さて、遊んでばかりではいられません。仕事もしなければ。
現在私は公務員としての仕事以外にも個人で運営しているお店がいくつかあります。勿論代表は私ではありません。私は裏の顔役です。なので利益は大したことないですが本当の目的は別にあるので問題ありません。
「うわ〜、マジですか〜?」
私はとあるお店の先月の帳簿を見て引いています。まさかここまで
「売れすぎでしょう、これ」
そう、めちゃくちゃ売れています。従業員も嬉しい悲鳴を通り越して、ただただ無言で働いています。本当に忙しいと悲鳴すらあげる体力が無くなります。
私が何のお店の帳簿を見ているのか?
それは服飾店の物です。私がプロデュースした、生産、流通、販売まで一括で行う総合ブランドのアパレルショップです。
いつもの様に書類や物的証拠を残さぬ様に注意しながら関わる人も最小限にして且ついつでも記憶を消去出来る様に魔術による仕込みもバッチリです。
さて、このお店、3ヶ月前からとある商品を売っているのですがコレが飛ぶ様に売れています。
その商品は緑のドレスです。
これまで、緑色の染料は存在はしていましたが、あまり綺麗な発色とは言えませんでした。更に色落ちしやすく値段も高いとしてなかなか見かける事の無い物だったのです。
そこで私は前世の知識を活かしてこの業界に殴り込みをかけたわけです。具体的には落ち目の服飾店にて、実物と当座の資金を持って店長さんを抱き込みました。
そうして出来たこの緑のドレス。その色は鮮やかで美しい緑で、これまでの物とは一線を画す代物でした。更にお値段もお安くこれまでよりも遥かにお求め安いお値段となりました。
そのドレスを社交界の淑女の皆さんに売り込みました。
結果は大ヒット。目新しい物が好きなお貴族様に飛ぶ様に売れているわけです。
その大ヒットの立役者、魔法の染料の名前は『ヒ素』と言います。
前世のヨーロッパでもこのヒ素による緑は大流行し、数多くの紳士淑女の方々がそのドレスやネクタイ等を身につけて、果ては宮殿の壁紙にまで使われたとか。
言うまでもなくヒ素は毒です。そんな物を身につけていれば当然死に至ります。ヒ素が原因だと分かるまでの長い間に多くの人が亡くなったとか。
さて、今生の私は一応貴族です。どうしても出ないといけない社交の場等があります。しかし、ハッキリ言って面倒くさい。社交界の魑魅魍魎共のやり取りもそうですが、それ以上に宮廷文化が面倒くさい。訳が分からない。現代人の感覚では理解出来ない事が平気で行われています。
ノーパンでスカート履いてる女性がブランコに乗りながら靴を飛ばし、男性がその中身を必死に覗き込んでいる姿を見た時、レジスタンスとか関係無しに私がこの国滅ぼしてやろうかと本気で考えました。
こんなアホみたいな事が他にもあちこちで行われている訳です。少しくらい間引いてしまおうと考えるのも当然の帰結でしょう。人数が減ればこんな事やっている余裕は無くなりますからね。
レジスタンスも弱体化させ過ぎました。少しくらい貴族を減らして国政と統治を不安定にしてバランスを取るのも悪くないでしょう。
その第一弾として緑のドレスの販売を開始した訳ですが、まさかここまで売れるとは。正直一過性のブームにでもなってくれれば万々歳。一部の女性達を中毒にでも出来ればと思っていたのですが、女性の流行に対する感度を舐めていました。100年近く女性をしていますが、ここら辺の感覚は未だに男性の感覚が抜け切っていない感じですね。美に対する執念が理解出来ません。
今や社交界は大緑ブームです。
他のお店も私達をパクって緑の商品を展開しています。製品の機密保持?この時代にそんな物はありません。情報流出し放題です。何処もかしこもヒ素塗れです。我が家に緑の壁紙を売りに来た業者までいます。勿論叩き帰しました。
いや、本当にどうしようコレ。想像以上に広がりすぎました。ここまで来ると貴族だけでは無く、加工に関わる多くの庶民にも影響が出ますよ、これ。
この世界、強くなれば、高レベルになればなるほどに体力も増え、毒に対する耐性もつきます。毒もデバフの一種ですからね。全盛期のレオン君ならヒ素をジンで割って飲んでもケロッとしていたでしょう。
故に高レベルのネームドキャラは大丈夫でしょうが、このブームが何処まで波及するやら。
と言うかマリーさんが心配です。現状彼女は雑魚です。将来のスター選手が無名のまま消えていくのは余りに勿体無い。何とか守護らなければ。
全く、どいつもこいつも流行り物に踊らされて。もっと自分をしっかり持ちなさいよ。私など社交の場では昔から髪色に揃えて赤一色です。
万が一に備えて知り合いの医者にも話を通しておかなければ。
クソゥ、仕事が増えていく。おのれ貴族共目。