メルカはテラコマリ・ガンデスブラッドに取材がしたいらしくティオの嗅覚魔法に頼ったのだが、ティオはトイレに行きたかった。
ティオに誘導されてトイレに向かうと、個室からサクナ・メモワールが姿を見せた。
サクナが手に持つ小瓶に気づいたメルカはドーピングではないかと追及する。
ティオがトイレの個室の戸に手をかけて振り返ると、そこにはサクナによって腹を貫かれているメルカの姿が。
「へっ! 汚い記憶だ」
ティオは恐怖のあまり腰を抜かして、下半身から漏れ出たものが水溜りを作る。
そしてティオは死を迎える前に白目をむいて気絶した。
※
一応二人の記者についてはアニメではカットされていたので、上記で軽く触れておきました。
セリフはパロディですが、言ってることは原作のまんまです。
今回から七紅天闘争開始ですが、小分けにして書いていきます。
書いてて内容に違和感を感じた時は途中で少し編集入れるかもしれません。
誤字報告をくださった方ありがとうございます。
原作表現のままだった箇所以外は訂正しましたのでご確認ください。
自分では中々気づかなかったりするので感謝してます。
六つの魔核の影響範囲が重なる《核領域》。
面積はムルナイト帝国の四分の一程度であるが、周知のことながらこの特殊地帯においては六つの種族の誰もが無限の魔力と生命を享受することができる(例外はある)ため、核領域に点在する諸都市は各国の交流地域として常時
そして──本日七月一日、核領域メトリオ州の城塞都市・フォールは常ならぬ熱気に包まれていた。
早朝。
初夏の涼やかな風が吹き抜けるメインストリート。
普段ならばさしもの核領域といえど人通りは
七紅天闘争。
本日、この城塞都市フォール郊外の古戦場でムルナイト帝国将軍──七紅天たちによるエンターテインメントが行われるのだ。
都市が賑わうのも無理からぬ話、フォールの中央広場に帝国軍広報が用意した古戦場の様子をリアルタイムで映し出す巨大なスクリーン(複数人で行使する遠視魔法【千里鏡】によるもの)の前には大勢の人々が集まっている。
そしてアルクたち第七部隊はというと──
古戦場から南方にしばらく進んだ噴水広場跡地に布陣していた。
ちなみに古戦場に転移させられる前に金属製のリストバンドを装着することを義務付けられた。
これにより誰を殺したとか誰に殺されたとかが記録されていく魔道具とのこと。
各隊員の戦績を記録づけるのに使えそうだからこの魔道具を個人的に作ってみるのもアリかもしれない。
そんなふうに考えていると、どんよりとした空気を纏うコマリ様が開口した。
「ヴィル。帰りたいんだが」
「帰ったら不戦敗で、七紅天辞任で、爆発ですよ」
「理不尽すぎるだろ・・・・・・」
コマリ様が「はあ・・・・・・」と溜息を漏らす。
それを
「おや閣下。ご気分が優れないようですが、いかがなさいました?」
「べ、べつにどうってことはない。退屈しそうだなって思っただけだ。どうせ私に敵うやつなんていないんだからな!」
「さすが閣下! しかし、それについては同感です。現在七紅天において恥知らずにも〝最強〟の名をほしいままにしているペトローズ・カラマリアが不在なのですから」
「そうなの? そのペトなんとかって人、七紅天会議にも出てなかったよな?」
「そうですね」
ヴィルヘイズが答える。
「彼女は皇帝の命によりテロリスト掃討活動を行っているようです。七紅天闘争に参加している暇などないのでしょう」
「しかし彼女が参加していないのは幸いですね。ペトローズ・カラマリアの力は七紅天闘争のような総力戦でこそ真価を発揮しますから。開始一秒で部隊をまとめて爆撃してくる可能性は十分にありました」
俺が答えるとコマリ様は顔面を蒼白させるが、強気な態度を崩さないようにいった。
「そ、そうなの・・・・・・? まあそいつが参加したところで私の敵ではないけどな」
「おおっ・・・・・・!」
周囲にいたコマリ隊の面々たちも賞賛の言葉を口々に呟いている。
そこでふとコマリ様が気づいた。
ルール上では百名まで軍勢を引き連れることができるはずなのに、この場にいるのは三十名ほど。
さらにはそのほとんどが負傷している。
「ねえヴィル、うちのやつらどうしたの? 寝坊かな」
「寝坊ではありません」
ヴィルヘイズは言葉を続けた。
「此度のルールでは百名までしか闘争に参加することができません。よって部下を選別する必要がありました。そこで私は第七部隊の連中を集めてこう言ったのです。──『ガンデスブラッド閣下は強い者から順に百名を選出するおつもりです。強い者は名乗りでてください』と」
「そんなことを言った覚えはないが正論だな。強いやつこそ参加すべきだ。・・・・・・で、どうなったの?」
「全員が名乗り出ました」
「う、うむ。容易に想像がつくな・・・・・・」
「そして殺し合いが勃発しました」
「なんで!?」
「彼らは誰が一番強いのかを実際に戦って決めようとしたのです。そして五百人中、四百七十人が死亡しました」
「アホだろ!!」
「ここにいるのは生き残った三十人です。ただしこの三十人も大半が負傷しています」
「アホすぎるだろ!!」
「何でトーナメント制とかで決められなかったのかな・・・・・・」
俺がその現場に居合わせた時には既に遅く、激しい乱闘の火蓋が切られていた。
その光景を見た時は思わず頭を抱えたものだ。
「ご安心くださいコマリ様。ここにいるのは身内同士の争いで地獄を見てきた者たちです。面構えが違います」
「面構えとかそういう問題じゃねーよ!!」
取り敢えず俺は怪我の度合いが大きい隊員を優先に駆け寄り、
「──中級回復魔法【供給活性化】」
以前サクナが使用していた魔法を模倣して、隊員たちへ順にかけていく。
発せられた淡い光が包み込み、外傷が見る見るうちに消えていく。
幹部は問題なさそう────ヨハンの姿が見当たらない。
既に死んでいたのか・・・・・・。
「すごいな! それって前にサクナが使っていた魔法だよな?」
「ええ。こんな事もあろうかと習得しておいて正解でした。馬鹿どもの行動力にはいつも驚かされますよ」
「そ、そうだな・・・・・・。本当にいつもありがとう・・・・・・」
そのときだった。
古城のテッペンに設置された鐘の音が、ごぉん、と響き渡った。
鐘の音は二回に分けて鳴らされる手筈で、一回目は闘争開始五分前の合図だ。
「閣下、ひとまずルールを確認しておきましょう」
カオステルが珍しく真面目な顔つきで言った。
「ご存知かと思いますが、此度の闘争は〝紅玉〟の奪い合いです。ゆえに単純な殺人だけでは勝てません。我々は古城に向かって攻め込む必要があります」
「古城ってあれだよな。あのでかいやつ」
「はいそうです。おそらく他の部隊も古城へ向かって突撃することでしょう。敵の人数は単純計算で五百人と少し」
「ちょっと待て。私がサクナと・・・・・・あとヘルデウスと協力することはみんな知ってるよな?」
「申し訳ございません、失念しておりました。閣下は七紅天の後輩に慈悲をお与えになったのですね──なんと器の大きいことか! ですが七紅天闘争は結局のところサバイバル。最終的にはサクナ・メモワールと争うことになるでしょう」
「う・・・・・・わ、わかってるさ」
「まあそれはともかく第一目標は殺人というよりも〝紅玉〟の確保ですがね。──閣下、作戦はどういたしますか?」
「そ、そうだな。──ねえアルク、作戦はどうしよう・・・・・・」
伝言ゲームのようにカオステルからコマリ様、コマリ様から俺へと流れていく。
隊の連中は普段の作戦全てをコマリ様が立案していると思い込んでいる。
なので周囲に悟られないようにコマリ様は小声で俺に囁きかける。
第七部隊が成績トップで勝利する条件は二つある。
一つは〝紅玉〟の獲得。
これならば極力殺人を犯さずに、且つ闘争というサバイバルから抜け出すことができる。
協力関係にあるサクナやヘルデウスには悪いが、コマリ様にとっては最も平和的な勝利と言えるだろう。
そしてもう一つは〝紅玉〟を破壊した上でポイントを大量獲得することだ。
個人的には後者の方が第七部隊には向いていると思っている。
テロリスト捜索の際に政府高官を守るのではなく寧ろ殺してしまおうというイかれた発想をする連中だ。
紅玉を確保する前に破壊するに違いない。
俺は一頻り頭を悩ませコマリ様が望むであろう穏便な作戦を提案しようとしたとき、
「フレーテ・マスカレールより通信が入っています」
そう言ってヴィルヘイズはコマリ様へ魔鉱石を渡した。
不審に思いながらコマリ様は手に取った魔鉱石に微量の魔力を流す。
フレーテの高飛車な声がその場に響き渡った。
『あらテラコマリ・ガンデスブラッドさん! ご機嫌はいかがかしら?』
スピーカーモードになっており、周囲にもその声はよく聞こえていた。
『逃げなかったことだけは褒めて差し上げますわ! ですがあなたの嘘まみれの経歴もこれでおしまい。テラコマリ・ガンデスブラッドの名前は世紀の詐欺師として全世界に知れ渡ることになるでしょう!』
メキィ、と鈍い音が聞こえる。
第七部隊の連中が己の武器を力強く握りしめた音である。
『あら? あらあら? どうして無反応ですの? もしかして怖くなっちゃった? ぶるぶる震えて何も言えなくなっちゃった? あなたが頭を下げて誠心誠意命乞いをするのなら手加減をしてあげてもいいですけれど!』
バゴォッ!と破壊音が聞こえた。
噴水広場の噴水がブチ壊された音である。
『命乞いできない? そうでしょうね! 実力がないくせにプライドだけは無駄に高いガンデスブラッドさんですものね! まあ第七部隊の野蛮人なんて我々第三部隊の精鋭にかかれば瞬殺でしょうけれど! おーっほっほっほ!──』
ブチ。
コマリ様は通話を切った。
先程まで大騒ぎしていた第七部隊は、嵐を前にしたように静まり返っていた。
そして二回目の──闘争開始を知らせる鐘の音が古戦場に響き渡った。
続くように花火が何発も空で弾けては消える。
古戦場の各所から雄叫びが聞こえ始めた。
「──閣下。出撃しても構いませんか?」
カオステルの目は血走っていた。
否、第七部隊の誰もが目を血走らせていた。
こいつらはフレーテ率いる第三部隊に突撃するつもりなのだろう。
普段のエンタメ戦争であれば好きにさせるのだが、今回はコマリ様の生死がかかっているため勝手はさせられない。
「駄目ですよ、カオステル中尉。先程あなたは何と言いましたか? 此度の闘争は『〝紅玉〟の奪い合い』なのですよね? 幹部であれば発言には責任を持つべきです」
「しかし! 敬愛する閣下を侮辱されたのですよ! フレーテ・マスカレールを殺さなければ我々の気はおさまりません!」
「先日フレーテ様に返り討ちにされたことを忘れたのですか? あなた方が進軍したところで第三部隊にポイントを与えるようなものです」
カオステルは「しかし・・・・・・」と納得しきれず唇を噛み締める。
他の隊員たちも同様の反応を示し、拳を強く握りしめている。
各々が力量不足を痛感しているが故に黙り込む。
俺は第七部隊へ行動指針を告げた。
「あなた方はコマリ様と共に紅玉の元へと向かってください。──第三部隊は私が相手します」
場が騒然とした。
部隊一つを一人で相手取るのだから当然の反応だろう。
「アルク大尉が武官としても優れていることは認めます。ですが、それは無謀ではありませんか? あなたに第三部隊と戦う意思があるのであれば、我々全員で迎え討つべきでは?」
「カオステルに同意だ。なにも一人で向かう必要はあるまい」
カオステル、ベリウスと俺の出陣を止めるように見せかけて自分たちも進軍する気満々である。
彼らの主張は分からないでもないが、第三部隊の陣営は紅玉とは真逆の位置にある。
そこに全員で突撃するのは試合を放棄するのと同義だ。
完全に怒りで本来の目的を見失っている。
「仮に私が敗れたとしても失うのはたったの一ポイント。大した痛手にはなりません。──それよりも私たちが第一に考えるべきはコマリ様へ勝利の栄冠を与えること。我々はただでさえ人数が少ないのです。人員を割ける他の隊とは違って、第七部隊は慎重に動く必要がある。そうでしょう?」
得心できないようだが無理にでも頷いてもらうしかない。
今回コマリ様を闘争に勝利させることが至上目標。
不確定要素は可能な限り取り払わないといけない。
無言の中ヴィルヘイズが口を開いた。
「では・・・・・・私たちの分まで精々蹴散らしてきてください。コマリ様は私たちが責任を持って紅玉の元へとお連れいたします」
そんなヴィルヘイズの言葉に同調するかのように第七部隊の連中は、
「俺たちの分まで殺戮を!」
「ふっ。お前なら俺の代役としてふさわしい」
「閣下を舐め腐ったフレーテ・マスカレールに天誅を!」「「「「フレーテ・マスカレールを殺せえええええええええええッ!!」」」」
その場を沸騰させて、喝采をあげていた。
コマリ様が俺の横で憂わしげな目を向けていた。
「・・・・・・アルク。無理はするなよ。ヤバくなったら逃げてもいいんだからな」
「はい。コマリ様もお気をつけて」
俺は指笛を吹く。
全体的に毛色が黒いのだが、やや白みがかった一頭の騎獣が走り駆け寄ってきた。
白極連邦原産の愛馬ドゥンスタリオン。
第七部隊の中でもとりわけ大きいベリウスすらも超える全長は注目の的になっていた。
俺はドゥンスタリオンの背に
⭐︎
「──切りやがりましたわ、あの小娘ッ!」
フレーテ・マスカレールは怒りもあらわに通信用魔鉱石を地面に叩きつけた。
第七部隊コマリ隊の本陣から古城をはさんでちょうど反対側、大昔の戦争によってほとんど破壊し尽くされた街並みの一角に第三部隊が待機している。
やつを
やつは無言だった。
しかも突然通話を切りやがった。
それからすぐに、七紅天闘争開始を告げる鐘の音が響いた。
帝国広報が打ち上げた花火がドカンドカンとやかましい音をまき散らし始める。
「フレーテ様、どうなさいますか」
傍に立っていた吸血鬼が話しかけてきた。
神経質そうな長身の男性。
第三部隊の副隊長にしてフレーテの腹心、名をバシュラールという。
「決まってますわ! 腹立たしい小娘を血祭りに──と言いたいところですけれど、ここは頭を冷やして正攻法を採りましょう。あの古城に進軍するのです!」
フレーテの指さす先には悠然とそびえる城がある。
従来の七紅天闘争は単純に七紅天同士による殺し合いだった。
しかしそれではつまらないし美しくないとフレーテは考えたのである。
単なる強さのみならず、知性や戦略センスも必要となる総力戦──それこそが栄光ある七紅天同士の決闘に相応しい。
だからフレーテは〝特定のブツを奪い合うこと〟を今回の闘争における重要ポイントに設定したのだ。
バシュラールは「承知したしました」と頷いてから、
「・・・・・・テラコマリ・ガンデスブラッドはどうするのですか?」
「ガンデスブラッドさんは恐らく紅玉など眼中にないでしょう。彼女の考えていることはただ一つ──自分の身の安全。それだけです」
「つまりやつは自陣から一歩も動かないと」
「その可能性が高いですわね。そして自分の部隊を動かすとも考えにくい。護衛が減ってしまったら命の危険が高まりますから」
「しかしそれでは仮に生き残ったとしてもポイントも獲得できず最下位になってしまうのでは・・・・・・」
「そうです。彼女は袋小路に入っているのです。身を守るために軍は動かせないし、軍を動かさなければ勝てない。勝てなければ七紅天を辞めされられる。・・・・・・しかもこの闘争は遠視魔法で中継されていますわ。自ら戦おうとしない七紅天にどんな評価が下されることか──まったく楽しみで仕方ありませんわね」
「なるほど。それで我が軍の行動方針は」
「まず一番に古城を占拠。そこで攻め込んでくる七紅天を撃退。紅玉を確保した後、最後にこのフレーテ・マスカレール自らがガンデスブラッドさんのところに赴いて命乞いさせます。そうして衆目の面前で美しく殺して差し上げましょう。──完璧ではないですか?」
「まさに完璧かと。さすがはフレーテ様でございます」
フレーテはバシュラールの賛辞に気をよくした。
さっそく軍を動かそうではないか──そう思って立ち上がったときのことだった。
「マスカレール様! 急報です!」
第七部隊の偵察に向かわせていた斥候が青ざめた顔で陣中に突入してきた。
第三部隊の面々は何事かといった表情で振り返る。
「どうしたんですの? ガンデスブラッドさんが敵前逃亡でもしましたか?」
「いえ、それが・・・・・・第七部隊の連中は、三十人ほどしかいなくて」
「は?」
「その内の一人が騎獣と共にこちらへ猛スピードで進軍しています! 残りは古城へ向かっており一人を
「・・・・・・は?」
危惧していないわけではなかった。
第七部隊の最高戦力であろう黒髪の執事の存在を失念していたわけではない。
それでもフレーテにとっては何もかも予想外であった。
テラコマリ・ガンデスブラッドが古城へ向かうことも、あの執事が主人の元を離れて第三部隊の陣営へ攻め込んでくることも。
「──ッ、相手はたったの一人です! 物量で押し切りなさい!」
指示を出してすぐに先程同様に青ざめた隊員がフレーテの元へと駆け寄り、
「マスカレール様! 急報です!」
「今度は何事ですの!?」
「偵察部隊はほぼ壊滅! 応援に向かった二十名は騎獣にすべて
「・・・・・・なっ!? ──では地雷式の魔法を設置なさい!」
フレーテが命令を下してまもなく爆発音が響いた。
設置させた爆発魔法が作動したのだろう。
これで吉報が届けば御の字だが──
「マスカレール様! 急報です!」
「・・・・・・何ですの? さすがに討ち取れましたわよね・・・・・・?」
「それが・・・・・・騎獣は転移魔法によって戦場から姿を消したようですが、例の執事によって三十名の隊員が討ち取られました・・・・・・。我々はたった一人によって半数以上の人員を失ったことになります」
「・・・・・・・・・・・・は?」
フレーテ・マスカレールはあまりの事実に言葉が浮かんでこなかった。