ブルーアーカイブ〜からくり仕掛けのメシア編〜 作:名を失われた天使
『イチカ、ツルギ、予定場所で待機完了っす』
「了解。近くで見てるけど、何かあったら、各自の判断で」
夜の街外れ。トリニティ内の廃墟ビルの中。不良にとっては最高の溜まり場となる場所。そこの9階で捕獲作戦をすることにした。
イチカとツルギは髪を束ねて、バツ印のついたマスク、へそ丸見えの丈の短いセーラー服、脛あたりまでの長さのロングスカートといういかにもよく見る不良生徒のふり。他の正義実現委員会のメンバーは、この場所を囲むような位置で隠れている。
私もすぐ近くに隠れている。
『周囲に反応は無し』
目標が来るまでの間、静けさがその場所を包む。
『………ハズレっすかね?』
『静かにしろ』
あまりの静けさにイチカは少し声を出すが、それ以外は何も変わらない。
『…………』
『………』
「………」
時刻は午後10時。そろそろ切り上げるかどうかの判断が必要だ。
「ツルギ、周囲に反応は?」
『一切ない……いや、あるな』
ツルギの反応に周囲に緊張が走る。
『よく見ないと分からなかったが、そこの月が見えている窓。そこに少し影のゆらめきがある』
ツルギが指定した場所を見ると、確かになぜか影がゆらめいている。
「ツルギ、誘い込める?」
『試してみます。イチカ、弾』
『了解っす』
ピン、と弾を1発だけ床に落とした音が響く。
相手はまだ動かない。
「ツルギ、イチカ。発砲許可」
『了解』
『了解っす』
相手が動かないなら、こちらから動くまで。
『!?』
影が大きく動いた。窓を蹴破ってビルの中に入ってくる。
『強引っすね』
イチカの声と同時にその影の姿が露になった。
先端が青色になっている黒い角。返しがなぜかついている尻尾。蝙蝠のような膜がある翼。そして、シカリが着ていた病人みたいな服。
「作戦開始」
『了解』
「キヒヒ」
サタンを前にして少し興奮するツルギ先輩。
サタンはサタンで動くことはなく、ただツルギの声が響く。
「よくもやってくれたっすねー。さっさと消えろっすー」
不良らしく、不良らしく言葉を紡ぐ。
「…………」
な、ななななんすかツルギ先輩!?なんでそんなに残念そうな目で見るんすか!?
「…………そうか」
さ、サタンまで、なんでそんな哀れんだ目で見るんすか!?
「イチカにツルギ。何をやってるんだ?正義実現委員会の君たちが」
ば、バレてるっす!?
「先生、ど、どうするっすか……?」
『んー……まぁ、とりあえず作戦通りに』
作戦通りなら……。
「はー。こんなの相手にしてられっかよ」
呆れたように頭を掻くサタン。
『今!!』
先生の合図を切掛に全員が飛び出す。
「なっ!?」
「キヒヒヒッー!!」
サタンは包囲されていることに驚いたのか、反応が鈍かった。
ツルギ先輩が閃光手榴弾を投げた。
えっと、サングラスは……額!!
「ちっ……」
暗いっ!?夜だから余計に暗い!!
「ま、全く見えないっす……」
「はわわ……」
「いたっ……」
透明なやつにすればよかったっすかね?
ってあれ……?この足元に転がってるのは……。
「まぶしっ!?」
「…………」
「………すまん」
グダグダすぎるっす……。
「ま、どうやらアタシを捕まえようってことみたいだが……」
戻ってきた視界から、サタンが窓から飛び降りて逃げようとしてるところが見える。
ダメ。折角の任務が。
「ま、待つっす……」
「んなボロボロの状態で慣れない服装でうまく行く訳ないだろ」
「うぐっ……痛いところ突いてくるっすね」
なんとか足を止めれた!!ツルギ先輩、早く捕まえてくださいっす!!
「今度からは、不良をお前らのところに突きつけるわ。んじゃな」
「待って!!」
「待って!!」
それは咄嗟の行動だった。隠れていないと危険な場所。いつ、相手が撃つのかわからない状況。膝が震えるけど、私がここに来たのは、こうやって止めることもできるから。
「………んだよ」
サタンは窓の淵に掛けてた足を下ろしてくれた。
ツルギに銃口を下げさせる。こういう場では、相手を挑発しない方がいい。
「せめて話だけでもさせてほしい」
なぜこんなことをするのか。どこから来たのか。名前は。好きなことは。モモトークの交換もしないと。
「……………あー……そういやそうだったな……こうするよな、先生なら」
何かを呟くサタン。この調子なら……!
「なんでこんなことしているんだい?」
「金のためだ。それ以外はない」
「どこから……」
「すまんな、先生。まだ、話をするには早えんだ」
そう言ってサタンは窓から飛び降りた。
急いで窓から下を覗き込んだが、そこにサタンはいなかった。
「任務失敗っす……」
「そうですか」
ナギサに、サタン捕獲作戦が失敗したことを告げた。
「まぁ、そう易々と捕まっていたら、こうなってませんからね」
どうやらナギサは失敗すると予想していたらしい。
「ですが、やはり先生がいてくださることで、会話が成立しました。先生がいないと何も言わずに逃げていくそうなので、これは可能性がありますね」
「そ、そうなんだ」
先ほどからナギサが手にしている手紙に目が行く。
「?この手紙ですか?」
「う、うん」
「この手紙は、今朝、サタンから届いたものだと思われます」
「サタンから!?」
サタンからの手紙!?なんで!?
「送り先が書いてないですけど……どうしますか?」
「中を見よう」
サタンからの手紙だというものを受け取り、慎重に開ける。
『先日はすまないな。こちらにも色々と事情があるんだ。なんかあったら、このモモトークに連絡してくれ』
と丁寧な字でURLも書かれていた。
「これは……」
「うん。昨日のことだろうね」
さてと……モモトークに登録っと。
「先生。モモトークがわかったということはサタンの本当の名前もわかりますよね?教えていただけますか?」
「う、うん」
アカウントの名前には、
『神田ミオ』
「この名前……」
確か、行方不明のリストにあったものだ。
行方不明者リストを開き、名前検索して詳細を確認する。
「神田ミオ。ヤハウェ中等学校在校生。学業、素行に問題はなく、ゲヘナ学園への編入も考えられていた生徒。12月某日から連絡が取れなくなった……」
声に出して読み上げると沸々と実感してくる犯罪組織の存在。
「誘拐、人体実験……一体、何の為に」
「私たちには分かりかねます。先生、以降もサタンの、いえ、神田ミオさんの調査をお願いします」
「わかった」
ナギサに別れの言葉を告げ、シャーレへと、いや、ミレニアムへと向かう。
ヴェリタスが何してるか正直不安だ。変な機能つけたりしてないといいけど。
「翼とは本来飛び立つ為の存在だから、飛び立てるように推進装置をつけたんだ」
「目的は忘れないでね……」
「やぁやぁやぁ。みんなお揃いで」
次回、第4話 義翼と廃墟と穴1
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次回予告
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