TS外道転生者のガゴウ   作:般若バール

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Side シン 学園時代編3

 

「…えっと、あー」

 

 朝、目を覚ますと見知らぬ天井が目に入ってきた。一瞬ここが何処か分からなくて混乱したが、昨日は宿屋に泊まったのを思い出す。急なことだったけと、部屋は狭いが表通りに面していて治安の良い宿を取れたのは幸いだった。

 

「起きるか」

 

 とりあえず顔を洗って朝食を食べたら一度様子を見に行こう。流石に気になる。

 

 そんな訳で、宿屋で朝食をとった後、宿を出てから屋敷に帰って来たのだが

 

「お、来たっすね。どもども、おはようございますっす〜」

 

 家の前ではマリーさんが待っていた。

 

「おはよう。あー、マリーさんも気になった感じかな?」

 

 多分、マリーさんも僕と同じだろう。

 

「まぁ、そうっす。アンリさんなら大丈夫だろうけど、流石に気になって。人気がある真っ昼間なら変な人も出てこないと思うし…」

 

 うん、予想通りだ。

 

「ところで、ずっと僕を待ってたの?」

 

 高確率で僕が来るだろう、と言うことは予想出来るだろうけど、絶対ではないのにずっと待っていてくれたのだろうか?

 

「えっと、いや〜、まぁ、流石に1人で入るのは不安だったと言いますか、多分来てくれると思っていたと言いますか……。まぁ、しばらく待ってみようかなぁ〜とですね」

 

 マリーさんは恥ずかしそうにそう言ってくる。なんだかんだ大丈夫だと思っていても不安だったようだ。気持ちは分かるし、僕としても誰か居てくれると1人より心強いからありがたい。

 

「うん、僕もマリーさんが居てくれて心強いよ。でも多分大丈夫だろうし、とりあえず家に入ろうか」

 

 そう言って玄関を開けて家に入る。

 

「ただいま」「おじゃましまーす」

 

 声をかけてから家の中に入ったが、家の中からは返事が無かった。それに妙な静けさが漂っている。急に外の音が遠ざかった様な変な感じがして急に緊張してきた。

 マリーさんも返事が返ってこない事に不安を感じて、僕の服の裾を握っている。正直とても可愛いがそんな事考えている余裕は無い。

 

 護身用に持っているナイフを抜いてかまえながら2人でゆっくりリビングに向かって歩いていく。

 

 人の生活音が一切聞こえないのが不気味で、緊張しながら歩いていると

 

「うん?…なんすかね、この臭い?」

 

 マリーさんが顔を嗅ぎ慣れない臭いに気が付き、顔を顰めている。

 

「この臭いは」

 

 マリーさんに言われて僕も臭いに気がつく。そして一気に警戒度が上昇する。

 僕はこの臭いを知っている。これまでに二度嗅いだ事がある。一度目は故郷の村で。二度目は王城の中で。思い出したくも無い、人の血の臭いだ。それも大量の。

 

「マリーさん、僕の後ろに」

 

 マリーさんを下がらせ、先程よりも慎重に進んで行く。普段なら直ぐに着くリビングが凄く遠くに感じる。兎も角、リビングまで行って状況を確認しなければ。直ぐにでも逃げ出したいが、何も分からなければ動き用が無い。今逃げて良いのかも分からない。

 

 そうしてリビングまでたどり着くと入り口から中の様子を慎重に覗き込む。すると

 

「ヒィッ!」

 

 一緒に覗き込んだマリーさんが中の様子に驚き、腰を抜かして、お尻から倒れ込む。

 

 僕も咄嗟に周囲を見ながら後ろに下がる。

 

 リビングの中には見たこともない2人の男性が血溜まりの中に倒れ込み、おそらく死んでいる。

 

 だがそれよりも、マリーさんが恐怖を覚えたのはそこでは無い。

 

 マリーさんの視線の先、そこには

 

 両手両足を切断され、胸に剣を刺されて壁に磔にされた血塗れのアンリの死体があったのだ。

 

「いったい、何がどうなってるんだ⁈」

 

 どういった状況か訳がわからない?相打ちになった?それとも犯人は他にもいて逃げた?それともまだ近くにいる?と言うか犯人の目的は拉致じゃなかったのか?いや、それよりもアンリが死んだらリリの、妹はどうなるんだ?

 

「……う、ん…ぁ」

 

「……嘘だろ?」

 

 パニックになって滅茶苦茶になっていた思考が一気に冷静になる。完全に死んでいると思っていたアンリからうめくような声がしたのだ。

 

「え?生きてるの?何で?」

 

 思わず声に出てしまった。どう考えても普通死ぬでしょう?あれ‼︎

 両手足無くなって、腹を剣で刺されて、大量の出血もしているのに何で生きてるの?

 

「アンリさん!良かった、まだ生きてるっす!」

 

 マリーさんが慌てて起き上がりアンリに近づこうとするが

 

「待って待って!近づいちゃ危険だよ!誰かが潜んでいるかも知れない、昨日アンリが仕掛けた罠がまだ生きているかもしれない。部屋には入らない方が良い!」

 

 慌てるマリーさんを後ろから何とか引き止める。

 

「兎も角、アンリを起こそう」

 

 正直アンリにはこのまま死んでほしいが、今死なれるのは困る。リリの立場的にも、マリーさんの安全にも。

 そんな訳でマリーさんと2人で入り口からアンリに声をかける。頼む、これで起きてくれ。

 

「……うん?…あ〜?うん?おや、お二人とも何故ここに?」

 

 すると、あっさりアンリが目を覚まし、状況が飲み込めていないのか周囲をキョロキョロ見ている、

 

「あー、なるほど。どうやら大量に出血したショックで気を失っていたみたいですね。シンくん、部屋に入ってきても大丈夫なのでこの剣抜いてもらえます?」

 

 いや、ほんと、何で平然としているの?

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