

 そうして私達が話ている間に2回目、3回目が終わり遂に最後の1枚になりました。

 

「な、なあ。俺が悪かった、だからさ、もう、見逃してくれないか?やっぱりおれには分不相応だったよ。だからさ、なあ、やっぱり今回の事は無かった事にしてくれないか?」

 

 あー、緊張と恐怖に耐え切れず泣きが入りましたよ。言っている事も支離滅裂です。見逃すも何も自分から始めたのでしょうに。根拠のない自信で自分は勝てると思っていたのに現実の前にポッキリ折れましたね。

 

「さっさとやれー!」「無駄だって分かってんだろ‼︎」「早くしろ、この腰抜け!」「みっともないぞ、この腰抜け」

 

 等々、観客から野次がとんできます。

 

「うるさい‼︎テメェ達は黙ってろ!……なぁ頼むよ、見逃してくれよ?いいだろ?」

 

 命乞いを続けますが

 

「申し訳ございませんお客様。契約書に記載してあった通り途中での棄権は一切認められておりません。まだ1枚チャンスは有ります。どうぞ最後まで諦めないで挑戦してください」

 

 そう言ってコインを男性に渡します。

 

「くそっ、こうなりゃ、……うおおおおー‼︎」

 

 そう言って男性は懐に忍ばせていたナイフを取り出し兎男に斬りかかりますが

 

 スルッ

 

 と兎怪人をすり抜けます。

 

「クソッ!」

 

 更にガチャの筐体にも襲いかかりますがコレもまたすり抜けます。

 

「ゲーム中の暴力行為は一切認められておりません」

 

 暴力では無理だと悟った男性は次に逃げ出そうとしますが

 

「何でぇー‼︎」

 

 見えない壁によって一坪の敷地から外に出られません。

 

「回せ!」「回せ!」「回せ!」「回せ!」

 

 周囲からは強烈な回せコールです。

 

「正直、ここまでがこのゲームに挑戦したプレイヤーのテンプレートですよねー」

 

 私がそう言って彼を見ていると

 

「な、なぁ。本当に彼は助けられないのかよ?このままじゃ本当に」

 

 とシンくんが聞いてきます。

 

「出来ますよ?ですがそれにはそれ相応の犠牲が必要です。良いですかシンくん、これはギャンブルの体裁をとっていますが本質は違います。これの正体は一種の儀式魔術なのです」

 

「儀式魔術?」

 

「はい、魔術です。魔術は個人の魔術回路を使って使う魔術以外に物体に刻んだ回路に魔力を流して発動する物があります。生活の中でも良く見かける魔道具などがそうですね。これの大規模な物を一般的に儀式魔術と言います。まあ、明確な境界線等はありませんからコレはそう、アレは違うとかはハッキリしませんが、この機械は儀式魔術に分類して良いでしょう」

 

 さて、お勉強の時間です。

 

「儀式魔術は一般的な魔術と同様に術師の力量も大事ですがそれ以外にも、刻みつける物体の質や術との親和性、触媒の質等も大事ですし、場合によっては生け贄なんかも使用します。更に刻みつける術式自体も用途を限定化したり、使用者にもリスクを負わせたりした方が性能を向上出来ます。要するに通常の魔術より様々な事柄が複雑に絡み合っている訳です」

 

 普通はおいそれと作れる物では無いと言う事です。

 

「そして、この『一坪の生命線』の場合、専門家の術師が生け贄を使ってまで作った代物でしょう。更に契約にある『自身の所有するコインが残りのカプセルより多い場合参加出来ない』と言う所からも分かる様に使用者全員に死のリスクを背負わせる事で効果を高め、若さと長寿を得ると言う儀式を成立させています」

 

 つまり

 

「一度成立してしまった儀式を中断し、彼を助けようとする場合、此方もそれ相応のリスクを背負う必要があります。そうですね〜、10人です。10人の生け贄を用意してください。そうしたら私が10名の死と引き換えに彼を助けてあげましょう。丁度この場には沢山の人がいます。彼等の中から死んでくれる人を募集してみますか?ただその場合でも既に支払った30年の寿命は取り返せませんが」

 

 それを聞いたシンくんはいくらなんでも無理だと悟り黙ってしまいます。しかし

 

「なあ、あんた、今の話本当なのか⁈」

 

 私の話を聞いていた挑戦者の男性が大声で聞いてきます。

 

「はい、本当ですよ。私はコレでも一角の魔術師ですので。生け贄さえ用意してくれれば助けられますよ」

 

 私がそう言えば

 

「聞いたか⁈頼む誰か!俺の為に死んでくれ‼︎」

 

 男性はそんな事を叫び出します。勿論

 

「ふざけんな!」「勝手に死ね‼︎」「往生際が悪いぞクズ」

 

 等々罵詈雑言が飛び交います。

 

「そうだ!奴隷だ!頼む、誰か、金なら後で必ず払う。だから誰か買ってきてくれ!」

 

 と叫び出しますが、当然誰も買いにいきません。当たり前ですよね。こんな自分勝手な人間の為に誰も殺しの片棒なんて担ぎたくありません。

 

「なあ、少年!頼むよ、必ず後で礼はするから、お願いだから助けてくれ」

 

 男性はシンくんに呼びかけますが流石のシンくんも、こんな身勝手な人間の10年の為に10人もの人間の命を差し出すのを良しとはしないでしょう。黙って下を向いています。

 そして遂に

 

「この人殺し!俺が死ぬのはお前達のせいだ!呪ってやる、この人殺し共めー‼︎」

 

 理不尽な責任転嫁をしてきました。

 いや、もう納得です。彼がここまで落ちぶれてきたのは。そりゃ失敗しますよ、こんなの。

 正直私はこの手のクズ嫌いでは無いですけどね。使い潰しても全く勿体無いと思わない辺りが最高です。

 

 そうして遂に、追い詰められてヤケクソになった彼は最後の1枚を投入しました。結果は当然

 

「残念ながらハズレでございます。それでは賭け金の徴収をさせていただきます」

 

 怪奇ウサギ男がそう言うと

 

「あが、はひ、はが」

 

 まるでテレビの早回しの様に男性の年が経っていきます。皺が増え、髪が抜け、遂には枯れ枝の様になりそのまま倒れ、死にたえました。

 

「いや〜、凄かったですね。これまで何人もコレに挑戦した人は見ましたが、ここまで酷いのはなかなか居ないですよ」

 

 周囲から観客が帰って行きます。このガチャ、1日に1人までと言うお店のルールがあるので皆帰っていきます。

 すると店の裏手から数人の人が現れて死体を袋に入れて回収していきます。

 

「確かに酷かったな。当たって欲しくはあるが、あれが勝つのはそれはそれで嫌だからなぁ」

 

 死体を回収している内の1人が話しかけてきます。

 

「おや、店長さん。お久しぶりです。店長自ら雑務とは、勤勉ですね。頭が下がります」

 

「嫌味かこの野郎、引っ叩くぞ」

 

 おお、怖い。暴力的な人間はこれだから。もっと人には優しくしないといけませんよ?

 

「アンリさん。此方の方は?」

 

 後ろで話を聞いていたマリーさんが尋ねてきます。

 

「此方、裏通りで闇金業者をしている悪党で、この『一坪の生命線』のオーナーのロレントさんです。覚えておかなくていいですよ?」

 

「いや、言い方。まあいい。お嬢ちゃん、俺はロレントだ。まあコイツの言う通り、真っ当な人間は俺みたいなのは覚えておかない方が良いのは確かだ」

 

 そう言って握手をしています。

 

「あのロレントさん、僕はシンって言います。あの、ロレントさんは何でこんな機械を?」

 

 何故こんな物を作ったのか?運営しているのか?との疑問ですね。

 

「俺だってこんなもんに関わりたくなかったさ」

 

 そう言って苦虫を噛み潰したような顔をして黙ってしまいます。

 

 そうでしょうそうでしょう。その顔が見たかったのです。

 

 彼はこの街のカジノのオーナーと2人で私をカモにしようとやって来ました。私は2人から借金男を13人も買い取りました。そして、その13人のギャンブル中毒の破産者を生け贄に作った儀式魔術がこの『一坪の生命線』です。

 そして、その儀式を執り行う際にお2人を呼び、儀式に巻き込みました。

 この儀式の中核、術者を彼等にしたのです。そして、2人にはある役目を与えました。

 それはこの術式の最大の欠陥、最初の1人は誰がやるのか?と言う所の解消です。それはそうでしょう、1人目の挑戦者は何の利益もありません。誰がやるのだと言う話です。

 なので彼等には当たりが出てリセットがされた際に1人につき、コイン5枚分の生け贄を用意する事と言う制約を与えました。2人で10枚分ですね。3日以内にコレがなされない場合代わりに彼等の命を徴収すると言うオマケ付きで。

 おかげで彼等はこの街を離れられません。ちょっと遠出してその間に当たりが出てしまったら出先で命を吸い取られてミイラ化です。

 

 彼等には私を舐めた罰として、13人目の当たりが出てその役目を終えるまで、この儀式の運営を頑張ってもらう事にしました。

 

 やはり人の弱味につけ込んで金品を騙し取ろうなんて悪い事を考えるからいけないのです。人間関係は誠実でなければ。

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