TS外道転生者のガゴウ   作:般若バール

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犯罪者編8

 

 無駄な時間にも種類があると思うのです。

 釣りなど、人によっては待っている時間が無駄だとか、非効率的だと言う人もいますが、私はその無駄こそが贅沢な楽しみだと感じる人間です。決っして無意味な時間だとは思いません。

 久しぶりに釣りに行ってみたいですね。昔、クロム君と一緒に釣りに行って、ワニの出る河に船から突き落としたのは良い思い出です。

 

 さて、ではその反対に私が心底無駄だと感じる時間は何時か?今でしょ!

 

「初めまして、で良いのかな?アンリ ジャオ伯爵」

 

 私の目の前で1人の男性がニヤニヤした顔で挨拶をしてきます。金色の髪に同じく金色の瞳、王子様の様な端正な顔立ちをしていますが体格は武力を売り物にしている国の代表だけあってガッシリとした筋肉に包まれた、謂わゆる細マッチョ。隣国の次期党首、ロブロイ・バルバロイさん。

 

「私は以前お会いした事がありますから、お久しぶりかしら?」

 

 もう1人、ロブロイさんの奥様であるティリスさんが笑いかけてきます。良家の生まれらしく高貴さを感じる身なりと、白銀の長髪が綺麗な美人です。

 

 はい、言うまでもなく、ポンジさんとミュウさんですね。底抜けの阿呆との会話程時間を浪費していると感じる時も無いでしょう。

 

 私は現在、この2人が指定したスラムと市街地の中間地点の宿屋に来ています。宿と食堂を併設している宿屋で一階に食堂、二階が客室となっています。今は一階の食堂で話をしていますが、私達の他には2人の後ろにサラさんがいるだけで、他に誰もいません。二階からは人の気配がするので無人というわけではなさそうです。

 

 さて、ついて早々に私を煽ってくる2人ですが、私としては最早怒る気も起きません。だって2人共殺すから。今の私は一周回って冷静になっています。

 

 声を掛けてくる2人を無視して私はカウンターの奥に入って飾ってある酒瓶を取り出します。お店の人がいないので勝手に飲ませてもらいます。

 

「それで、何の御用ですか?あなた方と違って私はこれでも忙しいのです。言いたいことが有るのなら手早くお願いします」

 

 椅子に座ってお酒を飲みながら話しかけます。2人は笑顔が引き攣っています。沸点が低いですね。この程度の煽りで表情に出るとは。

 

「いいでしょう。それでは単刀直入に言いましょう」

 

 そこからの話は事前にサラさんに聞いていた通り、自分達がいかに優れているか、何者にもなれるだとか、強力な魔術を持っているだとかの自分に酔った自慢が延々と続きました。単刀直入の意味分かっているのでしょうか?無駄に長時間の自慢話が続きます。

 そもそもそれらの能力は私が生み出した様な物でもあるのですが?

 

 30分くらいでしょうか?自身の能力とこれまでしてきた事の自慢話が延々と続き、ようやく

 

「しかし何でもできる我々にも足りないものがある。それは人手だ。信頼できる仲間が欲しいのです」

 

 本題に入りましたか。

 

「そこで貴女には我々の同胞を更に増やしてほしいのです」

 

 要はアレだ、サラさんの様に自分に都合が良い手駒が欲しいと、それを私に作れと。本体さえ抑えておけば良い様に使えますからね。

 

「引き受けてくれたら我々の同胞に加えて差し上げよう。どうだ?悪い話では無いだろう?これからは我々、進化した人類が裏から世界を動かしていく。社会を支配する人種を常に我々の仲間が担うのだ。君もその中に加えてあげよう」

 

 あ〜、やっぱり駄目だ。底抜けの阿呆との会話程の時間の無駄遣いはありません。

 

 とりあえず私の返事は決まっています。私は中指を立てて

 

「お断りします。先程から長々と無駄話を聞かされてうんざりしているのです。進化した人類だの何だのと言っていますが、貴女達は言ってしまえば私の劣化品、出来損ないのガラクタ共ではありませんか。それが大層なご題目を並べてペラペラと。時間の無駄です」

 

 それだけ言って席を立ちます。前世で厄介な宗教勧誘に捕まり長々と勧誘されたのを思い出しました。あの時は最終的に無理矢理話を切って全力で逃げたっけ。

 

「そうか、それなら仕方ない。無理にでも言う事を聞いてもらうとしよう」

 

 ポンジさんがそう言うと、カウンターの奥の扉が開き、そこから強力な風の砲弾が飛んで来ます。

 

 私は咄嗟に防御しますが、風の勢いに飛ばされて窓から外に放り出されます。体重が軽いとこう言った時不便ですね。

 

「て、ハァ⁈」

 

 私が起き上がると宿の二階の全ての窓から火、水、岩等、様々な魔術が飛んできます。

 

「いや、おかしいでしょ」

 

 私はそれらを全て此方も魔術を飛ばして迎撃します。撃ち落とす事は簡単てす。問題ありません。しかし、問題は

 

「何でこんな手練れの魔術師が入り込んでいるのですか?」

 

 私が見た護衛の人数より圧倒的に多いですよ⁈しかも一人一人の技量も非常に高い。それも20人?30人?いやそれ以上に揃えています。他国の魔術師がそんな人数国内に知らぬ間に入っているとか普通に有り得ないでしょう。国境警備は何をしているのですか⁈いや、王都の門番も。

 

 兎も角、敵の数と現状の把握です。私は自身の魔力を広範囲に広げます。範囲内の様々な情報が分かる便利な技術です。普通はこんな使い方は無理ですが、魔力量だけは人間離れした私にとっては本当に使いやすい技術です。

 

「あー、なるほど。そんな使い方が」

 

 結果、私が見た光景には、近くには誰も魔術師がいませんでした。

 

 

 ……しかしこう言った荒事は苦手なのですが。

 

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