TS外道転生者のガゴウ   作:般若バール

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日常編9

 

 やって来ました教会‼︎

 沢山の信者がひしめき合っています。皆さん熱心ですね。

 

「で、アンタは何してるんだ?」

 

 シン君、見てわかりませんか?人に聞いてばかりではいけませんよ。少しは自分で考えましょう。

 

「寝ています。人混み嫌ですし、ミサとか面倒くさい。神に祈る暇があるなら努力をして自分を高めた方が救われますよ?」

 

 私は現在教会の裏手の関係者用の部屋で寝ています。祈りとか怠いのでする気はありません。終わり頃にしれっと混ざってやってましたよ感だけ出しておけば良いでしょう。

 

「貴方はちゃんと参加するのですよ。一度サボると癖になりますからね」

 

 実例がここに。

 

「神に悪魔を退治して下さいと祈ってくるよ」

 

「叶えてくれると良いですね〜」

 

 バタン、と扉がしまる音がします。シン君が行ったようです。

 さて、私も寝ますか。おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……て、  …きて、下さい」

 

 何やら声が聞こえますね。私の惰眠を邪魔する不届な声が。

 

「起きて下さい。もうすぐ始まってしまいますよ」

 

 面倒くさいですが起きますか。

 

「おはようございます。よくお眠りでしたね」

 

 目を開けると見知った顔が。

 黄金の髪に青い瞳。柔和に笑う女性が目に入ります。

 

「おはようございます、聖女様。いらぬお世話です」

 

 ニコニコと笑顔で私を見ている彼女こそ、教会の象徴たる聖女様です。

 名前をエミリーさんと言います。

 と言うか

 

「私の寝顔なんか見て楽しいですか?」

 

 どうにも私の寝顔を覗き込んでいたご様子。

 

「はい、寝顔『は』とても可愛らしいので」

 

 ほう?

 

「起きている時は可愛くないみたいな言い方ですね?」

 

「はい、性格の捩れが表情に出ているので」

 

 小娘がぬかしおる。

 

「まぁ、良いでしょう。それで、態々起こしに来たと言う事は儀式の時間ですか?別に見たくも無いのですが?勝手にやっていて下さい」

 

 いや、本当に。誰が好き好んであんな物見たいと言うのか?

 

「そんな!折角の私の活躍の場なのに!見ていって下さいよー」

 

 そう言いながら肩をガックンガックン揺らされます。

 もう何回も見ているのですから、もういいじゃないですか。

 

「分かりました、分かりましたから揺らすのをやめて下さい」

 

 そう言えばピタリと動きが止まります。

 仕方ないですね、シン君とでも見ますか。面倒くさいなぁ〜。

 

「じゃ、先に行ってますから絶対に来て下さいね」

 

 はいはいと手を振りながら送り出します。

 面倒くさい。なんでこんなに面倒くさい性格になったのか?昔はもっとスレて可愛げのない性格だったのに。

 

「さて、仕方ないからいきますか」

 

 こっそりしれっと教会に入ります。

 私は最初からいましたよー感を出しつつシン君を探します。

 

「お、いたいた」

 

 どうやら後ろの方で前の人のやり方を見ながら祈りの手順を真似しています。

 そう言えば教えてなかったですね。マナーも手順も。

 

「ここからは聖女様が披露する場なのでもう大丈夫ですよ」

 

 これ以上は此方側がやる事はありません。強いて言えば騒いで邪魔しない様にするだけです。

 

「……」

 

 無言の抗議は無視します。言葉に出来ない思いは無いと同じです。

 

 ガチャりと音が鳴り扉を開けて聖女が入って来ます。その瞬間、場の空気が一気に引き締まりと言いますか、静粛になると言いますか、兎に角空気が変わります。

 シン君も固唾を飲んで見ています。

 まあ、ステンドグラスから射し込む光に包まれて立つ神聖な空気を纏う美人ですからね。さもありなん。

 

「それでは最初の者、前え」

 

 司祭の人が呼びかけると、1人の男性が歩いて来ます。

 見た目は普通の男性ですが、一目見て分かる鍛えた身体つきから戦いを生業にする人種だと分かります。

 ただ一つ、他と違うのは右腕の肘から先が無い事でしょう。

 

 彼は聖女の前まで行くと跪きこうべを垂れます。

 

「聖女様、私は冒険者をしています。先日仲間達と共に魔物の群と戦った時に腕を食いちぎられてしまいました。お願いします、聖女様。どうかこの傷を癒していただけないでしょうか?」

 

 そう言う男性に対して聖女エミリーは慈愛の表情をうかべ

 

「大丈夫ですよ。よく頑張りました。貴方のその献身に神もきっと応えてくれるでしょう。さあ、大丈夫です。私に全てを委ねて下さい」

 

 そう言って男性の無くなった腕の部分に触れます。

 

「はい。神よ。全てを委ねます」

 

 男性がそう言うと、なくなった腕が光出します。

 しばらくして光がおさまると、なくなったはずの腕がそこに現れたのです。

 見ていた人々は奇跡だと囁き合っています。お年寄りなど神の奇跡だと涙を流して祈っている人もいます。

 シン君も驚いて空いた口が塞がらないようです。

 

 この世界の回復魔法は万能ではありません。病気になどは効果がありませんし、使い手の医療の知識で効果の程も変わってきます。

 単純な切り傷等は簡単に治せますが、失った手足を再生する等は出来ません。切り落とされたりしても、切られた手足等が残っていればくっつけたりは出来ますが、そこまでです。再生は無理です。

 

 しかし、彼女はその不可能を可能にしています。故に奇跡。神に愛された愛子、聖女として人々の間で信仰を集めています。

 

「聖女様、どうか、どうか」

 

 次の人は足を失った子供の様です。一緒についてきた母親が必死に祈っています。

 

「大丈夫ですよ。神は罪なき者を決して見捨てません。さあ、全てを委ねて下さい」

 

 そうして再び奇跡はおき、人々はより熱狂的な信仰を高めていきます。

 

「凄い、こんな事が……。もしかして本当に神の奇跡なのか……?」

 

 と、隣から馬鹿の声が聞こえて来ます。

 

 ゴンッ‼︎と思わず頭を殴ります。

 まったく、何をあっさり騙されているのですか。コレは奇跡等と、そんなご大層な物ではありません。もっと薄汚れた悍ましい物です。

 

「いたっ、何をするんだよ!」

 

 下等生物を見る様な蔑んだ目でシン君を見ます。

 

「良いですか、シン君。この後貴方に現実を見せて上げます。その後にもう一度今のセリフを言ってみて下さい。そうすれば何故殴られたか分かりますよ」

 

 神の奇跡らしき物を私はこの身を持って知っています。もしかしたら、世界には本当の神の奇跡はあるのかもしれません。

 しかしこれは違います。私はこれを何と表現すれば良いのか分かりません。

 ただ、これはもっと歪んだ何かです。私にはそうとしか表現出来ません。

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