ブルーアーカイブ〜からくり仕掛けのメシア編〜   作:名を失われた天使

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第5話 義翼と廃墟と穴2

 

 

「やぁやぁやぁ。みんなお揃いで」

 

 銃を机に置き、こちらを見てくる謎の少女。

 

「待ちくたびれたよ。君たちが来るのをずっと待っててね」

 

 机から降り、目の前まで歩いて来た。

 

「君がこの世界での先生か……」

 

 周囲をぐるぐると周り、何かを確かめるようだ。

 

「ふむ……よろしく頼むよ」

 

 

 

 

「さて、よろしく頼むと言ったが……」

 

 ソファへと案内され、丁寧に紅茶(ペットボトル)を出された。

 どういうこと?

 

「ん?展開が急すぎたか……」

「あぁ……えっと君は?」

「そうだったな。まだ名前も言ってなかった。私は樫本マリアだ。マリアと気軽に呼んでくれ」

「よ、よろしく」

 

 握手を求められたのでそれに応える。会話の流れが早すぎる。

 

「まぁ、考える時間は必要だな。私はちょっと席を外させてもらうよ」

 

 そう言って、マリアは隣の部屋へと消えていった。

 

「………どうすんだ、先生」

「どうしよう、ネル」

 

 戦闘になるだろうと踏んでこのメンバーを集めたが……。

 

「平和に解決できそうでよかったです!!」

 

 アリスの言う通りなんだけど、どこか腑に落ちない。

 

「ところで、今のが巷で話題の『義賊』?」

「うん。多分そうだね」

 

 義賊行為が目立つとして話題の謎の人物。

 姿もちぐはぐで、共通点は赤く光輝く瞳のみ。マリアも赤い瞳だったが、光ってはいなかった。

 

「どんな攻撃も当たらない、効かない。気が付いたら、武器を取られていた……裏ボス並みの強さと噂されてるけど、本当なのかな……」

 

 当たらない、効かない……。神秘の効果だろうか。

 

「んなこと、本人に聞けばいいだろ。それよりも……本当にどうすんだ?先生。アレを捕まえろってのは簡単だ」

 

 ネルが言うなら捕獲はとても簡単なのだろう。

 

「もう少し話をしてから、かな」

「………わかった」

 

 捕獲が絶対的な条件ではない。それに、マリアは生徒だ。なら、支えるのは大人の、先生の義務だ。話を聞いて、解決へと向かう方が先生として正しい道だろう。

 

「……おや。話は終わったかい?考え事も、何か物騒な秘め事も」

 

 隣の部屋から戻って来たマリアは、紙コップを人数分持って来ていた。

 

「マリア」

「なんだい?」

「このミレニアムサイエンススクールの校区内で不良達から弾薬を巻き上げてるって本当?」

「やっぱりその話か……本当だよ」

 

 おちゃらけたようにマリアは話し出した。

 

「いや、ね。本当はバイトとかしてお金を貯めたいんだけど、そんな都合のいいところなんてないからさ。色々と問題がないように、私たちが納得がいく範囲内で、悪いことをした、もしくはしようとしている生徒から、弾薬だけ奪うようにしてるんだよ。本当は、したくはないんだよ?」

「………お金が必要なの?」

「まぁ……そうだね。必要だね。守るために……それが……の義務だから」

 

 先ほどまでは明るく話してたのに、私の質問に答えた時だけは、顔に影が刺したかのように見えた。

 

「………いや、やっぱなんでもない……それで?何か私にあるんでしょ?シャーレの先生」

「勿論。そのためにここまで来たんだから」

 

 マリアがソファから立ち上がり、窓に近寄る。

 ネルに合図して、窓を閉めさせた。

 

「おや、逃がさないということか」

「逃げられたからね」

 

 そうかそうかと呟きながら、窓から見える月を見るマリア。

 月明かりが彼女の全体を照らす。左右で形の違う翼。肩甲骨辺りまで伸ばされた白銀の髪。紅の瞳に反射する赤い月。どこを切り取っても綺麗な写真になりそうな情景だが、それにそぐわないような腕や顔の縫合痕が目立つ。

 

「不良に対する襲撃を止めろ、ねぇ……」

「生徒には危ない橋を渡ってほしくないからね。それに、犯罪だから」

「犯罪。まぁ、そうとも取れる。偽善の正義とも取れるから、強くは言えない、かしら?実際、治安は良くなったでしょう?」

「それでも、ダメなものはダメなんだ」

「あら、強気ね」

 

 マリアは折れるつもりもなく、こちらも折れることはできない。

 強くマリアを睨みつけるが、マリアは一切動じなかった。

 

「大人の責任、先生の義務。そんな着ぐるみを着ているのなら、さっさと脱ぎなさい。見苦しいわ」

「…………」

 

 どういうことなのだろうか。大人の責任と先生の義務が、着ぐるみ?

 

「脱がないつもりなのね。2つ、注告しておくわ、先生」

 

 マリアが腰に手を回して、何かを取り出そうとする。それに反応して周囲が警戒し、空気が張り詰める。

 

「1つは、その言い訳をさっさと捨てなさい。言い逃れでしかないし、とても見てられないわ。今すぐにやめなさい」

「先生に対して、なんてことを言うんですか!!」

「そして2つ」

 

 一緒に来ていたモモイ達が騒ぐが、それを気にせずマリアは言葉を続ける。

 

「1度引き金を引いたら、もう取り返すことはできない。あなたはそんなところまで深入りしていることを知っておくといいわ」

 

 その瞬間、マリアは拳銃を私に向けた。

 ネルが咄嗟にその腕を掴もうとするその前にその引き金は引かれた。

 

「テンメェ!!」

 

 アロナの防護フィールドで弾丸は防がれたが、突然の発砲に驚いて腰が抜けた。

 ネルがマリアに対して撃つが、全ての弾が地面へと転がっていく。

 

「防護フィールドを確認っと……」

「あぁん!?」

 

 アリスやモモイが私の前に立ち塞がり、壁となる。

 

「それじゃあ、またね」

 

 マリアが何かを引っ張ると、爆発の音と共に足元が揺れ、床が崩れた。

 

「!?」

「先生!!」

 

 身体が宙に浮く。このまま、1階まで落ちるのだろうか。

 マリアは落ちることなく、まるで機械のような翼を大きく広げ、空中に浮いている。

 

 

 

 

 

「先生!!大丈夫ですか!?」

「え……あ、あぁ……うん。大丈夫」

 

 落下はすぐに終わった。多分、12階に落ちただけなんだろう。

 服についた汚れを叩いて落とし、周囲を確認する。

 

「もういない……」

 

 マリアの姿は無く、辺りは瓦礫と置いてあった机とか卓上ライトの残骸もある。なんなら、私の下には座っていたソファもある。

 奇跡的にソファがクッションになったのだろう。

 

「帰ろうか」

 

 マリアとこれ以上話していても、状況は好転しないだろう。

 

「クエスト、失敗です……」

 

 アリスの呟いた言葉が、少し胸に刺さった。




「あ……ゆーちゃん……」

「5か……」

「もし、人生をふりだしに戻されたら、どうする?」

「抗う、かな」

次回「行き倒れ」

次回予告

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