ひきこまり吸血姫の執事   作:神無月 優

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原作に登場するモブや登場しないモブにも活躍の場を与えたいと常日頃思って書いています。

ただしヨハン・ヘルダース、ハデス・モルキッキ、テメーらはダメだ。

なんて事は冗談でどんなキャラにも光り輝く時は必ずあるのです。

七紅天闘争はまだまだ続きます。





全てを呑み込む煌級の光

 第七部隊隊長テラコマリ・ガンデスブラッドの執事であるアルクの奇襲を受けたフレーテ・マスカレールと第三部隊隊員たち。

 フレーテは目の前にいる敵に(弁償として)新調してもらった剣を存分に振るう。

 魔法の扱いに特化しているのが吸血種の特徴であるが、フレーテは剣術にも長けている。

 軍学校に居た時は魔法もそうだが剣術において右に出るものはいなかった。

 そんなフレーテは七紅天でもない相手に攻めあぐねている。

 偵察部隊からの報告では魔法を模倣したり、多様な魔法を駆使しての戦い方と聞いていたが、どうやら剣術も模倣できるらしい。

 フレーテはまるで自分自身と戦わされているような奇妙な感覚に見舞われていた。

 

「くっ、この・・・・・・! これ程までに戦い難い相手は初めてですわッ!」

 

 剣と剣が激しくぶつかり合い火花が飛び散り、交錯するたびに凄まじい突風が吹く。

 キーンと金属音が響くが、

 アルクの握り持つ剣は自身の血で創造されている。

 まるで軍学校からの友人で同僚でもあるデルピュネーの凝血魔法を見ているようだ。

 デルピュネーの魔法も模倣できるのかと聞いてみると、

 

「・・・・・・? ああ・・・・・・そういえばデルピュネー様は凝血魔法のエキスパートでしたね。私のこれは魔法ではありません。魔力も一切使用していませんし、そうですね・・・・・・特殊能力とでも言っておきましょうか」

 

 言っている意味が分からなかった。

 フレーテがアルクと対峙している間、その場にいた隊員の内五人ほどは紅玉の元へと向かわさせている。

 未だポイントを獲得できていない第三部隊は紅玉を取得しなければ最下位が確定してしまう恐れがある。

 どこも乱戦で入り乱れているのなら、寧ろ少人数を向かわせる方が得策だ。

 

「フレーテ様! 我々も加勢を──」

 

 第三部隊副官バシュラールを筆頭にフレーテの部下たちがアルクに向けて一斉に魔法を放とうとした瞬間、

 

「なに・・・・・・?」

 

 フレーテは無数の魔力が流動する気配を感じて背後に飛び去った。

 直後、上空から光り輝く矢の大群が──中級魔法【光撃矢】が降り注ぐ。

 

「援軍ですって!? 馬鹿な──」

 

 フレーテは手にした細剣で矢の雨を弾き飛ばす。

 しかし部下の幾人かは予期せぬ奇襲に狼狽えるばかりで何もすることができず、一人、また一人と心臓を貫かれてその場に倒れ伏してしまう。

 執事一人でも手を焼いているのに、このタイミングでの援軍は状況としては最悪だった。

 やがて魔法は止まる。

 フレーテは瞳に憎悪を(くゆ)らせ魔力の発生源を睨みつける。

 小高い丘に立ち、古城を背に向けている吸血鬼の一軍が睨み据えている。

 先頭に立っているのは(つえ)を握りしめた気弱そうな小娘──サクナ・メモワール。

 

「──ご、ごめんなさい! でも七紅天闘争だから、攻撃しなくちゃ、いけないんです・・・・・・だから、もう一回、やります」

 

 第六部隊メモワール隊の連中が詠唱を始めた。

 フレーテは舌打ちする。

 七紅天と七紅天が結託してはいけないというルールはない。

 それにテラコマリ・ガンデスブラッドとサクナ・メモワール。

 弱者同士が徒党を組んで増長しようが腹立たしいくらいで済んだ。

 だが専念すべき相手を前にしている今の状況で第六部隊の存在は目障りでしかなかった。

 そんな中腹心(ふくしん)であるバシュラールが口を開いた。

 

「フレーテ様。我々があの男を足どめします。その間にあなたはやつを倒せるだけの魔法を放つ準備をお願いします」

 

 バシュラールが言い放つと、それに同調するように他の部下たちも雄叫びをあげて一斉にアルク目がけて魔法を射出する。

 暗黒の魔力を練り固めながらフレーテは部下の方を見る。

 部下たちは第六部隊からの攻撃を無視して際限なく魔法を放っている。

 当然ながら第六部隊からの追撃で一人、また一人と倒れるのだが、それでも死するまで攻撃の手を緩めない(さま)はフレーテの望む優雅な戦いとは程遠かった。

 

「時間稼ぎはもうお終いでしょうか?」

 

 アルクの声が聞こえた。

 すべてを防御魔法で防いでいたのか、その姿は無傷であった。

 部下たちも力尽き倒れている。

 そこでフレーテはふと違和感を覚えた。

 倒れている部下の中にバシュラールの姿がどこにもない。

 アルクの背後の何もないはずの空間が歪み、バシュラールはアルクを羽交締(はがいじ)めにする。

 

「フレーテ様! 私が押さえている隙にッ!」

「よくやりましたわバシュラール! そのまま動きを固定させておきなさい!」

 

 フレーテは剣の切先をアルクへと向ける。

 ようやく決定機となる一撃を打ち込める──はずなのだが、フレーテはアルクの妙な落ち着き様が気になっていた。

 

「透明化・・・・・・いえ、光学迷彩でしょうか? 興味深い魔法ですね。ただ・・・・・・それで私の動きを封じたつもりですか?」

「なッ! ──グボッ!」

 

 アルクの右肘が無理矢理振り下ろされ、バゴォッ!と遠くからでも聞き取れるような音を出してバシュラールの右脇腹へと刺さる。

 バシュラールの肋骨が一瞬で粉々に砕け、(おびただ)しい血液が口から吐き捨てられる。

 しかし、バシュラールの両腕は変わらずアルクを捕縛している。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 何か言いたげなバシュラールであったが、砕けた骨が呼吸器にでも刺さったのか発声できずにいた。

 だがフレーテには「死んでも離さない」と言っているように思えた。

 

「あなたはたしかに強かった・・・・・・それは認めますわ。でも・・・・・・最後に勝つのは(わたくし)たちですわッ! 特級暗黒魔法【ダークネス・ハルマゲドン】!!」

「あ────ダメッ!」

 

 サクナの制止を呼びかける声は届かず、フレーテの細剣から勢いよく放たれた黒い球体はアルクの自動防御魔法を破壊して、バシュラール共々二人の胴体を消滅させた。

 

「・・・・・・やりましたわ。ついに──」

「────どうしてアルクさんを殺したんですか?」

 

 強敵(アルク)を倒して歓喜に浸っていたフレーテは、聞き慣れない声がするほうへ向く。

 第六部隊隊長サクナ・メモワールが発したものだったようだが、普段の弱々しい消え入るような声ではなく、凍てつくように冷たく怒気をはらんだ低い声。

 その怒りの矛先がフレーテに向けられているのは見ればわかる。

 ただ理由に皆目見当がつかない。

 

「メモワールさん。あなたが彼とどんな関係かは存じませんが、この闘争の最中でフレーテ・マスカレールが敵に容赦するとでも? 仲良しこよしの甘い考えをこの場に持ち込まないでくださいませ。それに深刻そうな顔をされてますが、時間が経てば生き返りますわ」

「あの人は・・・・・・魔核の力では、生き返ることができないんですよ」

「意味がわかりませんわ。別に私は神具で殺したわけではありません」

「やっぱり・・・・・・野蛮な人は嫌いです。フレーテ・マスカレール・・・・・・あなたには死んでもらいます」

「これだから話の通じない相手は嫌いですわ。いいでしょう。部下もろとも闇の彼方へ葬り去って差し上げますわ」

 

 フレーテが剣先をサクナに向ける。

 だがサクナは口を開いたまま唖然としていた。

 その視線はフレーテの背後に向けられている。

 

「まさか・・・・・・」

 

 フレーテが振り返ると、散らばったアルクの身体を囲むように血飛沫が竜巻のごとく舞う。

 そう時間もかからずに渦の中から五隊満足そうにアルクが姿を現した。

 

「お二人の会話は聞こえていましたが、私を勝手に殺さないでもらえますか?」

「どういうことですの・・・・・・? 魔核の再生──にしては早すぎますわ・・・・・・」

 

 フレーテはいまだ死に伏しているバシュラールに目をやる。

 魔核の再生速度は皆一律であり、アルクとバシュラールの欠損箇所は同じだった。

 それならばアルクもバシュラールと同様に死んでいなければならないはずだ。

 

「私の再生は魔核起因ではないということです。さて──だいぶ時間をロスしました。そろそろ決着をつけてコマリ様の元へ向かうとしましょう」

「くっ!?」

 

 アルクは天に向けて右手を伸ばし、空に魔力を練り固める。

 規模から察するに特級魔法。

 フレーテはそれに対抗すべく空に浮かぶ魔力の塊に向けて細剣を突き出そうとしたとき、

 

「「「──────!?」」」

 

 その場にいた全員がぞくっ、と全身を包み込むような寒気に襲われた。

 

「なん・・・・・・ですの・・・・・・?」

 

 それは、おぞましい魔力の気配だった。

 生きとし生けるものすべての者を恐懼(きょうく)させてやまない絶対的な魔力の奔流。

 フレーテは身体が震えるのを自覚しながら魔力の発生したほうを──古城が屹立しているほうを見やる。

 

「さすがコマリ様。これだけ離れていても魔力が肌をひりつかせるとは恐れ入る」

 

 アルクが「コマリ様」と呼ぶ存在は一人しか思いつかない。

 だが──そんなことがあるのだろうか。

 フレーテは剣を構えることも忘れてその場に立ち尽くす。

 

 ⭐︎

 

 デルピュネーは言葉を失った。

 あのメイドが死に際に放った魔法石が市場にほとんど出回らない高級品であり、デルピュネーの魔法を容易く打ち消したことは理解できる。

 理解できないのはテラコマリ・ガンデスブラッドだった。

 液状化した血液の飛沫を浴びた彼女は、なぜか膨大な魔力を纏って立ち上がった。

 表情は無。

 不気味に輝く紅色の瞳だけがデルピュネーを咎めるように見つめている。

 

「お前・・・・・・何をした」

 

 声が震えてしまっていた。

 魔力量が違いすぎる。

 こいつは自分如きでは絶対に敵わない〝強者〟だ──デルピュネーはそう思った。

 テラコマリは足元にいるメイドを見下ろした。

 

「──おまえがやったのか」

 

 感情のこもっていない声。

 近場にいた吸血鬼どもは尋常ではない魔力に()てられ身動きが取れなくなっていた。

 

「おまえが、これを、やったのか」

 

 再び低い声がデルピュネーに向けて発せられた。

 〝これ〟とはメイドの傷のことだろう。

 デルピュネーは考えなしに返答していた。

 

「そうだが・・・・・・それがどうしたんだ」

「わかった」

 

 テラコマリはメイドの身体を抱きかかえて、ふわりと宙に浮く。

 何の変哲もない飛行系の魔法である。

 呆然と立ち尽くす周囲の吸血鬼どもをよそに、少女は徐々に高度を上げ、そうして右手をかざす。

 魔法陣が現れた。

 滞留する魔力の質・量がこの世のものとは思えない。

 空気が鳴動し、壁や床に(ひび)が生じ、あまりの重圧に耐えきれなかった吸血鬼どもが泡を吹いて気絶してゆく。

 あれは上級魔法でも、ましてや特級魔法でもない。

 煌級魔法。

 太古に失われたとされる最高位の秘奥義。

 

「まッ──、」

 

 制止を呼びかけようとしたが無駄だった。

 魔法陣から射出された真っ赤な閃光は、古城は言うまでもなく、古戦場の街並みから砂粒に至るまで、ありとあらゆるものを焼き滅ぼした。

 

 ⭐︎

 

「・・・・・・見たかアルマン。あれは煌級光撃魔法【地獄を()曙光(しょこう)】だ。まさか生きているうちに実物を見られるとは思わなかったな。見たまえ。水晶が壊れてしまった。朕の遠視魔法ですら阻害する強大な魔力の残滓が古戦場に充満しているようだ」

 

 言葉の割にはどこか表情が暗いカレン・エルヴェシアス。

 それよりもアルマン・ガンデスブラッドは生きた心地がしなかった。

 また、あの子に烈核解放を発動させてしまったのだ。

 

「どうするんですか! このままではコマリは・・・・・・」

 

 焦るアルマンに対して、カレンは「心配いらんさ」と言った。

 

「無差別虐殺など始まらない。彼女はもう引きこもりではないのだよ」

「既に虐殺されているのですが」

「それは虐殺すべき相手だから問題ない。思うに、烈核解放時のコマリは平常時のコマリの願いを汲み取って行動するのだ。あの子はヴィルヘイズを傷つけたデルピュネーにむかついた。だから殺した。それだけのことなのだろうさ」

「それにしては二次被害が大きすぎるでしょう」

「デルピュネーは心に傷を負ったかもしれんな。後でフォローしておこう」

「・・・・・・この後コマリはどうするのでしょうか」

 

 カレンは落ち着き払って言った。

 

「さあ。デルピュネーを殺すという目的は遂げたわけだし、どうなるかわからんな。・・・・・・それよりも朕が心配しているのはアルクのことだ」

「彼なら寧ろ心配いらないでしょう? 実際中継で見た限りだとフレーテ・マスカレール率いる第三部隊を一人で相手取っていたわけですし。まあ・・・・・・先程のコマリの魔法に巻き込まれた可能性もありますが・・・・・・」

「まさに朕が心配しているのはそれだ。お前にも話していなかったがな、アルクは魔核に血を登録できなかったんだ」

「は? それだと彼は蘇生できないのでは・・・・・・なぜ登録していないのですか?」

「していないのではない。〝できなかった〟のだ。魔核があいつの血を拒んだ」

「・・・・・・そんなこともあるのですか?」

「朕にもよくわからん。幸いあの子は強かった。だから何も心配してこなかった。でもコマリの烈核解放が相手であれば話は別だ」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 アルマンは何も言えなかった。

 義理とはいえ皇帝の弟をコマリが殺してしまうとなれば、最悪極刑もあり得るのではないかと不安がよぎった。

 

「気にするな。もしコマリがアルクを殺しても朕は恨んだりしないよ。それよりも戦局が気になる。──おい、誰か新しい水晶を持ってきてくれ」

 

 女官に声をかけるカレンの傍らで、アルマンは拳を握って祈ることしかできなかった。

 

 ⭐︎

 

 時は少し遡る。

 コマリ様の絶大な魔力の奔流を感じた瞬間、紅色の光が古戦場を包み出した。

 特級魔法を遥かに凌駕する太古の魔法──煌級魔法。

 文献の記録にしか残っていない魔法。

 使用者は現代に存在しないと認識していたので、迫ってくる魔法を放ったコマリ様は唯一の使い手なのだろう。

 魔法の迫る勢いを計算すると、俺やフレーテたちのいる位置は射程圏内。

 とは言え何かしら抵抗をしようとは思わないし、しても無駄だと考えていた。

 俺には誰にも言っていない望みがある。

 俺を救ってくれた少女──テラコマリ・ガンデスブラッドの手によって人生の終わりを迎えること。

 過去に大罪を犯した俺を、救ってくれた少女に裁いてほしかった。

 だが優しい彼女に「殺してくれ」と言えるわけがない。

 だから今の状況は好都合だった。

 塵一つ残さないコマリ様の煌級魔法なら直撃すれば確実に俺を殺せる。

 あとは迫り来る魔法に身を任せるだけ──のはずだった。

 走馬灯ではなく、思い出が頭によぎる。

 なぜだか俺が死ねばコマリ様が酷く悲しむ姿が目に浮かんだ。

 いや・・・・・・コマリ様だけではなく、ヴィルヘイズやその他関わってきた人たちも俺の死に嘆いてくれる、そんなあるかもしれない未来を思い描いてしまった。

 

「ははっ・・・・・・これじゃ、死ねないな」

 

 死ぬことを贖罪とするのではなく、これからは沢山の人たちに恩を返していこう。

 だから今この場を確実に生き延びる。

 迫り来る魔法に対して俺は手を向ける。

 

「上級隠滅魔法【虚無の御神楽】」

 

 かなりの魔力消費を代償に、対象の魔法は霧散する──はずなのだが、コマリ様が放つ煌級魔法の性質が特殊なのか消滅したのは光の一端で、勢い変わらず襲いかかる。

 他に手段が無いか考えていると、ふと以前にミリセントの特級光撃魔法を防いだコマリ様の魔法が脳によぎった。

 

「上級反射魔法【浄玻璃(じょうはり)】ッ!」

 

 煌級魔法に片手を触れ攻撃の軌道を変えようとしたが、威力が強大すぎて軌道を変えるどころか魔法を押し留めるのが精一杯だ。

 

「くッ! ならもう片方でッ!!」

 

 反射魔法を両手で展開する。

 僅かに押し返してはいるが、軌道を変えるまでには至らない。

 対抗魔法は意味を成さず、特級魔法で抵抗しようがもって数秒。

 

「・・・・・・奥の手を使うしかなさそうだ」

 

 俺は傍で目を閉じてその場に縮こまって震えているフレーテ・マスカレールを見やる。

 

「フレーテ様、お願いがあります。あの魔法を三秒で構いませんので押し留めてもらえませんか?」

「・・・・・・魔法? ひッ!?」

 

 フレーテが恐る恐る目を開けると、すぐ近くまで光の壁が押し寄せていた。

 そして圧倒的な魔力を肌で感じるのか足を崩してへたり込む。

 俺は魔法の侵攻を食い止めながらフレーテを説得する。

 

「怖いのは分かります。私だってあれをまともに受ければ間違いなく死ぬでしょう。だからこそ私は止めたい・・・・・・協力して頂けませんか?」

「──三秒、でしたわね。(わたくし)にできるでしょうか・・・・・・」

「〝英邁なる七紅天〟なのでしょう? あなたが私の実力を認めて下さるように、私もあなたの実力を認めています。その力を是非奮っていただけませんか?」

「・・・・・・ええ。そうですわ。(わたくし)は英邁なる七紅天〝黒き閃光〟フレーテ・マスカレール! 三秒どころかこんな魔法弾き飛ばして差し上げますわ」

「まあそれは無理でしょうけど」

「な、なんですって!?」

 

 フレーテはようやく普段の調子が戻ってきたのか、立ち上がり眼前に剣先を向ける。

 切先には暗黒の魔力が滞留し、魔力の塊が膨張する。

 

「これでも喰らいなさいッ! 特級暗黒魔法【ダークネス・ハルマゲドン】ッ!!」

 

 俺がその身で受けた時以上の規模の魔力球が放たれる。

 フレーテに与えた剣は周囲の魔力を吸って貯蓄することができる。

 煌級魔法から漏れ出る魔力を吸収して威力を底上げしたのだろう。

 

「早くなさいッ! あまり、持ちませんわよ」

「わかっています」

 

 俺は自ら皮膚を切って地面に滴らせる。

 そして唱えた。

 

「世界改変・【赫血(かっけつ)世界】」

 

 そうして世界が赫色(あかいろ)に染まった。

 

 

 

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