魔法最強のゲーム世界に転生したけど、居合しかできない!   作:削り板

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父? 肆

 

 

「よし、着いたから降ろすぞ。気をつけろよ」

 

父はそう言ってガラス細工でも扱うかのように丁寧に丁寧に自分を床へ降ろした。

 

(めちゃくちゃ恥ずかしかったぁ.....)

 

父にお姫様抱っこで運ばれるまではまだ耐えられたが、途中で兄弟子達に見られた事で自尊心が崩壊した。

幸い深夜だったので大人数ではなかったが、噂が広まるかもしれないことを考えるとどんどん顔が紅潮してくる。

 

「む、顔が赤いがどうかしたか?もしかして体が痛むのか?つらくても少しの間我慢していてくれ。なるべく早く終わらせるからな」

 

「いやそういう訳じゃないんだけど...まぁいいや。じゃ早く始めようよ」

 

「そうだな、よし、少し探し物をするから待っててくれ」

 

そういうと父は自分の机に近づいていき、備え付けの棚を下の方から順に次々に開けて、何かを探し始めた。

 

(棚の中に入ってるものを探すってことは何かそんなに大きくない物を、免許皆伝する時に使うってことなんだろうけど一体なんだろう?何か技術とかは渡すとなると魔導書か記憶結晶とかがありえそうだけど)

 

魔導書と聞くと魔法を使うキャラしか扱えないアイテムなのかと思いそうな物だが、『WORLD STORY』内ではそんなことはない。

魔法糸などと同じ様に様々な効果が付与されており、ページを開くだけで誰でも効果を発動することができる。

魔導書は作成者が書に付与したスキルを獲得することができる。そのためキャラを急激に強くさせるアイテムとして原作のゲームではプレイヤー全員が重宝していた。

だが、勿論そんなに強力な物が簡単に作れる訳も無く、これを作るには優れた魔法の技術とレベルのリセットという代償を負わなければならない。

その為かなりのやり込み要素や、推しキャラを限界まで育てる為の要素として使われていた印象がある。

 

(とか考えてる内に探し物は見つかったっぽいな)

 

一番上の棚を少し漁って見つけた何かを手に持ち、父はこちらに向かってきて、向かいの床に座った。

 

「じゃあ始めるぞ。確か何か言うべき口上があったんだが.....忘れたからまぁいいだろう。それじゃ手をこっちの方に出してくれ」

 

「?はい」

 

(手を出すってことは魔導書とかでは無さそうだけど、じゃあどうやって技術を教えるんだ?何かそういうアイテムあったかなぁ?)

 

言われた通りに左手を前に出しながら、いったい何が行われるのか、何を渡すつもりなのかと考えを馳せる。

 

「じゃあこれで.....よし、付けれたぞ。どうだ、違和感は無いか?ぁ」

 

「ん?……おぉー!これ恰好いいね!違和感は全くないし、すごい手にフィットしてるよ」

 

左手首に何か巻き付けられた感覚があり、確認してみると龍の装飾がなされた金の腕輪だった。

 

(結構凄そうだけど原作では見たことないな.....ってそりゃそうか原作にここの流派出てきてないし当たり前か。そんなことよりやっぱり効果が気になるよな)

 

「そういえば父さん、この腕輪って何か効果はあるの?」

 

「・・・・・・」

 

「父さん?どうしたの?」

 

問いかけたが、父は沈黙していた。

 

 

 

「・・・大丈夫だよ、分かってる。あぁ分かってるさ。.......ありがとう」

 

 

虚ろな目でポツポツと意味不明な言葉を口走っている。顔を覗き込んでみると、思考がどこかに飛んでいってしまっているような、何か別の物を心の中で見ているような、そんな不思議な印象を受けた。

 

「本当にどうしたの?だ、大丈夫?」

 

肩に手を添えて軽く揺すりながら声を掛けていると、しばらくしない内に

正気を取り戻したようだった。

 

「・・・・・あぁ大丈夫だよ。それよりもその腕輪の効果だよね?その腕輪には龍が入ってるんだ。ある条件を満たすとそれを召喚できるようになってるよ」

 

「えっ、あ、あぁそうなんだ」

 

(いや、なんか明らかに喋り方変わってるけど!これ絶対何かあったでしょ!心なしか目がキレイになって戦闘狂感が消えてるんだけど!)

 

(.....まぁいいか、本当の息子でも無い俺が踏み入るような事でもなさそうだしろうし………それよりも気にするべきは腕輪の方かな)

 

(龍っていえば原作でもかなり上位の魔物で、ストーリーに絡むレベルの奴もいたから戦力としては有望だよな。生き残る為にも戦力は欲しいし、嬉しいアイテムだな。でも幾つか気になる所があるよなぁ)

 

「父さん、これについてちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 

「.....すまない、時間がなくてね、急がないといけないんだ。それとは別に渡さないといけない物があるしね。」

 

(時間が無いっていうのは多分性格の変化に関係があるんだろうな、原作のキャラのことを合わせて考えると.......ってこんなこと考えるのもあれだなやめとこう。なによりこんなこと考えても仕方ないしな。それよりも他のことを考えておくべきだろうし。

 

あまりの変わり様に、思わず原因を思考してしまうが意味が無いと思い直し考えるのをやめておくことにした。

代わりに腕輪の龍について考えようとしていると父が話しかけてきた。

 

「......僕は多分しばらく君には会えなくと思う。だから伝えおきたいことがあるんだ」

 

「....うん」

 

「僕はこれまでの修行でまだまだ幼い君を酷い目に合わせてきた。いくら君の為といえど、本当に申し訳なく思ってる。ごめん」

 

そう言って父は手を地面に付け、額を地面に付けた。

 

「い、いや別に大丈夫だよ。色々あったけど強くはなれた訳だし。だからそんなに謝らなくていいって!」

 

(確かに色々しんどかったけどそこまでされると良心の呵責が....)

 

「....ありがとう、君は優しいね。でも僕は親として許さない行為をしたんだ。いつでも恨んでくれていい、なんなら今殴ってもらっても構わないよ」

 

「いや、そんなことしないから!」

 

「そうかい、君がいいんならいいんだが......」

 

「もうぜんっぜん気にしてないから!大丈夫だから!」

 

(あんなにしょんぼりした顔で言われたら流石に心が痛むしなぁ)

 

「とりあえず!もう俺は大丈夫だから次の話にいこうよ!ね?」

 

「分かったよ。あまり気分の良い話でも無いだろうからね。でも、本当に君には感謝をしているんだよ」

 

「今の僕がいるのは全部君のおかげなんだ。君が僕を親にしてくれた、君が僕に意味をくれた、君が僕をつくってくれたんだ」

 

(?どういうことだ?子がいて初めて親になれる的な話か?)

 

「僕の存在意義は君なんだ、君だけなんだ。君の為だったら僕はなんだってするし、喜んで命も捨てるよ。この流派だって無くして欲しいなら日が出てくる前に消して見せる。それくらい君が大切なんだ」

 

 

(えぇ....なんか例えが怖いんだけど。大丈夫なのかこの人?なんか目が淀んできてるような感じもするんだけど)

 

 

 

「だから、君には幸せになって欲しい。きっと僕も君を守りきることはできないだろうから」

 

 

「何があっても強く進んでいけるような」

 

 

「たくさんの人に囲まれて生きられるような」

 

 

「俺とは比べ物にもならないような」

 

 

「そんな幸せな人生を送っていって欲しい。それだけが僕の言いたいことで親として唯一の願いだよ」

 

「.....ありがとう、父さん」

 

(多分今俺の目の前にいる人はこれまでの父さんではないだろうけど、でも、なんというか.....ありがたいな)

 

 

 

「.....なんて色んなことを話してたらもう本当に時間が無いね。渡さないといけない物はここに無いし急いで移動しようか」

 

そう言って父は立ち上がった。後を追う為に自分も立ちあがろうとした瞬間、気付いたら景色は変わり祭壇らしき場所にいた。

 

「はぇ??」

 

「急いでるから僕が君をだっこして運ばせて貰ったよ。高速で動いたからちょっと驚いたのかな?」

 

(はぁ!?.....はぁ、もう一々驚くのはやめよう。結局この人は化け物レベルだわ)

 

「じゃあこれが君に渡したいものだよ。受け取ってくれるかな」

 

そういうと父はいつのまにか手に持っていた簡素な黒い鞘の刀を差し出した。

 

「ありがとう頂くよ、父さん。これには何か能力はあるの?」

 

「いや、その刀自体に能力は無いんだけど、材料が硬い金属でできていてね。耐久テストはしたんだけど欠けもしなかったから中々良い刀だと思うよ」

 

「へ、へぇー父さんが耐久テストして欠けなかったんだ」

 

(それなら結構やばくないか!?原作でも父さんレベルの強者はおそらく珍しかったし、かなりの業物だと思うんだが....)

 

「それが君の困難を斬り倒すことを願っているよ。」

 

「さて、いよいよ時間がなくなってきたな。今からちょっとした儀式をするからそこに座ってくれるかな?」

 

父が指差した先には怪しげな魔法陣とその中央に赤い布で覆われた、腰掛けられるサイズの石があった。

 

「え、あ、う、うんわかったよ。そこに座れば良いんだね」

 

(なんか明らかに怪しいけど、父さんなら悪いことにはならんでしょ。多分)

 

そう考えて石の上に座り、父の合図を待つことにした。

 

「ありがとう。じゃあ始めるからそこを絶対に動かないでね。ふっ...多分血液はこれぐらいでいいかな」

 

「ちょ、ちょっと父さん!?何で急に腕を傷つけたの!?」

 

自分には見えなかったがおそらく自傷したのだろう。父の腕からは血が溢れだしていた。

 

「そんなに心配しなくて大丈夫だよ。すぐに治るし、儀式に使う為に必要だから」

 

「いやでもそれは.....!」

 

「おっとそろそろ始まるから口を閉じておいた方が安全かもね」

 

反論をしようとした時、魔法陣が白く光り始めた。

 

「父さん!これは何をしようとしているの!?」

 

「......ごめんね、今は説明できないんだ」

 

とにかく立たなくてはと思い、脚に力を入れるも動かすことができなかった。......何より父の哀しむ顔を見ると問い詰める気は失せてしまった。

 

「でもこれは君の為なんだ。説明をできないのは、申し訳ないけれど」

 

さらに魔法陣の光が強まり、顔を確認するのも難しくなる。

 

「じゃあね、君が・・・・・・・」

 

何かを言ったのは分かったが光の強さに意識を失ってしまう。

 

最後に確認できたのは父のかなしみに満ちた顔と、口の動きだった。

 

 

 

 

 






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