旅人と猫   作:午後ティー@あるけみ

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ベリー難産。


リリオール聖典教国編 3

 旅人と猫

 

「えーっと、つまりどういうことかな……」

「も、もう一度説明しますね」

 

 リリオールの象徴とも言える大図書館、その中のさらに奥まった一室内で2人は向かい合って話していた。

 室内は様々な生物の専門書と、何やらわからない神性を持った存在の物語で埋め尽くされ、殺風景にならないためなのか、道の脇でよく見るような雑草に似た植物が申し訳程度に植木鉢に飾られている。

 本は本棚に収まらず、脇の方に平積みされており、広いはずの室内は妙な窮屈感があった。

 

 怪しげな室内、そのなかで、ユキは苦笑いをしながら頬をポリポリとかいた。

 

「国民が、私のことが好き過ぎて私をアイドルにしようとしているのです」

「国王をアイドルに」

「それで、それをなんとかやめさせたいのですけど……私がやめさせようとしても聞いてくれないのです!」

「はぁ……」

「この国、やばくにゃいか?」

 

 話は少し前に遡る。

 

 くらまーれがリリオール聖典教国内で騒動が起こることを覚悟してユキと握手したのち、2人は入国した。

 中に個人制作と思わしきコピー本が何冊も入った、可愛らしい絵で飾られた紙袋や、50センチ程もあるユキのフィギュアを横目に見ながら国内を簡単に練り歩くと、ユキは完璧な笑顔で「そろそろ話をしましょっか!」と言って、くらまーれとタマをずるずると大図書館内に引っ張った。

 

 ああ、やっぱりこの人は国王だ……と、創作に溢れた国内を引っ張られ、中央にある大図書館の門をくぐり、図書館内を軽く説明されたのちに(途中で女の子二人組が仲良く本を読んでいるのを見てユキは絶命していた)、謎の部屋でこの話をされた訳である。

 

 もうわけがわからない。

 

「何故国王をアイドルに? 普通に考えたら国王とは国を先導する者だろう。畏敬の念を覚えられるべき人間が、アイドル……」

「そもそも、この国は私の趣味の同好の士が自然と集まって出来た国なのです。私は役職こそ国王だけれど、実際は国の体を成すために動いているだけ。国王と国民に上下関係はないのですよ」

「かなり特殊な国としての形だにゃあ」

「だね。僕も少し混乱してきたよ」

 

 うんうんと頭を抱えながらくはまーれは頭の中で考えをまとめた。

 とりあえずそういうものだ、と自分の中で納得し、くらまーれは口を開いた。

 

「えーっと、とりあえずユキさんは、僕に……、そのユキさんのアイドル計画を進めている人達の中に入って、なんとかすればいいんだね?」

「その通りなのですよ! よろしくお願いします〜! そうだ! なんなら偵察だけでも!」

 

 ユキはスカートの裾をバタバタと動かしながらくらまーれに頭を下げた。

 

「うん、まあ、偵察だけなら?」

「にゃおん」

 

 〇〇〇

 

 宿の一室にて。

 

「ところでくらまーれ。にゃんであの国王の頼みを聞いたのにゃ?」

「国王に僕たちが腹芸で勝てるわけないじゃないか」

「なるほどにゃあ……」

「所詮僕たちは旅人だよ。大国を統べる国王にとっては手駒でしかないさ」

「この国でも騒がしくなりそうだにゃあ」

「その通りだね。いつも通りだ」

 

 くらまーれは力なく笑いながら、タマを優しく撫でた。

 慈しむように、優しく。

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