ブルーアーカイブ〜からくり仕掛けのメシア編〜 作:名を失われた天使
マリアとの接触から2日後。
溜まりに溜まった書類を整理しながら、これからの対策を考える。
ミオとマリアは何が違うのか。さらに、他の地域にもいるから……まとめて会った方がいいかもしれない。
でも、連絡手段があるのはミオとマリアだけ。
「せんせー」
「どうしたの?シカリ」
「きゅうけい!!」
「ん?あぁ、もう休憩の時間だね」
「にへへー」
シカリが楽しそうにシャーレオフィス内を走って、休憩のお知らせをしてくれる。
あの後、シカリは義翼を受け取り(ちゃんと修正させたもの)、今はこうして元気よく動けている。
「かんちゃんがいってたんだ。『働きすぎは良くない!!』って」
「いい子なんだね、かんちゃんは」
「うん!!とってもやさしくてね!!」
シカリはあの研究施設であったことを楽しそうに話してくれる。誰が誰のことかはまだわからないけど……。
「またあいたいなぁ……」
シカリが唯一悲しそうに語る。心の支えみたいだったから、そりゃ、会いたいよね……。
「先生!」
扉が勢いよく開き、中に入って来たユウカ。
「おはよう、ユウカ。遅かったね」
ユウカは今日の当番だ。普段なら8時までにはいるのだけど、今日は10時にやって来た。
「えぇ。なんでも、道端で倒れている人を見かけましたから」
「ユウカは偉いね。人助けを率先して行うなんて」
「………あの、ソファ、少し借りれますか?」
よく見ると、ユウカは誰かを背負っている。
黒い髪の中に赤色が混じっている。そして、ヘイローが少し点滅しているような……。
「倒れていた子?」
「はい。少し熱もあるようで……」
薬箱を取り出し、解熱剤を探す。
「あ……ゆーちゃん……」
シカリが反応した。つまり、この子は、あの場所に居た生徒の1人だ。
「ありがとう、ございます……」
ゆーちゃんこと湯田方ココネが目を覚ましたのはシャーレに連れてこられてから半日が過ぎた頃だ。
「やった〜、ゆーちゃんふっかつ〜」
シカリが楽しそうにして、ココネにひっついているが、先ほどまで熱などの症状があった病人。心が苦しいが、引き剥がす。
「すいません……本当にすいません……」
「もーっ!!もっとゆーちゃんに引っ付きたいのに!!」
顔が青いままのココネのヘイローはいまだに点滅している。
「先生。もしかして、この人も……」
「多分ね……ここら辺では被害を聞かなかったけど」
ユウカの懸念は当たっているだろう。この地域での不良からの弾薬の接収担当だろう。
にしては、被害がないことがおかしい。
「あの、すみませんが、なんの話ですか……?」
どう話したものか……。
「えっと……ミオとマリアってわかる?」
「あ、はい。わかります」
「ミオとマリアがしていることもわかるかな?」
「はい。不良生徒から弾薬だけ巻き上げていることですよね……」
「君もその役目なのかな?」
私の問いかけに素直に答えてくれるココネの顔色は安定している。体調が戻って来たようだ。
「いえ。私は……先生の監視です」
「え」
「はい?」
「………ん〜?」
監視……?
「冗談、ではなく?」
「はい。冗談ではないです」
あ、鞄とってくれます?と軽くスルーしてユウカに頼むココネ。
「えっと……どこまで見てるの……?」
「何日にどこ行ったか、ぐらいですよ」
ま、まぁ、その程度なら……。
「それで、なんで倒れてたの?」
「さぁ?私にもわからないです。多分、疲労ではないかと」
「じゃあ大丈夫かな……」
ミオとマリアのように敵意とかもないので、ユウカには書類整理を頼んで離れてもらい、色々と質問してみることにした。
すると、いろんなことを教えてくれた。
仲間の数と配置、名前。そして、ココネ自身のことや、これまでに行われていたあの施設での実験の詳細まで。
「私たちの目的、ですか?」
「うん」
ただ、目的は教えてくれなかった。
「それはまだ教えられません。その時が来たら教えますので」
「おしえろー!!」
「ダメなものはダメですから」
シカリがココネに張り付いて催促するも効果なし。
「んー!!」
暇だったのかココネで遊んでいたシカリがとうとう暴れ出す。
「暇なの?」
「ひま!!ゆーちゃんあそんでくれないし!!」
頬を膨らませながら、ココネの背中を叩くシカリを宥めようと遊べそうなものを探す。
「ほら、先生が何か探してるから、それを手伝ってあげて」
「や!!」
「や、かぁ……」
ふと出て来たのは双六だった。
「あ!!すごろく!!」
シカリが興味を示したのでこれで遊ぶことにした。
「6〜♪」
シカリの運の強さなのか、6を出し続け、ゴールが目の前のマスで止まる。
しかし、そのマスはカードマスで、カードを引くことになる。
意気揚々とカードを1枚引くも、その内容を見たシカリの顔は固まった。
「2……」
「に……?」
「24マス戻る……」
えげつない指令に落ち込むシカリを放置して、ココネも賽をふる。
「5か……」
コマを進めて止まったマスは、「ふりだしに戻る」だった。
「容赦ないね、この双六」
「200マス近くあるのにね……」
スタート地点まで戻されてもココネは何も反応しなかった。
次は私の番、と賽を受け取ろうとしたら、ココネが話しかけて来た。
「そういえば先生はさ」
「なにかな?」
「もし、人生をふりだしに戻されたら、どうする?」
人生をふりだしに……。
「私の選択なら、仕方ないかな」
「他人が選んだ結果なら?」
「他人……他人ねぇ……」
「その他人が悪意を持っていて、それを先生に振りかざした結果、ふりだしに戻されたら?」
それは……そんな状況なら……。
「抗う、かな」
私のその答えにココネは満足がいったのか少し微笑んで、そう、と言って私に賽を渡した。
賽を振って、出た目は5度目の3。3マス先には「3マス戻れ」がある。
「遅くまでごめんね」
「いいよ。あの子のためだから」
あの後、シカリが寝落ちするまでココネと遊んでもらった。
終始シカリは楽しそうにしていたので、とても良かった。
「そういえば、家とかはどうしてるの?」
「基本野宿だけど」
「だったら、シャーレの空き部屋使っていいよ」
寂しそうだから。野宿が危ないから、誘うのではない。
私のせいで、生徒が危険な目にあって欲しくない。
「………わかった。借りるよ」
「あ、うん。よろしくね」
シャーレから出て行こうとせず、エレベーターに向かうココネ。
「あ、部屋なんだけど……」
「5階の会議室、空いてるよね?」
「空いてるけど……」
じゃあね、と言葉を残してココネが上へと向かっていった。
シャーレの構造は知らないはずなのに……。
「先生。私、休んでくださいって言いましたよね?」
次回、第7話 情報整理
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