1.目覚め
背中に当たっているものの感触に違和感を覚えて目を覚ました。
慣れ親しんだベッドの感触ではなく、もっと硬い、ザラザラした何かだ。
その次に自分の姿勢に違和感を覚えた、床に横たわっているのではなく、地面に座っている。
バチッと瞼を開ける、
鬱蒼とした木々と夜の暗闇が広がっている。背中に当たっていたのは木だったようだ。
何故かは分からないが、夜中にもかかわらずかなり遠くまでハッキリと見える。
ここはどこかの森だろうか。
ふと頭上を見上げると月と目にしたこともない数の満点の星空が広がっていた。
これほどの星空を目にしたのは記憶の限りでは初めてだ。
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地面を見ると、何やら幾何学的な模様と文字がびっしりと書かれていた本が落ちていた。
今までの人生で見たことのない文字だが、なぜか書かれている文字の意味は頭にスッと入ってきた。
本を拾おうと手を伸ばすと、昔のお貴族様が着るような服と白い手、長い爪が目に入った。
どうやら自分の腕らしいそれを思考停止しながらまじまじと見ていると、
「ドゴッ!」という音と腹に強い衝撃を感じた。
うっ、と喉から空気が抜ける声を出しながら背中の木に叩きつけられる。
混乱しながら下を見ると、今まで目にしたことがない獣が自分の腹に角を突き刺していた。
牛のようだが、牛にしては小柄で、捻れた角を持っている。
半ばパニックになりながら、腕に懇親の力を入れて、なんとか獣を押しのけようとする。
瞬間、手の平から光の槍のようなものが飛び出し、獣は一瞬で千切れとんだ。
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高価そうな服だったが獣の血でひどい有様になってしまった。
幸い本には血が飛んでおらず、拾い上げて書かれている文字を読む。
曰く『魂替の魔法』
曰く『生き物の魂を抜き、異なる獣の魂を入れる』
曰く『300年の研鑽の集大成』
もはや何のことだが意味不明だ。
確かに魔法にでもかけられたような状況だが、誰がこの魔法のような細工を施したのだろうか。
どうやら何の解決にもならないようだ。
天を仰ぎ、書物を閉じる。
表表紙を見ると『ヴェクセルの書』と書かれているその書物は、自分をより混乱させるだけの代物だった。
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あれから数日がたった。
どうやら自分は魔族ヴェクセルの魔法、名をつけるのであれば、
『魂替えの魔法』で魔族ヴェクセルの身体に精神を囚われてしまったようだ。
ヴェクセルの記憶が教えてくれた。
どうやら人間だった頃の自分の記憶と、ヴェクセルの記憶が両方保持しているらしい。
便利な魔法だ。
あの牛のような獣、『魔獣』というそうだが、を実験台にしていたところ、
何らかの手違いで私がヴェクセル自身の身体に上書きされることとなったらしい。
この魂替えの呪文は『対象の魂を抜き』『空っぽになった器に別の獣の魂を入れる』魔法らしい。
抜かれた魂は行き場をなくし、霧散してしまうらしい。
有り体に言えば、魂を抜かれた時点で無に帰る(死ぬ)のだろう。
数ヶ月の友となった自分の頭に生えている角をさすりながら、今後どうしようか考える。
魔族ヴェクセルとして生きていた頃は人間など牛と同様のでかい獣程度にしか思っていなかったようだが、
自分は<心と記憶だけは>人間だ。
なんとか元の暮らしに戻りたい。だが、他の人間たちはそうは思わないだろう。殺されるのが関の山だ。
魔王という存在が現れ、人類と魔族の間での戦争が始まってからは、
魔族とは人類に仇なすものとして忌み嫌われている。
それにここがどこかも分からない。
魔族がいるということは北側諸国のどこかであろうことは想像がつくが、数ヶ月間詳細な位置を確かめられずにいる。
ここから動けば魔族、もしくは人間と合うことになるだろう。
その時に殺されないとも限らない。
角をさすりつつ、これからどうするべきか思いを巡らせ、また一日が過ぎていく。
初投稿です。原作に感動して書こうと思いました。
気の向いた時に投稿したいです。