年末が近づくと急に忙しくなるなぁ。。。
本話から新章です。
新たな始まりの一幕
早朝。
カーテンの隙間から眩い朝日が差し込む。
普段のテラコマリであればベッドに潜り込んで春眠暁どころか黄昏すらもすっ飛ばす勢いで爆睡している時間帯のはずが、まんじりともせず机の上を凝視している。
「できた……ついにできたぞ……! 『いちごミルク』を超越する大傑作が!」
テラコマリの胸中を満たしているのは無上の歓喜だった。
それもそのはずである。
小説の新作が完成したのだ。
平日は朝から夕方まで働かされ、帰った後も変態メイドがやかましいほど構ってくるし、土日は疲れているのでゴロゴロしたいし──とこれまでに多忙な日々の中で時間を捻出しながらコツコツと筆を進めること一カ月。
なんとか一作を完成させることができた自分には才能があるのかもしれないと思い始め、あとは小説を出版社に届けるだけなのだ。
届けるだけなのだが──気をつけなければならない。
なにせ今回の作品は『いちごミルク』を超越する大作なので、少し過激なシーンも作中に盛り込まれている。
変態メイドに見つかって無断公開なんてされた日には羞恥のあまり悶死するのは必至だろう。
見つからないように慎重に原稿をしまおうとすると──
「おはようございますコマリ様」
「わあああああっ!」
背後から声が掛かり死ぬ思いで原稿に覆いかぶさる。
振り返るとメイド服の女の子が立っていた。
自称「コマリ様の専属メイド」にして他称「変態メイド」のヴィルヘイズである。
例によって澄ました顔をしているが騙されてはいけない。
どうせ変態的思考で頭の中を埋めつくしているのだから。
「珍しいですね。この時間にコマリ様が起きているなんて」
「そ、そうだろう。たまには早く起きるのも悪くないかなって思ったんだ。というわけで起こす必要ないから出て行ってくれ」
「出て行ってもいいですがコマリ様の大傑作を読ませてください。」
「速攻でバレてるじゃねーか」
テラコマリは原稿もとい自作小説を抱いて壁際まで退避した。
「それ以上近づくな! 近づいたらお前の恥ずかしい秘密を暴露するぞ!」
「私の身体に恥ずべき部分なんて一つもありません! すぐに全部脱ぎますのでじっくりとお確かめください」
「そういうところが恥ずかしいんだよっ!」
ヴィルヘイズは何を言ってるのかさっぱりわからないと言いたげにきょとんとしていた。
こいつは真性の痴女なのかもしれない。
しかし彼女は不意に笑って「冗談ですよ」と言った。
「無闇に脱ぐのは下品です。最近気づきました」
「最近? 遅くない?」
「それに、よほどのことがない限りはコマリ様の力作を無理矢理読んでやろうとは思っておりません。あなたは私の恩人なのです──どうして恩人の嫌がることができましょう」
「む……」
そう言われて思い出すのは一カ月前の出来事だ。
突如として舞い戻ってきたミリセントはテラコマリの日常を粉々に破壊した。
それはあまりに悲惨で刺激的な時間ではあったが、テラコマリが「完全引きこもり」から「半分引きこもり」にグレードアップしたターニングポイントである。
あれ以来テラコマリはミリセントに何度か面会を試みていた。
しかし、まだ会えていない。
政府の発表によればミリセントは帝都の牢獄に繋がれているらしいのだが、実際に足を運んでみると彼女の姿は影も形も見えない。
看守は「お伝えできません」の一点ばりで、皇帝に聞けば「そんなことよりデートでもしないか?」とはぐらかされる。
それはさておき、ヴィルヘイズは一カ月前のミリセント絡みの事件でテラコマリに恩を感じているらしい。
「ですから、そんなに警戒なさらずとも、コマリ様の嫌がることは致しません」
「じゃあ甘やかしてくれるの?」
「はい、甘やかします。なので本日の戦争相手はもっとも御しやすい猿にしておきました。ラペリコ王国との戦争です。先方のハデス・モルキッキ中将は今回もやる気満々ですよ」
ヴィルヘイズは手紙を手渡す。
宛名はテラコマリとなっており、差出人のところには「ラペリコ王国 四聖獣 ハデス・モルキッキ」とある。
封を開けると──
『 殺 ス 』
「こんな手紙よこす意味ある!?」
「威嚇行為なのでしょう。自然界は舐められたら終わりですからね」
「自然界のルールを人間界に持ち込むんじゃねえよ!」
「しかしまったく無意味な手紙です。天下無敵であらせられるテラコマリ・ガンデスブラッド大将軍がこのような野獣の遠吠えに臆するはずもありません」
「臆するに決まってるだろ! 怖いんだよ!」
「でも今回の戦争に勝利したら一週間の休みが与えられるそうですよ」
「……へ?」
「今日でちょうど十連勝です。皇帝陛下はコマリ様の快進撃をたいへん喜んでいらっしゃるようで、この戦いに勝てたらご褒美として休暇をくださるそうなのです」
「…………」
一週間の休暇。
一週間もあれば好きな本を読んだり、一日中昼寝したり、新しい物語の執筆に取り掛かったり──チンパンジーにはすでに三回勝利しているから休暇はほぼ確実に手に入れられる。
さらにテラコマリの側には隊の中でも圧倒的な力を有している執事がいるのだ。
勝ちが揺らぐことなど万に一つあり得ない。
「そういえばアルクは今何してるの?」
「早朝にコマリ様を訪ねた客人がいらしたので、普段この時間はまだ寝ているコマリ様の代理で対応されていますよ。今は客間室にいるかと」
「おい、それを早く言えよ。早く行かないと──」
「客人が訪問されてからすでに三十分は経ってます。今から向かっても遅いですよ。それはそうとお着替えをしましょう。さ、脱がせますのでじっとしていてください。あら、汗をかいていらっしゃいますね。お拭きしましょう──じゅるり」
「──ん?」
テラコマリは自身の身体を見下ろす。
休暇に何をしようとか、客人の対応とか、色んなことが頭によぎって考えている最中、一瞬で軍服姿に早着替えされてた。
「あれ? いつの間に……?」
「コマリ様が考えごとをしている間に脱がせて堪能して着せました」
「はあああああ!?」
「さあ出勤のお時間です! さっそく大虐殺と洒落込みましょう!」
「ちょっ、まっ、──心の準備がぁっ! ていうか堪能したって何を!?」
テラコマリの非力な抵抗虚しく、ヴィルヘイズに引っ張られていった。
⭐︎
時は少し遡る。
例のごとく朝食のメニューを作り終えたヴィルヘイズはコマリ様の部屋へ向かい起こしに行く。
俺は調理器具を片付け、食器やグラスを準備する。
その間際ガンデスブラッド邸に仕える俺やヴィルヘイズ以外の、使用人の女性が俺の元へと近づいてきて言った。
「あのアルクさんお仕事中すみません。少しお時間いいですか?」
「はい。大丈夫ですよ」
「実はテラコマリ様にご用があるという方が訪問されていて……普段この時間帯はテラコマリ様がまだ起床されていないので一旦客室へご案内したのですが、どうしたものかと思いまして……」
こんな早朝に訪問してくるのはよっぽどの急用かそれとも人目を避けて来たか。
何れにせよこのまま待たせておくわけにはいかないだろう。
「事情は分かりました。私が代わりに客人の対応をしますので、あなたは一応ヴィルヘイズに、コマリ様を訪ねてきた客人がいらしていたことを伝えてもらえますか?」
「はい。すみませんがよろしくお願いします。ヴィルヘイズさんには伝えておきますね」
使用人の女性はコマリ様の部屋へ向かうヴィルヘイズを追いかけて駆け出す。
俺はそれを見送ってから客室へと向かった。
「お待たせ致しました。テラコマリ様は只今手が離せないので、執事のアルクが代理人を務めます」
「あらそうなの? せっかくだからテラコマリ・ガンデスブラッド大将軍とお話してみたかったのに残念」
ゴスロリ風にアレンジされた軍服。
チョコレートの甘ったるい香りが鼻腔をくすぐる。
華奢な体躯の割に目元が凛々しい少女は、客室のソファーに座り心底残念そうに呟いた。
俺はこの少女を知っている。
「それで本日はどのような用向きでいらしたのですか、メイジー・ベリーチェイス閣下?」
「私はもう七紅天じゃないわよ。実は最近ある部下の子に爆死させられて将軍地位は剥奪。私を爆殺した子が下剋上ってことで七紅天に任命されたそうよ。今の私は一兵卒に降格された、ただのメイジー・ベリーチェイス。──次『閣下』だなんて言っておちょくったらチョコにして食べちゃうぞ⭐︎」
ムルナイト帝国軍第六部隊。
目の前にいる少女──メイジー・ベリーチェイスは七紅天として第六部隊を率いていた。
先ほどチョコにすると言っていたのは比喩ではない。
彼女の得意とするのは毒入りチョコレートを操る魔法。
かなり稀有な魔法で、俺はこの手の魔法を模倣できない。
覚醒したコマリ様の魔法もそうだが、魔法の性質や特徴、原理を把握しかねる魔法は模倣の対象外だ。
「そういえばあなたとは宮殿で何度か顔を合わせたことあるわね。話したことあったかしら?」
「そうですね。軽い社交的な挨拶を交わした程度でしょうか」
「ふーん、そっか。じゃあわざわざここまで来てすぐ帰るのもなんだし、少しお話しましょう」
「かしこまりました。ではお飲み物をお持ちしますので少々お待ちください」
俺は一旦客室から出て、そう時間も掛からないうちに戻る。
「あら? この香り──チョコレートかしら?」
「はい。ベリーチェイス様はチョコレートがお好きなのでホットチョコレートにいたしました。お口に合うとよろしいのですが」
俺はティーカップにホットチョコレートを注ぎ入れ、ソーサーと共にベリーチェイスへ差し出す。
ベリーチェイスはゆっくりとカップを持ち上げると、香りを味わうとカップの縁に唇をつけて中身を口に流し入れる。
「美味しいわ!私もよく飲むけれど、こうも味わいが変わるものなの!?」
「温度管理に気を使っているのです。六十度から六十五度の最適温度を保つことが重要ですよ。あとはかき混ぜる時と注ぐ時に泡が立たないようにすることくらいでしょうか」
「そうなのね。でも本当に美味しいわ。このガンデスブラッド邸に通いたいくらいにはね」
「お望みでしたらまた屋敷にいらした際でもお出ししますよ」
「ありがとう。気持ちだけでも嬉しいわ。ねえ──下剋上された元七紅天がこの先どんな人生を送るか知っているかしら?」
天真爛漫な表情から一転して深刻な顔へ変えるベリーチェイスを見て俺は考える。
確かに血に飢えた部下たちの謀反によって過去下剋上された元七紅天は数多くいるだろう。
死んだとしても魔核で蘇られるなら再び七紅天に返り咲けば良いだけ。
だがそうしないのは?
ある結論に辿り着いた俺が言葉を発する前にベリーチェイスは解答を口にする。
「──隠居するのよ。一応部隊に籍は残してもらえるのだけど、武の象徴である七紅天が下剋上によって敗れることはあまりにも不名誉だからって自ら表舞台から姿を消す。私も今後は帝都でひっそりと暮らすつもりよ」
本来と比べると似つかわしくない苦渋の表情を浮かべているベリーチェイスに、追加でホットチョコレートをカップに注ぐ。
ベリーチェイスは「ありがとう」と言ってそれを口に含むと表情が少し和らいだ。
「それじゃあそろそろ本題に入ろうかしら。といっても、ほんの一言ずつ
「……忠告とお願い、ですか」
ベリーチェイスはそっとカップをソーサーに置く。
「私を爆殺した現七紅天──サクナ・メモワールに注意しなさい」
「サクナ・メモワール……ですか。聞いたことが無い名ですね。その方はお強いのですか?」
「さあ? 私だって下剋上されるまでは気にも留めていなかったわ。部下に可愛い子がいるなぁ──くらいな認識よ。でも、七紅天である私を不意打ちとはいえ殺したのよ。ただの雑魚とは思えないわね」
七紅天だろうと烈核解放を使用していないコマリ様なら不意打ちで呆気なく死んでしまわれそうだ、とは口が裂けても言わない。
「つまり、サクナ・メモワールが実力を隠していると言いたいのですか?」
「どうかしらね。だからこその忠告よ。それとお願いの方だけど──サクナ・メモワールを気にかけてあげてほしいの。あの子は何かに悩んでるみたいだったから」
「……私には分かりかねます。結局のところあなたはサクナ・メモワールをどうしたいのですか?」
「どうしたいのか……ね。今後暫くは私がどうこうできる問題でもないし、あなたたちに任せるわ。でもいつか下剋上をやり返してやるつもりよ。私結構根に持つタイプなの⭐︎」
ベリーチェイスは言い終えると、腰掛けていた身体を起こし、派手なピンク色の傘を手に取る。
「ホットチョコレートごちそうさま♡ それと愚痴ばかり言ってごめんね。おかげで少しはスッキリしたわ」
「満足頂けて何よりです。またいつでもいらしてください。その時はおもてなししますよ」
ベリーチェイスは屋敷を後にする。
「サクナ・メモワールか……最近コマリ様を付け狙っている賊もいるようだし、警戒は必要かもな」
まだこの時の俺は知らなかった。
この賊──というかストーカーこそがサクナ・メモワールであったことを。
⭐︎
それから少し刻が過ぎ。
本日はラペリコ王国との四度目の戦争。
「──ハデス・モルキッキ中将討ち死に! ムルナイト帝国の勝利です!」
伝令役がそう叫んだ瞬間、うおおおおおお────と、耳をつんざくような勝鬨が響き渡った。
今俺たちが居るのは例のごとく《核領域》で、チンパンジー軍団は懲りもせずに三度目の再戦を望む。
相も変わらず全軍突撃してきたチンパンジー軍団にカオステルが空間魔法【異次元の穴】を発動し、全員四次元空間へと葬った。
しかし流石は四聖獣といったところか、ハデス・モルキッキ中将だけは四次元空間を食い破って現世に舞い戻り、第七部隊のおよそ百名ほどをブチ殺しながら前進。
「しょうがねえなあ僕がお前を守ってやるよ」などとコマリ様の
同時に背後からベリウスの斧がチンパンジーの首を刈り取った。
そしてコマリ様率いる第七部隊が勝利し、晴れて無敗の十連勝となったわけだ。
「これで獣人どもは心の底から思い知ったことでしょう。テラコマリ・ガンデスブラッド大将軍がどれほど可憐で強大で殺意に満ち溢れているのかを!」
「ま、まったくだ! 私ほど可憐で強大で殺意に満ち溢れている吸血鬼はいないからな! どんな相手も小指で一ひねりだ!」
「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ── ────!!」」」」
コマリ隊の吸血鬼どもが雄叫びをあげる。
烈核解放使用時のコマリ様を実際に目撃したこともあり、自分たちの上司は最強だと他の隊にも触れ回ったりしているらしい。
カオステルが怪しい笑みを浮かべて言う。
「閣下。そろそろ獣人どもの相手も飽きてきた頃合いでしょう。より強大な相手に宣戦布告してはいかがですか?」
「強大な相手……?」
「これまで閣下が打ち破ってきた将軍たちは言ってしまえば中の下です。各国のエースと言われる者たちは未だ静観を貫いており、我々に対して戦争の申し込みはありません。こちら側から申し込んでみるのも一興かと思いますが」
「そ、そうかな」
「ふむ。それは名案だな」
カオステルに同意するのは犬頭の獣人、ベリウス・イッヌ・ケルベロ。
ミリセントの一件以来、ヴィルヘイズと共に俺に戦闘の師事を受けている。
二人ともまだ成長の余地はあるので鍛えがいがある。
「閣下の実力ならば他国のエース級も容易く撃破できるだろう。狙い目は──そうだな、ゲラ=アルカ共和国のネリア・カニンガム、夭仙郷のアイラン・リンズ、天照楽土のアマツ・カルラあたりか」
「あとはラペリコ王国のリオーナ・フラットに、白極連邦のプロヘリヤ・ズタズタスキーもいますね。どれもかなりの強敵とは思いますが、本当に宣戦布告されるおつもりですかコマリ様?」
「いや、私は……」
コマリ様は葛藤される。
わざわざ自らの命を危険に晒したくないのと、それを部下に言ったら実力を疑われて下剋上されるのではないかと不安になっていた。
「なあヴィルよ。私の愛すべき部下たちは強敵に宣戦布告するべきだと提案しているが、お前はどう思う?」
コマリ様は傍に控えていたヴィルヘイズへ問うたが、
「よろしいかと。帝都に帰還したらすぐさま宣戦布告の準備をさせていただきます。ちなみにコマリ様はどの国と戦いたいですか?」
「えと。ヴィル? 甘やかしてくれるって……」
ヴィルヘイズはにこりと笑った。
コイツ──面白がっている。
たまにこのメイドの忠誠心を疑いたくなる。
コマリ様は「お前ふざけんな」と文句を言いそうになったところで、部下どもの視線に気付く。
コマリ隊の吸血鬼たちは期待のこもった眼差しで見ていた。
「……そ、それは……あれだな。あれだ。よ、夭仙郷、かな。夭仙郷と戦いたいな!」
「夭仙郷ですか。あそこの将軍ですと《三龍星》アイラン・リンズが有名ですね。なんでも念じるだけで敵の心臓を爆発させる魔法を使えるとか」
「ほ、ほう! 相手にとって不足はないな! 私も似たような魔法が使えるしな! 心臓の一つや二つ、余裕で爆発だ! ……ところでアルクだったらそのアイラン・リンズとやらに勝てそう?」
「先ほどヴィルヘイズが言っていたような、念じるだけで殺せる力を持っているのが事実なら無理ですね。アイラン・リンズは俺の攻撃射程範囲外から念じるだけで良いわけですから」
俺の力を当てにしていたコマリ様は「マジか」と落胆していると、周囲がどっと騒ぎ立てる。
「おお、さすが閣下!」
「アルクでも敵わないような相手ですら余裕とは!」
「やはり閣下は稀代の吸血鬼!」
「歴代最強の七紅天という称号も現実味を帯びてきたぞ!」
拍手喝采が鳴り響く中、一人の少女がコマリ様に近づいた。
「──ガンデスブラッド様! 夭仙郷に宣戦布告するって本当ですか!?」
「げっ」
そこに居たのは手帳とペンを携えた蒼玉種。
純白の捏造新聞記者、メルカ・ティアーノであった。
彼女はコマリ様にぐいっと顔を近づける。
「先ほどヴィルヘイズ様とお話ししていた件は本当ですか!? アイラン・リンズ氏を狙う理由は!? やっぱり強いからですか!? ちなみにガンデスブラッド様が一番強いと思っている方はどなたですか!? ああいえご自分以外でお願いします!」
メルカからの怒涛の質問ラッシュにコマリ様は辟易していた。
「いいから離れろっ!」
「きゃっ」
コマリ様は近づいてきたメルカを反射的に突き飛ばし、心に怒りの炎を灯されて言った。
「前にも語っただろう! 私が行うことは単純な覇業! すなわち世界征服! ゆえにどこの国に宣戦布告するとかしないとか考えるのは無意味なのだ! 最終的には私が全て蹂躙してやるのだからな! わかったか! ちなみに私が強いと思うのは……よくわからんが、たぶん皇帝が一番強いだろ! はい以上!」
コマリ様が言い終えると再び拍手喝采が鳴り響く。
言い終えてから「やってしまった……」と深く反省するコマリ様を見て俺は苦笑いをする。
コマリ様の受難は今後も変わりなく続きそうだ。