魔法最強のゲーム世界に転生したけど、居合しかできない! 作:削り板
「うぅ.....ここは....?」
頭が割れるように痛み、視界もぐらぐら揺れて定まらない。
視界は霞んであまり見えてはいないが、それでもさっきのような魔法陣がないことだけは分かる。
(どこは分からないけど、とにかくまずは立たないと....危険だ)
そう思い、無理矢理体に力を入れ手を支えに立とうとしたが、上手く立つことができない。
何度も試してみるがその度に失敗し、少し浮いた体は地面に叩きつけられる。
(満足に動けないなら、這いずってでも周りを見渡せるような所へ行かないと....)
頭も、首も、どこもかしこもが、火で炙られているかのように痛む。
少しは回復してきたが、視界も未だに霧に遮られているかのようだった。
だが、首を動かせない以上は這いずって動くしかない。
死は台風のように急に訪れる恐怖なのだ。
まだ息をしていたいならば、動かなくてはならない。
幸い手の感触から、自分がちょっとした傾斜にいることだけは分かる。少し行くと丘になっているはずだ。
とりあえず体の感覚を取り戻すまではゆっくりと這っていくほうがいいだろう、そう考えて少しずつ動き出す。
(というか色々と急に起こりすぎじゃないか?おそらくあの魔法陣にワープの効果が付与されてたんだろうけど、個人の魔法でワープするなんて出来るのか?ゲームだと神の力でマップ間のワープをしてたし個人では相当難しい筈だ。できても原作の狂人ヒロインくらいだろう。それに俺の住んでた地方はおそらく『大和』だったから、魔法使いも少ないし、いてもあまり強く無いはずだ)
(それにそもそもここは何処だ?俺を飛ばそうと思ってここに飛ばしたのか?だとしたらどんな意味が?それとも魔法陣の効果がランダムになっていて適当な場所に飛んだのか?そもそもあの魔法陣は誰が組んだんだ?武力特化の父さんには出来るはずないし....。あー考えることが多すぎる!頭が余計に痛くなってきた!)
動きながらも現状についての考察に思考を巡らせていくが、色んなことが一斉に起きたあまりに、ノイズの様に頭に痛みが走り、考え事をするにも負担が掛かってしまう。
(とりあえず難しいことは後で考えよう。今は動くことと体の回復に努めるべきだな)
まずはなるべく負担が軽くし、体が動くようになってから色々とするべきだろうと思い、這うことを続行する。
(ふぅ、それにしても俺中々冷静だな。普通パニックを起こしたりするもんだと思うんだけど....生き物を殺めるのに抵抗を感じなかったりするし、やっぱりある程度この体に引っ張られてる部分はあるんだろうな....ってイタっ!はぁ、また頭痛くなってきたし、考えないでぼーっとしとこ)
無駄に考えてしまい頭が痛むが、無駄について大した反省をせず、前へとひたすらに無心で這い進んでいくと、何か音が聞こえてくる。
かなり大きく辺りに響いている。これほどまでに大きい音を感知できていなかったのはおそらく耳も魔法陣のダメージを受けていたからだろう。
耳の機能が回復したから、少しずつではあるが聞こえるようになったのだ。
(お?そろそろ体も治ってきたか?ここに来てからそんなに時間も経って無いだろうけど結構治るの早かったな。じゃあ移動するか、音の源も確認しなくちゃだし、場所によっては一分一秒でも早く動かないとまずいからな)
聴覚の回復と共に、段々と視覚や感覚も回復してきていることに気付く。
まずは音の源について確認する為に立ち上がり、丘の頂上へとゆっくり進んでいく。丘の上から太陽が出始めているのが分かる。あと一、二時間もしない内に日は完全に昇るだろう。
(もう完全に耳は聞こえるようになったけど....爆発音と大勢の人の声らしいのが聞こえてくるな。何か戦争でもしてるのか?)
(結構大きな爆発音も聞こえてくるし、ある程度は大きい戦争なんだろうけど......まずどんな人達が戦ってるかを確認するべきだな、原作に出てきた『大和』の国のどれかならこっちも動きやすいし)
体の完全な復調を確認することはできたが、まだ安全な状況とは言い難い。身の安全の為にも、現状の確認の為にもとにかく戦いを見ることがヒントへと繋がるはずだと考え、丘の頂上から少しだけ顔を出す。
小高い岡からの景色は壮観で、踏み締められ黒く濁った緑の平野と無数の人々を眺めることができた。
(おぉ、凄い光景だな。ゲームでも戦争の描写はあったけど、やっぱり現実で見てみると迫力が違うなぁ、倒れてる人いるし)
(それで....多分右の方の軍団は反乱軍の集まりとかかな?左に比べて人数が少ないし、装備も見るからに劣悪だし、明らかに技量負けしてるから反乱軍っぽいな。それに確か『大和』では原作開始前からよく国民の反乱が起こってたんだよな。まぁ良い勝負はするかもだけど勝てないだろうな)
(左の軍は良質な装備着けてるし、反乱軍っぽいのと戦ってるから多分国の組織だと思うんだけど....ま、多分『
とりあえずは周囲の状況をある程度把握することが出来たが、大事なのはこれからどうするかの判断だ。
それをなるべく早く行うのが自分にとって最重要なのは犬でも猫でも分かることだろう。
(さて....どうするべきかな。取れる行動もそんなに無いんだけど、どうするのが最善かな・・・・・。....!とりあえず悩んだ時は、人に説明できる位丁寧に情報を整理するのが大事って聞くし、頭ん中で整理してみるか)
(原作では、主人公が最初に訪れる島が『
(・・・でもなぁ、この二つを考慮するだけならいいんだけど、多分もうちょっと考えないとダメなんだよな。少なくとも『自分あるいは自分以外の転生者』と『俺の父』は結構イレギュラーな存在なんだよ。多分)
(まずは転生者について、俺だけなら最悪ある程度の変化は予想できるけど俺以外が居たらかなりヤバい。チート持ちかもしれないし、なんなら原作のキャラになってるかも知れない。....つっても居た時点で俺にはどうしようもなくなるから、考えておくとしたら俺による変化メインがいいだろうな。人生は割り切りが大事だし)
(で、正直なところ転生者よりも気になるのは父さんの存在だよな。あの人はちょっと強すぎるんだよ、異常なくらい。多分あの時本気を出されてたら刀の鯉口をきる前に死んでた。絶対に。原作終盤みたいに神が結構死んでて、完全な人の時代に近いならあのレベルの強さにも納得できるんだけど。今の世界であれだけ強い人は多分原作にも居なかったと思うんだよな。でも結局俺はゲームの完結間際でここに来たからなぁ、神教関連の黒幕の正体も分からなかったし、明かされてないことは結構多かったからなぁ)
(んー、・・・・・ま、しょうがないか。とりあえず今ある材料で判断しよ。いくら考えても国軍についていくか反乱軍についていく、もしくはどっちにもついていかずに野で生きるくらいしか選択肢はないしな)
一旦情報の整理をやめてどうするかの判断に移ることにした。考えている内にそこそこ時間が経ったらしく、かなりの数の人だった物が平野へと転がり、緑だった地面も大地が露出し黒い何かに染まっている。
そろそろ太陽も昇りきりそうだ。
もし反乱軍がここで滅んでしまえば、取る選択肢が狭まることになる。
どの選択肢を取るにしても早めに判断しておくに越したことはないだろう。
(・・・・・よし、決まった。俺はあっちへ行こう)
決断は終わった。
俺はバレないようにしながらも、ゆっくりと周囲を見渡して立ち上がり、
一歩を踏み出した。
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