TS外道転生者のガゴウ   作:般若バール

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 お久しぶりです。皆さんいかがお過ごしでしょうか?
 私は年始からインフルエンザにかかったり、手の爪が割れて剥がれたりと一月から満身創痍です。
 遅くなり大変申し訳ありません。


Side サラ

 

「殺す‼︎うげっ!つぁー、殺してやるぅ‼︎」

 

 私は聞こえてくる悲鳴に耳を傾けている。人の不幸を喜ぶ趣味は無かったと思うのだが、実に清々しい気分だね。今ならこの女にされたアレやコレやが許せる気がする。

 私は目の前で苦しみ、血反吐を吐きながらのたうち回るミュウを見下ろしながら必死に表情を取り繕っている。頑張れ私の鋼の表情筋!特に口角。まだ笑う時じゃない‼︎神妙な表情をキープするんだ!

 

 先日、アンリに襲撃を仕掛けたあの日、どうやらこの女はアンリからのカウンター攻撃をくらったそうなのだ。

 アンリ曰く『操られていた人達が死ぬ際に出した怨みや憎しみといった負の情念を、繋がっていたミュウさんの魔力の線を通して全部送って起きました』とのことだ。

 その怨念をもろに受けてしまったこの女は心身にダメージを負ってしまい、今もこうして苦しんでいるわけだ。一時的なもので、その内治るとのことなのが少し残念だ。

 

 結果、ダメージをおったこの女は、急に体調を崩したと言ってアルバ王国からランセア連邦に帰国することになった。ポンジはまだアルバ王国に残っているがミュウと数名の侍女と護衛だけ先に帰ることになった。私もその内の1人だ。

 帰国に使用している馬車の中には私とミュウしかおらず、他の人は別の馬車や外で警戒作業をしている。

 さて、とりあえずは

 

「ティリス様、落ち着いてください。外の者達に聞こえてしまいます」

 

 ミュウの今の表向きの名前で大人しくするように呼びかける。殺してやるとか、事情を知らない護衛や侍女に聞かれたら誤魔化すのが面倒だ。何とか落ち着いてもらわなければ。

 

「五月蝿い!黙りなさい!誰のせいで私がこんなに苦しんでいると思っているの‼︎あんたがもっとしっかりして無いからでしょう!」

 

 いや、知らんがな。私悪くない。

 

「それに、アンリめ!クソ!くそっ!よくも私をこんな目に。絶対殺してやる‼︎」

 

 そう言って再び呪詛を吐きながら苦しみだした。

 

 仕方ない、外の護衛に何か聞かれたら知らぬ存ぜぬで押し通ろう。

 

 しかし、今回は全てが上手くいった。コレでこの女は絶対にアンリに復讐しようと行動に出る。刺客を送ったり、政治的な嫌がらせをしたり。最終的には戦争になるかも知れない。何せアンリにさえ復讐出来ればいいのだから勝敗は度外視で喧嘩を売るくらいはするだろう。国が滅んでもアンリさえ殺せれば良いのだから。

 ただ、始める前から失敗する気がしてならないけど。何と言うか、うん、ミュウもポンジも元々は大して大物な人物ではなかったのではないかと思う。小物感がするのだ。

 

 兎も角、失敗してくれるのは私にとっても好都合。慌ただしくなればそれだけ私の本体の指輪を取り戻す機会が増える。アンリに取り戻してと依頼を出したけど、自分で見つけて取り戻せればそれがベスト。企みが失敗すればするほど、頭に血が昇れば昇るほどにチャンスは増えていくはずだ。

 

 コンコン、と戸をノックする音が聞こえる。どうやら交代の時間のようだ。

 

「それではティリス様、失礼致します」

 

 そう言って交代の侍女と代わって外に出る。

 他の馬車に乗っても良いが外の空気を吸っていたい気分なので少しばかり歩くことにする。

 

 ……今回の訪問で私は沢山の人を殺した。しかし、その事にあまり強い自責の念が無い。だってしょうがなかったから。やれと命令されて断る事が出来なかったからだ。

 

『逆らえば私が殺されるかも知れない』

 

 そんな思いが私の罪悪感を薄めている。

 

 ……私はそれが凄く怖い。

 

 私の魔術は殺人に向いている。と言うかそれ以外に使い道が無い。だからこれからもそんな命令がくるだろう。

 上下関係は便利だ。上の人間は自分が直接手を汚すわけではないから簡単に命令する。下の人間は命令だから、逆らえないからと言ってしょうがないからと悪事に手を出す。上も下も相手に責任を押し付けて罪の意識から目を逸らしている。だから何でも出来る。

 

 こんな事を繰り返していたら、私は今ですら薄いこの罪の意識がいつか無くなるのではないかと不安だ。命を奪うたびに、命の価値に気付かなくなるのではないかと考えてしまう。

 

 今や私は魂だけの存在だ。本当の自分の身体は無く、振り返られる思い出もほとんど無い。

 そんな私が持つただ一つのモノの価値を、自分で自分を貶めている。そんな気がしてならないのだ。

 

 私が望むのは自由だ。その為にはきっと、この価値はなくてはならないモノだと思うのだ。

 私は善人では無い。自分が生きる為には他者を害することも出来る人間だ。それでもそれは誰かに言われてするのではなく、自分の意思で行うべきだ。そうでないと私は私の価値まで気付けなくなってしまう。

 

 私には大切なモノは少ない。だからその少ないモノくらいはしっかり守っていかなければいけないと思うのだ。

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