ブルーアーカイブ〜からくり仕掛けのメシア編〜   作:名を失われた天使

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戦闘描写というものは存在しないです。


第10話 脱出

 

 

『諸君!!我々はキヴォトスを手にする鍵を手に入れた!!』

 

 壇上に立つ男が、片手を上げて叫ぶ。

 

『今、このキヴォトスを統べているのは、外から来た“先生”だ!!』

 

 男の後ろのスクリーンにデカデカと写されるシャーレの先生の“似顔絵”。

 その絵にザワザワと会場が騒がしくなる。

 

『不服だろう、悔しいだろう……ん……?あれ?なんだこれは!?おい!!画像間違えてるぞ!!』

 

 映像が切り替わり、先生の顔写真が写される。

 

『今度こそ、正しいな……!えー……どこまで言ったかな……ここか。我々は、今ここに!!キヴォトスを占領し!!ヘイロー無き者たちの楽園を!!銃撃を怯えることのない世界を築く第一歩を、踏み締めようではないか!!』

 

 壇上の男の長くない演説が終わっても、その会場は静かだった。

 

「………馬鹿みたい……」

 

 人の流れに沿って移動しながら、手に持っているタブレットをいじる。

 親友のあの子が残したかったものが、全てここに詰まっている。

 

「『ヘイロー摘出』ねぇ……」

 

 カンカンと音を鳴らしながら頭を掻く。

 『ヘイロー摘出』のレポートは全て失敗と書かれている。

 被験体No.0〜25のうち、生存数は9名。死亡率66%の結果として、納得はいかなかっただろう。その残った9名を使って再度実験。キメラを作って、1名死亡。残りには人格障害と生成されたタブレット。

 

「狂った挙句、アレねぇ……」

 

 周りは機械的に働くだけの案山子。倫理観など、もうここには無い。

 

 

 

「辞める、のか?」

「はい」

 

 上司に辞職票を出したら、トップまで連れてこられた。

 

「えーっと、君は……うん。問題なさそうだね」

 

 何を見て問題無しとしたのかはわからないが、無事に辞められそうだ。

 

「まぁ、別のところでも頑張るといい」

 

 かなり膨らんだ封筒を受け取り、部屋から出る。

 

 

 

 アビドス校近くの砂漠は険しく、徒歩で都市まで行くのはかなり無理がありそうだ。

 度々発生する強風で砂が舞い上がり、視界が塞がれる。

 開けた視界の中に、突如現れたものがいた。

 

「………っ」

 

 口封じだろう。私は結構根幹の実験に参加していたから、消されるのは仕方ないだろう。

 追手は小さい身体に、見合わぬ大きさの翼を持っている。翼を広げていて、3m程の幅をとっている。

 また風が強く吹き、晴れたらその追手はすぐ近くまで来ていた。

 

「お久しぶりです、博士」

「えぇ……久しぶりね、シナノ」

 

 祭原シナノ。ヘイロー摘出、変換実験の生き残りの1人。

 

「あの研究施設、大爆発があったと聞いたけど……」

「えぇ。爆破しましたから」

「怪我はなかった?」

「有りませんでしたよ。まぁ、無駄話は後々しましょう。今は、やるべきことがありますので」

 

 シナノはそう言うと、彼女が最も得意としている武器種の対物ライフルを取り出した。形状からして、Boys AT rifleだろうか。訓練では確かAR-50を使っていたはずだが。

 

「私が良いと言うまで動くな」

 

 銃口が私に向く。対物のため、私の頭などいとも容易く貫くだろう。

 

「手を後頭部につけろ。そして、しゃがむ用意をしろ」

 

 言われた通りに、手を後頭部に置き、膝を少し曲げる。

 沈黙の時間。静かに砂が飛び去るのを眺めているだけの時間。一体、いつまで続くのだろうか。

 

「しゃがめ!!」

 

 シナノの言葉通り、急いでしゃがむ。

 それと同時に硬い金属同士がぶつかる音がした。遅れて、ガラスが割れたかのような音も響き、発砲音も鳴る。

 

「もっと伏せろ!!」

 

 顔を上げようとしたら、怒号が飛んできた。

 顔に砂が付くのも気にせず、身体がしっかりと隠れるように地面に、砂漠にしがみつく。

 

「ったく……用無しなら、すぐに消すってねぇ……」

 

 シナノの愚痴るかのような声が聞こえてくる。

 

「あの子達にしていたことと同じことを、見逃せるほど優しくは無いって、知らしめないとな」

 

 飛んでくる弾丸を気にせずに、身体を、顔を隠すこともせずにシナノは弾丸を全てその小さな身体に当てながら一歩ずつ前へと歩いていく。

 

「博士。私の後ろに隠れてて」

 

 異形となったその翼で壁を作ってくれた。

 

『敵が探知範囲圏内に入りました!!』

「了解。これより、戦闘を開始する」

 

 

 

 

 

「先生♡少しお時間、いいですか……?」

 

 トリニティの補習授業部。トリニティの様子を確認しながら、シャーレ宛の依頼の整理をしていたら、ハナコにコーヒーを入れたマグカップを取られ、強引に机から引き剥がされた。

 

「ハナコ……?まだ仕事だいぶ残ってるんだけど」

「えぇ。ですから、少し休憩をと思いまして……」

 

 ハナコが鞄を探り、何かの包みを取り出す。

 

「さぁ、先生♡2人だけで、いいこと、しましょう」

「えっちなのはダメ!!」

 

 廊下に出た途端、コハルが指を突き出していつもの注意をしてきた。

 

「まぁ〜。厳しいですね〜」

 

 ハナコが頬に手を当てて困ったようにする。

 コハルはコハルでネコ目になりながら、頭の上の翼を忙しなく動かしながら判決を下す。

 そういえば、コハルは翼が頭にもあるんだ。少し聞いてみたいかもしれない。

 

「とりあえず、先生と一緒にお昼ご飯でも食べに行きませんか?」

 

 

 

 ハナコに連れられて、途中で会ったヒフミやアズサも一緒に食堂へ向かった。

 

「そうなんです!ペロロ様の特別記念ver.、買えたんですよ!!」

 

 ヒフミが楽しそうに喋る様子を眺める。

 平和だなぁ……。

 

『!』

 

 突然、シッテムの箱から通知音がした。

 画面をつけると、いつもの戦闘画面が開いていた。

 

「誰か戦っている……?」

 

 誰か1人が、どこかの砂漠で多数を相手にしている。

 

「「「…………」」」

 

 ヒフミ達は、画面が見えなくても何が起きてるのかはわかったみたいだ。

 幸い、食べ終わった後だったので、さっさと食器類を片付けて、すぐ近くにいた救護騎士団のセリナも連れて、客人用のオフロード車で砂漠へと向かう。

 車内で色々と決める。

 ハナコは後衛。ヒフミとアズサとコハルが前衛。私とセリナが最後方で待機ということになった。

 もう一度シッテムの箱を覗く。

 戦闘はいまだに続いていた。戦っているのはシナノ。顔が写真と一致した。持っている武器は……デカいな。対物ライフルとかだったかな?

 

『もうすぐで戦闘地域です!気をつけてください、先生!』

 

 アロナの注告が終わると同時にサイドミラーがどこかに消えていった。

 

「戦闘に突入する」

「一緒なら大丈夫です!」

 

 アズサとヒフミが飛び降り、コハルはズッコケて砂にダイブ。ハナコがインカムを付けて、車が止まってから降りる。

 

「先生、私の後ろに」

 

 セリナが私の前に出て車に載せてあったライオットシールドを構える。

 

「目標を通達。現在、単独で戦闘を行っている生徒、祭原シナノの保護」

「「「了解!」」」

 

 

[Start!!]

 

[少女戦闘中……]

 

[Victory!!]

 

 

「ふぅ………」

 

 砂が光を反射して、かなり体温が上がっている。流れる汗を拭いながら、周囲を見回す。

 ヒフミ達はシナノに銃口を向けて警戒を解かない。一方、シナノは持っているライフルを肩にかけ、座り込んでいる。

 他には、シナノが庇うように翼で囲んでいた市民。

 

「シナノ」

 

 私が名前を呼ぶと、シナノは顔だけを向けた。

 

「貴方が……なるほど」

 

銃口を天から地面へと向け、そして砂に突き刺した。

 

「初めまして。祭原シナノだ」

「よろしくね。連邦捜査部シャーレの先生です」

 

 シナノが手を差し出したので、握手に答える。

 シナノの話を聞くと、シナノはこの市民(博士というらしい)を保護しにここまで来たそうだ。

 

「ココネから私についての話は聞いているか?」

「聞いていないかな」

 

 名前と顔写真の話しかしていないはずだ。

 

「そうか」

 

 博士の手を取り、こちらに背を向けるシナノ。博士は、どこに連れて行かれるのか不安そうにしている。

 

「シナノ。どこに行くの?」

「………先生には言えません。またそのうちに先生も行くことになる場所ですが……」

「そこに、その博士を連れて行かないとダメなのかな?」

「いや……ダメというわけでは無いが……」

 

 ふむ、ならば……。

 

「ならさ、シャーレに来ない?」

「………」

「ココネもいるし、シャーレまでならこの車、持ってってもいいと思うし」

 

 多分いけるよね?

 

「………」

「ね?こっちに来てみない?」

 

 

 

「本当にありがとうございます」

 

 車内で、博士が頭を下げてくる。

 結局、シナノは来なかった。代わりにと、博士とサブマシンガンを渡されたのだ。

 

「いえ……貴方とも話したいことはありますし……」

 

 何かが来るのだろう。その為にこうやって備えているのだろう。

 きっとそれは、あまりにも強大なのだろう。

 

「シナノ達のことですよね」

「えぇ。あの子達のことについて、教えてくれませんか?何に怯えているのか、始まりはいつだったのか」

 

 博士はただ首を横に振った。

 

「あの子達と関わりは少なかったから……」

「そうなんですか」

「えぇ。一応、記録と言いますか、私の友人の日記ならここにありますよ」




「……連れてかれてる」

そんな平和を望んでいた。

パリパリと、ガラスにヒビが入るかのように、ヘイローにヒビが入る音が響いた。

次回 第11話 記録データ“日常”

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