fate/not focusing 作:振り子メンタル
それでは、本編をどうぞ!
20XX年、VR技術の発達により、人々の遊びの舞台は仮想世界へと移って行った。
そんな中、人々の間で流行していたのは、歴史上の偉人達を英霊…サーヴァントと呼ばれる存在として、育て競い合うゲームだ。
とあるノベルゲームが由来のこのゲームは人々の間で爆発的なブームとなり、そのブームはここ日本だけでなく、世界にも広がりつつあった。
プレイヤーは自分のサーヴァントを育て、イベントに参加したり、時に助け合い、時に競い合いながら各々の楽しみ方でゲームを楽しんでいた。
そんなある日のこと、とある告知がなされた。
それは大規模なイベントの告知であり、後にそのイベントは大きな波紋を呼ぶことになる。
そのイベントの名は“聖杯戦争”、このゲームの根幹となる設定の名前を借りたソレは、仮想世界で行われた、それぞれの願いを賭けた命がけの戦いだった。
これから語られるのは、仮想世界にて行われた聖杯戦争の物語。
1人の少年と1人の少女…2人の軌跡の物語だ。
//////////////////
「ついにこの日がやってきた!ワクワクするな!」
ベッドに寝転びながら、僕は思わずそう口にしてしまう。
今日は、今話題のVRゲーム、fate/not focusingの大規模なイベントの日だからだ。
そのイベントの名は聖杯戦争、なんでも本物のサーヴァントと共にプレイヤー同士が競い合うというイベントらしい。
実際、本物の定義とは何かと言われてしまうと困るけど、原作の中で語られるような超常的な存在なのだろうとは思う。
でも、現実にどんな願いでも叶う聖杯なんてものはないと考えている人も多いようで、よくて高性能なAIを使って本物に近づけているだけだと考えている人達もいるようだ。
とはいえ、本物のサーヴァントと共にプレイヤー同士で競い合うという内容は注目を集め、参加できる枠が7枠しかないにも関わらず、応募する人々は1000万を超えたという。
参加者は抽選で選ばれ、選ばれた人に運営から独自のソースコードが届き、ゲームにログインしたら、イベントの場所へとそのまま飛ぶという仕組みらしい。
僕は運良く…本当に運良く抽選に選ばれ、この大規模なイベントへと参加できることになった。
僕のテンションが高いのもそのためだ。
「さて、そろそろ時間か…準備しよう」
そう呟きながら、頭にVR機器をセットする。
「ログイン」
そして、その言葉と共に僕の意識は深く沈んでいった。
この時の僕はまだ知らなかった。
この先に待ち受ける戦いの運命を。
_________
______
____
「う…ん…」
意識が覚醒すると、目の前に魔法陣のようなものがあった。
辺りを見渡した限り、どこかの建物の中のようだけど。
「えっと、ここからどうすれば良いんだろう…あ!あれか!確かに召喚には詠唱が必要な気はするもんな」
えぇと…確か…
必死に頭を働かせながら、手を翳し、言葉を紡ぐ。
「ーーーー告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の依るべに従い、人理の轍より応えよ。天秤の守り手よ!」
あれ?なんか微妙に違うこと言っちゃったような…それになんか短くない?
そんなことを思っていると、魔法陣が光り輝く。
「え?え!?あれで大丈夫だったの?」
そんなことを言っているうちに、魔法陣がさらに輝きを増し、俺は思わず尻餅をついてしまう。
そして、右手が熱くなるような感覚に襲われ視線を移す。
そこには赤い紋様が浮かび上がっていた。
「サーヴァント、キャスター。召喚に応じ参上したよ!こういうときはあれだよね!…コホン。問おう…あなたが私のマスターか?…って、座り込んじゃってるけど大丈夫?」
そう言って、キャスターは俺に手を差し伸べてくれる。
俺の目の前にいるキャスターは朱色の髪の少女で、白い制服のようなものを着ていて、差し伸べられた手には黒のグローブが着けられていた。
俺はその手を取り、立ち上がる。
「ありがとう、キャスター。君の言う通り、僕がマスターだよ」
「やっぱりそっか!よろしくね!マスター!…いや〜、なんか私がマスターって呼ぶのは変な感じだなぁ…」
「それはまたどうして?」
「たはは…私、マスター経験はあるんだけど、サーヴァントとして召喚されたのは初めてだから…いや、サーヴァントっぽい扱いになってたことはあったかな…まぁ、その時は死んでいたわけじゃないから、今回とは違うけど」
「マスターだったことがあるんだ!それはすごいね…キャスターとして召喚されたってことはそれだけすごい魔術師だったり?」
「いやいや、私はそんなにすごい魔術師だったわけじゃないよ?…私はただの一般人だよ」
そう言うキャスターの顔はどこか悲しそうだった。
「…そういえば、まだ真名を明かしてなかったよね?」
「そうだけど…真名ってそんなにあっさり明かして良いものなの?」
「マスターになら問題ないでしょ!それに私の名前を聞いたところで誰も知らないだろうし」
「そっか…わかった!教えてもらっても良い?」
「うん!私の真名は
「よろしく!…えっと、なんて呼べば良いかな?」
「六香でいいよ!マスターの名前は?」
「僕は
「よろしく!優斗君!…うん、やっぱりマスターって呼ぶより、名前で呼ぶ方がしっくり来る。戦い以外の時は名前で呼んで良い?」
「それは構わないよ。僕も戦い以外の時は六香って呼ぶね」
僕の言葉にキャスター、もとい六香は笑みを浮かべた。
『プレイヤー諸君、そろそろ自分達のサーヴァントと出会えたところかな?』
突如として出現したモニターのようなものに、フードを被った謎の人物がそう告げる。
『では、そろそろこの聖杯戦争の説明をしよう。まず、プレイヤー達は自分のサーヴァントを召喚する。クラスは〈セイバー〉、〈アーチャー〉、〈ランサー〉、〈ライダー〉、〈キャスター〉、〈アサシン〉、〈バーサーカー〉のそれぞれ七騎が存在している。どのクラスでどんなサーヴァントが召喚されるのかはプレイヤー次第だ。すでに召喚しているものばかりだろうから、この段階はすでに終わったものとして説明を続けよう』
そう言って、フードの人物は言葉を続けた。
『サーヴァントを召喚した者は、こちらが用意した各々の拠点で、自分達の態勢を整えると良い。聖杯戦争の本番は明日からだ。期日は14日間、7人のプレイヤー達よ、聖杯を求めて戦え!…安心しろ、こちらの世界での1日はあちらの世界での30分ほどとなっている。仮にこちらの世界で14日間過ごしたとしてもあちらの世界では約7時間ほどだ。長い夢を見ているようなものだ』
その言葉に少し安堵する。
本当にリアルで14日間経ったら、シャレにならない。
本格的に死ぬところだった。
だが、そんな安堵の気持ちはフードの人物の言葉に一瞬で壊されることになる。
『そうそうこの聖杯戦争の重要なルールを説明し忘れていた…プレイヤー諸君、心して聞くと良い。…この世界での死は現実の死に直結する。死にたくなければ、精々足掻け』
「は…?」
あまりにもさらりと告げられた衝撃の事実に、思わずそんな言葉が出る。
『おっと、ここでさらに追加情報だ…どうやら、アサシンのマスターがアサシンによって殺害されたようだ。ちょうど良い、見せしめになってもらおう』
そう言って、フードの人物が見せた映像は凄惨の一言だった。
腸を抉り出され、身体中が血みどろになっており、その顔は苦痛に歪んでいた。
そして、それと同時に映し出された映像はVR機器を装着している人物が体を激しく動かした後に絶命する様が映し出されていた。
「嘘…だろ?これ、ほんとに死んで…うっ…おぇえええ…!」
あまりの凄惨な映像に吐き気を催す…幸か不幸か、ここがVR世界のおかげで、胃の中のものが吐き出ることはなかった。
「優斗君!落ちついて…吐き気が収まるまで吐いて、吐き終わったら、ゆっくり深呼吸して」
六香が俺の背中をさすりながら、そう言ってくれる。
俺はその言葉に従い、何度も何度も吐き…そして、しばらくしてようやく落ち着くことが出来た。
「おぇ…はぁ…はぁ…ありがとう、六香…おかげで少しはマシになったよ…うぷっ…」
「良かった…」
六香は安堵した表情でそう口にする。
そんな風になんとか落ちついた後、フードの人物が映像を消し、言葉を続けた。
『この映像を信じるかはお前達次第だ。では、明日に備えて準備をすると良い。拠点についての詳しい内容は後ほど各プレイヤー達にデータを送信する。それではまた明日…諸君らの健闘を祈っている』
そうして、モニターの映像が消え、後には静寂が残された。
////////////////
「………」
「優斗君?」
「…………」
「優斗君?お〜い!優斗君!」
「聞こえてるよ…ごめん。ちょっと色々と考え事をしてて」
「この聖杯戦争についてだよね?」
「うん…」
先ほどの衝撃的な出来事が未だに離れない。
この世界での死は現実の死に直結する…そんなこと信じられないし、信じたくない。
そもそもあのフードの人物の言葉がどこまで本当なのかわからない…確たる証拠があるわけでもない。
もしかしたら、この世界での死が現実の死に直結する、なんてことはなく、さっきのあれはただのパフォーマンスという可能性だってあるはずだ。
…いや、本当はわかってるんだ…あの言葉は嘘じゃないって…でも、希望的観測に縋りたいと思ってしまうのは仕方ないんだ…
「優斗君」
そう名前を呼んで、六香は俺の肩に手を起き、真剣な目でこちらを見つめてくる。
「怖いのはわかる…あまりの凄惨な光景に目を背けたくなるのも…でも、それじゃあダメなんだよ。…どんなに辛い現実だって、目を背けちゃダメ。ちゃんと受け入れて、前に進まないと」
「ちゃんと受け入れて、前に進む…」
あの凄惨な光景を…この世界での死が現実の死に直結するという事実を。
受け入れるーーーーーー
…そうだね…受け入れないと。仮に先ほどのあれがパフォーマンスであったとしても、僕にとってあれは現実に映った。
あれは偽物と呼ぶにはあまりにも生々しくて…確かに、誰かの命が散る瞬間だった。
実際のところはどうなのかはわからない…だけど少なくとも、僕はあれを現実だと受け入れて前に進もう。
「…ありがとう、六香。おかげで、ようやく前に進めそうだ」
「良かった。…うん!いい顔になった!」
そう言って、六香は笑みを浮かべる。
「さて、優斗君が立ち直ったことだし、まずはご飯にしよっか」
「そうだね…僕もお腹が減ったよ…食料とかもちゃんとあるんだっけ」
「そうみたい。今から作っちゃうね!」
「じゃあ、僕も手伝うよ」
「よし、じゃあ一緒に作ろう!」
そうして、僕と六香は一緒にご飯の用意をするのだった。
といった感じのプロローグでした!主人公である望月優斗のサーヴァントは藤丸六香です。この彼女は今年のエイプリルフールのやつで出てきた、あの藤丸六香ですね!残念なことに私はエイプリルフールのあの野球ゲーが出来なかったので、動画でしか見ていませんが…
それでは、今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございます!