書きたい事は決まっているのに上手く書けないもどかしさ
「ただいま帰りましたよ」
さて、仕事も終わり、無事に帰宅出来ました。正直帰り道で襲われる覚悟もしていたのですが何事も無く帰ってこれました。さっさと終わらせたいので襲ってきてくれるのを期待していたのですが来ませんでした。残念です。あれだけ感情剥き出しで詰め寄って来たのですから、そのまま感情に任せていれば良いものを、変なところで理性的ですね。
「あ、おかえりなさいっす、おじゃましてまーす」
おや?リビングに行くとシン君とマリーさんがいました。マリーさんは今日は来る予定はなかったのですがどうしたのでしょう?
「いや、昨日突然体調が優れないからって帰ったシンさんが気になって」
なるほど、まぁ、分かりました。シン君を見ればマリーさんに嘘を言った事が少しばつが悪いのか視線を逸らしています。
それは兎も角
「実に良いタイミングで来てくれました。丁度今から部屋の模様替えをしようと思っていたのです。手伝ってください」
送り込まれてくる刺客を迎え討つ際に家具を壊してしまわない様に事前に部屋の片付けをしなければと考えていたのです。もし、刺客が椅子の脚を折ったら刺客の首の骨を折り、テーブルの脚を折ったら背骨を折ってしまいそうです。買い替えるのも大変なのです。
「……まぁ、いいっすけど」
そんな顔しないでください。お小遣い上げますから。シン君、君はタダ働きです。
さて、そんな訳で1時間程、リビングの模様替えを行いました。とは言ってもテーブルやソファーなどの大きな家具を壁際に持って行って、それ以外の小物を空き部屋に持って行っただけですが。それなりに何も無い空間が作れたのではないでしょうか?
あと、マリーさんには小銅貨を上げました。前世感覚で一千円くらいです。時給一千円、悪くはないのでは?
「さて、最後に」
下駄箱の奥にしまっておいたアタッシュケースっぽいカバンを持ってきてリビングの真ん中に置きます。
「はい、お二人は部屋から出てくださいね」
そう言って2人をリビングから追い出します。
「わ、何すか?何すか?」「何だ何だ?」
はいはい、いいから出る出る。
「最初に言っておきますが、死にたくなかったら絶対に部屋に入らないでください」
そう言って私は部屋に戻り、入り口の反対側、壁際まで行きます。
さて、それでは
「始めますか。開錠、ミュウ ストラップ」
パンッ‼︎と手の平を叩き、術式名を唱えます。
すると、パカっとカバンの蓋が開き、中から一足の練習用のバレエシューズが出てきます。
「おーい。突然部屋の片付けをして、物騒な事言って、結局何なんだよ、それー」
と、シン君が入り口から尋ねてきます。マリーさんも頷いています?そうですね、順を追って説明しますか。
「実は先程王城でですね……」
と言うわけで先程のお城での無駄な時間の話をします。
「……と言うわけでですね、つまらないゴタゴタで近々私を拉致監禁しようとする刺客が送り込まれて来るでしょうから此方で迎撃しようかと。そのシューズは撃退用の呪物です。部屋に一歩でも踏み入れると発動するので絶対に入らないでくださいね?しばらくは私はリビングで寝泊まりするので何かあれば入り口から声をかけて下さい。あ、お二人は気にせず日常を謳歌してください」
マリーさんとシン君は顔を見合われると
「……あ、自分、急用を思い出したっす!それでは!」
マリーさんは面倒ごとに巻き込まれてなるものかと逃げ出しました。
残されたシン君は
「……刺客が来ると言われてゆっくり寝れる気がしないんだけど」
知りませんよ、そんな事。
「……しばらく宿に泊まることにする。出費が……」
大丈夫ですよ、私の感ですが多分今日か明日の夜に来ますって、大した出費にはなりませんよ。多分。
さて、そんなこんなで夜になりました。
ソファーに横になってモーフをかけます。さて、それではおやすみなさい。
あー、これはアレですね、夢ですね。明晰夢と言うやつでしょうか。私の前には前世の父親が立っています。
「いいかい、アンリ、良く聞きなさい」
前世の私は父が苦手でした。仲が悪かったとかではありません。むしろ良かったと思います。では何が苦手だったのか?それは
「言葉は熱だ。思いのこもった言葉は人を動かす力になってくれる」
真っ直ぐに私の目を見てくる事でした。
「困った時は誰かに助けを求めなさい。大丈夫、本気の思いは伝わる。きっと力になってくれる」
上辺ばかりの空っぽな喋りばかり上手くなった私には耳がいたい言葉だ。
父は私の歪みにも気づいていたのでしょう。『おい、どうなって……』それでも精一杯力になろうとしてくれた。私が前世で曲がりなりにも誰にも迷惑をかけないで暮らせていたのは『わから 何が 』きっと彼のお陰でしょう。いやはや、私も誰かに助けてもらわなければ『外の 他 にも…… 』こうも駄目な大人になるとは。我がことながら情け無いかぎりです。
懐かしい夢です。……それはそれとして
枕元に置いておいた時計を見ます。深夜2時。真夜中です。
「さっきから五月蝿いですよ!何時だと思っているのですか⁈」
そう言って深夜に人の家のリビングで勝手に社交ダンスを踊っている変質者達に時計を投げつけました。