空を舞う。
風を切りながら進む感覚は確かに気持ちいい。
だが、俺は、少なくとも今の俺はそうは思わない。
そりゃ、命を懸けて、今も命を散らしそうな勢いで戦っているからだ。
『コジマの供給が追いつきません、エネルギー残量42,撤退をお勧めします。』
「却下だ、俺だって、撤退してぇけどな。」
『了解、コジマ供給率でシールドエネルギーをカバーします。』
戦闘を開始して三時間、俺、弦月は劣勢を強いられていた。
『高エネルギー反応確認、回避行動を。』
「遅い!」
回転、そして銃弾による一撃。
エネルギーの弾丸が緑色の軌跡とすれ違い削れて消える。
QBで横に吹っ飛び背中に背負った雄琴を連射するが、回避された。
それを追うようにOBで加速する。
ろくにシールドも貼れないこの状態、シールドエネルギーもコジマも
飛行に回しているから、肌に感じる空気の圧力で身体中が痛む。
QBをするたびに強く叩かれたかのような痛みが走る。
でも、引く気はない、遠くに離れた福音に特大のスナイパーライフルを向ける。
050ANSRというスナイパーライフル、セシリアのスナイパーライフルに使った物だ。
引き金を引く、弾丸は福音の翼を穿ち、バランスを崩した。
そのまま落下していく福音に全速力で急降下する。
右腕の武装を鞠にかえて、福音につかみかかる。
凄まじい空気抵抗、シールドエネルギーもほぼ無いに等しく、凄まじい空気抵抗を肌で
感じる。その加速の中、福音の顔面を鷲掴みにした。
「と、ら、え、た、ぜぇ!ぐぅ!ぉぉおらあぁ!」
気合いの雄叫びと共に鞠についているパイルが爆発の勢いで発射され、福音に
突き刺さる、と同時に廃墟に突っ込んだ。
もみくちゃになりながら転がり落ち、階段に差し掛かる瞬間に飛んだ。
階段という狭い場所での戦い。
両腕を雷電の腕に変える。グレネードを撃ち出す腕、その銃身が壊れる勢いで乱射した。
階段が煙に包まれる。グレネードは階段を抉り、周辺は使い物にならなかった。
銃身も案の定壊れている、それをパージして装備を変えた、ホワイト・グリント。
それも完全に速さに特化した初代である。変換した瞬間、背中の壁を突き破って
掴みかかってきた福音、しかし、伝説のリンクスの機体を舐めてはならない。
QBを二重で行う、前に飛び出し、後ろに吹き飛ぶ。
福音の頭上を掠めるように後ろに回り、武器を変えた、解体のみを念頭に置いた武器、
GAN01-SS-WD、ドーザーでぶん殴る。福音は一撃目こそ当たったが、二撃目は避けられた。
至近距離でエネルギー弾をばらまかれる。
回避しようにも狭すぎる。エネルギー弾に撃たれながら雄琴を撃ち込み、怯んだ所で
福音の顔面を掴み壁を突き破った。
見晴らしのいい海、ラウラやセシリア達が此方を見つけた。
ちゃんと俺が渡したISを使ってくれたっぽいな。
福音が右腕に青い光を収束させる。
直感が騒いだ、これは、ヤバい。
「弦月!」
「来るな!距離を取れ!離れろ!離れるん...」
そこで福音は俺に向かって腕を....
振るわなかった。
ラウラに撃ち込まれる青い軌跡。
AICはエネルギー兵器に弱い筈だ、それなら。
そう思考が考える前に体は動いていた。
背中、いや、脇腹に焼けるような痛み。
PAもシールドも申し訳程度にしか貼れない状況。
俺は脇腹を抉られた、それだけだ。
ラウラは無傷だった、そこに安堵する。
「けして、激情...する、な...!」
そのまま、視界は黒に染まった。
時間は三時間前に遡る。
ラウラと弦月の部屋に置いてあったアタッシュケース。
その中には、暗い青のイヤーカフス、金に黒いラインの入ったブレスレット。
そして十字架に青いクロスの字が彫られたネックレス・トップ。
黒に金の満月と白の半月の彫られたレッグバンド。
それを身につける、それは全員に不思議と、馴染んだ。
「...行こう、シュヴァルツェア・レーグネン。」
レッグバンドはそれに答えるように少しだけ、光り輝いた。