TS外道転生者のガゴウ   作:般若バール

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犯罪者編2

 

「アハハハハ、それでそのまま逃げ帰ってきた訳ですか。情け無いですねー」

 

 私は現在マリーさんの家から帰ってきたシン君に話を聞いたところです。何でも不用意にちょっかいをかけて見逃されたとか。流石に人気のある真昼間から暴れたりはしなかったあたり、お互いに事を荒立てたくなかったのでしょう。

 

「考えなしに動くからそうなるのですよ。しかも相手にされず見逃されるとか、笑いを取りにきているとしか思えませんよ。もっと慎重にいきましょうよ。考えなしの無鉄砲が許されるのは子供までですよ。……そう言えば子供でしたね」

 

 さて、もう少し下を向いて黙っているシン君をいじっていたいですが本日は残念なことに私も用事があります。ここら辺で切り上げてそろそろ出かけなくては。

 

「まぁ、まだ当分はシルバさんがマリーさんに危害を加える事はありませんから大丈夫ですよ。時間の猶予はあります。今度こそ慎重にいきましょう。それはそうと私はこの後お城に仕事で呼ばれているので後はよろしくお願いしますね?」

 

 さて、家の事をシン君に丸投げして私は仕事で呼ばれたのでお城にむかいます。今日の仕事は会議への出席です。本日の議題は魔物との戦線への物資の輸送についての話でしたね。正直面倒くさいですね。何せ毎回お城での会話は、2割が必要な事、8割がどうでもいい事なので本当に面倒くさい。もっとこう、システマティックと言いますか、そう、面倒な言い回しと鬱陶しいちょっかいを排除してくれないでしょうか?お城に呼ばれた時間はまだまだ先ですがお城の中で会う人達と持って回った無駄な挨拶とかで時間を取られるので早めに行かなきゃいけませんし、毎度疲れます。

 

 

 

 そんな訳でお城について早30分、警備の兵士に武器の持ち込みが無いかのチェックを受け、道中すれ違った人達と形式ばった挨拶を繰り返し、身のない世間話を繰り広げ、ようやく呼ばれた会議室までたどり着きました。永かった。前世の動く歩道を導入したいですね。あれなら無駄話をするとこなく移動出来るでしょう。

 さて、取り敢えずさっさと仕事を終わらせますか。扉をノックして待ちます。

 

「入れ」

 

 部屋の中から許可がでます。

 

「失礼します」

 

 部屋の中には既に沢山の人がいてどうやら私が最後らしい。部屋の中には縦長の机があり、何人もの人達がその両サイドの椅子に座り此方を見ています。彼等は皆、それなりに地位のある人達です。しかし重要なのは部屋の一番奥、机の先端にいる人です。

 

「えーっと、どうも陛下、ご機嫌麗しゅう。また太くなりましたか?ダイエットをお勧めしますよ?」

 

 部屋の一番奥、一際豪華な椅子に座ったこの太った中年男性こそ、シン君のお父さんにしてこの国の国王、『タリスカー・W・アルバ』です。こんな見た目だけど強い。不思議ですよねー。

 

 私は国王の向かい側、入り口に一番近い場所の椅子に座り背もたれに寄りかかり、足を組みます。

 

「貴様!何だその態度は!王の御前であるぞ!それに先程の物言い、無礼者‼︎」

 

 近くの貴族が文句を言ってきますが

 

「よい。構わん」

 

 との国王陛下からの言葉で文句を言ってきた貴族は黙ります。

 このやり取り毎回やっていますからね、最早慣例行事です。正直陛下も面倒くさいと思っていそうです。

 

「それでは会議を開始します。先ずは兵站の報告からお願いします」

 

 そう言って会議を始めたのは陛下の右隣に座る金髪ロングの爽やかイケメン。彼の名前は『ロブロイ・W・アルバ』この国の第一王子です。文武両道、才色兼備の絵に描いたような完璧王子様です。貴族的価値観にも庶民の考えにも理解を示す八方美人でもあります。現在の次期国王筆頭候補と呼ばれています。

 しかし、まあ、うん、面白味は無い。真っ直ぐ舗装された道を歩いてきたお坊ちゃんで、今一つ興味がわかない。いや、優秀ですよ?優秀だけど、うーん、面白くはないですね。

 

 次に国王の左隣を見ます。其方にいるのは筋骨隆々で髪は短く刈り上げた若者、この国の第二王子の『マンハッタン・W・アルバ』です。性格は豪気で勇猛。軍部に強い影響力をもち、貴族や文官などからの支持が強いロブロイ王子とは違い、軍人からの人気が高い王子です。第一王子の対抗馬とされていて現在は2人の派閥が水面下で次期国王の座を巡って暗闘をしているらしいです。

 ただ、まぁ、うん。彼も面白くはない。興味がわかない。

 

 多分国王陛下も同じ考えだと思う。何せゲーム本編の中で自分の後を次ぐに相応しい存在では無いと言って2人とも殺してしまってますからね。

 現在、国王陛下の子供はシン君含めて7人いますがその内5人は私の目から見ても面白くはない。マシなのはシン君ともう1人だけですね。

 

「米の生産は順調、兵站線が切れる心配はありません。以上です」

 

 と、ぼんやりと他の事を考えていたら兵站部の報告が終わっていました。まあ、聞いていなくても大丈夫でしょう。資料にも書いてありますし。

 

 余談ですが我が国では米の生産が行われています。しかしこれは一部地域に限った話で、全国的に行われている訳ではありません。主流は小麦です。それもそのはずで、米の生産は今から半世紀くらい前かな?そのくらいの頃に私が主導して始めた事業だからです。

 元々米自体は東の方の国々で生産されていたのですが、輸入品なので値段が高いし、定期購入が難しいしで困ってしまいました。なので、我が国でも生産をしたくて技術交換を行いました。いや〜大変でした。方々を説得したり、脅したり、買収したりと面倒くさかった。幸い、交換相手は簡単に見つかりました。農業技術は高いが金属加工技術が劣っている国があり、そこと技術者交換が出来ました。

 しかし、交換後も、気候や地質から栽培に適した用地の選定に始まり、またして各所と交渉、脅迫、買収の繰り返し。そこまでして何とか軌道にのせました。こんなに苦労するとは思いませんでした。

 

 そこまでの苦労をしてでも米の栽培に乗り出した理由は2つ。一つ目は単純に私が食べたいから。食の充実は人生を豊かにします。

 

 二つ目は国内の食料自給率を上げる為、ひいては兵糧の確保です。

 我が国の主要な穀物は小麦ですが、ぶっちゃけ小麦って主食として食べるのに向いてないんですよね。味だとか、値段だとか、土地柄文化柄とかの話ではなく、単純に生産量として。

 小麦の収穫倍率、一粒の種を植えて何粒の実を収穫出来るかの指標ですが、前世の品種改良と技術革新が行われた現代社会ですら20倍程度です。それと比較して米はおよそ130倍にもなりました。中世の技術レベルでは小麦の倍率は精々4、5倍です。米はこの段階ですら20倍はあります。

 こと人間を養う能力は他の主食として食べられている各種食品と比べても圧倒的です。と言うか小麦が少ないのではなく米がおかしい。小麦とかノーフォーク農業とかして連作障害をなくそうとしているのに、米は連作障害が無いときた。

 

 そんな訳で国の食料事情の改善として米の栽培を始めました。とは言え今までの習慣が簡単に変わるわけもなく、まだまだ浸透するのには時間がかかりそうです。それでも徐々に普及してきて、今回の様に戦争期の食料としても役に立っています。最終的には前世日本での米とパンくらいの関係になれば良いですね。

 

 

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