「最後の議題なのですが……」
会議は滞りなく進んでいきました。当然ですね。ほとんど確認作業みたいな物ですし、形式上のものです。特別何かあるわけでもありません。
「あー、えっと……」
王子様が此方を見ながら何やら言いづらいそうにしています。まあ、大体察しがつきました。
「は〜〜〜、いつものですか?」
飽きもせずに
「はい、いつものです」
ロブロイ王子も苦笑いです。
「では、返事もいつも通りでお願いし」
私が王子に返事をしようとしたところ
「いい加減にせぬか‼︎」
阿呆の横槍が入ります。
「毎度毎度、言い逃れをしおって!今回こそ吐いて貰うぞ!」
え〜っと、誰だっけ?このお爺さん?まあ、この場にいるって事はお偉いさんなのだろう。毎度毎度と言う事は何回か会っているのでしょう。覚えていませんが。今回はこの人ですか。
「いや、ですから、無いって言っているじゃないですか」
「信じられるか!そんな事!」
お爺さんの他にも何人かの人が頷き、同調しています。彼等の共通点は皆、それなりにお年寄りだと言う点です。
あーもー、面倒くさい。
「これ以上の言い逃れは許さん!今日こそ吐いて貰うぞ!『一坪の生命線』の必勝法を‼︎」
無いって言っているのに、人の話を聞かない人ですね。
やっぱりそうですよ、こうなると思っていました。私がこう言った会議の場に呼ばれるのは大抵こう言った時なんですよ。最早一種の定例行事ですよ。
彼等は皆、歳をとり、死を回避しようと不老を求める集団です。
始めはここまで露骨ではなかったのです。会話の中で匂わせる程度でした。しかし、時が経つにつれて、時間がなくなるのに比例して、尋ねられる頻度が増えて行きました。今ではご覧の通り、隠す気は無く、何が何でも聞き出してやると言った有様です。
自身の死期を悟り、その恐怖から時間が経つに連れて余裕が無くなり死に物狂いで私に迫ってきます。
いくら無いと言っても聞く耳を持ちません。彼等は確実に必勝法が有ると信じて疑わないからです。
それは何故か?その原因は何か?それは私自身にあります。
何年経っても若い見た目、彼等がまだ子供の頃から変わらずにいる存在。そんな私を見て彼等はこう思ったそうです。
アンリ ジャオは一坪の生命線の勝利者だ、と。
つまり彼等はこう考えた訳です。
『アンリは一坪の生命線の製作者で、自分だけは確実に勝てる様な秘密を隠している』と。
根拠も証拠も無い上に支離滅裂な憶測ですが、彼等にとってはそれが真実なのです。そうでなければ困るのです。でなければ恐怖と向き合わなければいけません。
人は自分の信じたい事だけを信じる生き物です。多少の間違いや違和感は無視します。つまり彼等は必勝法が有る事が大前提で、そこは揺るぎないのです。無いと言えば
「無いと言うのならその証明をして見せろ!」
とか言ってきます。
本、と〜うに、迷惑な話です。そもそもあれを作ったのはほんの数年前です。私が若さを維持している理由とは別だと言ったら
「世に出したのが最近だと言うだけだ!本当は昔から存在したのだ!」
とか言っちゃうし、これだから結論ありきで話す人間は始末に会えない。ほんと、話すだけ無駄です。
「我々はこれまでこの国に多大な貢献をしてきたのだ!その我々が何故何もしていない民衆と同じ時間しか生きられないのだ!あってはならない事だ、不条理極まる!」
キャンキャン吠えている連中を無視して他の人を見れば、国王は私達を無視してお茶を飲みながら本を読んでいるし、第二王子は剣の手入れをしているし、第一王子は笑顔の仮面がオブラート並に薄くなり早く終わらせろと言う気持ちが透けて見えます。
皆さん慣れたものです。最初は色々問題視していましたが最早無視を決め込む事にした様です。
因みに国王陛下達は一坪の生命線に興味がありません。国王は不老が欲しければ自分で何とかするタイプですし、第一王子は魔術にも深い造詣があるのでアレに必勝法等用意されていないと分かっています。第二王子は不老等下らん!と言い切るタイプです。なので皆さんこの件には無関心です。
そんな感じでご老人達の遠吠えを聞き流していると鐘の音が聞こえてきます。どうやら当初の終了予定時刻になった様です。
「それでは当初の予定時刻になりましたので本日の会議は終了させて頂きます」
第一王子がそう言って無理矢理会議を終わらせます。さて、帰りますか。
「待て!ジャオ伯爵。まだ話は終わっていないぞ!」
後ろから声が聞こえてきますが無視です。時間の無駄です。
城からの帰り道にこの後の事を考えます。どうせ近々私の元に刺客が送り込まれて来る事でしょう。私を拐い、拷問でもして情報を聞き出そうとか考えているのでしょう。これも定例行事です。
そうだ!今回は私が対処しますが、次回からはシン君にやらせましょう。アレです、良い修行になりますよ。多分。
さて、とりあえず送られてきた刺客を捕まえて逆に情報を聞き出す事から始めますか。本当に面倒くさい。彼等はいつか纏めて処分してくれる。