TS外道転生者のガゴウ   作:般若バール

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日常編11

 

 道中、シン君にエミリーさんのことを説明します。

 

「この世界には基本六属性に分類出来ない特殊な属性を持った者がいます」

 

 あの場にいてもシン君に無駄に負担をかけるだけで、これ以上は得がないので聖女は置いておいて更に奥に進みます。

 目的地は先程男性が捨てられた先、ダストシュートの先です。

 

「二重属性持ちよりもなお希少、歴史を振り返っても両手の指で数えられる程しか記録が残っていません」

 

 まぁ、誰にも知られずに消えて行った人とかもいるでしょうが。

 

「エミリーさんはその特殊属性に分類されます」

 

 因みに私も特殊属性に分類されます。元々は闇だったのですが、自分を対象にした実験や、既存の枠にとらわれない研究をしていたら、魂が歪み後天的に特殊属性になってしまいました。

 

「エミリーさんの使用する魔術は『交換』です」

 

「交……換……」

 

 おやおや、シン君先程暴れてお疲れ気味ですね。いや、精神的負担かな?まぁ、いいでしょう。

 

「はい、交換です。行っている事自体は簡単です。右手で触れた相手と左手で触れた相手のパーツを交換する、それだけです」

 

 言葉にすると大した事なく聞こえますよね。

 

「思い出してください。今日儀式に来ていた冒険者風の男性と子供、そして先程捨てられた男性を」

 

 私の言葉に段々と理解が出来て来たのでしょう。シン君の表情が固まっていきます。

 

「まさか……」

 

「はい、ご想像の通りです。先程の男性は今日来た2人の無くなった手足と自身の手足を交換したのです」

 

 先程の男性は片手片足がありませんでした。それは今日来た2人に手足を取られたからです。

 例えそこに何も無くても手足がある位置の情報をガリッと入れ替えたのです。

 

「それじゃあ、あそこに居た人達は⁈」

 

「はい、聖女が起こす奇跡の為の残機です」

 

 それが奇跡の正体。他者を生贄にした宗教的儀式です。

 

「勿論、一般の人々はこの事を知りません。彼等彼女達は皆、奇跡だと信じています。知っているのは教会の中でも上層部の一部だけです」

 

 教会の人間も下の方の人々は奇跡だと信じています。

 

「忠告して起きますが、誰かに言ったり、世間に広めてやろうなんて考えない方が良いですよ。悪質なデマとして処理された挙げ句、殺されちゃいますからね」

 

 教会の上層部は彼女の奇跡の影響力を知っています。彼女の存在がどれだけ多くの信者を生み出すことか。

 

「でも、あんな酷いことが、人の命をあんな……」

 

 まぁ、そうですよね、そう思いますよね。

 

「シン君、あそこにいる人は全員先が無い、死ぬ運命にある人々です」

 

 シン君はどういうことか分からず此方を見ています。

 

「彼等は全員不治の病にかかり余命いくばくもない人や、犯罪を犯し死刑を宣告された人達です」

 

 まあ、中には教会にとって邪魔な人間とかもいますが。

 

「だからってあんな風にされて良いわけが……」

 

「シン君、彼等はもう助かりません。しかし、教会に助けを求めて来る人達には未来があります。冒険者の男性は腕を失っては廃業してしまうかもしれません。彼の活躍で救われる人がいるかもしれません。今日来た子供はまだ幼い。未来があります。足が無くては不憫ではありませんか?それなら未来の無い人間よりも彼等の未来を広げてあげた方が良くはありませんか?」

 

 シン君は泣きそうな顔です。

 

「そうかもしれないけど、でも……」

 

 シン君にも完全には否定出来ないようです。

 

「……と言うのが、教会の上層部の言い分ですね。あー気持ち悪い」

 

 不愉快な話です。ん?おや?

 

「シン君、何ですか?そんな顔して。何か変なこと言いましたかね?」

 

 シン君が信じられないものを見る様な目で此方を見ています。

 

「いや、てっきり教会の意見に同意するのかと思って」

 

 ん〜?もしかして

 

「シン君、何か勘違いしていますね。確かに私は悪党ですし、まぁ、ろくでなしです。ですから悪事に関しては人よりも寛容です」

 

 自分に対しても他人に対しても

 

「ですが、寛容である事と好き嫌いは別の話です。私はこの意見が嫌いです」

 

 そう、気持ち悪いのだ。

 

「良いですか、シン君。彼等はね、あれだけ人を殺しておきながら、まだ、自分達は綺麗でいたいのです。聖職者に相応しい穢れない存在でいたいのです。どうせ助からない人間だから、犯罪者だから、世の為だから、聖女が勝手にやっている事だから、だからだからだからと自分に言い訳をして、人を殺しておきながら、未だ、愛される人間でいたいのです」

 

 そのくせ、聖女がもたらす利益だけはしっかりと享受したいのです。

 

「シン君、私は別に悪の品格だとか、罪を受け止めるだとか、そんな事を言いたい訳でもないのです。本人がどう考えようが、悪は皆、下劣です。私が気持ちが悪いのは、彼等が鏡に写った自分に向けてさえ、愛想笑いをしているのが不愉快なのです」

 

 媚を売る表情をしているのが嫌なのです。

 

「私は騙されるのが大嫌いです。例え騙してくる相手が私自身だとしても私をコケにされるのが不愉快なのです。自分を騙して蓋をして生きていくのが大人の生き方です。それは間違いありません。ですが、私は私を騙して下に見ている私が大嫌いなのです。だから私は悪なのです」

 

 私が忌避した道を私の前で歩いている。喧嘩売ってますよね?

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