ブルーアーカイブ〜からくり仕掛けのメシア編〜 作:名を失われた天使
[ココネ、ちょっといいかな?]
モモトークを送信して、窓の外を見る。
大雨だ。
[ココネ?]
既読が付かない。
今日は当番の子にも来ないよう伝えたから、手伝って欲しいのだけど。
ま、そのうち見るでしょ。
『先生、新着メッセージが来てます』
プラナがモモトークを開いて見せてくれる。
[今起きた]
時間にして2分前。しかし、気になる点が……。
「既読が付いていない……?」
メッセージを開くと、ココネからのメッセージは来ていたが、既読がついていない。
どういうことだろうか。
「プラナ。既読をつけずに返信できる?」
『できますが……。先生、何かするつもりですか?』
「いや、気になっただけ」
業務に戻り、雨の音を聞きながら時間が過ぎるのを待つ。
「………おはよう、先生」
ココネがタブレットを持ちながら入って来た。
赤色の髪だけが少し跳ねていて、寝起き直後だとわかる。服装も少し乱れていて、セーラー服の肩の部分がずれて、肌がガッツリ見えている。
「寝癖ついてるよ」
「ん〜……?あー、別にいいの」
「服もズレてるし」
「オーバーサイズだから」
にしても、セーラー服なんて持ってたんだ。どこかで見覚えがあるけど。
「んで、書類はどれ」
「あの山、お願いできる……?」
机の上に溜まった書類を指差す。
「あの量……まぁ、良いけど……」
渋々といった感じの顔で引き受けてくれた。
しばらくの間、雨とペンの音が部屋に響く。
「ん……」
目の前に差し出された書類。受け取るとココネはソファに寝転がった。
「早いね」
「…………まぁ、かなりの量、やってたから」
研究室で書類の整理でもしていたのかな。
書類の間に黄色の紙が挟まれていた。その紙の下には私が確認する必要のある書類が纏められていた。
「ありがとうね」
「いーえ。そうでもないですよ」
ふと外を見ると、雨がさらに激しくなっていた。
「そういえば、他の仲間は大丈夫なの?」
シュウとかは屋根のあるところで休めているだろうか。
「大丈夫ですよ。あと、こういう雰囲気の時は、あまり他の女のことを喋らない方がいいですよ。私達以外では」
刺されますよ、と注意された。
「まぁ、そんなことしない生徒ばかりだとは思いますけどね」
「もう昼ですよ、先生」
ココネが机の上に何かを置いて話しかけて来た。何かを入れたレジ袋だ。
「ほら、お弁当を買っておきましたから、さっさと食べてください」
中を開くと、普通の海苔弁当が入っていた。
「アレルギーとか、ないですよね?」
おにぎりの包装紙をぺりぺりと剥がしながらココネが言う。
「無いよ」
「そうですか」
タブレットに触りながら食事をすすめるココネ。
画面を睨んではため息をついたり、驚きの声をあげたり。
ココネに近づいて、タブレットを取る。
「あっ」
「行儀悪いから、食べ終えてからにしようね」
タブレットの画面は、赤色の空を写していた。
どこか、見たことのある画面。思い出そうとして、突如、画面が暗転してつかなくなった。
はて、どこで見たのやら。
「せーんせい。終わーりーの時間ですよー」
ふと顔を上げると、壁掛け時計を手に持ったココネが持ってる時計を指差していた。
時刻は17:00。定時だ。
「定時の時間ですよー。生徒に残業させるつもりですかー?」
残業を生徒にさせるのはまずい。
「そうだね。今日はもう終わりにしよう」
私がそう言うと、ココネは満足したのか、壁掛け時計を投げて、壁に掛け直した。
「そうですよ。この“夢”はもう終わらせるべきです』
「先生。起きましたか」
目を覚ますと、ココネが顔を覗き込んでいた。外を見ると、すっかり暗くなっていた。
はい、とココネがペットボトルを渡してきたので、素直に受け取って水を飲む。
「雨は止んだのか……」
「雨?ここ最近は降ってませんよ」
ココネが平然とした顔で告げた内容に驚いた。雨が降っていない。では、アレは最初から夢だったのだろうか。
「ココネ。私は……」
「倒れていたんですよ。全く……眠るならちゃんと寝てください」
倒れていた。そうなのか。では、先ほどまで見ていたのは全て夢だったのか。
「えぇ。そうですよ、先生。そもそも、私は壁掛け時計を指差す必要ないですし、投げて掛け直すことも出来ません」
え、と言葉が漏れたが、ココネはケラケラと笑いながら、抱えていたタブレット端末を膝に置いた。
ちらっと見えたそのタブレットの画面は、黒い背景に赤い髪の女の子の姿が見えた。
『看病してくれてありがとう』
「気にしなくていいですよ。ですが、倒れるまで頑張るのはあまりしないでくださいね。他の生徒が心配しますから」
『これから気をつけるね。所で、いつから倒れてた?』
fin
「えぇ。この虫ケラのように傷なんてつくわけありません」
「ココネが裏切った〜!!」
「なぜにぃ!?」
次回 第9話 理由