うわぁ〜。面倒くさい。メイルゥさんがいますよ。やだなぁ〜。
エミリーさんがしばらくいなくなると聞いて、何の気なしに挨拶だけしておこうと思ったら、メイルゥさんがいるではないですか。聖女であるエミリーさんの護衛として聖光国から派遣されたのでしょうが面倒くさい。
彼女、メイルゥさんはレオン君の孫にあたります。遠目ではありますが見たことがあります。とは言っても王位継承権がある家ではなく、分家と言うか、レオン君が無駄に頑張った結果とでも言うか、そんな御家。歳は17才とか大体それくらいで役職を考えれば大分お若いです。諸事情あって実家を出て聖光国に行ったのは知っていましたが騎士になっていたのは知りませんでした。まぁ、彼女のことを思えばそれは当然とも言えるかも知れませんが。
彼女の何が厄介かと言えば、強い。ただ強い。やたらと強い。レオン君の強さを最も引き継いだと言いますか、無駄に強い。話に聞くだけでは無く、実際に見ても強者だと分からせる何かが有ります。多分現時点で全盛期のレオン君より強いまであります。知識チートで下駄履いていたレオン君より強いとか、何その怪物。そりゃ若くして隊長を任されますよ。
血筋が良くて、見目麗しくて、学があり、何より強い。性格に一部難あれど基本的には控えめで優しい。その上で清濁併せ持つ器量がある。そんな超人が彼女、メイルゥさんです。
面倒だ〜。いや、ただの送り迎えなら良いですよ。しかし、罷り間違ってエミリーさんの専属の護衛にでもなられたら心底邪魔くさい。
いや、まぁ、きっと大丈夫でしょう。彼女の祖国ボーア公国と我がアルバ王国は仲が悪いですから。主に私のせいで!
いや、でも最近の若い者はドライだったりするしなぁ〜。
「あ、あの、少しよろしいでしょうか?」
などと考えていたら考えていたメイルゥさん本人に話しかけられました。シン君との話は終わったんですね。
「はい、何ですか?」
……嫌な予感がしますね。
「あの、その、この後少しお時間よろしいでしょうか?」
あ〜、控えめに言っていますが目がヤバい。逃げるよ、と言っています。
……これ断っても後日何らかの手段でまた来ますね。
……面倒くさーい‼︎
「ええ、構いませんよ」
「あ、ありがとうございます。聖女様、すみません、少し離席させてもらいます。皆さんも少しの間よろしくお願いします」
そう言ってメイルゥさんはエミリーさんと部下の人に話しかけていきます。
「あー、シン君、君もここにいても準備の邪魔になりますから一緒に行きましょう」
「そうだな、分かった」
シン君も連れて行きましょう。何となく嫌な予感がしますね〜。
「それでは裏庭に行きましょうか。ついて来てください」
チラリとエミリーさんを見れば頑張れーと手を振っています。……あの女、事前にこうなると知っていたな。おのれ〜。
「つ、つきました。どうぞ此方に」
そんなこんなで教会の裏手に来ました。裏庭とは言いましたが特にこれと言った物は何もありません。バスケットコート一面分くらいの何も無い空間で、周りを柵で囲われて周囲からは見えない様になっています。普段から色々使っている場所ですが、今は丁度誰もいない時間の様です。
「それで、お話とは何でしょう」
さっさと終わらせようと話しかけます。シン君は話の邪魔にならない様に隅で待機している様です。
「あ、はい。あの、実はですね、我が家、と言うか王家にはですね、表沙汰にはしない様にと言ってある話が語り継がれていまして、その、50年前の戦争の話なのですけど……」
お〜う、シッ。オーマイガー。思わず天を見上げます。やっぱり面倒くさい話ですよ。
「そ、そのですね、私もおばあちゃんに聞いた話なんですけど、貴女の事とあの時何があったか聞いていまして」
孫の世代にまで恨みを残すとは、アイリスさん、見損ないましたよ‼︎
「そ、それでですね、この国で仕事を受けるにあたって先ずはその清算をしようと思いまして…」
兎も角、先ずは話しをして何とか矛を収めてもらいましょう。先日に引き続き今回も荒事なんてごめん被ります。
「それは誤解です。確かに私達は戦/
『斬りました』
/争をして、……あれ?」
あれ?地面が何で目の前に?それに誰ですか、この人?いつの間にこんな近くに?……あ、これ私だ。……あ〜、成る程。私はいつの間にか首を刎ねられて、頭だけが地面を転がっていたと。いや〜全く見えませんでしたよ、気づかなかったなー、はっはっはっ。
…………………またか!また致命傷ですか⁈最近多過ぎませんか‼︎
体が今頃斬られた事に気がついたかの様にバタンと倒れます。
壁際ではシン君が余りの急展開に目を見開いて固まっています。
メイルゥさんは用事は済んだとばかりに、さっさと教会の中に帰って行きます。成る程、確かに性格に一部難ありですね。
と言うか、腹が立ちます。立ちますが、それ以上に使えます。
「すみませんシン君、モラモラ先生を呼んできてくれませんか?」
とりあえず応急処置をしなければ。私は体と頭のそれぞれの側の首の断面を魔力で覆います。クロム君に教えてもらって知った事ですが、私の魔力には引っ張る性質が有るらしく、触れた人は何かに引き寄せられる感じがするそうです。これはその性質を拡大、強化したもので、魔術では無く、単なる魔力操作の応用です。
私の切れた首の断面がそれぞれ魔力によって引っ張りあいくっ付きます。
よっと、勢いをつけて起き上がります。くそ〜、こういった荒事は専門外なんですよ、まったく。て、おや?
「シン君、何を呆けているのですか?さっさとモラモラ先生を呼んできて下さい」
起き上がった私を見てシン君は口を開けて馬鹿みたいな表情で私を見ています。
さっさと呼んできてくださいよ、この状態を維持するの大変なんですよ。神経とか血管とか細か過ぎて正直いつまでも維持するの無理です。切り口が綺麗なお陰で大分やり易いですがそれでも辛い。
そんな訳でシン君の尻を蹴って追い出します。
……さて、突然の暴力に腹は立ちますが、それ以上に彼女は使えます。丁度先日にサラさんから送られてきた手紙を思い出します。
彼女はもしかしたら使えるかもしれません。